吾妻鏡入門第十九巻

承元二年戊辰(1208)十一月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　いづものくに　つづきしゃ ごんのけんぎょうなら　　はふりし　　ごくうしょ べっとうしき　　　こと　　くらのたかもと　ぶにんさる　　べ　　　のむね
承元二年(1208)十一月小一日丁酉。出雲國 杵築社�@權檢校�A并びに祝師�B、御供所 別當職の事、内藏孝元補任被る可く之旨、

りょうけ　ぼうじょうさんぽんのもと　　おお　　つか　　さる
領家�C坊城三品之許へ仰せ遣は被る。

か　　　たかもと　 ちちすけただ　 うばっか　　 おんときたいこうあ　　 のかん　　くだん　しき　　ぶされをはんぬ　 そ　　 れい　 つ　　　　 いままたかく　 ごと　　　　うんぬん
彼の孝元が父資忠、右幕下�Dの御時大功有る之間、件の職に補被訖。　其の例に就き、今又此の如しと云々。

これ　　くは　　　　たかもと　　とうごくない すうかしょ　　 ぢとうしき　　はいりょう　　 うんぬん　　もろぶみ　 きよさだ　 たかなおら これ　 ぶぎょう
之に加へ、孝元、當國内數箇所の地頭職を拝領すと云々。師文、�C定、孝尚等之を奉行す。

参考�@杵築社は、出雲大社。
参考�A權檢校は、権のは「臨時の」とか「仮の」で所謂名誉職。検校は、ここでは寺社の事務を監督する職。
参考�B祝（はふり）は、神主・禰宜(ねぎ)に従って祭祀(さいし)をつかさどる神職。
参考�C領家は、荘園領主。荘園管理は、本所←領家←預所←下司←作人←小作人←在家の感じで下司と同等の位置に地頭が割り込んだが、規則性はない。
参考�D右幕下は、右大将で頼朝。

現代語承元二年(1208)十一月小一日丁酉。出雲国の出雲大社の事務監督官と神職、神社へのお供物を整える御供所の長について、内蔵孝元を任命するように上級荘園主の坊城三品（三位）のところへ伝えさせました。その孝元の父の資忠は、頼朝様の時代に大きな手柄があったのでその職務に任命されました。その例にのっとり、今またこのようにしましたそうな。そればかりか、孝元に出雲の国の中の数か所の地頭職を与えましたとさ。師文・図書允清定・筑前三郎孝尚がこれを担当します。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　つるがおかぐう　　おかぐら　　 ほうへい　おんし　　さきのだいぜんだいぶひろもとあそんなり
承元二年(1208)十一月小七日戊寅。鶴岳宮の御神樂。奉幣の御使は前大膳大夫廣元朝臣也。

現代語承元二年(1208)十一月小七日戊寅。鶴岡八幡宮のお神楽奉納です。御幣を捧げる代参は大江広元です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　めしうど かしわぎのごろういえつぐ　だん　　さだつぐ　ひえしゃ　　みょうねん　　さつきえ　　あげうま　　やく　　ひとたり
承元二年(1208)十一月小十四日乙酉。�ﾘ。囚人 柏木五郎家次 が男、貞次 日吉社の明年の五月會に馬上�@の役の人爲。

しか　　　　ちちの　ざいか　　なだ　 らる　　　　かく　 やく　　したが　べ　　　のよし　　しゃけ　しゃすに　うれ　　もう
而るに父之罪科で宥め被る。此の役に從う可き之由、社家社司于愁い申す。

また　　げじょうを　かんじゅ　　ささ　　　　のかん　　これ　　と　　　もうさる
又、解状於貫首に捧げる之間、之を執り申被る。

よっ　　しんじ　　　ゆう　　られ　　たちま　こうめんさる　　　ひろもとあそんぶぎょう　　な　　　　 きょうこうなお　　ふぎ　　あらはさば　さだ　　　 こうかいすべ　のおもむき　　おお　　ふく　　らる　　　　うんぬん
仍て神事に優ぜ被、忽ち厚免被る。廣元朝臣奉行と爲し、向後猶、不義を見者、定めて後悔可き之趣、 仰せ含め被ると云々。

参考�@馬上（あげうま）は、馬飾りを着け着飾った者が乗る。馬長（あげうま）。

現代語承元二年(1208)十一月小十四日乙酉。晴れです。囚人の柏木五郎家次の息子の貞次は、日吉大社の来年の端午の節句のお祭りに着飾った馬に乗る役なのです。ところが父の罪によって外されました。この役をやらせたいと神社の関係者が嘆いております。又、上申書を事務長に出したので、取り次いできました。そこで、神事と云うことなのですぐに許されました。大江広元が担当して、今後なおも罪を犯せば、さぞかし後悔するような羽目に陥るからなと、よくよく云い聞かせましたとさ。

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