吾妻鏡入門吾妻鏡脱漏

嘉祿三年丁亥(1227)八月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　ないとうさえもんのじょうもりいえほっし　よみ　　　かえ　　　〔としはちじうく〕
嘉祿三年(1227)八月大一日丁未。�ﾘ。内藤左衛門尉盛家法師黄泉へ歸る〔年八十九〕。

ろうびょうのうえ　　りびょう　　なや　　　りんじゅう　 しょうねん　　　 うんぬん
老病之上、痢病を惱む。臨終に正念すと云云。

現代語嘉祿三年(1227)八月大一日丁未。晴れです。内藤左衛門尉盛家が亡くなりました〔89才〕。老年の上、下痢に苦労していました。死ぬ間際に、極楽往生を信じて疑わずに、一心に念仏をして、雑念を去った安らかな心だったそうです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　おさめどのつく　をは　　　　ののち　　きょう はじ　　て ぎょぶつら これ　　おさ　 られ
嘉祿三年(1227)八月大十日丙辰。霽。納殿�@造り畢んぬ之後、今日始め而御物等之を納め被る。

ごとうのさえもんのじょうもとつな ぶぎょうたり　　うんぬん
後藤左衛門尉基綱 奉行爲と云云。

参考�@納殿は、貴重品用倉庫。

現代語嘉祿三年(1227)八月大十日丙辰。晴れました。納殿が出来上がったので、今日始めて荷物を収めました。後藤左衛門尉基綱が指揮担当しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　おいのり　　しぎょうされ　　 じょきょうもろかず ぶぎょうたり　　うんぬん
嘉祿三年(1227)八月大十三日己未。�ﾘ。御祈を始行被る。助教�@師員�A奉行爲と云云。

　　ふどう　ごま　　　　やまぐちほうげん
　不動護摩　山口法眼

　　さいしょうさい　　　はるかた
　歳星祭　　�ﾘ賢

　　たいはくせいさい　はるもと
　太白星祭　�ﾘ職

きょうさるのこく　　きょうと　ひきゃくさんちゃく
今日申刻、京都の飛脚參着す。

さんぬ　なぬか　　 だいじょうだいじんけ　 みだいどころせきり　やまい　よっ　 ごそうせいのよし これ　　もう　　　　しょうぐんけ　　おんがいそぼなり
去る七日、太政大臣家�Bが御臺所赤痢の病に依て御早世之由之を申す。將軍家の御外祖母也。

参考�@助教は、律令制で，大学寮の職員。明経科に置かれ，博士を助けて教授や課試にあたった。定員 2 名。助(すけ)博士。
参考�A師員は、中原師員(1185-1251)。1218に助教。中原親能・大江広元の従兄弟。後評定衆となり、大夫外記となり、摂津守明経博士となる。法名は行厳。
参考�B太政大臣家は、西園寺公経─┬─金子（同御臺所）
　　　　　　　　　　　　　　 綸子─┬─九条道家
　　　　　　　　　　　　　　　　　三寅（頼経）

現代語嘉祿三年(1227)八月大十三日己未。晴れです。お祈りを始めました。助教中原師員が担当だそうな。
　お不動様の護摩炊きが、山口法眼。
　歳星(木星)祭が安陪晴賢
　太白星(金星)祭が安陪晴職。
今日午後四時頃に京都からの伝令が着きました。先日の七日に太政大臣西園寺公経様の奥さんが赤痢で亡くなったと申しました。将軍頼経様の母方の祖母です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 つるがおか　ほうじょうえ えんいん　　　ごきょうぶく　　よっ　　 なり
嘉祿三年(1227)八月大十五日辛酉。鶴岳の放生會 延引す。御輕服に依て也。

現代語嘉祿三年(1227)八月大十五日辛酉。鶴岡八幡宮の生き物を放す式典放生会は延期しました。将軍頼経様の祖母の喪に服す穢れだからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　しょうさくきらく　　たま　　　　また　　えのひょうのじょうよしゆき　しせつ　　な　　じょうらく　　　　か　　　ごそうせいの　こと　　よっ　　なり
嘉祿三年(1227)八月大十八日甲子。�ﾘ。匠作歸洛し給ふ。又、 江兵衛尉能行 使節と爲し上洛す。彼の御早世之事に依て也。

現代語嘉祿三年(1227)八月大十八日甲子。晴れです。匠作北条時氏さんが、京都へ帰りました。又、大江兵衛尉能行が幕府の使者として京都へ向かいました。西園寺公経さんの奥さんの弔問のためです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　　おんみ　　ふうしん い　　たま　　　　うんぬん
嘉祿三年(1227)八月大卅日丙子。霽。將軍家の御身に風疹�@出で給ふと云云。

参考�@風疹は、小児に多い発疹(ほっしん)性の感染症。学校感染症の一。感染症予防法の5類感染症の一。風疹ウイルスに感染して、全身に細かい発疹が出るが2、3日で消える。三日ばしか。

現代語嘉祿三年(1227)八月大三十日丙子。晴れました。将軍頼経様の体に発疹(三日ばしか)が出たそうな。

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