吾妻鏡入門吾妻鏡脱漏

嘉禄元年乙酉(1225)七月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　さきのごんのじいわけのさだもと　〔さだつね　　だん〕　さんぬ　よ　よ　　　にいけ　　　　ごりょうち　　 ためさんこう
嘉祿元年(1225)七月小六日乙丑。�ﾘ。前權侍醫和氣定基〔定經が男〕去る夜自り二位家�@の御療治の爲參候す。

これひごろ　　よりつねあそんりょうち　　くは　たてまつ　のところ　　ごふれいの　てい　　そ　　　たの　　ならずのあいだ　　ちじゅつの およ　　ところ　あらざるよし　　じ　　　もう　　　　よっ　　なり
是日來、頼經朝臣�A療治を加へ奉る之處、 御不例之体、其の憑み不御之間、 治術之及ぶ所に 匪 由、 辞し申すに依て也。

参考�@二位家は、北条政子。
参考�A頼經朝臣は、丹波。医師は和気か丹波。

現代語嘉祿元年(1225)七月小六日乙丑。晴れです。前権侍医和気定基〔定経の息子〕が昨夜から二位家政子様の治療の為にやって来ました。これは、普段丹波頼経さんが治療をしているのですが、具合が良くなる様子がないので手におえませんと辞退したからなのです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　たつのこく　にほん ひがしごしょ　 とうぎょうせし　 たま　　　　これ　　ごいれい　すで　　ききゅうのゆえなり
嘉祿元年(1225)七月小八日丁卯。�ﾘ。辰刻。二品 東御所に渡御令め給ふ。是、御違例既に危急之故也。

現代語嘉祿元年(1225)七月小八日丁卯。晴れです。午前八時頃に、二位家政子様は東の御所へ移られました。これは、病気が危篤状態になってきたからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　うしのこく　　 にいけ　 こう　　　　おんとしろくじうく　　これさきのだいしょうぐん　こうしつ　にだいしょうぐん　ははぎなり
嘉祿元年(1225)七月小十一日庚午。�ﾘ。丑刻。二位家薨ず�@。御年六十九。是前大將軍が後室、二代將軍の母儀也。

ぜんかんの　ろごうに　おな　　　 てんか　　しぎょうせし　 たま　　　　も　　　また　　じんぐうこうごう　　さいせい　　し　　　　 わがくに　　こうき　　　ようご せし　  たま　　 か　　　うんぬん
前漢之呂后�A于同じく天下を執行令め給ふ。若し又、神功皇后�Bの再生を令て、我國の皇基を擁護令め給ふ歟と云々。

参考�@二位家薨ずは、北条政子の死。戒名は、安養院殿如実妙観上人。保元二年(1157)生まれ。
参考�A前漢之呂后は、漢の高祖の皇后で恵帝の実母。恵帝死後、皇太后として実権を握った。
参考�B神功皇后は、夫の仲哀天皇の死後、後の応神天皇を身ごもったまま遠征し、三韓征伐を成し遂げたとされる。

現代語嘉祿元年(1225)七月小十一日庚午。晴れです。午前二時頃に二位家政子様は亡くなりました。お年は69才です。この人は、前大將軍の奥さんで二代目三代目将軍のお母さんです。漢の高祖の呂皇后と同じように政治を行いました。もしかしたら神功皇后の生まれ変わりのように、我が国の天皇家を護りましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　とらのこく　　にほんけ　　おんこと ひろう あ　　　　しゅっけ　だんじょ さいさい をはんぬ
嘉祿元年(1225)七月小十二日辛未。霽。寅刻。二品家の御事披露有り。出家の男女 濟々 焉。

みんぶのたいふゆきもり さいぜん　そかい　　と　をはんぬ　　いぬのこく　　みどう ごしょ の　ち　　　をいて　かそう　たてまつ
民部大夫行盛 最前に素懷を遂げ�@畢。 戌刻、御堂御所之地に於而火葬し奉る。

 ごそう　　　ことは　　さきのおんみょうのすけ ちかもとあそん　さたせし　　　　ただ　　じしん　　さんぜず　　もんしょう　そうのたいふありすえ　　さ　　　しん　　　　うんぬん
御葬の事者、　前陰陽助 親職朝臣　沙汰令む。但し自身は不參。門生の 宗大夫有季を 差し進ずと云々。

参考�@素懷を遂げは、出家をする。

現代語嘉祿元年(1225)七月小十二日辛未。晴れました。午前四時頃に二位家政子様の死亡を発表しました。殉じて出家した男女は大勢います。民部大夫二階堂行盛が最初に出家をしました。午後八時頃、勝長寿院の奥の御所の場所で火葬にしました。葬儀については、前陰陽権助安陪親職さんが実施します。但し本人は参加せず弟子の惟宗大夫有季を代理に差し出しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　そうしゅう　けいちょう　　ごきゅうせき　　うつ　　す　　　たま　　　　〔　ひごろ　にほん　　ごきょしょなり　　〕
嘉祿元年(1225)七月小廿三日壬午。�ﾘ。相州　京兆の 御舊跡へ移り住み給ふ。〔日來二品の御居所也。〕

現代語嘉祿元年(1225)七月小二十三日壬午。晴れです。時房さんは、故義時さんの旧宅へ引っ越しました〔普段二位家政子様さんが住んでいました〕。

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