承久三年辛巳(1221)三月小
承久三年(1221)三月小廿二日丁未。波多野次郎朝定爲二品使。進發伊勢大神宮。是今曉有二品夢想。面二丈許之鏡。浮由比浦浪。其中有聲云。吾是大神宮也。天下〔於〕鑒〔留仁〕世大〔仁〕濫〔天〕兵〔於〕可徴。泰時吾〔於〕瑩〔者〕太平〔於〕得〔牟〕者。仍殊凝信心。朝定爲祠官外孫之間。故以應使節。 |
読下し はたののじろうともさだ にほん つか な いせだいじんぐう しんぱつ
承久三年(1221)三月小廿二日丁未。波多野次郎朝定、二品の使いと爲し、伊勢大神宮へ進發す。
これ こんぎょう
にほん
むそう あ めんにじょうばか のかがみ ゆいのうら
なみ うか そ なか こえ あ い
是、今曉
二品夢想有り。面二丈許り之鏡、由比浦の浪に浮び。其の中に聲有りて云はく。
われ これ
だいじんぐうなり
吾は是
大神宮也。
てんか 〔を〕 かんがみ 〔るに〕 よおおい 〔に〕 みだれ
〔て〕つわもの
〔を〕 ちょう べ やすとき われ 〔を〕
かがやかさ 〔ば〕 たいへい 〔を〕 え 〔む〕 てへ
天下〔於〕鑒〔留仁〕世大〔仁〕濫〔天〕兵〔於〕徴す可し。泰時、吾〔於〕
瑩 〔者〕太平〔於〕得〔牟〕者り。
よっ こと しんじん こ ともさだ しかん そとまごたるのあいだ ことさら もっ しせつ おう
仍て殊に信心を凝らす。朝定祠官の外孫爲之間、
故に以て使節に應ず。
現代語承久三年(1221)三月小二十二日丁未。波多野次郎朝定が、二位家政子様の使いで伊勢神宮へ出発です。これは、今朝の夜明けに二位家政子様が夢を見て、二丈(6m)もある鏡が由比の浦の波間に浮かび、そこから声がしました。「私は伊勢神宮です。天下を考えてみると世の中が乱れて兵を集める事になるでしょう。泰時は、私を大事にすれば、平和になるでしょう。」と云ったのです。そこで特に信心する事にしました。朝定は、神主の外孫なので、特別に指名されて引き受けました。