吾妻鏡入門第廿七巻

安貞二年戊子(1228)三月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　つるがおか　しんじ れい　 ごと　　　　しょうぐんけごさんぐう　　ぶしゅう　ぐぶ　せし　 たま
安貞二年(1228)三月大三日丙子。�ﾘ。鶴岡の神事例の如し。將軍家御參宮。武州供奉令め給ふ。

現代語安貞二年(1228)三月大三日丙子。晴れです。鶴岡八幡宮の上巳の節句の神事は何時もの通りです。将軍頼経様がお参り。武州泰時さんがお供をしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　しょうぐんけ　はじ　　　おんはまいであ　　　〔ゆいのはま〕
安貞二年(1228)三月大九日壬午。霽。將軍家 始めて御濱出有り〔由比濱〕。

みつみつ　さじき　　 い　　　たま　 のあいだ　　ぐぶ　　 ごと　　 ひとびと　　　ろじ　　　ぎ　　 すこぶ　これ　しょうりゃくされ
密々に棧敷に入り御う之間、供奉の如き人々の路次の儀、頗る之を省略被る。

いぬおうものあ　　　〔さんじっぴき〕　　　みうらのするがぜんじ　けみ　たり
犬追物有り〔三十疋〕。三浦駿河前司檢見爲。

　いて
射手

　　さがみのしろう　　　　　　　　 　　　　　　　するがのじろう
　相摸四郎（朝直）　　　　駿河次郎（三浦泰村）

　　ささきのほうがんさぶろう　　　　　　　　　　じょうのたろう
　佐々木判官三郎　　　　城太郎（安達義景）

　　たけだのろくろう　　　　　　　 　　　　　　　おおすがのじろうさえもんのじょう
　武田六郎（信長）　　　　大須賀次郎左衛門尉（胤秀）

　　おがさわらのろくろう　　　　　　　　　　　　 さわらのたろう
　小笠原六郎（時長）　　　佐原太郎（経連）

　　うじいえのたろう　　　　　　　　　　　　　　　ささきのはちろう
　氏家太郎（公信）　　　　佐々木八郎（信朝）

　　はらのさえもんのじょう　　　　　　　　　 　　よこみぞのろくろう
　原左衛門尉（忠康）�@ 　　横溝六郎（義行）�A

参考�@原左衛門尉忠康は、伊豆原郷で、三島市内。
参考�A横溝は、滋賀県東近江市横溝町。原と横溝は得宗被官。

現代語安貞二年(1228)三月大九日壬午。晴れました。将軍頼経様が初めて浜へ出ました〔由比ガ浜〕。非公式に仮設見学用桟敷に入られました。お供などの道中の儀式は全てこれを省略しました。円を描いた柵の中に犬を放して、矢じりを外した引目で当てる犬追物がありました〔犬は30匹〕。駿河前司三浦義村が確認役です。
射手は、
　相模四郎朝直　　三浦駿河次郎泰村
　佐々木判官三郎　城太郎安達義景
　武田六郎信長　　大須賀次郎左衛門尉胤秀
　小笠原六郎時長　佐原太郎経連
　氏家太郎公長　　佐々木八郎信朝
　原左衛門尉忠康　横溝六郎義行

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　きょう　　 さぬきのくにぜんつうじりょうの ぢとうしき　　ちょうじされ　をはんぬ
安貞二年(1228)三月大十三日丙戌。霽。今日、讃岐國善通寺�@領之地頭職を停止被 畢。 

これ　　こうぼうだいし　ごたんじょうのち　　ちょうじつふたい　　　ごきとうのみぎりなり　　ほんぶつ　すなは　だいしごじさく　　　しゃか やくしぞう　　うんぬん
是、弘法大師御誕生之地、長日不退の御祈祷之砌也。本佛は則ち大師御自作の釋迦藥師像と云々。

しか　　　　きんねん　　ぢとうを　か　　　りょう　　ぶされ　　のあいだ　　じようけっじょのむね　　かじょう　 ささ　　　　よっ　　　　こと　　そ　　　　さた　あ　　　　　　　これ　　と　　　られ　　　　うんぬん
而るに近年、地頭於彼の領に補被る之間、寺用闕如之旨、款状を捧ぐに依て、殊に其の沙汰有りて、之を止め被ると云々。

参考�@善通寺は、香川県善通寺市善通寺町615の四国霊場の一番札所。

現代語安貞二年(1228)三月大十三日丙戌。晴れました。今日、讃岐国善通寺の領地の地頭を撤退しました。ここは弘法大師誕生の地で、一日中絶え間なく祈祷をしている寺です。本尊は、弘法大師作の釈迦如来と薬師如来だそうな。しかし、最近になって地頭を置くようにしたので、寺の取り分が無くなったと、訴え状を出してきたので、特に命令があって、地頭を撤廃したのだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔　あす　しがつせつ〕　はれ　　こんや　　しょうぐんけ　おんかたがえ　　　　ため　　　おやまのしもつけにゅうどうしょうぜい　しゅくしょ　　い　　　たま
安貞二年(1228)三月大廿五日戊戌。〔明日四月節〕�ﾘ。今夜、將軍家 御方違への爲、 小山下野入道生西 が宿所に入り御う。

ごしょ　よ　　 なんぽうなり　　これ　　おんくるまやどり　た　　られ　　ため　　おうそうかた　　さ　　　せし　　たま　　　　そうしゅう いげ こしょう
御所自り南方也。是、 御車宿 を立て被ん爲、王相�@方を避け令め御う。相州以下扈從す。

参考�@王相は、王神と相神で月ごとに方角が禁忌とされる。

現代語安貞二年(1228)三月大二十五日戊戌。〔明日は四月の節会です〕晴れです。今夜、将軍頼経様は方角変えのため、小山下野入道生西(朝政)の屋敷に入りました。御所から南方です。これは牛車の車庫を建てるため、縁起の悪い王相の方角を変えるためです。相州時房さんたちがお供をしました。

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