吾妻鏡入門吾妻鏡脱漏

嘉祿三年丁亥(1227)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 おうばん　 ぶしゅう　　おんさた
嘉祿三年(1227)正月大一日辛亥。�ﾘ。垸飯。武州の御沙汰。

現代語嘉祿三年(1227)正月大一日辛亥。晴れです。将軍頼経様への御馳走のふるまいは、武州泰時さんの献上です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 おうばん　 そうしゅう　　おんさた　　　 いぬのこく　でんがくずし　　とうざいいっちょうよ　しょうぼう
嘉祿三年(1227)正月大二日壬子。霽。垸飯。相州の御沙汰。」戌刻 田樂辻子�@の東西一町餘 燒亡す。

参考�@田樂辻子は、鎌倉市浄明寺586前から466の報国寺前までの路地を言う。この辺りに田楽師が住み着いたといわれる。

現代語嘉祿三年(1227)正月大二日壬子。晴れました。将軍頼経様への御馳走のふるまいは、相州時房さんの献上です。」
午後八時頃田楽辻子の東西100ｍちょっと火事で焼けました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 おうばん　 みうらのするがぜんじこれ　 しん　　　ぎょけん　 するがのかみしげときこれ　 えき
嘉祿三年(1227)正月大三日癸丑。霽。垸飯。三浦駿河前司之を進ず。御劔は駿河守重時之を役す。」

いぬのこく　たいはく けいこくせい　おか　　　　〔 あいさ　　　　　　　にしゃくよ　〕
 戌刻。太白 熒惑星を犯す。〔相去ること二尺餘〕

現代語嘉祿三年(1227)正月大三日癸丑。晴れました。将軍頼経様への御馳走のふるまいは、駿河前司三浦義村が献上しました。刀の献上は駿河守重時さんがやりました。午後八時頃、太白星金星が熒惑星火星の軌道を犯しました〔60ｃｍ程離れてました〕。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 きょねんじうにがつみそか　 いのこく　　 そうとうさん　　 ございしょ　　はいでん　かまどの　じょうこうどう
嘉祿三年(1227)正月大四日甲寅。霽。去年十二月晦日の亥刻、走湯山�@の御在所、拝殿、竈殿、常行堂

なら　　　　かいろう　　そうもん　　こんごうりきしぞう　いげ　かいろくのよし　　へいさえもんのじょうもりつな　これ　　ひろう
并びに廻廊、惣門、金剛力士像以下回祿之由、平左衛門尉盛綱、之を披露す。

かく　　ことちょうじたる　　よっ　　　　さんぬ　ついたち ちゅうかん　かえりみ　 およばず　　　とうさん　　しょし　は　　 さん　　これ　　もう　　　いへど
此の事重事爲に依て、去る 一日 中間�Aを顧るに不及に、當山の所司馳せ參じ之を申すと雖も、

がんさんのあいだ　　　ば　　もりつなこれ　　おさ　　とど　　　うんぬん
元三�B之間たれ者、盛綱之を抑へ留むと云云。

参考�@走湯山は、静岡県熱海市伊豆山７０８−１静岡県熱海市の走湯神社。伊豆山神社。旧名は走湯權現。
参考�A中間は、間に入る人を通さずに。
参考�B元三は、元日から三日の三が日。

現代語嘉祿三年(1227)正月大四日甲寅。晴れました。去年十二月三十日の午後十時頃、伊豆山神社の本殿・拝殿・釡殿・常行堂それに回廊・総門・仁王像など火事で燃えてしまったと、平左衛門尉盛綱が報告しました。この事は重大な問題なので、先日の一日に人を通さずに、伊豆山神社の副官が走って来て報告しましたが、三が日は縁起が悪いので、平盛通が聞き留めておいたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 てんぺん　こと　　してんのやから これ　　もう　　　　うんぬん
嘉祿三年(1227)正月大五日乙卯。霽。天変の事、司天之輩 之を申すと云云。

現代語嘉祿三年(1227)正月大五日乙卯。晴れました。天の運航の異常について、天文方の連中が報告しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　ばくふ　　しんぎょうえ　つるがおかぐそう これ　　まい　　つと
嘉祿三年(1227)正月大八日戊午。霽。幕府の心經會。鶴岳供僧 之を參り勤む。

