吾妻鏡入門第廿八巻

寛喜三年辛卯(1231)十月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　ごがんじ　　　たてらる　　べ　　　のよし　さた　あ　　　　　そ　　　ち　を　ようふくじ　　　だいじし　ら　　　うち　　てん　　らる
寛喜三年(1231)十月大六日戊午。霽。御願寺を建被る可き之由沙汰有り。其の地於永福寺、大慈寺等の内に點じ被る。

りょうこくし　　 するがのぜんじ　 でわのぜんじ　　おきのにゅうどう　　しなののみんぶにゅうどう　いげ　　　おんみょうじさんにん　〔やすさだ　　はるｋた　　しげむね〕　　　あいぐ　　じゅんけんあ
兩國司、駿河前司、出羽前司、隱岐入道、 信濃民部入道 已下、陰陽師三人〔泰貞。�ﾘ賢。重宗〕を相具し巡檢有り。

こんぞうぼう　　し　　　こ　　　ち　　　そうせし
金藏房を令て此の地を相令む。

また とうざ　　　をい　　　 たくまさこんしょうげんためゆき　 め　　　これ　　ずえ　　　　せっつのかみもろかず　するがほうがんみつむら ら　　もっ　　ごしょ　　もうされをはんぬ
亦當座に於て、宅磨左近將監爲行�@を召し之を圖繪し、攝津守師員�A、 駿河判官光村等を以て御所へ申被　畢。

ようふくじ ない　　ち　は　　　みだいどころごがんじ　 りょう　 ないないこれ　さだ　　らる　　　　うんぬん　　いがのしきぶにゅうどうこうさい ぶぎょう
永福寺内の地者、御臺所御願寺の料に内々之を定め被ると云々。伊賀式部入道光西 奉行す。

参考�@宅磨左近將監爲行は、頼朝が勝長寿院の壁画を書かせた宅間為久の子。
参考�A攝津守師員は、中原師員(1185-1251)。1218に助教。中原親能・大江広元の従兄弟。

現代語寛喜三年(1231)十月大六日戊戌。晴れました。将軍専用の願をかける寺の御願寺を建立するように言い出しました。其の地は永福寺か大慈寺の敷地内としました。両国司北条時房さん・北条泰時さん・駿河前司三浦義村・出羽前司中条家長・隱岐入道行西二階堂行村・信濃民部大夫入道行然二階堂行盛以下が、陰陽師三人〔安陪泰貞・安陪晴賢・安陪重宗〕を連れて見学にいきました。金蔵坊に命じてその地相を見させました。又、その場で宅間左近将監為行を呼んで絵を画かせ、摂津守中原師員・駿河判官三浦光村を使者として将軍に伝えました。永福寺境内の地は、将軍奥さんの竹御所の御願寺用に内々に決めました。伊賀式部入道光西光宗が担当です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とらのこくぢしん　　きょう　　　あんかもんいん　　ごしょ なら　　　しんせんえんしゅうり　　こと　　 そ　　　さた　あ
寛喜三年(1231)十月大十二日甲子。寅刻地震。今日、安嘉門院�@が御所并びに神泉苑修理の事、其の沙汰有り。

これ　　しょうぐんけ　　ごえき　　ため　　せんじつ　ごけにんら　　　　あ　　られをはんぬ
是、將軍家の御役の爲、 先日御家人等に充て被�A訖。

さいごくぶん　 をい　 は　　しんせんえん　 えき　 ところ　 も　　　　 のやから　　　さた　いた　 べ　　 のむね　　おお　 いだされ　　　うんぬん
西國分に於て者、神泉苑の役の所に漏るる之輩、沙汰致す可き之旨、仰せ出被ると云々。

参考�@安嘉門院は、御高倉上皇の娘、邦子。
参考�A御家人等に充て被は、御家人に分担させた。

現代語寛喜三年(1231)十月大十二日甲子。寅の刻午前四時頃地震です。」
今日、安嘉門院邦子の御所と神泉苑の修理について検討しました。これは、将軍家の負担分を御家人に割り当てたのです。関西以西の分は、神泉苑の分担に漏れた連中に割り当てるようにと、仰せになりましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　にかいどうない　　ごだいそんどう　 こんりゅうすべ　の ち は　　　ほんどう　　ち　　　いけがみなり
寛喜三年(1231)十月大十六日戊辰。霽。二階堂内に五大尊堂を建立可き之地者、本堂の地の池上也。

