吾妻鏡入門第廿二巻

建保三年乙亥(1215)正月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　つるがおかはちまん　ごしゃさん　おくるま　　もち　 らる
建保三年(1215)正月小一日辛酉。�ﾘ。將軍家、鶴岳八幡に御社參。御車を用い被る。

ちくごのさえもんのじょともしげ 　ぎょけん　 えき
筑後左衛門尉朝重、御劔を役す。

そうしゅう　ぶしゅう　　しゅりのすけ　　とおとうみのかみちかひろ　いがのかみともみつ　ちくごのかみありのり　　さえもんたいふみつかず　　さこんたいふともちか
相州、武州、修理亮、　遠江守親廣、　伊賀守朝光、 筑後守有範、左衛門大夫光員、左近大夫朝親、

さこんたいふちかざね ら　ぐぶ
左近大夫親實等供奉す。

現代語建保三年(1215)正月小一日辛酉。晴れです。将軍実朝様は鶴岡八幡宮へお参りです。牛車を使いました。筑後左衛門尉八田知重が刀持ちです。相州義時さん・武州時房さん・修理亮泰時さん・遠江守源親広・伊賀守朝光・筑後守五条有範・左衛門大夫加藤太光員・左近大夫美作朝親・左近大夫三条親実などがお供をしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけまた　つるがおかぐう　もう　 せし　 たま
建保三年(1215)正月小七日丁夘。�ﾘ。將軍家又、鶴岳宮へ詣で令め給ふ。

現代語建保三年(1215)正月小七日丁卯。将軍実朝様は、又もや鶴岡八幡宮へお参りをしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　いずのくに　　　　ひきゃくさん　　　　もう　　　　い
建保三年(1215)正月小八日戊辰。霽。伊豆國から飛脚參じ、申して云はく。

さんぬ　むいかいぬのこく　にゅうどうとおとうみのかみじゅごいげたいらのあそん〔とししちじうはち〕　ほうじょうぐん　をい　 そっきょ　　　　ひごろはれもの　 わずら　たま　　　うんぬん
去る六日 戌尅、　入道遠江守從五位下平朝臣　〔年七十八〕北條郡に於て卒去す。日來腫物を煩ひ給ふと云々。

現代語建保三年(1215)正月小八日戊辰。晴れました。伊豆国から伝令がやって来て云うのには、「先日の六日午後八時頃に、出家をしている入道前遠江守従五位下平朝臣(時政)〔年は八十七〕が北条郡で亡くなりました。最近、できものに悩まされていました。」とさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 わかみやつじ　 じんかしょうぼう
建保三年(1215)正月小十一日辛未。�ﾘ。若宮辻�@の人家燒亡す。

よえん　　とうのうえもんのじょうかげもり　しゅくしょ　およ　　　　とりいぬ　りょうときのあいだ　にじうよちょう ことごと　かいじん　　な
餘焔、藤右衛門尉景盛の宿所に及び、酉戌の兩時之間に、廿餘町�A悉く灰燼と爲す。

参考�@若宮辻は、不明。もしかしたら若宮は元八幡なら辻の藥師のあたりから西へヵ？なら、甘縄の景盛屋敷へも行くか？
参考�A二十余町は、距離だと２ｋｍ以上にもなる。

現代語建保三年(1215)正月小十一日辛未。晴れです。若宮の辻で火事がありました。飛び火が安達右衛門尉景盛の宿舎にまで類焼し、午後六時から八時頃までの間に、二十余町が全て灰になりました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぼうもんないふ　　おんし　 みだいどころ　おんかたに　とうらい
建保三年(1215)正月小廿日庚辰。坊門内府が御使、御臺所の御方于到來す。

これ　　きた　　にがつ　そかい　　と　　 せし　 たま　　べ　　　のよしなり
是、來る二月素懷を遂げ令め給ふ可き之由也。

また　　くだん　ししゃ　もう　　　　い
亦、件の使者申して云はく。

きょねんじうにがつにじうくにち　ばんけい　でんじょう　をい　くろうどかげゆのすけたいらのむねなお　と　ちうぐうだいしんとうのかねたか　とうじょう　　お
去年十二月廿九日の晩景、殿上に於て藏人勘解由�@次官平宗直 与　中宮大進藤兼隆　鬪諍を起こす。

だいしん　すけ　　う　　　　　よっ　　よくじつみそか　　かねたか とさのくに　 はいるされ　　　さんぎさだいえきょう　かたなし　 まい　　　しょういん　おこなはれ　　　うんぬん
大進次官を打つ。仍て翌日卅日、兼隆土佐國へ配流被る。參議定家卿 結政�Aに參り、請印を行被ると云々。

現代語建保三年(1215)正月小二十日庚辰。坊門内府忠清さんの使いが将軍奥さんの坊門姫のところへやってきました。これは、来月二月に出家をする予定だとのことです。又、その使いが言うのには、去年の十二月二十九日の夕方に、朝廷内の建物の中で、蔵人勘解由次官平宗直と中宮大進藤原兼隆が喧嘩を起こしました。大進藤原兼隆が勘解由次官平宗を殴りました。それで翌日、兼隆は土佐へ流罪になりました。参議藤原定家さんは、政務書類処理役所にいって、公文書に公印を押しましたとさ。

参考�@勘解由は、勘解由使の略で、平安初期、主に国司交代の際、事務引き継ぎを監督するために置かれた令外(りようげ)の官。新任者が前任者に交付する解由状を審査した。Goo電子辞書から
参考�A結政は、結政所の略。大内裏の外記庁(げきのちよう)の南にあって、参議・弁・少納言以下が参集し、政務書類を処理した役所。Goo電子辞書から

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 じぶつどう　　をい　　　　もんじゅぞう　　くようさる　　　　　 どうし　　ぎょうゆう　　うんぬん
建保三年(1215)正月小廿五日乙酉。持佛堂に於て、文殊像を供養被る。導師は行勇と云々。

現代語建保三年(1215)正月小二十五日乙酉。将軍実朝様のお守りの仏様を祀るお堂で梵珠菩薩像を拝む儀式をしました。指導僧は荘厳房退耕行勇だそうな。

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