吾妻鏡入門吾妻鏡脱漏

嘉祿三年丁亥(1227)七月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 とりのこく　　 ろくはら　　しゅりのりょうげちゃくされ
嘉祿三年(1227)七月小四日辛巳。�ﾘ。酉刻、六波羅の修理亮下著被る。

これ　 じょうろくどうくようけちえん　 ため　　さんこうな　　　　　　　ほっ　　　　のとき　　　じろうぬし　　こと　　き　　　　　こと　　むち　　あ　　　　　うんぬん
是、丈六堂供養結縁の爲、參向爲さんと欲する之刻、二郎主の事を聞き、殊に鞭を揚ぐと云云。

現代語嘉祿三年(1227)七月小四日辛巳。晴れです。午後六時頃、六波羅の修理亮時氏が鎌倉へ到着しました。これは、丈六堂の開眼供養に仏様とのご縁を結ぶために来ようとしていた所、次郎時実の事件を聞いて、特に急いできたのだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　よ　　　い　　　　　しんぞう　　どうしゃ　　をい　　　 ちんさい　おこな　れる　　　　うんぬん
嘉祿三年(1227)七月小十日丁亥。霽。夜に入り、新造の堂舎に於て、鎭祭�@を行は被ると云云。

参考�@鎭祭は、地鎮祭。

現代語嘉祿三年(1227)七月小十日丁亥。晴れました。夜になって、新築のお堂で地鎮祭を行いましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 てんがんかいせい　　にいけ　だいさんねん　おんぶつじ　　じょうろくあみだどう　　　くようなり
嘉祿三年(1227)七月小十一日戊子。天顏快�ﾘ。二位家第三年�@の御佛事、丈六阿弥陀堂の供養也。

ひなみ　　こと　　たびたび さた あ　　　　いへど　　　 つい　　もっ　　きょう　　およ
日次の事、度々沙汰有ると雖も、遂に以て今日に及ぶ。

どうし　　しょうごんぼうりっしぎょうゆう　　しょうそう　にじっく　　ぶがくこれ　　りゃくされ　　　　おんふせ　　　みえ　　もの にじうご
導師は莊嚴房律師行勇。請僧は廿口。舞樂之を畧被る。御布施は三十の物二十五。

たけごしょ　ごちょうもん　　ためとぎょ　　　　たま　　　　そうしゅう　 ぶしゅう　しょうさく いげ　　 けちえん　 きせんあげ　 かぞ　　べからず　　うんぬん
竹御所御聽聞の爲渡御され給ふ。相州、武州、匠作已下の結縁の貴賎勝て計う不可と云云。

参考�@二位家第三年は、北条政子の三回忌。

現代語嘉祿三年(1227)七月小十一日戊子。空は快晴です。二位家政子様の三回忌の法事と丈六阿弥陀堂の開眼供養です。お日柄については何度か検討されたけど、結局命日の今日になりました。指導僧は、荘厳房律師退耕行勇。お供の僧は20人。舞楽の奉納は略す。お布施は三種類の物25個。竹御所もお経を聞きにやってきました。時房さん・泰時さん・時氏さんを始め、仏様との縁を結ぶために集まった人は数えきれませんとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　きんつじ　　いせのくに　　あくとうほうきせし
嘉祿三年(1227)七月小十二日己丑。�ﾘ。近日、伊勢國�@の悪黨蜂起令む。

しか　　　　　　さんぬ　ろくがつみそか　　ほんまさえもんのじょうもとただ　　とうごくおおいしのみくりや　をい　　　ぞくしゅ　にううまのじょう　　　うかが　おそ　 のところ
然しながら去る六月晦日、本間左衛門尉元忠、當國大石御厨�Aに於て、賊主丹生右馬允�Bを窺い襲う之處、

ばんるい　ひき　ことごと　とうぼう　　　　ひとり　　　し　　 うちとめられざるのよし　　これ　　は　　　もう
伴類を卒い悉く逃亡し、一人と爲て討止被不之由、之を馳せ申す。

