吾妻鏡入門第十九巻

建暦元年辛未(1211)五月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　みんぶのじょうやすとし　いがのじろうみつむねら ぶぎょう　　な
建暦元年(1211)五月小四日乙夘。�ﾘ。 民部丞康俊、 伊賀次郎光宗等奉行と爲し、

しんごしょ　　しょうぶ　　ふかれ　　べ　　　　　いな　　　　おんみょうどうら　　たず　 らる　 のところ　　しんじょ　いへど　　　　ごいし　　　のちたらば　　 もっと　これ　 ふかれ　　　べ
新御所に昌蒲を葺被る可きや否や、陰陽道等に尋ね被る之處、新所と雖も、御移徙の後爲者、尤も之を葺被る可し。

いぜん　　そ　　 はばか　あ　　　　　うんぬん
以前は其の憚り有りと云々。

現代語建暦元年(1211)五月小四日乙卯。晴れです。民部丞町野康俊と伊賀次郎光宗が指揮担当して、新しい御所に菖蒲を飾るかどうか、陰陽師の連中に聞いたところ、新しい御所だからと云っても、引っ越し後ならばちゃんとこれを飾るべきでしょう。もし前ならばやめておくべきでしょうだとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぶんじごねん　　　こばっかしょうぐんおうしゅう　　ごげこうの　とき　　ひらいずみ　たかや　　をい
建暦元年(1211)五月小十日辛酉。文治五年、故幕下將軍奥州へ御下向之時、平泉の高屋に於て、

めしと　らる　ところの　やすひら　ふそ だいだい　ちょうほうは　　か　　　とき　ぐぶ の すくろうに ぶんぱいされをはんぬ
召取被る所之泰衡が父祖代々の重寳者、彼の時供奉之宿老于分配被訖。

しか　　　　そ　　 いえいえに かく　　のよし　　しょうぐんけこれ　　き　　　　　め　　　　　つ　　　　　よしもり　　おお　　　　めしいださる
而して其の家々于秘す之由、將軍家之を聞こし食すに就き、義盛に仰せて召出被る。

おお　 もっ　　ふんしつ　　　うんぬん　しょうしょうしん　あ　　　　 ぶん　　ごらん　　へ　　　ののち　　もと　　ぬし　　かえさる
多く以て紛失すと云々。少々進じ上げた分、御覽を經る之後、本の主に返被る。

そ　　　なか　　かさいのひょうえのじょうきよしげしん　　　ところの ぬはざる　かたびら　こと　　ごにゅうきょう　　うんぬん
其の中、　葛西兵衛尉�C重　進じる所之 縫不の 帷、殊に御入興と云々。

現代語建暦元年(1211)五月小十日辛酉。文治五年(1189)に亡き頼朝様が奥州へお下りになられた際に、平泉の高屋で押収してきた藤原泰衡の先祖代々の宝物は、その時にお供をしていた古い家来に配ってしまいました。しかし、それぞれの家に隠し持っていると将軍実朝様はお聞きになったので、和田義盛に命じて差し出させました。殆どは無くなってしまったんだそうな。少しですが提出された分をご覧になり、それぞれの持ち主へお返しなりました。その中で、葛西兵衛尉清重が提出した縫い目のない小袖に特に興味をもたれたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ひつじのこく ぢしん
建暦元年(1211)五月小十五日丙寅。 未尅 地震。

現代語建暦元年(1211)五月小十五日丙寅。未の刻(午後二時頃)地震です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　みだいどころ　いわどのかんのんどう　 ぎょさん　　　ぶしゅうこしょう　　　　うんぬん
建暦元年(1211)五月小十八日己巳。御臺所、岩殿觀音堂へ御參す。武州扈從すと云々。

現代語建暦元年(1211)五月小十八日己巳。将軍の奥さん坊門姫が、逗子の岩殿寺観音堂へお参りです。武州時房さんがお供をしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　おがさわらのみまき　　まきしと ぶぎょうにん みうらのへいろくひょうえのじょうよしむら　 だいかんけんかあ　　　　こと　　きょう　　さた　　　へらる
建暦元年(1211)五月小十九日庚午。小笠原御牧�@の々士与奉行人　三浦平六兵衛尉義村　が代官喧嘩有るの事、今日沙汰を經被る。

かく　　ごと　　　ぢげ　　 しきにん　 たい　　　　ぶぎょう　　しょう　　ほしいまま　ちょうぎょうせし　のかん　ややもすれ　けんか　 およ
此の如く地下の職人に對し、奉行と稱し、恣に　張行令む之間、 動ば 喧嘩に及ぶ。

ひと　　　 こうへい　 わす　　　　の いた　ところなり　　はや　 よしむら　 ぶぎょう　 あらた　　　べ　　　のよしおお　　いださる　　　 さはらのたろうひょうえのじょう　 つけらる　　　 うんぬん
偏へに公平を忘れる之致す所也。早く義村の奉行を改める可し之由仰せ出被る。佐原太郎兵衛尉に付被ると云々。

参考�@小笠原御牧は、甲斐国元櫛形町。現在の山梨県南アルプス市小笠原。

現代語建暦元年(1211)五月小十九日庚午。小笠原牧場の現地管理人の牧の司と、上位管理者奉行人の三浦平六兵衛尉義村の代官が喧嘩をしてるので、今日裁断がありました。このように現地の元々の管理責任者に対し、新規の上位管理者として好き勝手に支配するので喧嘩が起きたのです。上位管理者としては公平な統治を忘れた行いです。さっさと三浦平六兵衛尉義村の上位管理者職を解任するようにと、将軍実朝様はおっしゃられました。佐原太郎兵衛尉経連に処理を任せましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くも　　　つるがおか　まつり　　うこんたいしゅしょうげんちかひろ　しょうぐんけ　　おんし　　な　　　ほうへい
建暦元年(1211)五月小廿日辛未。陰り。鶴岳の祭。 右近大夫將監親廣、 將軍家の御使と爲し奉幣す。

現代語建暦元年(1211)五月小二十日辛未。曇りです。鶴岡八幡宮の祭りです。右近大夫将監源親広が将軍実朝様の代参として幣を捧げました。

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