現代語嘉祿三年(1227)正月大八日戊午。晴れました。幕府で新年初の般若心経を唱える会です。鶴岡八幡宮の坊さんが来て勤めました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 みのこく　　しょうぐんけ みゆきはじめ　〔おんこし〕　　ぶしゅう　　てい　 い　　　たま
嘉祿三年(1227)正月大九日己未。�ﾘ。巳刻。將軍家 御行始〔御輿〕。武州の亭に入り御う。

　ぐぶにん　　 かち　　　するがのかみ ぎょけん　　も
供奉人は歩儀。駿河守 御劔を持つ。

か　　　てい　おんもうけら　　こと　かいつくろ　これあ　　　　 ぎょけん　 おんうま　いげ　　おんひきでものこれあ　　　　ものごと　　び　　　つくされ　　　　うんぬん
彼の亭の御儲等、殊に刷い之有り。御劔、御馬以下の御引出物之有り。物毎に美を盡被ると云云。

現代語嘉祿三年(1227)正月大九日己未。晴れです。午前十時、将軍頼経様のお出かけ始めです〔輿〕。武州泰時さんの屋敷に入りました。お供は歩き。駿河守重時さんが太刀持ち。迎えた屋敷ではおもてなしを特に念入りに用意しました。刀や馬の引き出物がありました。事ごとに贅沢に用意していたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　いぬのこく　たいはく けいこくせい　おお　 おか
嘉祿三年(1227)正月大十一日辛酉。霽。戌刻。太白 熒惑星を掩い犯す。

現代語嘉祿三年(1227)正月大十一日辛酉。晴れました。戌の刻午後八時頃、太白星金星が熒惑星火星にかぶって犯しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　うまのこくぢしん
嘉祿三年(1227)正月大十四日甲子。�ﾘ。午刻地震。

現代語嘉祿三年(1227)正月大十四日甲子。晴れです。昼頃に地震です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　とりのこく　　ねのこく　　りょうど　　ぢしん　　きょう　にしょ　　　ごしょうじん　 はじ　　られ
嘉祿三年(1227)正月大十五日乙丑。�ﾘ。酉刻、子刻、兩度の地震。今日二所の御精進を始め被る。

ほうへい　 おんし するがのかみしげとき　しょうじんや　　い　　　　　うんぬん
奉幣の御使 駿河守重時、精進屋に入ると云々。

現代語嘉祿三年(1227)正月大十五日乙丑。晴れです。午後六時頃と夜中の12時頃とに二度地震がありました。今日は、箱根権現と伊豆山権現の二所詣での精進潔斎を始めました。幣を納める代参の駿河守重時さんが、精進用の小屋に入りましたとさ。

参考この嘉祿三年(1227)正月大廿一日付で鋳造されたらしい、神奈川県座間市にある坂東三十三観音霊場の八番札所の星谷寺の梵鐘に記事がある。
梵鐘の文は
　相州　星谷寺
　奉鋳　鐘一口
嘉禄三年丁亥歳次正月廿一日

大勧進金剛佛子　秀毫
大壇越沙弥　西願
大檀那源朝臣　信綱（近江源氏佐々木太郎定綱息）
　　　大工源吉国
　　　勧進金剛弟子
　　　　　　　秀範
　　（この梵鐘には撞き座が一つしかなく星谷寺七不思議の一つとされている。大工源吉国は飯山（厚木市飯山）の鋳物師ではとの記事もある。）
推測飯山は毛利荘内なので、大江広元の四男毛利季光（法名西阿）領だと思われるが、座間は佐々木信綱が支配していたのか不明？

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 さんぬ　じうろくにちよ　　　　  けいこく　　こう　　ま　　　ぼうけ　さか　　のよし　　てんもんどうこれ　　もう　　　　うんぬん
嘉祿三年(1227)正月大廿八日戊寅。霽。去る十六日自り、熒惑、光を増し芒氣盛ん之由、天文道之を申すと云云。

現代語嘉祿三年(1227)正月大二十八日戊寅。晴れました。先達ての16日から熒惑星火星の光が増して、光芒が噴出していると、天文方が云っております。

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