吾妻鏡入門第廿五巻

承久三年辛巳(1221)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　しゅうじつかぜはげ　　ばんとう　　およ　　　にはか　らいめいあめふ
承久三年(1221)正月大十日乙未。�ﾘ。終日風烈し。晩頭に及び、俄に雷鳴雨降る。

現代語承久三年(1221)正月大十日乙未。晴れです。一日中強風です。夜の口になって急に雷様が鳴り雨が降りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うすゆきふ　　　　さんぬ　ふゆつい　ふらず　　 はつゆき　いひ　 べ　　　か
承久三年(1221)正月大十一日丙申。薄雪降る。去る冬遂に不降。初雪と謂つ可き歟。

現代語承久三年(1221)正月大十一日丙申。薄雪が降りました。去年の十月〜十二月の冬はついに降らなかったので、初雪と云えるでしょう。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さんぬ　とおか　　 らいめい　 へん　 よっ　　　　きとう　ら　　 しぎょう
承久三年(1221)正月大廿二日丁未。去る十日の雷鳴の變に依て、祈祷等を始行す。

てんちさいへんさい　やすさだ　　さんまんろくせんじんさい　はれよし　　ぞくしょうさい　ちかもと　　たいさんふくんさい　　のぶたか　　てんそうちふさい　　しげむねなり
天地災變祭は泰貞。 三萬六千神祭は �ﾘ吉。屬星祭は 親職。 泰山府君祭�@は 宣賢。天曹地府祭は 重宗也。

また　つるがおかぐう　をい　　　　ぐそうら　　　 し　　　だいはんやきょう　てんどく
又、鶴岳宮に於て、供僧等を令て大般若經を轉讀す。

現代語承久三年(1221)正月大二十二日丁未。先日の十日の雷の異常に対し、祈祷を始めました。天地災変祭は泰貞。三万六千神祭は安陪晴吉。属星祭は安陪親職。泰山府君祭は安陪宣賢。天曹地府祭は安陪重宗です。又、鶴岡八幡宮で坊さん達が大般若経を略読みしました。

説明�@泰山府君祭は、安倍晴明が創始した祭事で月ごと季節ごとに行う定期のものと、命に関わる出産、病気の安癒を願う臨時のものがあるという。「泰山府君」とは、中国の名山である五岳のひとつ東嶽泰山から名前をとった道教の神である。陰陽道では、冥府の神、人間の生死を司る神として崇拝されていた。延命長寿や消災、死んだ人間を生き帰らすこともできたという。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うしのこく　　まちおおじ　ひがし　しっか　　　　たいふさかんにゅうどうぜんしん　たく わざわ
承久三年(1221)正月大廿五日庚戌。丑刻。町大路の東で失火す。 大夫屬入道善信 の宅 災す。

ちょうしょなら　　 もんちう　　 き　いげ　しょうしつ　　　うんぬん
重書并びに問註の記以下燒失すと云々。

現代語承久三年(1221)正月大二十五日庚戌。午前二時頃に、大町大路の東で失火です。大夫属入道三善善信の家が燃えました。重要書類と裁判所の記録が燃えてしまいましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　こんちょう　　ほけどう　　　をい　　　　こうだいじん　だいさんねん　ついぜん　しゅう　　　にほん　　さた　なり
承久三年(1221)正月大廿七日壬子。�ﾘ。今朝、法花堂に於て、故右大臣第三年の追善を修す。二品の沙汰也。

どうし　　しょうごんぼうりっしぎょうゆう　　ひゃくそうぐ　　　ふせ　　くべつ　　じょうけんいっぴき　　かずけものひとえ　　じゅんぷじったん
導師は莊嚴房律師行勇。百僧供。布施は口別に上絹一疋、 被物一重、 准布十端。

どうし　　　ぶん　　　　じょうけんいっぴゃくひき　かずけものさんじうえ　〔いろいろ〕　　　さきんごじうりょう　　 あんめさんびき
導師の分は、 上絹一百疋。　被物　卅重〔色々〕、砂金五十兩、鞍馬三疋。

　かぶせ　　　 たち ひとこし　〔さき　　こうけ　　のち　　ほそだちおび 〕　　　　いよのちうじょうさねまさこれ　　と
加布施は太刀一腰〔先は公家。後は細太刀を帶びる〕。伊豫中將實雅之を取る。

うけいちょう　 そうしゅう いげ　　ひとびとぐんさん　　　 つい　 せぎょうあ　　　 こつじきせんにん　　じんべつ　 じっぴき
右京兆、相州以下の人々群參す。次で施行有り。乞食千人。々別に十疋。

また　　はんかしゃさんじうばか　　やから　　これ　こうめん　　　　あいだのじょうすけかげもりにゅうどう　おきのかみゆきみうらにゅうどうら　　きょうぶぎょう
亦、犯科者三十許りの輩　之を厚免す。 秋田城介景盛入道、　隱岐守行村入道等、 今日奉行す。

現代語承久三年(1221)正月大二十七日壬子。晴れです。今朝、頼朝法華堂で、故右大臣実朝様の三回忌の法事をしました。二位家政子様の施行です。指導僧は荘厳房律師退耕行勇。お供の坊さんは百人です。お布施は一人当たり、上等の絹一匹(二反)、被り物一枚、お金に換算する反物十反。指導僧の分は、上等の絹百匹(二百反)、被り物三十枚(色とりどり)、砂金五十両、蔵を乗せた馬三頭です。おまけは刀一腰〔先は公家、後は細い太刀を帯びる？〕。伊予中将一条実雅がこれを持ってきました。義時さん・時房さん以下の人々が群れ集まりました。次に施しをしました。乞食千人にそれぞれ十匹(二十反)。又、軽犯罪人三十人ほどを釈放しました。秋田城介安達景盛入道と隠岐守二階堂行村入道が今日の催しを取り仕切りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うまのこくぢしん
承久三年(1221)正月大廿九日甲寅。午尅地震。

現代語承久三年(1221)正月大二十九日甲寅。昼頃に地震がありました。

二月へ

吾妻鏡入門第廿五巻