吾妻鏡入門第十九巻

承元四年庚午(1210)九月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　つるがおか　まつり　れい　ごと　　　 そうしゅう　　ほうへい　 おんし　　な　　　さんぐう　　たま
承元四年(1210)九月大九日甲午。�ﾘ。鶴岡の祭、例の如し。相州、奉幣の御使と爲し參宮し給ふ。

現代語承元四年(1210)九月大九日甲午。晴れです。鶴岡八幡宮の重陽の節句祭は何時もの通りです。相州義時様が幣を捧げる代参としてお参りをしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こあしかがのたろうただつな　　いりょう　　こうづけのくに　　さんざいみょうでんら　　こ　　 かんこれ　 たず　 いだ　　　しょう
承元四年(1210)九月大十一日丙申。故足利又太郎忠綱�@が遺領、 上野國 の散在名田等、此の間之を尋ね出すと稱し、

あだちのくろううえもんのじょうかげもり　 ちゅうしんせし　　　　よっ　　しんぢとう　　　ぶ さる
安達九郎右衛門尉景盛�A、注進令む。仍て新地頭を補被る。

参考�@足利又太郎忠綱は、藤性足利氏の足利太郎俊綱の長男（太郎の太郎は又太郎、又は小太郎）。
参考�A安達九郎右衛門尉景盛は、藤九郎盛長の嫡子。上野国の守護。

現代語承元四年(1210)九月大十一日丙申。藤性足利氏の足利又太郎忠綱の元領地が、上野国に散在している田があり、これを調査するといって守護の安達九郎右衛門尉景盛が書き出し提出しました。そこで新しく地頭を任命しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ばくふ　　をい　　 わか　　　おんかいあ　　　　とおとうみのかみ　やまとのぜんじ　　ないとううまのじょうら　ざ　　そうら　　　　うんぬん
承元四年(1210)九月大十三日丁酉。幕府に於て和歌の御會有り。 遠江守、 大和前司、 内藤馬允�@等座に候うと云々。

参考�@内藤馬允は、実朝のお気に入りで、藤原定家の門弟。承元三年七月五日条。

現代語承元四年(1210)九月大十三日丁酉。幕府の御所で和歌の会がありました。源遠江守親廣・大和前司山田重弘・内藤右馬允知親が参加しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くまの　　　とりいぜんに　　　ちぎょう　　　　ぢとうしき　　　ようし　　　じょうぶ　　　　こと　　こしょうぐん　　おんさりじょうあ　　　のうえ
承元四年(1210)九月大十四日戊戌。熊野の鳥居禪尼�@が知行する地頭職を養子に讓補する事、故將軍の御避状有る之上、

　そう　　　およばずのよし　　おお　 いださる　　　 ひろもとあそんこれ　ぶぎょう
左右に及不之由、仰せ出被る。廣元朝臣之を奉行す。

参考�@鳥居禪尼は、義朝の妹「田鶴御前」。

現代語承元四年(1210)九月大十四日戊戌。熊野の鳥居禅尼が支配している地頭職を養子に譲渡することについては、頼朝様の分け与えた書面があるので、検討する必要はないと申されましたので、大江広元が手続きを担当しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきのさえもんのじょうひろつな　 おんうまいっぴき　 しん　　　 さくじつ　　おうみのくによ　　とうらい
承元四年(1210)九月大廿日甲辰。佐々木左衛門尉廣綱�@、御馬一疋を進ず。昨日、近江國自り到來す。

きょう　まり　　おんつぼ　 をい　　ごらん　あ　　　　 よしむら　 あず　　らる　　　　うんぬん
今日鞠の御壷に於て御覽有り。義村�Aに預け被ると云々。

参考�@佐々木左衛門尉廣綱は、定綱の長男で在京御家人。近江国守護。
参考�A義村に預けは、三浦義村は御厩別当かもしれない。

現代語承元四年(1210)九月大二十日甲辰。佐々木左衛門尉廣綱が、馬を一頭献上してきました。昨日近江国から到着しました。今日、蹴鞠の小庭でご覧になり、三浦平六兵衛尉義村に預けられましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごほんぞんいつじもんじゅぞう　　さら　　くよう　　　と　　　らる　　　　どうし　　じゅふくじほうじょう
承元四年(1210)九月大廿五日己酉。御本尊五字文殊像�@を更に供養を遂げ被る。導師は壽福寺方丈。

　こ　　ぎ　ごじうど　おこなわ　　べ　　　のよし　　ごがん　あ　　　　　うんぬん
此の儀五十度行被る可き之由、御願有りと云々。

現代語承元四年(1210)九月大二十五日己酉。将軍実朝様の守り本尊の五字文殊像の法事をしました。指導僧は寿福寺の住職葉上坊栄西です。この法事を五十回はしなくちゃと願をたてられましたとさ。

説明�@五字文殊像は、十八巻元久二年五月二十五日に御所で五字文殊の供養をしている。五字文殊は、文殊にその姿は一、五、六、八髻の文殊があり、それぞれの真言の字数により一、五、六、八字文殊と称される。一字文殊は増益、五字文殊は敬愛、六字文殊は調伏、八字文殊は息災の修法の本尊として迎えられる。HP「ほとけ」から。文殊祭りは二十五日らしい。そういえば、大船の常楽寺の文殊祭も１月２５日だ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　いぬのこく　せいほう てんいちえん だいさんせい　かたわら　きせい　　み
承元四年(1210)九月大卅日乙夘。�ﾘ。戌尅。西方 天市垣�@第三星の 傍に奇星を見る。

ひかりとうほう　さ　　　　　さんじゃくよ　　ぼうきこと　　さか　　　　ちょういちばか　じょう　　　こ　　ほしほんもん　 ごと　　　　ば　　 すいせいたるの よし　　もう　　のやからあ　　　　うんぬん
光東方を指す。三尺餘。芒氣殊に盛ん。長一許り丈。 此の星本文の如くん者、彗星爲之由、 申す之輩有りと云々。

現代語承元四年(1210)九月大三十日乙卯。晴れです。戌の刻（午後八時頃）西の三分の一にある三番目の星の脇に奇妙な星が見えました。箒は東へたなびいています。星は三尺(90cm)もあり、とても明るく、箒は一丈(3m)ほどです。この星が天文学通りなら彗星であろうと云う者もおったそうな。

説明�@天市垣（てんいちえん）とは、古代中国天文学において天球上を3区画に分けた三垣の下垣。房宿・心宿・尾宿・箕宿・斗宿より北の区域。あるいはその主体となった星官（星座）のことを指す場合もある。ウィキペディアから

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