吾妻鏡入門第廿六巻

貞應二年癸未(1223)七月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おととし　　　かっせん　　しょう　よっ　　　　しんぽされ　　ぢとう　ら　　　とくぶん　　こと　 じっちょうべつ　めんでんいっちょう　　な　　 べ
貞應二年(1223)七月小六日丁未。去々年の合戰の賞に依て、新補被る地頭等の得分の事、十町別に 免田一町 と爲す可し。

いっったんべつ　かちょうまいごしょうのよし　　さんぬ　つきじうごにち　　せんげされ　ところなり
 一段別に 加徴米五升之由、去る月十五日、宣下被る所也。

 か　じょうとうらいのあいだ　　そ　　 むね　 まか　じゅんこうせし　 べ　　　のよし　　 きょう　 せこうされ　　　　たかくに　　きよさだぶぎょうたり
彼の状到來之間、其の旨に任せ遵行令む可し之由、今日施行被る。隆邦、�C定奉行爲。

現代語貞應二年(1223)七月小六日丁未。一昨年の合戦の褒美に、新しく任命された地頭の取り分について、たんぼ十町(10ha)につき次の１町分は国衙税を免除、又、たんぼ一反につき五升(9�g)を徴収できると、先月15日朝廷から許しを得ています。その手紙が来たので、その内容で実施するように、今日決めました。橘隆邦・清原清定が担当です。

参考６月１５日　［新編追加］
＊＊官宣旨
　　左弁官下す　　　五幾内諸国七道
　　　自今以後庄公田畠の地頭得分、十町別免田一町を給わり、並びに一段別加徴五升を充てしむべき事、
　　右、頃年勲功の賞に依って地頭職に居るの輩、各々涯分を超え恣に土宜を侵す。茲に因って、国衙と云い、庄園と云い、事を彼の濫妨に寄せ、勤めをその乃貢に懈る。是非相賛・真偽互雑か。然る間無止の仏神事、空しく以て陵替す。有限の公私領、地利を弁ぜず。天下の衰弊、職として斯くの由。方今四海すでに定まり、万方靡くこと然り。誰か宗廟社稷の重事を軽ぜん。誰か五幾七道の済物を掠めん。然れば則ち一に庄公の愁訴を休めんが為、一に地頭の勤労を優ぜんが為、旁々折中の儀に従い、須く向後の法を定めん。文武の道一を捨てるは不可の謂われなり。左大臣宣べ、勅を奉る。庄公田畠の地頭得分、十丁別免田一丁を賜わり、一段別加徴五升を充つ。自今以後に於いては、制符を厳守し、宜しく遵行せしむべしてへり。諸国承知すべし。宣に依ってこれを行う。
　　　　貞応二年六月十五日　　　　　　　大史小槻宿祢
　　中弁藤原朝臣

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やくしどうがやつへん　ひと　じゅうそうあ　　　　じょうみつ　ごう
貞應二年(1223)七月小九日庚戌。藥師堂谷邊に獨り住僧有り。淨密と号す。

くだん　ぼう　　まえにわ　　をい　　　　うどんげ　ひら　　し　　　　のよしふうぶん　　　　かまくらちう　　だんじょこれ　 み　　 ためむれ　な
件の坊の前庭に於て、優曇花開き敷く之由風聞す。鎌倉中の男女之を觀ん爲群を成す。

にほんよ　　 えんどうさこんしょうげんためとし　つか　　　　　 みられ　　のところ　　ばしょう　 はなか　のよし これ　 もう　　　　うんぬん
二品自り遠藤左近將監爲俊を遣はし、見被る之處、芭蕉の花歟之由之を申すと云々。

現代語貞應二年(1223)七月小九日庚戌。薬師堂(後の覚園寺)谷に一人で住んでいる坊さんが居ます。浄密と云います。この坊さんの前の庭で優曇華の花が咲いてると噂が流れました。鎌倉中の男女が見物したくて群れ集まってます。二位家政子様は、遠藤左近将監為俊を行かせて、見させたところ、芭蕉の花ではないかと報告しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 おうしゅう　 ごがん　　な　　　　　わかみや　 かいろう　 をい　　　 いちにちひゃくぶ　ほけきょう　　しょしゃされ　　くよう
貞應二年(1223)七月小廿五日丙寅。�ﾘ。奥州の御願と爲し、若宮の廻廊に於て、一日百部の法花經を書寫被、供養す。

どうし　　　とうぐうべっとうなり　　うのこくしぎょう　　　　いのいってん　 ことをはんぬ
導師は當宮別當也。夘尅始行し、亥一點に事 訖。

現代語貞應二年(1223)七月小二十五日丙寅。晴れです。義時さんの祈願で、鶴岡八幡宮の回廊で、一日で百部の法華経を書き写す法事をしました。指導僧は、鶴岡八幡宮筆頭定雅です。卯の刻朝の六時頃に始めて亥の一点(21:00〜21:24)夜の九時過ぎに終了しました。

解説時刻の點は、2時間を5等分したのが点。亥なら21時〜21：24を一点、21：24〜21：48を二点、21：48〜22：12を三点、22：12〜22：36を四点、22：36〜23：00を五点。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　にいけ　しんぞう　　おんてい　〔　みどうごしょ　　　　ごう　　〕　　　　　ごいし　なり
貞應二年(1223)七月小廿六日丁夘。�ﾘ。二位家新造の御亭〔御堂御所と号す〕に御移徙也。

すいか　　りゃくされ　　おんみょうだいじょうちかもと　 へんばい　そうら　　 うんぬん　　すおうのぜんじちかざね　ほうがんだいすけふさ　おんこしよせ　たり　　うんぬん
水火を畧被、　陰陽大允親職、 反閇�@に候うと云々。周防前司親實、 判官代佐房　御輿寄せ�A爲と云々。

参考�@反閇は、先払いに踊るような儀式をする事。
参考�A輿寄せは、脇侍。

現代語貞應二年(1223)七月小二十六日丁卯。晴れです。二位家政子様の新築の家〔御堂御所と云います〕に引っ越しです。水と火への祈りの儀式を省略して、陰陽大允親職が厄払いの先行儀式をしました。周防前司中原親実・判官代大江佐房が脇に付きました。

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