吾妻鏡入門第二十巻

建暦二年壬申(1212)三月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しゅん　おんまりあ　　　べ　　　のよし　　きょう おお　　いでらる　　　　よっ　　　　ちんぜい　ひとびと　　およ　　　　　　さた
建暦二年(1212)三月小一日戊申。旬の御鞠有る可し之由、今日仰せ出被るに依て、鎭西の人々に及ぶまで沙汰す。

げいの たんぴ　 かえりみず　きょうぼう　 な　　　　うんぬん　　ぶしゅうぶぎょう　な　　　　 にんずう　 せいせんさる　　　 うんぬん
藝之堪否を顧不、競望を成すと云々。武州奉行と爲し、人數を�C撰被ると云々。

現代語建暦二年(1212)三月小一日戊申。桜の季節に合った蹴鞠の会をやりたいと、今日将軍実朝様は云いだしたので、九州の人々にまで伝わったので、持ってる腕の上手下手にこだわらず、蹴鞠大会の予選をしましたとさ。武州時房が指揮担当して、本番出演者の人数を選考しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さいう　ふ　　　　つるがおかぐう　いっさいきょうくよう　　しょうぐんけおんいで　　ゆうきのさえもんのじょうともみつ　ぎょけん　　も
建暦二年(1212)三月小三日庚戌。細雨下る。鶴岳宮の一切經供養。將軍家御出。　結城左衛門尉朝光、御釼を持つ。

しわだのへいたたねながちょうど　　か　　　　　うんぬん
和田平太胤長御調度を懸くと云々。

現代語建暦二年(1212)三月小三日庚戌。霧雨です。鶴岡八幡宮の上巳の節句の一切経をあげました。将軍実朝様もご出席です。結城左衛門尉朝光が太刀持ち、和田平太胤長が弓矢もちだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ばくふ　おんまりはじめなり　　しょうぐんけ　〔おんほい〕　　た　　　せし　　たま
建暦二年(1212)三月小六日癸丑。幕府の御鞠始也。 將軍家〔御布衣〕立た令め給ふ。

ぶしゅう　〔ときふさ〕　しょうさく　〔やすとき〕　しげたね　 とももり　　ともなお　いげ　これ　そうら
武州〔時房〕匠作〔泰時〕重胤、朝盛、朝直�@以下之に候う。

参考�@朝直は、時房の四男で後の大仏流。

現代語建暦二年(1212)三月小六日癸丑。幕府での蹴鞠の始業式です。将軍実朝様〔狩衣です〕が蹴鞠の輪に立たれ、武州時房・匠作泰時・東平太重胤・和田三郎朝盛・北条朝直以下がこれに付き合いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しょうぐんけ　　 みうらみさき　　　ごしょ　　　とぎょ　　　　あまみだいどころなら　　　みだいどころおな　　　ともな　せし　 たま
建暦二年(1212)三月小九日丙辰。將軍家、三浦三崎の御所�@へ渡御す。尼御臺所并びに御臺所同じく伴は令め給ふ。

そうしゅう　 ぶしゅう　　さきのだいぜんだいぶ　みなもとのうこんたいふしょうげん　いげ こしょう
相州、武州、 前大膳大夫、　源右近大夫將監�A以下扈從す。

つるがおかべっとう　　じどうら　　 あいぐ　　 さん　　　 せんちう　 をい　　もう　　　　ぶがく　　きょうらあ　　　　うんぬん
鶴岳別當、兒童等を相具し參じ、船中に於て儲け、舞樂の興等有りと云々。

参考�@三浦三崎の御所は、神奈川県三浦市に桜の御所(本瑞寺・三崎１丁目)、椿の御所(大椿寺・向ケ崎町)、桃の御所(見桃寺・白石町)と謂う。
参考�A源右近大夫將監は、左近将監で親廣。大江広元の子で源通親の養子。

現代語建暦二年(1212)三月小九日丙辰。将軍実朝様は、三浦三崎の御所へ行かれました。尼御台所政子様と坊門姫を一緒に連れて行きました。相州義時・武州時房・大江広元・源右近将監親廣以下がお供をしました。鶴岡八幡宮の筆頭坊主定暁が稚児たちを連れてきて、船の中へ設定して舞楽の舞を催しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 よ　　　い　　　　　みうら　よ　　　かえ　　せし　　たま　　　　うんぬん
建暦二年(1212)三月小十日丁巳。夜に入り。三浦自り還ら令め給ふと云々。

現代語建暦二年(1212)三月小十日丁巳。夜になって、三浦からお帰りになられましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 まえはまへん　　やち　　　な　　　　　　ごけにんら　　　わ　　　たま
建暦二年(1212)三月小十六日癸亥。前濱邊を屋地と爲し、御家人等に分け賜はる。

いはゆる　つちやだいがくのすけ　わだのしんさえもんのじょう　　さかいのへいじひょうえのじょう　はたののじろう　　まきのこたろう　　ながえのしろう　　まつばのじろうら なり
所謂、 土屋大學助、和田新左衛門尉、 境平次兵衛尉、 波多野次郎、牧小太郎、長江四郎、松葉次郎等也。

せいとしょのじょう　これ　ぶぎょう
�C圖書允、之を奉行す。

現代語建暦二年(1212)三月小十六日癸亥。一の鳥居から南の砂山を宅地として、御家人達に分け与えました。その人達は、土屋大学助義清・和田新左衛門尉常盛・境平次兵衛尉常秀・波多野次郎経朝・牧小太郎・長江四郎明義・松葉次郎達です。清原図書允清定が担当します。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 これよし　 よりとき　　ひろつなら 　ざいきょうほうこうのつとめ　よっ　　おのおの　いっそん　 ぢとうしき　　はいりょう　　　うんぬん
建暦二年(1212)三月小廿日丁夘。惟義、頼時、廣綱等、在京奉公之勞に依て、各、一村の地頭職を拝領すと云々。

ひろもとあそん ぶぎょう　　な　　　　　うんぬん
廣元朝臣奉行を爲すと云々。

現代語建暦二年(1212)三月小二十日丁卯。相模守大内惟義・村上左衛門尉頼時・佐々木左衛門尉廣綱などは、京都在駐朝廷勤務の功労によって、それぞれに一村の地頭職を貰いました。大江広元さんが担当しましたとさ。

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