吾妻鏡入門第卅二巻

嘉禎四年戊戌(1238)十月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くも　　はれ　　　よ　　い　　 はなは　あめ
嘉禎四年(1238)十月大三日甲辰。陰り�ﾘ。夜に入り甚だ雨。

きょう　くらまでらじょうとう　　しょうぐんけ　ごほうが　あ　　　　　うまさんびき　　ぎょけん　　さきんら　なり　　かわごえかもんのすけ　おんし　 な　　　　 うんぬん
今日鞍馬寺上棟。將軍家御奉加有り。馬三疋、御釼、砂金等也。 河越掃部助 御使を爲すと云々。

こんや　　　きたしらかわいん　〔きんりおんはは〕　ごとんし　　 うんぬん　　ひごろ かっけ　　いたづき　　うんぬん
今夜、北白河院〔禁裏御母〕御頓死と云々。日來脚氣の御勞�@と云々。

参考�@御勞は、病気。

現代語嘉禎四年(1238)十月大三日甲辰。曇り時々晴れ。夜になって大雨。今日は、鞍馬寺の棟上げ式です。将軍頼経様は寄付をしました。馬三頭、刀、砂金などです。河越掃部助泰重が代参しました。
今夜北白河院陳子〔天皇の母〕が亡くなりました。脚気を病んでいたそうです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あめふる　まつどのぜんじょうでんか 〔もろいえ〕 てんのうじ　　をい　　こう　　　　うんぬん
嘉禎四年(1238)十月大四日乙巳。雨下。松殿禪定殿下〔師家〕�@天王寺に於て薨ずと云々。」

参考�@松殿禪定殿下は、松殿師家。正二位・摂政・内大臣。摂政関白松殿基房の三男。67才。

きょう　　　なんとじゅうりょ むさしとくごう りゅうえんとう だいじべっとうしき　　ぶ
今日、南都住侶 武藏得業�A隆圓 東大寺別當職に補す。

くだん　てら　 べっとうしき　 これ おととし なんけい　 しゅうと　ほうき　そうどう　　とき　　かんとうを　ちうせつ　 かっ　のあいだ　 けんじょう　おこなは　べ　　　のむね
件の寺の別當職、是去々年南京の衆徒蜂起騒動の時、關東於忠節を竭す之間、勸賞を行被る可き之旨、

けんじつごやくだくあ　　　　　よっ　　なり
兼日御約諾有るに依て也。

とうじ　　さきのべっとう らいぎょうとくごうは　　じょうきゅうへいらん　ちょうほん ひでやす　しそく　　かく　　お　　　　あまつさ　やまのべのしょう　りゃくりょう
當寺の前別當 頼曉得業者、 承久 兵乱の 張本 秀康の子息を隱し置く。剩へ 山邊庄�Bを掠領す。

 そ　　とがすで　ちょうじょう
其の過已に重疊。

かいえきさる　　べ　　 のよし　　とうだいじべっとうそうじょうぼう　　ふれおお　 らる　のところ　 くだん　てらは　　らいぎょうべっ　　　　　そうでん　 ため　　ほんじょ　 せいばい　 あらず
改易被る可き之由、東大寺別當僧正坊へ觸仰せ被る之處、件の寺者、頼曉別しての相傳の爲、本所の成敗に非。

 そ　　み　の　とが　　よっ　　　　ぼっしゅうさる　　　をい　 は　　　じき　　　ごさた　 あ　　　べ　　　のむね　　ほう　　もうさる　　　　つ　　　　　かく　　おはから　　　およ
其の身之咎に依て、没収被るに於て者、直に御沙汰有る可き之旨、報じ申被るに就き、此の御計いに及ぶ。

参考�A得業は、奈良の三会を勤め終えた僧の学階。
参考�B山邊庄は、奈良県宇陀市榛原区らしい。

現代語嘉禎四年(1238)十月大四日乙巳。雨降る。松殿師家殿下が天王寺で亡くなりましたそうな。」

今日、奈良の坊さんの武蔵得業隆円が東大寺の筆頭職に任命されました。
この寺の筆頭は、一昨年(31巻嘉禎2年十月2日条)の奈良の僧侶が武装蜂起した時に関東のために尽くしたので、約束があったからです。今の前任筆頭者の頼暁得業は、承久の乱の時に首謀者の足利秀康の子供を隠したり、あげく山辺庄を横取りしました。その罪が重なったので解任するように、東大寺筆頭の坊舎へ命令したところ、「山辺庄は頼暁が別な理由で受け継いだものなので、本所の東大寺が口出せる事ではありません。個人的罪によって没収されるのは、直接本人に指導して下さい。」と報告してきたので、この筆頭交代をさせたのです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 まつどのこう　　たま　 こと　さきのぶしゅう　〔やすとき〕　ゆいせき　とぶら　せし　 もう　 たま
嘉禎四年(1238)十月大七日戊申。松殿薨じ給ふ事、前武州〔泰時〕遺跡を訪は令め申し給ふ。

