吾妻鏡入門吾妻鏡脱漏

嘉祿二年丙戌(1226)四月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　にょほうきょう　　ごほうのう　　 うだいしょうけ　　　うふしょうぐん　　 にほん　　 さんか の　ほけどう　おのおの いちぶなり
嘉祿二年(1226)四月大四日戊子。�ﾘ。如法經の御奉納。右大將家、右府將軍、二品。三ケ之法華堂へ各 一部也。

また　　そうしゅう　こにほんついぜん　おほんため　おおくらしんみどうの　かくない　　をい　　　　さんじゅうほうとう　　こんりゅう　　　きょう　ことはじ　　なり
又、相州 故二品 追善の 奉爲、 大倉新御堂之郭内に於て、三重寳塔を建立す。今日事始め也。

現代語嘉祿二年(1226)四月大四日戊子。晴れです。法華経の写経の奉納です。右大将家頼朝墓・勝長寿院の右府将軍実朝墓・同地二位家政子墓の三法華堂へそれぞれ一部です。又、時房さんは二位家政子様の後生を弔う追善供養のために。大倉新御堂大慈寺の境内に三重塔を建立します。今日が、その着工式です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　かわごえのさぶろうしげかず　むさしのくに るすどころ そうけんぎょうしき これ　　ぶされ
嘉祿二年(1226)四月大十日甲午。河越三郎重員、 武藏國 留守所 總檢校軄�@之を補被る。

これ　　せんぞちちぶでわごんのかみいらい　 だいだいぶ　　きた　　　うんぬん
是、先祖秩父出羽權守�A以來、代々補し來ると云云。

参考�@惣檢校職は、軍勢催促権。秩父氏の重綱→重隆→能隆→河越太郎重頼と継がれたらしいがその後断絶。ここでは名誉職として復活だが実権は既にない。河越重頼が義経の連座で殺され畠山重忠へ与えられていたらしい。
参考�A秩父出羽權守は、畠山重綱┬重弘─重能─重忠（畠山氏）
　　　　　　　　　　　　　　　├重隆─能隆─重頼─重員（河越氏）＊重隆は大倉合戰で殺された。
　　　　　　　　　　　　　　　└重継─重長（江戸氏）

現代語嘉祿二年(1226)四月大十日甲午。河越三郎重員が、武蔵国現地荘園管理人統治権(軍勢催促権)の職を与えられました。これは、先祖の秩父出羽権守畠山重綱以来、代々任命されてきたからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうしゅう 　さんじうのとう　こんりゅうされ　　　きょう　うのこく りっちゅう　　うんぬん
嘉祿二年(1226)四月大十九日癸卯。相州  三重塔を建立被る。今日卯刻立柱と云云。

現代語嘉祿二年(1226)四月大十九日癸卯。時房さんは三重塔を建立してます。今日の午前六時頃に柱立てだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　いぬのこく　　ごしょちう　　そうどう
嘉祿二年(1226)四月大廿日甲辰。霽。戌刻、御所中で騒動。

むさしの くにごけにん ぬまたのしろうおやこ　　 しらいのたろうおやこ　　たちま　とうじょう　おこ　　　　たが　　　せちがい　をはんぬ　いささ　すくい　あ　　　　　うんぬん
武藏國御家人沼田四郎父子、白井太郎父子、忽ち鬪諍を起し、互いに殺害し 畢。聊か宿意有りと云云。

参考�@沼田は、東京都足立区江北6丁目あたりに「上沼田小学校」や「上沼田中学校」に名が残っている。

現代語嘉祿二年(1226)四月大二十日甲辰。晴れました。午後八時頃、御所の中で争いがありました。武蔵国の御家人沼田四郎親子と白井太郎親子が刃傷沙汰を起こして、お互いに殺し合ってしまいました。恨みがあったようです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　ひつじのこく おおぢしん　　せんもんの　お　ところ
嘉祿二年(1226)四月大廿七日辛亥。�ﾘ。 未刻 大地震。占文之推す所。

しゅん　いでず　　へいかくあ　　べ　　　のや　よし　　おんみょうどうら たいふしょうげんちかざね　　もっ　　ごしょ　　 もう　　 あ
旬を不出に兵革有る可き之哉由、陰陽道等 大夫將監親實 を以て御所へ申し上ぐ。

また　　ぶしゅう　 まい　　もう　　　　うんぬん
又、武州に參り申すと云々。

現代語嘉祿二年(1226)四月大二十七日辛亥。晴れです。午後二時頃に大地震です。占い人達の結果、「十日以内に戦があるでしょう。」と陰陽道達は、大夫将監三条親実を通して御所へ上申しました。又、泰時さんにも告げに行きましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くもり　　そうどうあ　　　　　ひとびとかっちう　　つ　　　　　ごしょ　　まい　　　　しかれども　ほどな　　らっきょせし
嘉祿二年(1226)四月大卅日甲寅。陰。騒動有り。人々甲冑を着け、御所へ參る。然而、程無く落居令む。

これ　　しらかわのせき　むほんのやからあ　　　　ざいこくごけにんら　いささ　かっせん　　いた　　のよし　　ひきゃくさんじょう　て　もう　　のゆえなり
是、白河關に謀叛之輩有る、 在國御家人等聊か合戰を致す之由、飛脚參上し而申す之故也。

現代語嘉祿二年(1226)四月大三十日甲寅。曇りです。又、争い事がありました。人々は鎧兜に身を固めて御所へ集まりました。しかし、間もなく落ち着きました。これは、栃木県と福島県の境の白河の関のあたりで、謀反人が居て在地御家人と多少戦騒ぎになったのだと、伝令が参って報告したからです。

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