吾妻鏡入門第十八巻

建仁四年(元久元年)甲子(1204)二月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　つるがおか　おかぐら　れい　　ごと　　　　さきのだいぜんだいぶひろもとあそん　ほうへい　おんし　　　な
建仁四年(1204)二月小九日癸夘。�ﾘ。鶴岳の御神樂例の如し。　前大膳大夫廣元朝臣　奉幣の御使と爲す。

現代語建仁四年(1204)二月小九日癸卯。晴れです。鶴岡八幡宮へのお神楽の奉納は何時もの通りです。大江広元さんが幣を奉納する代参です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いせのくに　いんべぐんじ　しんしゆきつな　めしうど　　な　　　めしお　かれ　　　よしもりのうった　　　　よっ　　なり
建仁四年(1204)二月小十日甲辰。伊勢國員辨郡司進士�@行綱�A、囚人と爲し召置被る。義盛之訴へに依て也。

参考�@進士は、律令制で官吏登用試験合格者、合格者の文章生。
参考�A行綱は、建仁3年12月25日条で夜討人として手配されていた。元久1年(1204)5月8日に無罪。員部大領家綱の子。三重県いなべ市員弁町。

現代語建仁四年(1204)二月小十日甲辰。伊勢国の員部郡の郡長文章生行綱は、犯罪者「預かりめしうど」として預けられました。侍所軍事長官の和田義盛の訴えによります。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　 ゆいのうら　　 いでせし　たま　　　　ぐぶにん　えまのしろう　いか　すいかん　　きられ
建仁四年(1204)二月小十二日丙午。將軍家、由比濱へ出令め給ふ。供奉人江間四郎以下水干を着被る。

ある 　　　　のや　　　 ある 　　　 そや　なり
或ひは野箭�@。或ひは征箭�A也。

参考�@野箭は、小物狩猟用の鏃で穂先が短い。
参考�A征箭は、合戦用なので鏃が長い。

ほうじょうのごろう　わだのへいた　　　　たたらのしろう　　　はんがやつのしろう　　うんののこたろう　　もちづきのさぶろう　 すわのたいふ　　ふじさわのしろう　　あいこうのさぶろう
北條五郎、和田平太、多々良四郎、 榛谷四郎、 海野小太郎、望月三郎、 諏方大夫、藤澤四郎、愛甲三郎、

おのおの　こがさがけ　　とおがさがけ　まとら　　　い　　　　　さじき　　　をい　　ごらんあ
　各　小笠懸、遠笠懸の的等を射る。棧敷に於て御覽有り。

現代語建仁四年(1204)二月小十二日丙午。将軍実朝様は、由比ガ浜へお出になりました。お供には江間四郎北条義時様を始めとして水干を着ております。人によって狩猟用の矢や、戦闘用の矢を持っています。北条五郎時房・和田平太胤長・多々良四郎・榛谷四郎重朝・海野小太郎幸氏・望月三郎重隆・諏方大夫盛澄・藤沢二郎清親・愛甲三郎季隆などの弓の名人が、それぞれ小笠懸や遠笠懸などの的を射ました。臨時の観覧席桟敷でご覧になりました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほけどう　　　おんぶつじ　　どうし　　　まあまのぼうあじゃり　　　うんぬん
建仁四年(1204)二月小十三日丁未。法花堂の御佛事。導師は摩尼房阿闍梨と云々。

現代語建仁四年(1204)二月小十三日丁未。頼朝様の法華堂で月命日の法事です。指導僧は摩尼坊阿闍梨だそうです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょしょうえん　　しょむら　　 ひとつこといじょう　 うだいしょうけ　　おんときのれい　　まか　　　　　さた　さる　　べ　　 のむね
元久元年(1204)二月小廿日甲寅。諸庄園の所務等、一事以上、右大將家の御時之例に任せ、沙汰被る可き之旨、

えんしゅうげち せし　 たま　　　　うんぬん
遠州下知令め給ふと云々。

現代語元久元年(1204)二月小二十日甲寅。あちこちの荘園の年貢については、一か所たりとも頼朝様の時代の通りに処理するように、遠江守北条時政殿が命令を出しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あまみだいどころ　おんげきしゅう　　しぎょうさる
元久元年(1204)二月小廿一日乙夘。尼御臺所、 御逆修を始行被る。

現代語元久元年(1204)二月小二十一日乙卯。尼御台所政子様は、生きてるうちに死後の冥福を祈る仏事を始めました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　びんごのくに みつぎほん　ほうじょう　　ぢとう　　　　よもだのさこんしょうげん　　　さた　　　ちょうじ　　　　こくが　　　つけらる　　　うんぬん
元久元年(1204)二月小廿二日丙辰。備後國 御調本�@北條。 地頭の四方田左近將監の沙汰を停止し、國衙に付被ると云々。

えんしゅう　げち
遠州下知す。

参考�@御調本は、広島県尾道市御調町本。旧御調郡御調町本。

現代語元久元年(1204)二月小二十二日丙辰。備後国御調本北条(広島県尾道市)の地頭の四方田左近将監の支配を止めさせ、国衙の領地として任せるように、遠江守北条時政殿が命じました。

説明四方田の読みを当初「しもだ」としておりましたが、「奥州余目記録」の五人一揆結成の条で、「四方田」のよみに「シハウテン」と振り仮名がされている。とのご指摘を戴きましたので、「しほうでん」とします。そのご四方田さんから名字は「よもだ」との申し出に訂正した20120715

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　　えまのしろうてい　　とぎょ
元久元年(1204)二月小廿五日己未。將軍家、江間四郎亭へ渡御す。

現代語元久元年(1204)二月小二十五日己未。将軍実朝様は、江間四郎北条義時様の屋敷へお出かけです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きょう　　　おんげくしゅう　けちがんなり　 どうし　　　じゅふくじほうじょう
元久元年(1204)二月小廿八日壬戌。今日。御逆修の結願也。導師は壽福寺方丈�@。

参考�@方丈は、本来住職の住居で一丈四方の作りを指す。ここでは、方丈を寺の住職の代名詞として使っている。

現代語元久元年(1204)二月小二十八日壬戌。今日、尼御台所政子様の生きてるうちに死後の冥福を祈る仏事の満願の日です。指導僧は寿福寺の主葉上坊律師栄西です。

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