吾妻鏡入門第十七巻

建仁元年辛酉(1201)十一月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　ごしょ　　おんまり　　ほうじょうのごろう　いか　　にんずうまえ　おな　　　かず　　さんびゃくろくじう
建仁元年(1201)十一月小二日己酉。�ﾘ。御所の御鞠。北條五郎已下、人數前に同じ。數は三百六十。

現代語建仁元年(1201)十一月小二日己酉。晴。御所で蹴鞠がありました。北條五郎時連を始めとする人数は前の時と一緒です。蹴った数は三百六十でした。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきのなかつかさにゅうどうきょうれん　みけしき　　こと　　めんきょ　 こうむ　　　よっ
建仁元年(1201)十一月小十三日庚申。佐々木中務入道經蓮�@が御氣色の事、免許を蒙るに依て、

これ　 が　　　もう　　　　ため　　さんぬ　ころさんちゃく
之を賀し申さん�A爲、去る比參着す。

きょう　　　こしょうぐんけ　　おんがっき　　むか　　　　　ほけどう　　　をい　　　　　ほけきょうりくぶ　　　　くよう　　　　これきょうと　　をい　　　　ぜんぜんしゃこう　おえ　ところなり
今日、故將軍家の御月忌�Bを迎へ、法華堂�Cに於て、法花經六部を供養す。是京都に於て、漸々寫功を終る所也。

どうす　　　だいがくぼう　しょうそう　　りくく　　　　どうし　　　　　ふせ　　　　ちょうけん　さんびき　しょうそう　　くべつ　　はくふいったんなり
導師は題學房。請僧は六口。導師への布施は、帖絹�D三疋。請僧は口別に白布一端也。

しょたい　しょしきら　 しゅうこうされ　 びりきの　およ　　ざる　　よっ　　　　しょうざい　ささ　　　こころざしのゆ　ところ　　しょうれいしょうかんせし　　たま　　べ　　のおもむき
所帶、職等を収公被、微力之覃ば不に依て、少財を捧げ、志 之 之く所、聖靈　照鑒令め給ふ可き之趣、

　ふしょうもん　〔　わじ　〕　　　の　　しょうどうよ　　あげ　　のかん　　　か　　かいきゅう　さっ　　せし　　　　き　　しゅうみな ひるい　きんぜず　 うんぬん
諷誦文〔和字〕に載せ唱導讀み上る之間、彼の懷舊を察さ令め、聽く衆皆悲涙を禁不と云々。

あまみだいどころ　ごけちえん　　ため みつみつ　　さん　　たま
尼御臺所 御結縁の爲、密々に參じ給ふ。

参考�@佐々木中務入道經蓮は、佐々木次郎經高。
参考�A之を賀し申さんは、礼を云うため。
参考�B月忌は、故人の命日にあたる毎月の日。
参考�C法華堂は、墳墓堂で、現在の鎌倉市西御門５丁目２の頼朝墓の位置にあったとされる。
参考�D帖絹は、糊で張った仕上げの絹布。絹一疋は、幅二尺二寸（約66cm）、長さ五丈一尺（約18m）の絹の反物（一反は幅が半分）。

現代語建仁元年(1201)十一月小十三日庚申。佐々木中務入道経蓮が頼家のお怒りをかって謹慎させられて居た事が、許されたので御礼を言うために先日鎌倉へ到着しました。今日は、亡き将軍頼朝様の命日にあたる日なので、頼朝様の墳墓堂の法華堂で法華経六巻を読んで上げる法事をしました。このお経は、京都で徐々に写経を仕上ったばかりなのです。お経の指導僧は題学坊。お供の坊さんは六人です。指導僧へのお礼は、絹の反物三疋（六反）、お供の坊さんには、白い布一反です。領地も、その職位も取上げられてしまったので、力及ばず、少ない寄付を差し上げますが、その思う気持は、頼朝様の霊も知ってくれることでしょうと、文章に書いて〔ひらがなです〕お坊さんが節をつけて読んでくれたので、亡き頼朝様を慕っている気持を推察して、聞いている人たちは皆、涙を禁じえなかったんだとさ。尼御台所政子様も、仏様とのご縁を求めて、内密にいらっしゃいました。

十二月へ

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