吾妻鏡入門第十八巻

建永二年丁卯(1207)四月大

十月廿五日改元爲承元々年

建永二年(1207)四月大十三日戊午。戌尅。將軍家御違例。

読下し                     いぬのこく しょうぐんけ  ごいれい
建永二年(1207)四月大十三日戊午。戌尅。將軍家、御違例@

参考@違例は、例に違うで、普通ではない。病気。

現代語建永二年(1207)四月大十三日戊午。戌の刻(午後八時頃)に、将軍実朝様が具合悪くなりました。

建永二年(1207)四月大十六日辛酉。御不例事。頗不快之間。於相州御亭。被行御祈。屈鶴岳宮供僧等。一日中被轉讀大般若經一部。

読下し                      ごふれい   こと  すこぶ ふかいのあいだ  そうしゅう おんてい をい   おいのり おこな らる
建永二年(1207)四月大十六日辛酉。御不例@の事、頗る不快之間、相州の御亭に於て、御祈を行は被る。

つるがおかぐう ぐそうら くっ      いちにちじう  だいはんにゃきょう いちぶ  てんどくされ
鶴岳宮の供僧等屈してA、一日中の 大般若經 一部を轉讀被るB

参考@不例は、例にあらずで、普通ではない。病気。
参考A
屈しては、跪いて。神や仏に対し。
参考B
轉讀は、は、略式の飛ばし読みのお経を上げる事で、お経を左右にアコーデオンのように片手から片手へ移しながらお経を唱える。摺り読みとも云う。反対にちゃんと読むのを「真読」と云う。

現代語建永二年(1207)四月大十六日辛酉。将軍実朝様の病気について、とても良くないので義時の屋敷でお祈りをさせました。鶴岡八幡宮の坊さん達が一日中続ける大般若経一巻を略読みさせました。

建永二年(1207)四月大廿日乙丑。快霽。將軍家御不例令復本給之間。有御沐浴。

読下し                   かいせい しょうぐんけ  ごふれい ふくほんせし たま のあいだ  おんもくよく あ
建永二年(1207)四月大廿日乙丑。快霽。將軍家の御不例復本@令め給ふ之間、御沐浴A有り。

参考@復本は、本に復るで、病気が治る。
参考A
沐浴は、穢れを洗い流すための儀式。沐は髪を洗い、浴は体を洗う。

現代語建永二年(1207)四月大二十日乙丑。快晴です。将軍実朝様の病気が治ったので、病の気を洗い流す行事の沐浴をしました。

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