吾妻鏡入門第二十巻

建暦二年壬申(1212)十二月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　いがのかみともみつ ほうへい　　おんし　　な　　　　　くまのさん　　しんぱつ　　　　か　　　やま　　をい　　えつねんすべ　　　　うんぬん
建暦二年(1212)十二月大二日甲戌。�ﾘ。 伊賀守朝光 奉幣の御使と爲し、熊野山へ進發す。彼の山に於て越年可しと云々。

現代語建暦二年(1212)十二月大二日甲戌。晴れです。伊賀守朝光は、幣を捧げる代参として、熊野権現へ出発しました。向こうで年越しをするそうです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きょうと　　　ししゃさんちゃく　　　さんぬ　じういちにち　ぞうかんいん　　かどかど　たてらる　　　うんぬん
建暦二年(1212)十二月大十一日癸未。京都の使者參着す。去る 十一日 造閑院に門々を立被ると云々。

現代語建暦二年(1212)十二月大十一日癸未。京都からの使いが到着しました。先達て二日後鳥羽上皇の隠居所作事でいくつかの門を建てられたそうです。

参考去十一日は、黒板勝美先生は二日の間違いではないかとしているので、それに従う。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くもり　　きょうと　　ししゃさんぬ　　じういちにち　　じもく　　ききがき　　じさん　　　　しょうぐんけ　じゅにい　　じょ　　たま
建暦二年(1212)十二月大廿一日癸巳。陰。京都の使者去る十一日の除目の聞書を持參す。將軍家從二位に敍し給ふ。

　　じじゅうきよふさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さきょうごんのたいふちかつな
　侍從�C房　　　　　　　　　　　　　左京權大夫親綱

　　しゅりごんのたいふどうながつね　　　　　　　　　　　　　　　　　じゅにい　さね　　　　〔とも〕
　修理權大夫同長經　　　　　　　　　從二位實｜〔朝〕

　　じゅしいげきよざね　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうごいげとうのみつとし
　從四位下�C實　　　　　　　　　　　正五位下藤光俊

　　どうたかみち　〔しゅり〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 じゅごいじょうとうのちかやす
　同孝通〔修理〕　　　　　　　　　　 從五位上藤親康

現代語建暦二年(1212)十二月大二十一日癸巳。曇り。京都からの使者が先達て十一日の人事異動の文書を持ってきました。将軍実朝様は従二位に任命されました。

　侍従清房　　　　　左京権大夫親綱
　修理権大夫同長経　従二位実朝
　従四位下清実　　　正五位下藤原光俊
　同孝通〔修理〕　　従五位上藤原親康

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　 ぶつめいきょう　れいせし　たま
建暦二年(1212)十二月大廿四日丙申。將軍家、佛名經を礼令め給ふ。

現代語建暦二年(1212)十二月大二十四日丙申。将軍実朝様は、諸仏の名号を読み上げる法会を行いました。

参考仏名経は、仏教経典。１２巻。菩提流支訳。三世十方の諸仏の名号を列挙してもの。Goo電子辞典から

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　いぬのこく　　かまくらちういささ　そうどう　　　　どうろ　そ　　ゆえな　　　こそう　　　　　これ　 さいまつのそうげき　　あらず
建暦二年(1212)十二月大廿八日庚子。�ﾘ。戌尅。 鎌倉中聊か騒動す。道路其の故無く鼓騒す。是、歳末之忩劇�@に非。

むほん　　はっ　　　やからあ　　 か　のよし　　そ　うたがいあ　　　　うんぬん
謀叛を發する輩有る歟之由、其の疑有りと云々。

参考�@忩劇は、怱劇とも書き、非常にあわただしい事。忙しくて落ち着かないこと。

現代語建暦二年(1212)十二月大二十八日庚子。晴れです。戌の刻(午後八時頃)鎌倉中で大騒ぎがありました。道路が理由もなく振動して騒ぎ立てています。これは年末のあわただしさでもありません。謀反人が出たのかとの疑いもあるらしいです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　　こうばっか　　　　 ほけどう　 いげ　　　しょどう　 じゅんれい　たま
建暦二年(1212)十二月大廿九日辛丑。將軍家、故右幕下の法花堂以下、諸堂に巡礼し給ふ。

そうしゅう　とおとうみうこんのたいふしょうげんら　ぐぶ　　　　おかえ　　のとき　　さきのだいぜんだいぶ　てい　 い　　　たま　　　　うんぬん
相州、遠江右近大夫將監等供奉す。御歸り之時、前大膳大夫の第に入り御うと云々。

現代語建暦二年(1212)十二月大二十九日辛丑。将軍実朝様は、頼朝様の法華堂を始めとする諸寺を廻りました。相州義時・遠江右近大夫将監源親広・などがお供をしました。帰りがけに大江広元の屋敷に立ち寄りましたとさ。

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