 か　　ほうがく　　ただ　　べ　　　のよし　　おお　　くださる　 のあいだ　　すおうのぜんじちかざね　　しきぶのたいふにゅうどうこうさい　〔みどうぶぎょう〕　　　とうないさえもんのじょうさだかず ら
彼の方角を糺す可き之由、仰せ下被る之間、 周防前司親實、　式部大夫入道光西〔御堂奉行〕、藤内左衛門尉定員 等、

おんみょうじ はるかた いげ　 　あいともな　　 ほんどううしろやま　よじのぼ　　　　ほうがく　　こうりょう
陰陽師 �ﾘ賢 已下を相伴い、本堂後山に攀上り、方角を校量す。

したが　ごしょ　　　とら と さる　　あいだ　あいあた　　はばか　あ　　べからざるのよし　　いっきせし
從い御所の寅与申の間に相當り、憚り有る不可之由、一揆令む。

しかしながら　みょうねんは　 おうそうかた　たるべ　　　　しか　　　　　こにいどの　　おんとき　　ほんじょ　　もち　　らる　　ところのそうぼういちうこれあ　　　　 ごほんじょ　　 な　　べ
 然而、 明年者、王相方�@爲可し。而るに故二位殿の御時、本所に用い被る所之僧坊一宇之在り。御本所と爲す可き。

 か 　　ぼう　　みどう　　たてられ　べ　　　の　ち　よ　　　　 いぬいかた　あた　 か　　　なおもっ　 いぬ　 かた　 ぶんか　のよし　 はるかたこれ　 もう
彼の坊、御堂を立被る可き之地自り、乾方に當る歟。猶以て戌の方の分歟之由、�ﾘ賢之を申す。

おのおの　きさんせし　　　　そ　 おもむき　ごんじょう
 各　 歸參令め、其の趣を言上す。

いぬのこく　ぶしゅう　 おんだい　 をい　　　　びとうのうこんにゅうどう ぶぎょう　　な　　　　 みどう　ぞうえい　　にちじの さだ　　あ
戌剋、武州の御第に於て、尾藤右近入道 奉行と爲し、御堂造營の日時之定め有り。

 そ 　　ご　　　けんざいしうぜんあ　　　ちかざね　　こうさいら　そ　　　ざ　　　そうら
其の後、献盃羞膳有り。親實、光西等其の座に候う。

参考�@王相方は、厄年。

現代語寛喜三年(1231)十月大十六日戊辰。二階堂(永福寺)の境内に五大明王を祀るお堂を建立する土地は、本堂の池の北方です。
その方角を調べるように仰せになったので、周防前司中原親実・式部大夫入道光西伊賀光宗〔お堂担当〕・藤内左衛門尉定員達が、陰陽師の安陪晴賢以下を引き連れて、本堂の裏山へ登り、方角を測量しました。
その結果、御所の寅と申の関係に当たり、差し障りはありませんと意見が一致しました。しかし、来年は厄の方角に当たります。だけど故二位家政子様の時に、方角変えの本所として使った庵が一軒あります。これを本所にすればよい。その庵は、お堂を建てる予定地から北西に当たるのでしょうか？
「いやまだ戌の分の内ですよ。」と晴賢が言いました。それぞれ戻って来てその事を報告しました。
午後八時頃、泰時さんの屋敷で尾藤右近入道が担当して、お堂を建立する日時を決めました。その後、お酒と御馳走が出ました。周防前司中原親実・伊賀光宗も一緒しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あめしき　　　　ふ
寛喜三年(1231)十月大十九日辛未。雨頻りに降る。

にかいどう　みどうの ち　　　あまなわ　あらた　　　じょうのたろう　みなみ　　ちばのすけの　きた　　にしやまの かたわら　てんじょうさる　　　　りょうこくし　また　じゅんけん　たま
二階堂御堂之地を甘繩に改め、 城太郎�@が南、 千葉介�A之北、 西山之 傍 を 點定 被る。兩國司亦、巡檢し給ふ。

きょう　たちばなでら くようの　ひに　あいあた　　　　ふきつなり　　うんぬん　　よっ　　おんみょうどう すうやから　これ　 めしけっ　 らる
今日、 橘寺 供養之日于相當り、不吉也と云々。仍て 陰陽道 數輩に之を召决せ被る。

