吾妻鏡入門第廿七巻

寛喜元年己丑(1229)八月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 　だいじじ　　　をい　　　　ぶしゅうごがん　　にょほうきょう　　じっしゅくようの　ぎ　あ
寛喜元年(1229)八月小四日己亥。�ﾘ。大慈寺に於て、武州御願の如法經、十種供養之儀有り。

現代語寛喜元年(1229)八月小四日己亥。晴れです。大慈寺で、武州北条泰時さんの願いで、規則通りにお経十種をあげる供養の儀式がありました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　つるがおか　ほうじょうえ　　しょうぐんけおんいで　そうしゅう　ぶしゅうさん　　たま
寛喜元年(1229)八月小十五日庚戌。�ﾘ。鶴岡の放生會、將軍家御出。相州、武州參じ給ふ。

じょきょう　するがのぜんじ　　でわのぜんじ　　いとうのほうがんすけとき　〔ほい　　かん〕　　ごとうほうがんもとつな　〔ほうこ　〕　　ら　　ぐぶ
助教、駿河前司、出羽前司、伊東判官祐時〔布衣に冠〕後藤判官基綱〔布袴�@〕等供奉す。

たけごしょ　　ぶしゅう　　しつさん　　たま　　　　うんぬん
竹御所、武州が室參じ給ふと云々。

参考�@布袴は、布製の括り袴。指貫の袴とも。

現代語寛喜元年(1229)八月小十五日庚戌。晴れです。鶴岡八幡宮で生き物を放して贖罪する放生会に将軍頼経様が出席です。相州北条時房さん・武州北条泰時さんも参りました。助教中原師員・駿河前司三浦義村・出羽前司中条家長・伊東判官祐時〔狩衣に冠〕・後藤判官基綱〔布製の括り袴〕などがお供をしました。竹御所と北条泰時さんの奥さんも参りましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　あめふ　　しゅうじつ きゅうしせず　　やはん　いご　おおかぜ　　きょうまた　　しょぐんけごさんぐう
寛喜元年(1229)八月小十六日辛亥。雨降る終日 休止不。夜半以後 大風。今日又、將軍家御參宮。

　　　　ばば　　 やぶさめ　いげ　　　ぎ　れい　 ごと　　　　ごふれい　　　よき　あ　　　　　いへど　　ようや　もっ　りょうじつおんいで
馬塲の流鏑馬以下の儀例の如し。御不例の餘氣有ると雖も、抑く以て兩日御出。

これ　　げんじゅう　しんじたる　　よっ　　　　ぶしゅうもう　　おこな　　れるのゆえなり
是、嚴重の神事爲に依て、武州申し行は被之故也。

現代語寛喜元年(1229)八月小十六日辛亥。一日中雨が休みなしです。夜中以後は大風です。今日も又、将軍頼経様は鶴岡八幡宮へお参りです。馬場での奉納は流鏑馬はじめ何時もの通りです。病気が治り切っていませんが、なんとか両日とも出席しました。これは鎌倉にとって重要な神事だからと、泰時さんに戒められたからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ぼうふうはなは　あめ　 みのこくきゅうし　　　いね　 はな　ことごと　か　　　　　　　うんぬん
寛喜元年(1229)八月小十七日壬子。暴風甚だ雨。巳刻休止す。稻の花 悉く 枯れると云々。

現代語寛喜元年(1229)八月小十七日壬子。暴風が強く雨も激しい。午前十時頃に止みました。稲の花が皆枯れてしまいましたとさ。

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