吾妻鏡入門第十八巻

建仁三年癸亥(1203)十一月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　　ごけいがののち　　　はじ　　　しんめをいわしみずはちまんぐう　たてまつ　たま
建仁三年(1203)十一月大三日丁夘。�ﾘ。將軍家、御慶賀之後、始めて神馬於石�C水八幡宮へ奉り給ふ。

わだのひょうえのじょうつねもり　〔　ほい　　　つ　　〕　　おんし　　な
和田兵衛尉常盛〔布衣を着く〕御使と爲す。

現代語建仁三年(1203)十一月大三日丁卯。晴れです。新将軍になられて、初めて馬を石清水八幡宮へ奉納されます。和田兵衛尉常盛〔狩衣〕が代参です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さきんごぜんしつ　いずのくによ　　　　 おんしょを　あまみだいどころ なら　　　 しょうぐんけ　 すす　 らる
建仁三年(1203)十一月大六日庚午。左金吾禪室伊豆國自り、御書於 尼御臺所 并びに將軍家へ進め被る。

これ　　しんざん　 ゆうせい　　 いまさらつれづれ　しの　 がた　　　　ひごろ　　めしつか　ところ　きんじゅうのやから まい　　い　　　　　ゆるされ　　　ほっ
是、深山に幽棲し、今更徒然を忍び難し。日來、召仕う所の 近習之輩 參り入るを免被んと欲す。

また　　あだちのうえもんのじょうかげもり　　をい　　は　　　これ　　もう　　 う　　　　　 かんぱつ　くは　　　 べ　　 のむね これ　　の　　らる
又、 安達右衛門尉景盛 に於て者、之を申し請け、勘發を加へる可し之旨之を載せ被る。

よっ　　そ　　　　さた　あ　　　　　ごしょもう　　じょうじょう　かたがた しか　べからず
仍て其の沙汰有り。御所望の條々、 旁 然る不可。

そ　　　うえおんしょ　 つう　　らる　　こと　　 きょうご　　ちょうじさる　　べ　　のおもむき

其の上御書を通じ被る事、向後は停止被る可し之趣、

きょう みうらのひょうえのじょうよしむら　 もっ　　おんし　　 な　　　　　これ　 もう　　おくらる　　　　うんぬん
今日 三浦兵衛尉義村 を以て御使と爲し、之を申し送被ると云々。

現代語建仁三年(1203)十一月大六日庚午。左衛門督頼家様が伊豆から手紙を尼御台所政子様と将軍実朝様へよこしました。それは、深い山に閉じ込められて閑でしょうがないから、以前のそば仕えをよこすように許可して欲しい。又、安達右衛門尉景盛を私に引き渡し処分をさせてほしい。と書かれています。それらについて検討した所、ひとつひとついけないと決定しました。その上、今後は手紙をよこすことも禁止すると、三浦平六兵衛尉義村が使いとして伝えることにしましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　にゅうどう　さきんご　　きんんじゅうのやから　なかののごろう いか おんる　　　しょさる　　べ　　　のよし　　そ　　　さだ　　あ　　　　　うんぬん
建仁三年(1203)十一月大七日辛未。入道左金吾の 近習之輩、 中野五郎�@以下遠流に處被る可し之由、其の定め有りと云々。

参考�@中野五郎以下遠流は、遠島とあるが、中野五郎は北條時政命で薩摩に領地を貰っているので、この記事は怪しい。

現代語建仁三年(1203)十一月大七日辛未。出家した左衛門督頼家様のそば近く仕えていた中野五郎能成他を、流罪にしようと決定しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　さきのだいぜんだいぶひろもとあそんのいえ　　にゅうぎょ　　 あまみだいどころおな　　 とぎょ
建仁三年(1203)十一月大九日癸酉。將軍家、 前大膳大夫廣元朝臣 之家へ入御す。尼御臺所同じく渡御す。

現代語建仁三年(1203)十一月大九日癸酉。将軍実朝は、大江広元の屋敷へ行きました。尼御台所政子様もご一緒です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 みうらのひょうえのじょうよしむら　ずしゅうよ　　 きさん　　　　 か　　 ごかんきょの てい　　これ　 つぶさ　 もう
建仁三年(1203)十一月大十日甲戌。　三浦兵衛尉義村　豆州自り歸參す。彼の御閑居之躰、之を具に申す。

あまみだいどころすこぶ　ごひかん　　うんぬん
尼御臺所 頗る 御悲歎と云々。

現代語建仁三年(1203)十一月大十日甲戌。三浦平六兵衛尉義村が伊豆から戻りました。左衛門督頼家様の蟄居の様子を詳しく報告しました。尼御台所政子様は、悲観にくれましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　かまくらちう　　じしゃ　　ぶぎょう　　こと　　さら　　これ　　さだ　　らる　　　　なかなり　　きよさだしっぴつ　 な　　 これ　 き
建仁三年(1203)十一月大十五日己卯。鎌倉中の寺社の奉行の事、更に之を定め被る。仲業、�C定執筆と爲し之を記す。