やすさだ　はるしげ　ながしげ　 ふみもといちどう　 これ　 もう　　　　　　くだん　てら くよう は　かんじごねんなり
泰貞、�ﾘ茂、長重、文元一同に之を申すに、件の寺供養者寛治五年也。

しか　　　くよう　と　さくじ　　おのおの　べつじ なり　　はなは　はばか　あ　　　べからず　 うんぬん
而るに供養与作事とは 各 別事也。甚だ憚り有る不可と云々。

また　 さいとうひょうえにゅうどうじょうえん もう　　　　い　　　　　 かのとひつじ　ひ　　ふきつ　　しょけんあ　　　　うんぬん
亦、 齋藤兵衛入道淨圓�B申して云はく。辛未の日、不吉の所見有りと云々。

 か 　　い　　　これ　　い　　　　　ごしょういんな　　　　て　　　 きょう　　　もち　　らる　　なり
彼と云ひ此と云ひ、御承引無くし兮、今日を用い被る也。

ほっきょうえんぜんもう　　　　い　　　　　あらあら　せんき　　かんがえ　　　かのとひつじのれい　いつ　あらず
 法橋圓全申して云はく。粗、先規を考るに、 辛未 之例 一に非。

いはゆる　　ごいちじょういん　 かんじんよねん しょうがつ じうくにち かのとひつじ　　こうふくじ　あみだどう　　　ごとう　はしらだて
 所謂、後一條院の寛仁四年 正月 十九日 辛未、 興福寺阿弥陀堂の御塔柱立。

ほりかわいん　こうわにねんしちがつむいか かのとひつじ　かすがしゃ　　をい　いっさいきょう　　くよう　　　　おな　　ひ　ひよししゃ　　をい　 だいはんやきょう　 くよう
堀河院の康和二年七月六日 辛未、 春日社に於て一切經を供養す。同じ日日吉社に於て大般若經を供養す。

 とばいん 　　げんえいがんねん うるうくがつ にじうににち かのとひつじ くまのさん　いっさいきょうくよう　〔ぎょうこうあ　　〕
鳥羽院の元永元年 閏九月 廿二日 辛未、熊野山の一切經供養〔御幸有り〕。

すとくいん　　ほうえんにねんさんがつよっか かのとひつじ　くまのさんほんぐう　　ごじゅうおんとう　くよう
崇徳院の保延二年 三月四日 辛未、 熊野山本宮の五重御塔供養。

　ごとばいん　　　げんりゃくがんねん うるうじうがつとおか かのとひつじ　ほうおうごがん　　れんげおういん　 をい　 まんぶよんかん　　おきょう くよう ら　なり　　うんぬん
後鳥羽院の 元暦元年 閏十月 十日　辛未、法皇御願、蓮花王院に於て万部四巻の御經供養等也と云々。

参考�@城太郎は、安達義景。20日に甘縄とある。
参考�A千葉介は、時胤。現在の長谷か坂下あたりにも屋敷があったのか？西山は長谷寺あたりか？
参考�B齋藤兵衛入道淨圓は、貞永式目の執筆者の一人らしい。

現代語寛喜三年(1231)十月大十九日辛未。雨が盛んに降っています。二階堂に建てる予定のお堂の土地を甘縄に変更です。城太郎安達義景の南で、千葉介時胤の北、西山のそばに決めました。両国司北条時房さんと北条泰時さんが又現地視察をしました。
今日は、橘寺の開眼供養の日に当たるので、縁起が良くないそうです。それで、陰陽師数人を呼んで占わせました。泰貞・晴茂・長重・文元が一致して云うには、その寺の開眼供養は寛治五年(1091)です。しかし、開眼供養と造作始めは全く別の事ですので、差し障りはありませんだとさ。又、斉藤兵衛入道浄円が云うには、「辛未の日は、縁起が悪いと云う意見もあります。」あれもこれも、賛成がないのにあえて今日にしています。法橋円全が云うには「色々昔の例を考えると、辛未の例は一つではありません。
それは、後一条院の寛仁四年(1020)正月十九日辛未に興福寺阿弥陀堂の九輪を建てました。
堀河院の康和二年(1100)七月六日辛未に春日大社で一切経を奉納する法要があり、同じ日に日吉神社で大般若経の奉納がありました。
鳥羽院の元永元年(1118)閏九月二十二日辛未に熊野山の一切経の奉納です〔院の詣でありました〕。
崇徳院の保延二年(1136)三月四日辛未に熊野山本宮の五重塔の開眼供養でした。
後鳥羽院の元暦元年(1184)閏十月十日辛未に法皇の願として蓮華王院三十三間堂で万部の経典四巻を読むお経の法要がありました。」とさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 すおうのぜんじちかざね　いがのしきぶにゅうどうこうさい　とうないさえもんのじょうさだかず
寛喜三年(1231)十月大廿日壬申。周防前司親實、伊賀式部入道光西、藤内左衛門尉定員、

