吾妻鏡入門吾妻鏡脱漏

嘉祿三年丁亥(1227)九月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　きん　か　 せま　 おか　　のよし　 てんもんどうら すおうのぜんじちかざね　ぞく　　　　れんしょ　　かんもん　 ささ　　　　うんぬん
嘉祿三年(1227)九月大二日戊寅。�ﾘ。金火に迫り犯す之由、天文道等周防前司親實に属し、連署の勘文を捧ぐと云云。

現代語嘉祿三年(1227)九月大二日戊寅。晴れです。金星が火星に迫って犯すと、天文方が周防前司中原親実を通じて、連盟の上申書を提出しましたとさ。

参考の【32】

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　うしのこくおおぢしん
嘉祿三年(1227)九月大三日己卯。�ﾘ。丑刻大地震。

現代語嘉祿三年(1227)九月大三日己卯。晴れです。午前二時頃大地震です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　ぢしん　　こと　　すおうのぜんじ　　もっ　　たず　 くだされ　 のところ　 てんのうどうなり
嘉祿三年(1227)九月大四日庚辰。霽。地震の事、周防前司を以て尋ね下被る之處、天王動也。

つき　 したが　ひ　　したが　　 きっきょうあいまじ　 のよし　　おんみょうどうらこれ　　もう
月に隨ひ日に隨ふ。吉凶相交る之由、陰陽道等之を申す。

現代語嘉祿三年(1227)九月大四日庚辰。晴れました。地震について、周防前司中原親実を通してお尋ねなりましたところ、天王様からの神意です。月にも従い、日にも従うので、吉と凶が共に訪れると、陰陽道の連中が云っております。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　てんぺん　　おいのりら　　こと　　きょう これ　　しぎょうされ
嘉祿三年(1227)九月大九日乙酉。天變の御祈等の事、今日之を始行被る。

　　やくし　ごま　　　　　　　　だいしんそうづ
　藥師護摩　　　大進僧都

　　いちじこんろんほう　　　　しなのほういん
　一字金輪法　　信濃法印

　　はちじもんじゅほう　　　　さいしょうりっし
　八字文殊法　　宰相律師

　　しちようく　　　　　　　　　すけのほういんちんよ
　七曜供�@ 　　　助法印珍譽

　　ほくとぐ　　　　　　　　　　そちのほっきょうちんゆ
　北斗供　　　　師法橋珍瑜

　　てんちさいへんさい　　　はるもと
　天地災變祭　　親職

　　けいこくせいさい　　　　　はるかた
　熒惑星祭　　　�ﾘ賢

　　たいはくせいさい　　　　　くにつぐ
　太白星祭　　　國継

いじょう　　 おいのりら　　こと　　ごとうさえもんのじょう　　　しんじほうがんだいら ぶぎょうたり
以上の御祈等の事、後藤左衛門尉、進士判官代等奉行爲。

ただ　　やくし　　はちじもんじゅ　　てんちさいへん ら は　　きょう　ひょうぎあ　　　　　　　えんいん　　　 うんぬん
但し藥師、八字文殊、天地災變等者、今日評議有りて、延引すと云云。

参考�@七曜供は、一週間の日月火水目金七天体信仰の護摩炊き。

現代語嘉祿三年(1227)九月大九日乙酉。天の星の運航の異常についてのお祈りを今日始めました。
　薬師如来の護摩炊きは、大進僧都観基
　一字金輪のお経は、信濃法印道禅
　八字文殊菩薩のお経は、宰相律師
　七曜の供養は、助法印珍与
　北斗星の供養は、師法橋珍瑜
　天地災変祭は、安陪親職
　蛍惑星(火星)祭は、安陪晴賢
　太白星(金星)祭は、安陪國継
以上のお祈りの実施には、後藤左衛門尉基綱・進士判官代橘隆邦が担当です。但し、藥師・八字文殊・天地災変などは、今日検討して延期としましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
嘉祿三年(1227)九月大十三日己丑。

ごしょちう　　　　わか　　　おんえ　あ　　 べ　　　のよし　　けんじつ そ　　　さた　あ　　　 いへど　　 きげんしか　　べからず　　よって　これ　　と　　　られ
御所中に和歌の御會有る可き之由、兼日其の沙汰有ると雖も、機嫌然る不可に依而之を止め被る。

ただ　　ひとびと　　えいか　　　ないない　 め　　 て　これ　　ごらん
但し人々の詠歌は、内々に召し而之を御覽す。

現代語嘉祿三年(1227)九月大十三日己丑。御所内で和歌の会をやりたいと、最近云っておられるけど、体調が良くないので、取りやめとなりました。但し、皆が作った歌は、内々に集められて見て楽しんでおられます。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 てんぺん　　おいのり　うち　　　やくしごま　　　　はちじもんじゅほう　　てんちさいへんさいら　　さんぬ　ここのか えんいん　をはんぬ
嘉祿三年(1227)九月大廿一日丁酉。天變の御祈の内、藥師護摩、八字文殊法、天地災變祭等、去る九日 延引し訖。

きょう　しぎょうされ　ところなり　　うんぬん
今日始行被る所也と云云。

現代語嘉祿三年(1227)九月大二十一日丁酉。天の星の運航の異常についてのお祈りのうち、藥師・八字文殊・天地災変など先日の九日に延期した分を、今日始めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　ささきのほうがんのぶつな　おうみのくに　　ささきとようら　　　　はじかただ　　りょうしょうなら　　　　くりもとほくぐんら
嘉祿三年(1227)九月大廿二日戊戌。霽。佐々木判官信綱 近江國 佐々木豊浦、羽璽堅田の兩庄并びに栗本北郡等の

ぢとうしき　　　たま　　　　　　これ　さんぬ　じょうきゅうさんねんかっせんのしょうなり
地頭職を賜はる。是、去る 承久三年 合戰 之賞也。

すなは　うじがわかっせんおとき　　さいぜん　　かわ　　わた　　　　よっ　　のかんじょうぶにんのよし　　おんくだしぶみ　　の　　　られ　　　　うんぬん
即ち宇治川合戰之時、最前に河を渡るに依て之勸賞補任之由、 御下文 に載せ被ると云云。

現代語嘉祿三年(1227)九月大二十二日戊戌。晴れました。佐々木判官信綱、近江国佐々木豊浦・葉鹿堅田の両庄園、それに栗本北郡などの地頭の職を与えられました。これは、去る承久三年の合戦の褒美です。すぐに、「宇治川合戰の時、一番に川を渡った一番乗りの褒美として任命する」と、命令書に載せられましたとさ。

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