おのさわさこんたいふなかざね　おんし　　な　　　　うんぬん
小野澤左近大夫仲實御使を爲すと云々。

現代語嘉禎四年(1238)十月大七日戊申。松殿師家殿下が亡くなったことについて、前武州泰時さんは弔問をしました。小野沢左近大夫仲実が使いとして行きましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　いのこく にょいんしらかわでん　 ほうむ　たてまつ　うんぬん
嘉禎四年(1238)十月大九日庚戌。�ﾘ。亥刻 女院北白河殿に葬り奉ると云々。

現代語嘉禎四年(1238)十月大九日庚戌。晴れです。夜10時頃に女院陳子を北白河殿に葬りましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たんごのくに　そかべのしょうは　　ごしらかわいんほけどうりょうたる　　よっ　　　　ぢとう　　 ぶ　されず
嘉禎四年(1238)十月大十一日壬子。丹後國�@曾我部庄�A者、後白河院法花堂領爲に依て、地頭を補被不。

よっ　　 しゅごし　　にゅうぶ　　ちょうじすべ
仍て守護使の入部を停止可し。

ようち　　いげ　　　ことしゅつらいのときは　　しょうか　 はんぴ　 きゅうめい　　　 そ　　　み　　 めしわた　 べ　　　のよし　　きょうさきのむさしのかみ せぎょうさる
夜討以下の事出來之時者、庄家は犯否を糺明し、其の身を召渡す可き之由、今日前武藏守 施行被る。

　こうばっか　　　ごゆゆめい　　こと　　か　　　　ほけどう　　　こと　 おも　　　　らる　　のあいだ　　これ　 もう　　おこな　せし　 たま　　　　うんぬん
故右幕下の御遺命、殊に彼の法華堂の事を重んぜ被る之間、之を申し行は令め給ふと云々。

参考�@丹後國は、丹波国の間違い。
参考�A曾我部庄は、京都府亀岡市曽我部町。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十一日壬子。丹波國曽我部庄は、後白河院法華堂(院の墓)の領地なので、地頭を任命していません。ですから守護の代官の干渉も止めます。夜討強盗などが起きた時は、荘園現地管理者が犯罪を究明し、逮捕してその身柄を幕府側に引き渡すよう、今日泰時さんは命じました。頼朝様の御遺志でもあり、特にこの法華堂の事を重要になされていたので、これを命じ実行したのだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけごさんだい　〔　ごのうし　　はちようのくるま〕　　　さまごんのかみもりなが　　ぎょうぶしゅゆういえみりら ぐぶ
嘉禎四年(1238)十月大十二日癸丑。將軍家御參内〔御直衣�@。八葉車〕。左馬權頭盛長、刑部少輔家盛等供奉す。

こうしゃ　 ちかすえあそんなり　　 そ　　ご　いちじょう　 いまでがわ　りょうおんてい　 わた　 たま
後車は親季朝臣也。其の後一條�A、今出河�Bの兩御亭へ渡り御う。

　あす　かんとう　　ごげこう　あ　　　べ　　　の　ゆえなり　　いちじょうどの　をい　　おんおくりものはんたなり
明日關東へ御下向有る可き之故也。一條殿に於て、御贈物繁多也。

しゅういなごん　〔ゆきまりきょう〕　しんぴつ　　こきんわかしゅう　　　まさただあそん　そうでん　いしょら　そ　　　うち　　あ　　　　　うんぬん
拾遺納言�C〔行成卿〕眞筆の古今和哥集。雅忠朝臣�D相傳の醫書�E等其の内に在りと云々。」

きょう　　　　きないさいごくちう　しょうえんごうほう　じゅうにん　 この　　　ごうせつ　 ばくえき　 にんじょう　せつがい　もっ　なりわい　な　　 やから　こと
今日、畿内西國中の庄園郷保の住人、好みて強竊�F、博奕、刄傷、殺害を以て業と爲す輩の事、

じんじゃ　 ぶつじ　 けんもんせいかりょう　きらわず　　あいふれず　そ　　み　　 め　　 と　　　　　かつう　ざいしょ　 ちうしんすべ　　のよし　　 しゅごにんら　　 おお　　ふく　　らる　　　　うんぬん
神社、佛寺、權門勢家領を嫌不、相觸不其の身を召し取り、且は在所を注進可き之由、守護人等に仰せ含め被ると云々。

