吾妻鏡入門第十九巻

承元三年己巳(1209)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれかぜしずか　ごしょ　しんぎょうえれい　 ごと　　　　どうし　　ほっきょうりゅうせん　　しょうぐんけ　しゅつご
承元三年(1209)正月大六日庚子。天�ﾘ風靜。御所の心經會例の如し。導師は法橋隆宣。 將軍家、出御。

そ　　　ご　　　わだのへいたたねなが　　もちづきのさぶろうしげたか　　てしまのたろうなにがし　　ちくごのろくろうともなお　　あがつまのしろうすけみつ
其の後、和田平太胤長、　望月三郎重隆、 手嶋太郎ゝゝ、 筑後六郎知尚、　吾妻四郎助光

 いげ　　　　いて　　　めされ　　おんまとはじめあ　　　　　さえもんのじょうよしもり　　これ　　ぶぎょう
已下の射手を召被、御的始有り。左衛門尉義盛、之を奉行す。

現代語承元三年(1209)正月大六日庚子。空は晴れて風も静かです。御所で今年初めて般若心経を唱える会です。指導僧は法橋隆宣。将軍実朝様もお出ましです。その後、和田平太胤長・望月三郎重隆・手島太郎何某・筑後六郎八田知尚・吾妻四郎助光を始めとする射手を呼んで、今年初めの弓矢を討つ的始めの行事がありました。和田左衛門尉義盛が指揮担当しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　つるがおかはちまんぐう　　をい　　ねんしゅ　　ごほうへい あ
承元三年(1209)正月大九日癸夘。�ﾘ。將軍家、 鶴岳八幡宮 に於て年首の御奉幣有り。

おんし　　　　とおとうみのかみちかひろ　きょうくようののち　　せぶつを　ぐそう　　　ひかれ　　　 みんぶのたいふゆきみつ　これ　　　さた
御使は、 遠江守親廣�@。經供養之後、施物於供僧に引被る。民部大夫行光、之を沙汰す。

参考�@遠江守親廣は、大江広元の子で源通親へ養子。

現代語承元三年(1209)正月大九日癸卯。晴れです。将軍実朝様が、鶴岡八幡宮で年始の御幣を捧げる式典がありました。代参は遠江守源親広です。お経を上げた後、お布施を坊さん達に与えました。民部大夫二階堂行光が手配しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　じんぐじ はじ　　　　しゅじょう　　おこ　　られ　　みんぶのじょうやすとし　ぶぎょう　 な
承元三年(1209)正月大十二日丙午。�ﾘ。神宮寺始めて修正�@を行は被る。民部丞康俊、奉行を爲す。

現代語承元三年(1209)正月大十二日丙午。晴れです。鶴岡八幡宮内の神社を守る寺の神宮寺で初めてお正月の法会を行いました。民部丞三善町野康俊が担当しました。

説明�@修正は、修正月会。修正会とも呼ばれ、一月一日から十五日ごろまでにつとめられる、お正月の法会(ほうえ)(法要)のことです。 「修正月会」の略だともいわれ、平安時代に一般化したと考えられています。新年を迎えるにあ たって、前年の罪禍(ざいか)を悔(く)いあらため、新しい年の門出を祝う行事でもあります 。仏事百科より。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じんぐうじ しゅじょう みっかび　　へ　　　きょう けちがん　　　 おにばしり　はじ
承元三年(1209)正月大十四日戊申。神宮寺修正三箇日を經、今日結願す。鬼走�@を始める。

参考�@鬼走は、古代中国から伝えられた達陀(ダッタン)の行法らしい。現在でも滋賀県湖南市の長寿寺と常楽寺で一月中旬に行われる伝統行事。住職の読経が響くなか、本堂内を赤鬼と青鬼に扮した数え年十五の男子が槍や太刀を持って走り回り、悪霊追放や家内安全などを祈願する。奈良時代に始まったといわれ、古くは大人社会の仲間入りの儀式であった。

現代語承元三年(1209)正月大十四日戊申。鶴岡八幡宮内の神社を守る寺の神宮寺のお正月の法会は、三日間続けて終わりました。鬼走りの行法を始めました。

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