吾妻鏡入門第廿九巻

天福二年甲午(1234)正月大

天福二年(1234)正月大一日庚子。天霽。風靜。垸飯。相州御沙汰。如例將軍家出御。八條少將候御簾役。御劍出羽前司家長。御弓箭佐原三郎左衛門尉。御行騰沓式部丞朝直。
 一御馬〔置鞍〕
   越後太郎     同次郎
 二御馬
   相摸六郎     本間三郎左衛門尉
 三御馬
   掃部助太郎    本間次郎左衛門尉
 四御馬
   佐原四郎     同六郎兵衛尉
 五御馬
   本間左衛門尉   同四郎左衛門尉

読下し                   そらはれ かぜしずか おうばん そうしゅう  おんさた  れい  ごと  しょうぐんけおんいで はちじょうしょうしょう おんみすやく そうら
天福二年(1234)正月大一日庚子。天霽。風靜。垸飯。相州が御沙汰。例の如く將軍家出御。 八條少將 御簾役に候う。

ぎょけん でわのぜんじいえなが  おんゆみや さはらのさぶろうさえもんのじょう  おんむかばきくつ しきぶのじょうともなお
御劍は出羽前司家長。御弓箭は佐原三郎左衛門尉。 御行騰沓は 式部丞朝直。

  いちのおんうま〔くら お  〕
 一御馬〔鞍を置く〕

      えちごのたろう           おな    じろう
   越後太郎     同じき次郎

  にのおんうま
 二御馬

      さがみのろくろう          ほんまのさぶろうさえもんのじょう
   相摸六郎     本間三郎左衛門尉

  さんのおんうま
 三御馬

      かもんのすけたろう        ほんまのじろうさえもんのじょう
   掃部助太郎    本間次郎左衛門尉

  よんのおんうま
 四御馬

      さはらのしろう           おな   ろくろうひょうえのじょう
   佐原四郎     同じき六郎兵衛尉

  ごのおんうま
 五御馬

      ほんまのさえもんのじょう     おな    しろうさえもんのじょう
   本間左衛門尉   同じき四郎左衛門尉

現代語天福二年(1234)正月大一日庚子。空は晴れて風も静かです。将軍(頼経17才)への御馳走のふるまいは、相州時房さんの献上です。何時もの通り将軍頼経様のお出ましです。八条少将実清さんが御簾を巻き上げる役です。刀の献上は出羽前司中条家長。弓矢の献上は佐原三郎左衛門尉家連。乗馬袴(行縢)乗馬沓は式部丞大仏流北条朝直です。引き出物の馬は、

 一頭目〔鞍付〕を引くのは
  越後太郎名越流北条光時 同じ次郎北条時章
 二頭目の馬を引くのは
  相模六郎大仏流北条時定 本間三郎左衛門尉元忠
 
三頭目の馬を引くのは
  掃部助太郎北条信時   本間次郎左衛門尉忠貞
 四頭目の馬を引くのは
  佐原四郎光連      同じ六郎兵衛尉佐原時連
 
五頭目の馬を引くのは 
  本間左衛門尉      同じ四郎左衛門尉本間光忠。

参考本間は、時房の代官として佐渡へ行き、江戸時代に庄内酒田へ分家し大富豪となり「本間様には及びもせぬがせめてなりたや殿様に」と唄われる。

天福二年(1234)正月大二日辛丑。陰。晩小雨洒。今日椀飯〔武州御沙汰〕御劍陸奥式部大夫〔布衣〕御弓箭越後太郎。御行騰沓駿河次郎。
 一御馬〔置鞍〕
   隱岐三郎左衛門尉 同四郎左衛門尉

読下し                    くも    ばん  こさめ そそ    きょう   おうばん 〔ぶしゅう   おんさた〕
天福二年(1234)正月大二日辛丑。陰り。晩に小雨洒ぐ。今日の椀飯〔武州の御沙汰〕

ぎょけん  むつのしきぶたいふ 〔 ほい 〕   おんゆみや  えちごのたろう  おんむかばきくつ するがのじろう
御劍は陸奥式部大夫〔布衣〕。御弓箭は越後太郎。御行騰沓は駿河次郎。

  いちのおんうま〔くら お  〕
 一御馬〔鞍を置く〕

      おきのさぶろうさえもんのじょう  おな    しろうさえもんのじょう
   隱岐三郎左衛門尉 同じき四郎左衛門尉

現代語天福二年(1234)正月大二日辛丑。曇りです。夜になって小雨が降りました。今日の将軍(頼経17才)への御馳走のふるまいは、武州北条泰時さんの献上です。刀の献上は陸奥式部大夫北条政村〔狩衣〕。弓矢の献上は越後太郎北条光時。乗馬袴(行縢)乗馬沓は駿河次郎三浦泰村。引き出物の馬は、
 一頭目〔鞍付〕を引くのは
  隠岐三郎左衛門尉二階堂行義 同じ四郎左衛門尉二階堂行久

天福二年(1234)正月大三日壬寅。垸飯以後。將軍家〔御直衣。御車〕御行始。武州御亭。上野介朝光役御釼。

読下し                   おうばん いご   しょうぐんけ 〔ごのうし おくるま〕 みゆきはじめ  ぶしゅう おんてい  こうづけのすけともみつ ぎょけん  えき
天福二年(1234)正月大三日壬寅。垸飯以後。將軍家〔御直衣。御車〕御行始。武州の御亭。 上野介朝光 御釼を役す。

現代語天福二年(1234)正月大三日壬寅。御馳走のふるまいの後、将軍頼経様〔狩衣に牛車〕は、年明け初外出で、泰時さんの屋敷です。上野介結城朝光が刀持ちです。

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