こ　　　あくとうは　　　どうじんほんま　さんぬ　しがつにじうににち おお　　うけたは　　　　にうやま　　をい　　とらえ　　　 ほっ　　　のところ
此の悪黨者、同人本間、去る四月廿二日仰せを奉り、丹生山に於て虜んと欲する之處、

かへってかれら　　ため　　　　しんるいろうじゅうらおお　もっ　　う　　　とられ　をはんぬ　うんぬん
還而彼等の爲に、親類郎從等多く以て討ち取被　畢 と云云。

参考�@伊勢國は、守護は北条時房。本間は時房の代官で地頭らしい。
参考�A大石御厨は、三重県松阪市大石町。
参考�B丹生右馬允は、伊勢国丹生庄で三重県多気郡多気町丹生。

現代語嘉祿三年(1227)七月小十二日己丑。晴れです。近頃、伊勢国の無法者たちが気勢を上げている。しかし、6月30日に本間左衛門尉元忠が伊勢国大石御厨(伊勢神宮領)で、山賊の首領の丹生右馬允を見つけて襲い掛かったら、部下達を連れて逃げてしまい、一人としてやっつける事が出来なかったと、急ぎ報告してきました。この無法者は、本間元忠が、去る4月22日命令を受けて、丹生山で捕まえようとしたところ、かえって彼らのために親類や家来を多く殺されてしまったんだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ふうう　らいめいはなは　　　 いのこくようや　はれ　　ぞく　　　　にしやまよ　　 せっけ た　　　　はんてん　　およ
嘉祿三年(1227)七月小十九日丙申。風雨雷鳴甚だし。亥刻聊く�ﾘに属す。西山自り赤氣立ちて半天に及ぶ。

そ　　いろあかしろ　　にしはくろくも　　 かく　　　ひがしはめいげつ　は
其の色赤白。西者黒雲に隱れ、東者明月に映へる。

しか　　　　ある　　　あかる　　ある　　　 かげ　　　 しばらく　　て　き　をはんぬ　　ぎょうそう　いた　　またはなは　あめ
而して或ひは明く或ひは隱る。少時し而消へ 畢。 曉更に至り又甚だ雨。

現代語嘉祿三年(1227)七月小十九日丙申。風雨も雷も激しい。午後10時頃になって晴れてきました。西の山から赤い空気が立ち上がって空の上まで覆いました。その色は赤白です。西は黒雲に隠れて、東は明月に照らし出されています。その後、明るくなったり暗くなったりして、しばらく後に消えてしまいました。明け方になって又雨がひどくなりました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　きょう　　　おさめどの りっちゅう　あし　　う　　　けた　　かた　　　しんじぎょうぶのじょうゆきつぐ　さた　なり
嘉祿三年(1227)七月小廿二日己亥。霽。今日、 納殿�@立柱し足を打ち桁を堅む。進士�A刑部丞行継が沙汰也。

参考�@納殿は、貴重品用倉庫。
参考�A進士は、律令制で官吏登用試験合格者、合格者の文章生。この時点では単に位として名誉職。

現代語嘉祿三年(1227)七月小二十二日己亥。晴れました。今日、納所の柱立で、掘立柱を打ち込み、横につなぐ桁を渡しました。進士刑部丞行継の負担です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　ひかりものあ　　　　りゅうせい　　うんぬん
嘉祿三年(1227)七月小廿三日庚子。�ﾘ。光物有り。流星と云云。

現代語嘉祿三年(1227)七月小二十三日庚子。晴れです。光る物が空を飛びました。流星だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　みんぶたいふにゅうどうぎょうねん　　にいけ　ごついぜん　　ため　　ぼんう　　　そうそうせし　　　　きょう　　くよう　　　と　　をはんぬ
嘉祿三年(1227)七月小廿五日壬寅。霽。 民部大夫入道行然、 二位家御追善の爲、梵宇を草創令む。今日供養を遂げ 畢。