やすさだ　はるかたら　　　あそん　　あいぐ　　　　みどうち　の　ほうがく　　み　　　ため　　あまなわ　 むか
泰貞・�ﾘ賢等の朝臣を相具し、御堂地之方角を看ん爲、甘繩へ向う。

これ　　ごしょ　よ　　ひつじさる　かたなり　 ほうがく　  そ　　 はばか　な　　　　 さくじ　なんあ　　べからざる　よし　　これ　 もう
是、御所自り 坤�@の方也。方角に其の憚り無し。作事難有る 不可 由、之を申す。

参考�@坤は、西南。但し若宮大路を南北としてみている。長谷寺の方向。

現代語寛喜三年(1231)十月大二十日壬申。周防前司中原親実・式部大夫入道光西伊賀光宗・藤内左衛門尉定員達は、安陪泰貞・安陪晴賢等の陰陽師を引き連れて、新築のお堂の土地の方角を見るために、甘縄へ向かいました。「ここは、御所から西南の方角です。方角に支障はありません。工事に妨げはありません。」と云いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　ばん　 およ　 おおかぜふ　　 いぬのよんとき　そうしゅう　くもんじょ　しょうぼう
寛喜三年(1231)十月大廿五日丁丑。�ﾘ。晩に及び大風吹く。戌四剋、相州の公文所�@燒亡す。

みなみかぜ しき　　　あお　　　ひがし　しょうちょうじゅいんばしあた　　　 およ　　　 にし　　ようふくじそうもんの　うちもんに まで　　いんえん と　　　　ごと
 南風 頻りに扇ぎ、東は 勝長壽院橋�A邊りに及び、西は永福寺惣門之内門�B于迄、烟炎飛ぶが如し。

うだいしょうけ　なら　　　 うけいちょう　　　ほけどう　　 おな　　　　ごほんぞんら　かいじん　 な　　　　　およ　　じんちく　しょうし　そ　　かず　 し　　　ず
右大將家�C并びに右京兆の法花堂�D、同じく御本尊等灰燼と爲す。凡そ人畜の燒死其の員を知ら不。

これ　　ぬすっと　　ほうかの　よし　　そ　　　きこ　　あ　　　　　うんぬん
是、盜人の放火之由、其の聞へ有りと云々。

参考�@公文所は、家政機関。当時は一棟一部屋なので、別棟であろう。大倉幕府跡地カ？
参考�A勝長壽院橋は、明治の地図では、勝長寿院谷への道と荏柄天神の参道が川を挟んで向かい合っているあたりであろう。
参考�B永福寺惣門之内門とは、門が二重にあったのだろうか？
参考�C右大將家は、頼朝。現在の頼朝墓の場所に法華堂があったと推定されている。
参考�D右京兆の法花堂は、義時墓。頼朝墓の東の大江広元墓や島津忠久墓へ上る手前の広場と指定されている。先年発掘調査の結果雨受けの砂利敷きが発見されてる。

現代語寛喜三年(1231)十月大二十五日丁丑。晴れです。晩になって大風が吹きました。午後九時半頃に相州時房さんの家政事務所が燃えました。南風が盛んに吹き、東(南)は勝長寿院橋(大御堂橋カ)辺りまで火が回り、西(東)は永福寺の総門の内門まで、炎が飛んだようです。頼朝様の法華堂と義時さんの法華堂とその御本尊も灰になってしまいました。人や家畜の焼け死んだ数は数えきれません。これは泥棒の放火だと云われているそうな。

