吾妻鏡入門第十八巻

元久三年丙寅(1206)二月大

〔四月廿七日爲建永元年(1206)〕

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おおゆきふ　　　つるがおかぐう　まつり　れい　 ごと
元久三年(1206)二月大四日乙夘。大雪降る。鶴岳宮の祭、例の如し。

ばん　　およ　　　しょうぐんけゆき　　み　　　ため　　なごえやまへん　ぎょしゅつ　　そうしゅう　さんそう　　　をい　　　　 わか　　 おんかいあ
晩に及び、將軍家雪を覽ん爲、名越山邊へ御出し、相州の山庄�@に於て、和歌の御會有り。

さがみのたろう　　しげたね　ともちから　そ　　　ざ　　 そうら
相摸太郎、重胤、朝親等其の座に候う。

参考�@相州の山庄は、鎌倉市浄明寺６１９。後の釈迦堂の地らしい。

現代語元久三年(1206)二月大四日乙卯。大雪が降りました。鶴岡八幡宮のお祭りは何時もの通りです。晩になって将軍実朝様は、雪見のため名越のあたりにお出かけです。相州義時の別荘で和歌の会をしました。相模太郎泰時・東平太重胤・内藤兵衛尉朝親が、お付き合いをしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　うまのこく　あまみだいどころ　つるがおかぐう　まい　 せし　　たま
元久三年(1206)二月大八日己未。�ﾘ。午尅。尼御臺所、 鶴岳宮へ參ら令め給ふ。

すんしゅう　みんぶのたいふゆきみついか　すうやから　 おんこし　うしろ　こしょう　　　　うんぬん
駿州、 民部大夫行光已下の數輩、御輿の後に扈從すと云々。

現代語元久三年(1206)二月大八日己未。晴れです。午の刻(正午頃)尼御台所政子様が鶴岡八幡宮へお参りです。駿州大内惟義・民部大夫二階堂行光以下の数人が輿の後ろにお供をしましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くも　　　　いちにちひゃくざ　　におうこう　　ごんぎょうすべ　 のよし　　いんぜんを しょこく　 くださる
元久三年(1206)二月大廿日辛未。陰り。一日百座の仁王講を勤行可き之由、院宣於諸國へ下被る。

かんとう　 ぶん　 きょう とうちゃく　　　　さきのだいぜんだいぶこれ　と　　ひら
關東の分、今日到着す。前大膳大夫之を執り啓く。

現代語元久三年(1206)二月大二十日辛未。曇りです。一日中百人の坊さんが仁王経を唱えるお勤めをするように、後鳥羽院からの命令書が諸国へ出されました。関東幕府の分の書き出しが今日到着しました。前大膳大夫大江広元がこの文書を取り扱いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　つるがおかぐう　をい　　　ひゃくざ　　におうこう　　　ひゃくざほんちぐ　　　おこな　らる　　　　ぐそう これ　　ほうし
元久三年(1206)二月大廿二日癸酉。�ﾘ。鶴岳宮に於て、百座の仁王講、百座本地供�@を行な被る。供僧之を奉仕す。

いんぜん　　くださる　　のうち　　　さがみのくにぶんなり　さきのだいぜんだいぶ　さかんんゆうどうらぐうじ　　そうら　これ　　ぶぎょう
院宣を下被る之内の、相摸國分也。 前大膳大夫、 屬入道等宮寺へ候ひ之を奉行す。

参考�@百座本地供は、百人の坊さん全部で本地仏の供養をする。お経を上げる。

現代語元久三年(1206)二月大二十二日癸酉。晴れです。鶴岡八幡宮で百人の坊さんによる仁王経と、百人の坊さんによる本地仏のお経をあげさせました。八幡宮に勤める坊さん達が勤めました。後鳥羽院からの命令書の内の、相模国の分です。前大膳大夫大江広元・属入道三善善信が鶴岡八幡宮へ出向いてこれを指図しました。

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