どうし　　しょうかくそうづ　　きょうと　よ　　しょうせいせし　　　　よるまえ　　げちゃく　 たま
導師は聖覺僧都。京都自り招請令め、夜前に下着し給ふ。

およ　ひょうはく はな　　かざ　　けいびゃくぎょく つらぬ　のあいだ　ちょうもん　そんぴ　 ずいきかつぎょう　げんご　　およ　　ところ　あらざ　や
凡そ表白 花を餝り、敬白 玉を貫く之間、聽聞の尊卑、隨喜渇仰、言語の及ぶ所に非る乎。

たけごしょ　ごけちえん　 ため　い　 たま　　　　そうしゅう　 ぶしゅうわた　 たま
竹御所御結縁の爲出で御う。相州、武州渡り御う。

　よ　　い　　　　おんかたたがえあ　　　にし　さむらい　かろ　の ま　に ごしゅく　　きんじゅう　ひとびと すうやから さんこう　　　　ごれんがら　 あ　　　　　うんぬん
夜に入り、御方違有り。西の侍の火爐之間于御宿。近習の人々 數輩 參候し、御連歌等有りと云云。

現代語嘉祿三年(1227)七月小二十五日壬寅。晴れました。民部大夫入道行然二階堂行盛が、二位家政子様の追善供養に、お堂を創建して、今日開眼供養を行いました。指導僧は、聖覚僧都で、京都から呼んで夜前に到着しました。仏前での話始めの言葉は花を飾るようで、法話の締めくくりの言葉は玉をも貫くように素晴らしかったので、聞いていた皆さんは喜びにあふれ、深く仏を信じる慕う心は、言葉で表現することもできません。竹御所も仏様との縁を結ぶためお出ででした。時房さんも。泰時さんも来ていました。夜になって、将軍頼経様の方角変え式がありました。西の侍だまりの囲炉裏のある部屋にお泊りになりました。おそば仕えの連中が集まって、連歌をしたそうです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　おさめどの　じょうとう　　うんぬん
嘉祿三年(1227)七月小廿六日癸卯。�ﾘ。納殿�@の上棟と云云。

参考�@納殿は、貴重品用倉庫。

現代語嘉祿三年(1227)七月小二十六日癸卯。晴れです。納殿の棟上げ式です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　ごとうさえもんのじょうもとつな　ぶぎょう　な　　　　おんみょうどう　やからを　ごしょ　　　め　　　あつ
嘉祿三年(1227)七月小廿八日乙巳。�ﾘ。後藤左衛門尉基綱奉行と爲し、陰陽道の輩於 御所に召し集め、

てんぺんのこと たず　　くだされ　　のところ　　やすさだ　のぶかたはっこう　 あらざ　のよしこれ　 もう　　　　ちかもと　 はるかた　 はっこう　たるのむねごんじょう　　　うんぬん
天變之事 尋ね下被る之處、泰貞、宣賢白虹に非る之由之を申す。親職、�ﾘ賢、白虹�@爲之旨言上すと云云。

参考�@白虹は、戦の前兆。

現代語嘉祿三年(1227)七月小二十八日乙巳。晴れです。後藤左衛門尉基綱が担当して、陰陽師の連中を御所に呼び集め、天の異変についてお聞きになったところ、安陪泰貞と安陪宣賢は、戦の前兆の白虹ではありませんと云い、安陪親職と安陪晴賢は、白虹だと申しあげましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　ちかもと　はるかたら はっこう　 かんもんこれ　 ささ　　　　ごとうさえもんのじょうもとつな　　ふ　　　　　うんぬん
嘉祿三年(1227)七月小廿九日丙午。霽。親職、�ﾘ賢等白虹の勘文之を捧げ、後藤左衛門尉基綱に付すと云々。

現代語嘉祿三年(1227)七月小二十九日丙午。晴れました。安陪親職と安陪晴賢が白虹との上申書を、後藤左衛門尉基綱に託しましたとさ。

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