吾妻鏡入門第卅一巻 　

嘉禎三年丁酉(1237)十二月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あめふ　　　　にっしょくせいげんせず　きのう　　そら　　はれ　　やはん　いご　くも　　かげ　　　うしとらのこく よ　　あめふ
嘉禎三年(1237)十二月大一日戊寅。雨降る。日蝕 正現不。昨日の天は�ﾘ。夜半以後雲に陰り、丑寅剋 自り雨降る。

しょく　じぶん　　　うぃぜんこんごうにょほうぶつ　〔ごしりょう〕　　　ぞうりゅうされ　　　かぞえのかみ これ　ぶぎょう
蝕の時分、愛染金剛如法�@佛〔五指量�A〕を造立被る。主計頭 之を奉行す。

参考�@如法は、規定どおりの。
参考�A五指量は、二寸五分。http://www.sakai.zaq.ne.jp/piicats/keiai.htm

現代語嘉禎三年(1237)十二月大一日戊寅。雨降りです。日食は現れません。昨日の空は晴れてましたが、夜中以後曇って来て、午前二時頃から雨が降って来ました。日食の予定時間に愛染明王・金剛明王を仏法通り〔二寸五分〕に造りました。主計頭中原師員が担当です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きのう　　しょく　　おいの　　　　そうさんにんごんぎょう　　　 きょう　ごしょ　　　めされ　　おのおの　ぎんけんひとこし　たま
嘉禎三年(1237)十二月大二日己夘。昨日の蝕の御祈りを僧三人勤行す。今日御所に召被、各に 銀劔一腰を賜はる。

いせのかみさだかず　これ　　ぶぎょう
伊勢守定員�@之を奉行す。

参考�@伊勢守定員は、先月京都へ使いをしたので昇進している。

現代語嘉禎三年(1237)十二月大二日己卯。昨日の日食のお祈りを坊さん3人が勤めました。今日、御所に呼ばれてそれぞれに刀一振りを与えました。伊勢守藤原定員が担当です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　にちげつしょく およ　てんぺん ちょうじょう　おいのり　ため　 ごしょ　　 をい　　　 ぞくしょう　おんまつり　おこなはれ　べ
嘉禎三年(1237)十二月大十日丁亥。日 月蝕 及び天變 重疊の御祈の爲、御所に於て、属星�@の御祭を行被る可く、

しょうぐんけまつり　にわにしゅつごあ　　べ　　　　　よっ　　　　きょうはるかたこれ　　ほうし　　ためさんろう
將軍家祭の庭于出御有る可きに依て、今日�ﾘ賢之を奉仕の爲參籠す。

　うだいしょうけ　　　うふしょうぐんら　　　おんときのれい　　まか　　　ちょうけいぶく　ひと さんにゅう　べからずのよし　 おお　 らる　　　　うんぬん
右大將家、右府將軍等の御時之例に任せ、重輕服の人 參入す不可之由、仰せ被ると云々。

参考�@属星は、陰陽道で生年の干支によって、運命を支配する北斗七星の各星にあてる。

現代語嘉禎三年(1237)十二月大十日丁亥。日食や月食のなど天変地異が重なるのでその鎮静のお祈りのために、御所で北斗七星祭を行うから、将軍頼経様が庭にお出になるので、今日晴賢がこのためにおこもりをしました。右大将家頼朝様や右大臣将軍実朝様の時代の例の通り、服喪中の人は入ってはいけないと、仰せになられましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　きょう　　　かなくぼうえもんたいふゆきちか　　おお　　　　　　ごしょ　　たつみ　かど　　そうじ　され
嘉禎三年(1237)十二月大十二日己丑。天�ﾘ。今日、金窪右衛門大夫行親に仰せて、御所の巽の角を掃除被る。

おんまつり　おこなはれ　べ　　　　よっ　　なり
御祭を行被る可きに依て也。

いのこく　　はるかたあそんこれ　　ほうし　　　　しょうぐんけそくたい　 き　　 しゅつご　　ごはい あ　　　　くらのごんのかみすけちか ぶぎょうたり
亥剋、�ﾘ賢朝臣之を奉仕す。將軍家束帶を着て出御。御拝有り。内藏權頭資親　奉行爲。

さんじうや これ　おこなはれ　べ　　　　まいど しゅつごあ　　 べ　　 　のよし　　うんぬん
 卅夜 之を行被る可き。毎度出御有る可き之由と云々。

現代語嘉禎三年(1237)十二月大十二日己丑。空は晴です。今日、金窪右衛門大夫行親に仰せになって、御所の東南の隅を掃除させました。そこで星祭を行うからです。午後十時、安陪晴賢さんがそれを勤めました。将軍頼経様は束帯を着てお出ましになり、礼拝しました。内蔵権頭資親が担当です。三十夜これを行いますが、毎夜出席するとの事だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　うけいちょう しつけ　　ははに　  ついぶく　ため　　か　 やまのうち　ふんぼのかたわ　 をい　　　 いちぼんう　 たてらる
嘉禎三年(1237)十二月大十三日庚寅。�ﾘ。右京兆室家�@の母尼の追福の爲、彼の山内の墳墓之傍に於て、一梵宇�Aを建被る。

きょう　　くよう　　　ぎ　あ　　　　　どうし　　しょうごんぼうりっしぎょうゆう　　しょうさく　とおとうみのかみ　ちょうもんせし　たま
今日供養の儀有り。導師は莊嚴房律師行勇。匠作、 遠江守、 聽聞令め給ふ。

参考�@室家は、安保實定の女。
参考�A一梵宇は、後の常楽寺。寺伝では釈迦如来というが、泰時の時代は阿弥陀とも謂われる。

現代語嘉禎三年(1237)十二月大十三日庚寅。晴です。右京兆泰時さんの奥さんがお母さんの追善供養に、山内のお墓のそばにお堂を建てました。今日、開眼供養の式典がありました。指導僧は荘厳房律師退耕行勇です。匠作時房さん・遠江守北条朝時も、参列しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くも　　　　あめふ　　　　 こんやげっしょくあらわ ず　　かく　しょくあらわ べからずのよし　てんもんどうひごろ これ　 もう　　い　　　　　　　うんぬん
嘉禎三年(1237)十二月大十五日壬辰。陰り、雨下る。今夜月蝕現れ不。此の蝕現る不可之由、天文道日來之を申し入れると云々。

現代語嘉禎三年(1237)十二月大十五日壬辰。曇りのち雨です。今夜月食は現れません。この月食は見る事はできませんと、天文方が云って来ましたとさ。

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