吾妻鏡入門第廿六巻

貞應二年癸未(1223)十二月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　うしのこく　おうしゅう　おんてい　ひかりものあ　　　 よっ　　そくじ　　　おおくらやくしどう　　をい　　　　おいのり　　しぎょうされ
貞應二年(1223)十二月小三日辛未。�ﾘ。丑尅。奥州の御亭に光物有り。仍て即時に大倉藥師堂に於て、御祈を始行被る。

しんめ　　〔かたおか　　ごう　　めいばなり　〕　を　つるがおか　たてまつ　たま　　　また　　しちざ　　しょうこんさいあ　　　うんぬん
神馬〔片岡と号す名馬也〕於 鶴岳に奉り給ふ。又、七座の招魂祭有りと云々。

現代語貞應二年(1223)十二月小三日辛未。晴れです。午前二時頃、義時さんの屋敷に光が飛び込みました。それなのですぐに大倉薬師堂(後の覚園寺)で、お祈りを始めさせました。馬〔片岡と呼ばれる名馬です〕を鶴岡八幡宮に奉納しました。又、七人の陰陽師によるお祓いの祭りをしたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　ひつじのこく　おうしゅう　わかぎみ　おんかた　まい　 たま
貞應二年(1223)十二月小廿日戊子。霽。未刻、 奥州、若君の御方に參り給ふ。

するがのぜんじよしむら　　おきのにゅうどうぎょうさい　　ではのかみいえなが ら さんじょう　　　　おんみょうじろくにん　 め され
駿河前司義村、 隱岐入道行西、 出羽守家長 等參上す。陰陽師六人を召被る。

これ　　ごしょ ぞうえい　　こと　　きょうと 　　たず　 られ　 のところ　　にちじ 　 かんもん　 お　　　　　のひきゃく　　よるまえ　　とうらいのあいだ　なおもっ　 ふくもん　 ためなり
是、御所造營の事を京都に尋ね被る之處、日時の勘文を帶びる之飛脚、夜前に到來之間、猶以て覆問の爲也。

くだん　かんもん　　い　　　　　じういちがつにじうくにち ひつじのこく　も　　 ば　さいきち　よし
件の勘文に云はく。十一月廿九日 未刻 を以た者最吉の由、

しちにん　〔やすただあそん　　　さだひら　　のぶとし　　ひろとし　　やすもと　　 ただみつ　　ありとも　　〕　どうしん　　れんしょ
七人〔泰忠朝臣、定平、宣俊、廣俊、泰基、忠光、在供〕同心に連署す。

しか　　　　とうし　じゅらく　　ひ　は　　　こんげつ とおか さるのこくなり　　か　　 にちじ　　もっ　　これ　　と　　　れる　 うんぬん
而るに東使入洛の日者、今月 十日 申刻也。彼の日時を以て之を問は被と云々。

とうざ　　　をい　 かく　　しちにん　れんしょじょう　ひら　　　　のぶかたさいきち　よしうらな　もう
當座に於て此の七人の連署状を披く。信賢最吉の由占い申す。

ともすけ　 やすさだ　 はんきち　 よし　 もう　　　　くにみちあそん　 ちかもと　 ただなり　　ふかいのむね　　もう　　のあいだ　　おうしゅうしさい　　と　　　せし　　たま
知輔、泰貞は半吉の由を申す。國道朝臣、親職、忠業は不快之旨を申す之間、奥州子細を問は令め給ふ。

くにみちら もう　　　　い　　　　　　　ことば　もっ　　のべがた　　　しちにん　おんうらがた　 たま　　　　　　かんもん　　すす　　　　べ
國道等申して云はく。詞を以て述難し。七人に御占形を賜はり、勘文を進める可し。

か　　 もっ　　きょうと　　つか　 され　 べ　　　　　うんぬん
彼を以て京都に遣は被る可しと云々。

よっ　　これ　　くだされ　　　　おのおの　たいしゅつ　　みんぶのたいふやすとし　とうないところのかねすけ ら  これ　　ぶぎょう
仍て之を下被る。　各　 退出す。 民部大夫康俊、　藤内所兼佐等　之を奉行す。」

こよい　ねのこく　　つきと けいこくどうへん　　　　〔あいさぬ　　　　　　　　にしゃくさんずん　　ところ〕
今夜子刻、月與熒惑同變す。〔相去るところ二尺三寸の所〕 

現代語貞應二年(1223)十二月小二十日戊子。晴れました。午後２時頃に、義時さんは若君三寅の所へ行きました。駿河前司三浦義村・隠岐入道行西二階堂行村・出羽守中条家長等も集まり、陰陽師六人を呼びました。それは若君三寅の御所を建築するに当たり、お日和を京都へ聞いたところ、縁起の良い日時を書いた上申書が夜前に到着するので、再度聞きただすためです。届いた上申書に書いてあるのは、11月29日14:00とすれば最良だと、七人〔泰忠さん・定平。宣俊・広俊・泰基・忠光ともう一人〕が同一意見を持って連名で署名しております。ところが、幕府の使者が京都へ入ったのは、今月10日午後４時頃です。その日時を指定して質問したそうな。今この場で、その七人の連名書を開いて見せました。

信賢は、最も吉だと占って云いました。知輔と泰貞は半分吉ですねと云い、国道さんと親職・忠業は良くないと云ってるので、義時さんは「一体全体どっちなんだ」と聞いたんだそうな。そしたら国道達が「言葉では説明しにくいですね。七人に占い結果を戴き、上申書を出しましょう。それを京都へ持って行かせたらよいでしょう。」との事です。そこで、これを渡しました。それぞれ引きさがりました。民部大夫町野康俊と藤内所兼佐が担当します。

今夜の真夜中の12時頃に月と熒惑星火星が近づきました。〔双方の間は69cmの所です〕

貞應三年(1224)正月へ

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