　　つるがおかはちまんぐう
　鶴岳八幡宮

　　　　えまのしろう　　　　　　　　　　　 わだのさえもんのじょう　　　せいのとしょのじょう
　　江間四郎　　　　　和田左衛門尉　　�C圖書允

　　しょうちょうじゅいん
　勝長壽院

　　　　さきのだいぜんだいぶ　　　　　 おやまのさえもんのじょう　　そうのかもんのじょう
　　前大膳大夫　　　　小山左衛門尉　　宗掃部允

　　ようふくじ
　永福寺

　　　　はたけやまのじろう　　　　　　　 みうらのひょうえのじょう　　ぜんのしんじ
　　畠山次郎　　　　　三浦兵衛尉　　　善進士

　　　　あみだどう
　阿弥陀堂

　　　　ほうじょうのごろう　　　　　　　　　やまとのぜんじ　　　　　　　あだちのさえもんのじょう
　　北條五郎　　　　　大和前司　　　　足立左衛門尉

　　やくしどう
　藥師堂

　　　　みなもとさこんたいふしょうげん　ちばのひょうえのじょう　　とうのみんぶのじょう
　　源左近大夫將監　　千葉兵衛尉　　　藤民部丞

　　うだいしょうけ　ほけどう
　右大將家法花堂

　　　　あだちのうえもんのじょう　　　　　　ゆきのしちろう　　　　　　ちゅうじょううえもんのじょう
　　安達右衛門尉　　　結城七郎　　　　中條右衛門尉

現代語建仁三年(1203)十一月大十五日己卯。鎌倉中の寺社の管理指導者について、もう一度お決めになりました。右京進仲業・図書允清定にこれを記録させました。

　鶴岡八幡宮は、
　　江間四郎義時　　　　和田左衛門尉義盛　　図書允清原清定
　勝長寿院は、
　　前大膳大夫大江広元　小山左衛門尉朝政　　宗掃部允孝尚
　永福寺は、
　　畠山次郎重忠　　　　三浦平六兵衛尉義村　三善康清
　阿弥陀堂は、
　　北条五郎時房　　　　大和守山田重弘　　　足立左衛門尉遠元
　薬師堂は、
　　源右近将監親広　　　千葉境兵衛尉常秀　　民部大夫二階堂行政
　右大将家法華堂は、
　　安達右衛門尉景盛　　結城七郎朝光　　　　中条右衛門尉家長

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　かんとう ごぶんこく なら　　　　さがみ　いず　　　くにぐに　ひゃくしょう　おお　　　　　 とうねん　 のうぐ　　 いんずう　　へらさる
建仁三年(1203)十一月大十九日壬午。關東御分國�@并びに相摸伊豆の國々の百姓に仰せて、當年の乃貢の員數を減被る。

しょうぐん　 みよはじめ　　な　　　　 みんこ　　 やす　　され　 べ　　　　ぜんせいなり　　うんぬん
將軍の御代始と爲し、民戸を休ま被る可きは善政也と云々。

参考�@関東御分国は、文治二年(1186)三月小十三日条には、相摸。武藏。伊豆。駿河。上総。下総。信濃。越後。豊後とある。あえて相摸と伊豆を書き出しているのは北条氏領だからであろうか？

現代語建仁三年(1203)十一月大十九日壬午。朝廷から管理任命を任せられている関東御分国と相模・伊豆の国の百姓に命令して、今年の年貢の納付人数を減らしました。これは新将軍任命の治世始めとして、民百姓の勤労を楽にしてあげる良い政治なのだそうです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　しょうぐんけ　　　ばばどの　　 をい　　　　こがさがけ　　い　せし　 たま
建仁三年(1203)十一月大廿三日丙戌。將軍家、馬塲殿に於て、小笠懸を射令め給ふ。

おやまのさえもんのじょう　　わだのさえもんのじょうら　これ　　ふち　　たてまつ　　　おのおの　おんうま　たま　　　　　えんしゅう　　ごさたなり
小山左衛門尉、　和田左衛門尉等之を扶持�@し奉る。　各、御馬を賜はる。遠州の御沙汰也。

参考�@扶持は、助ける。教える。

現代語建仁三年(1203)十一月大二十三日丙戌。将軍実朝様は、馬場で、小笠懸を射ました。小山左衛門尉朝政と和田左衛門尉義盛が指導手助けをして差し上げました。それぞれ褒美に馬を与えられました。北条時政殿の指図提供です。

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