疑問東は勝長寿院橋。西は永福寺総門とあるが、東西が反対ではないか？或いは筋替橋のあたりに永福寺の総門があったのカ？参照地図。若宮大路は２７度ぶれているのだが、それを南北にあってるものと前提し、又永福寺総門が筋替橋あたりにあったとして考えると、旧大倉幕府一帯が燃えたようだ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　そうしゅう　ぶしゅう　ひょうじょうしょ　さん　たま
寛喜三年(1231)十月大廿七日乙夘。�ﾘ。相州、武州 評定所に參じ給ふ。

せっつのかみもろかず　するがのぜんじよしむら　おきのにゅうどうぎょうさい　でわのぜんじいえなが　みんぶおのたいふにゅうどうぎょうねん　かがのかみやすとし　げんばのじょうやすつらら　しゅっし
 攝津守師員、 駿河前司義村、 隱岐入道行西、 出羽前司家長、 民部大夫入道行然、 加賀守康俊、 玄番允康連 等 出仕す。

しきぶのたいふにゅうどうこうさい　さがみだいじょうなりとき　　ほけどう　なら　　　　ほんぞん わざわ　　　こと　　 しつ　 もう
 式部大夫入道光西、相摸大掾業時、法花堂并びに本尊 災いの事を執し申す。

たと　　　りうん　　かさい　たり　　いへど　　　かんとう　　をい　 もっと 　　ふい　すべ　　おも　　め　　　のよし　おのおの　いけん　　じょう　　しん
縱い理運の火災�@爲と雖も、關東に於て尤も怖畏可く思い食す�A之由、　各　意見の状を進ず。

おな　　　 ぞうえい　 こと　ひょうじょう　　へらる　ところ　　もろかず　ぎょうさい　やすつら　　ごと　　　　　　ふんぼどうら　えんじょうの　とき　　さいこう　　れい　な　　のよしこれ　　もう　　　　よっ
同じく造營の事、評定を經被る處、師員、行西、康連の如きは、墳墓堂等炎上之時、再興の例無き之由之を申すに依て、

ごじょせい　あ　　　　　　　　じけ　　 おお　　べ　　 のむねぎじょう　　　 うんぬん　 また　りょうごがんじしんぞう　　こと　　こ　　　かさい　　よっ　　えんいん
御助成有りて、寺家に仰す可き之旨議定すと云々。又、兩御願寺新造の事、此の火災に依て延引す。

だいいち　とくせいたるの　よし　　よ　もっ　　おうか　　　　うんぬん
-第一の徳政爲之由、世以て謳謌すと云々。

参考�@理運の火災は、止むを得ない火災。
参考�A怖畏可く思い食すは、関東の守りの頼朝と義時の両法華堂が燃えてしまったので、おびえる。

現代語寛喜三年(1231)十月大二十七日乙卯。晴れです。相州北条時房さん・武州北条泰時さんが政務事務所へ来られました。摂津守中原師員・駿河前司三浦義村・隱岐入道行西二階堂行村・出羽前司中条家長・民部大夫入道行然二階堂行盛・加賀守町野康俊・玄番允太田康連などが出勤してきました。式部大夫入道光西伊賀光宗と相模大掾佐藤業時が、法華堂と本尊が燃えた事を報告しました。「例え止むを得ない火災だとしても、草創者の両法華堂が燃えた事は、鎌倉幕府としては前途を悲観しおびえてしまいます。」とそれぞれ意見書を提出しました。同法華堂の再建を検討した所、中原師員・伊賀光宗・太田康連達は、「墓のお堂が燃えた時に再建した例はありませんよ。」と云うので、補助金を出して寺関係者に言いつけるように決定しましたとさ。又、将軍の願のお堂の建設はこの火事で延期にしました。この中止は火事の後の出資を控えるので、良い政治だと世間が褒めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　さんぬ　じうににち　 つちみかどいん　 あわのくに　　をい　　ほうぎょ　〔しゅんじゅうさんじうしち〕　のよし　　きょうとよ　　これ　　もうさる
寛喜三年(1231)十月大廿八日庚辰。�ﾘ。去る十二日。土御門院�@、阿波國に於て崩御〔春秋卅七〕之由、京都自り之を申被る。

参考�@土御門院の墓は、徳島県鳴門市里浦町花面の宝珠寺にある。同寺に清少納言の墓もあり。

現代語寛喜三年(1231)十月大二十八日庚辰。晴れです。先日の12日に土御門院が阿波の国で亡くなられた〔お年は37歳〕そうなと、京都から云って来ました。

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