吾妻鏡入門第廿二巻

建保三年乙亥(1215)八月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　いささ　　ごふれいのあいだ　　ごしょ　　をい　　おいのり　おこな　られ
建保三年(1215)八月小十日丁酉。�ﾘ。將軍家、聊か御不例�@之間、御所に於て御祈を行は被る。

だいかんもつ　のぶかた げつようさい　ほうし
大監物�A宣賢 月曜祭�Bを奉仕す。

参考�@御不例は、例にあらずで病気。
参考�A大監物は、朝廷の出納監査職の上席。
参考�B月曜祭は、九曜星のひとつ。

現代語建保三年(1215)八月小十日丁酉。晴れです。将軍実朝様が、多少具合が悪いので、御所で病払いの祈祷を行いました。大監物安陪宣賢が星巡りのお祓いをしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ねのこく　　げっしょく　 かいき　　しょうげん
建保三年(1215)八月小十四日辛丑。子尅。月蝕。皆既に正見す。

現代語建保三年(1215)八月小十四日辛丑。夜中の零時頃に月食です。皆既月食がちゃんと現れました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　つるがおか　ほうじょうえ　しょうぐんけ　　おんいでれい　ごと　　　ともみつぎょけん　 えき
建保三年(1215)八月小十五日壬寅。�ﾘ。鶴岳の放生會。將軍家の御出例の如し。朝光御劍を役す。

かとうしんさえもんのじょうかげなが　ごちょうど　 か
加藤新左衛門尉景長御調度を懸く。

現代語建保三年(1215)八月小十五日壬寅。晴れです。鶴岡八幡宮で生き物を放して贖罪する儀式の放生会です。将軍実朝様の出席は何時もの通りです。結城左衛門尉朝光が太刀持ちです。加藤新左衛門尉景長が弓担ぎです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　きょう　ごさんぐうに　ぎ　な　　　　　　ばば　　　さじき　　をい　　　　　やぶさめ　　 み　　　　さきのだいぜんだいぶ ほうへい　おんしたり
建保三年(1215)八月小十六日癸卯。�ﾘ。今日御參宮之儀無し。馬塲の棧敷に於て、流鏑馬を覽る。前大膳大夫 奉幣の御使爲。

現代語建保三年(1215)八月小十六日癸卯。晴れです。今日のお参りは無しですが、流鏑馬馬場の仮設見物席で流鏑馬を見ました。大江広元さんが代参です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ははな　あめ　うまのこく おおかぜ　つるがおかはちまんぐう　　とりい　〔まえはま〕　てんとう
建保三年(1215)八月小十八日乙巳。甚だ雨。午尅 大風。　鶴岡八幡宮の　鳥居〔前濱〕顛倒す。

現代語建保三年(1215)八月小十八日乙巳。土砂降りです。昼頃になって大風が吹いて、鶴岡八幡宮の鳥居〔前浜の分〕が倒れました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くも　　　　ぢしん
建保三年(1215)八月小十九日丙午。陰り。地震矣。

現代語建保三年(1215)八月小十九日丙午。曇りです。地震だ―！

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 みのこく　　さぎ　　ごしょ　　 にし　さむらいの　うえ　　あつ　　　　　　ひつじのこくぢしん　　うんぬん
建保三年(1215)八月小廿一日戊申。�ﾘ。巳尅。鷺、御所の西の　侍　之上に集まる。未尅地震と云々。

現代語建保三年(1215)八月小二十一日戊申。晴れです。午前十時頃、鷺が御所の西の侍詰所の屋根に集まりました。午後二時頃地震だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 ぢしん　　さぎ　　け　　　こと　 おんうら　 おこな　られ　のところ　 ちょうへんのよしこれ　 もう
建保三年(1215)八月小廿二日己酉。霽。地震、鷺の恠の事、御占を行は被る之處、重變之由之を申す。

よっ　　ごしょ　　　さ　　　　　そうしゅう　 おんてい　い　　　たま　　　 のぶつなぎょけん　も　　　　てい　あるじ　たしょ　　うつられ　　　　うんぬん
仍て御所を去り、相州の御亭に入り御う。信綱御劔を持つ。亭の主 他所へ移被ると云々。

現代語建保三年(1215)八月小二十二日己酉。晴れました。地震だの鷺だのの不思議な現象を占わせたところ、大事が怒りそうだと云ってます。そこで、御所から出て義時さんの屋敷へ移りました。佐々木左近将監信綱が太刀持ちです。屋敷の主は将軍に家を空け渡して、他へ移りましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 ちかもと　やすさだ　 のりかた いげ　　おんみょうじら　　　ごしょ　　をい　　ひゃっけさい　　ほうし
建保三年(1215)八月小廿五日壬子。�ﾘ。親職、泰貞、宣賢已下の陰陽師等、御所に於て百恠祭を奉仕す。

おんし　　いがのたろうさえもんのじょうみつすえ　　ぶぎょう　としょのじょうきよさだ　　これさぎ　　け　　　よっ　　なり
御使は伊賀太郎左衛門尉光季。奉行は圖書允�C定。 是鷺の恠に依て也。

現代語建保三年(1215)八月小二十五日壬子。晴れです。安陪親職・安陪泰貞・安陪宣賢以下の陰陽師が御所で諸種の怪異を払うための百怪祭を行いました。代参は伊賀太郎左衛門尉光季。担当は清原図書允清定。これは鷺の怪異によるものです。

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