参考�@直衣は、〔直(ただ)の服の意〕天皇以下、三位以上の貴族の平常の服。
参考�A一條は、道家で頼経の父。
参考�B今出河は、公経で頼経の母方の祖父。
参考�C拾遺納言は、拾遺集権大納言。
参考�D雅忠朝臣は、丹波。当時の医者は和気と丹波。父の康頼が、中国の漢方を編纂しなおした「医心方」を著した。
参考�E醫書は、丹波雅忠著書の医略抄。
参考�F強竊は、強盗と窃盗。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十二日癸丑。将軍頼経様は、宮中へお出かけです〔直衣。八葉の牛車〕左馬権頭盛長・刑部少輔家盛がお供です。後ろの牛車には藤原親季さんが続いています。その後、父の一条九条道家と母方の祖父今出川公経の双方の屋敷へ行きました。明日関東へお立ちになるからです。一条殿では、贈り物が沢山ありました。拾遺集権大納言行成さん直筆の古今和歌集。丹波雅忠家に伝わる医学書がその中に入っていたそうな。」

今日、近畿地方や九州地方の荘園・郊外の郷・街中の保の住民で、好きで強盗や刃傷・殺害を商売にしている連中については、寺社領だろうと身分の高い人や大金持ちの人の領地だろうと気にせず、通告せずに逮捕して、或いは住んでいる所を幕府へ書いて提出するように、守護人に命令を出しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　そらはれ　とらのいってん　しょうぐんけかんとう　　ごげこう　　　ごしんぱつなり
嘉禎四年(1238)十月大十三日甲寅。天霽。寅一點、將軍家關東へ御下向の御進發也。

ごじそう　おかざきそうじょうしょうげん　　くすし　　よしもと　　ときながら　　あそんなり　　おんみょうじ　やすさだ　　はるかたら　　あそん
御持僧は岡崎僧正成源。醫師は良基、時長等の朝臣也。陰陽師は泰貞、�ﾘ賢等の朝臣。

また　おんみょうのかみこれのりあそん これ　　めしぐさる　　　　ただなお　　すえなお　　ありなおら　　あそん　　おんみがため　そうら
又、　陰陽頭維範朝臣　之を召具被る。忠尚、季尚、在直等の朝臣、御身固に候う。

ぜんこうじん　 ぐぶにん　ずいへいら　　ごじゅらく　のとき　　おな　　　　ただ　　おのおの　ぎょうしょう　かび　ぜんぎ　　す
前後陣の供奉人随兵等、御入洛之時に同じ。但し　各の 行粧 花美前儀に軼ぎる。

だいしょうこくぜんこう　しのみやがわら　　をい　　ごけんぶつ
大相國禪閤�@ 四宮河原に於て御見物�A。

ほりかわだいなごん 〔ともざねきょう〕 おおつのうら　 をい　　くるま　 たてらる　　　そ　　ほか　けいしょううんきゃく　くるまあ　　　　 かぞ　 べからず
堀河大納言〔具實卿〕大津浦に於て車を立被る�B。其の外の卿相曇客の車勝げて計う不可。

およ　 けんぶつ　 　しそ　　つら　　もっ　　かき　　な
凡そ見物の緇素�C、面を以て墻と爲す。

とりのこく こわきのうまや　ちゃくご　　おうみにゅうどう　こけ　ごしょ　　た　　いりたてまつ　 おんもうけ　けっこう　ひるいな　　　　うんぬん
酉剋 小脇驛�Dに着御。近江入道虚假御所を立て入奉る。御儲の結搆比類無しと云々。

参考�@大相國禪閤は、西園寺公経。
参考�A四宮河原に於て御見物は、五条大橋を渡って粟田口への行列を見ている。
参考�B車を立被るは、牛車を止めて見物している。
参考�C緇素は、黒い衣も白い衣も。僧も俗も。
参考�D小脇驛は、滋賀県東近江市小脇町。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十三日甲寅。午前3時過ぎに、将軍頼経様は関東へ帰る出発です。
身辺の守りを祈る坊主は岡崎僧正成源。医者は丹波良基、時長さん達。陰陽師は安陪泰貞・晴賢さんです。又、京都朝廷の陰陽寮の筆頭の陰陽頭安陪維範さんを呼びつけました。安陪忠尚・季尚・賀茂在直達が身辺を守るおまじないをしました。露払いやしんがりの武装儀仗兵は京へ入った時と同じです。但し、それぞれの衣装は来た時を上回る装いです。
大相国禅閤西園寺公経さまは四宮河原から五条大橋を渡るのを見物です。堀川大納言〔具実さん〕は大津港で牛車から見物です。その他にも公卿や殿上人の見物の牛車は数えきれません。それに見物の僧俗の顔が垣根の様に沢山です。
夕方6時頃に近江の小脇宿に着きました。近江入道虚仮佐々木信綱が将軍用の仮の住まいを建てていました。接待の準備は比べる物がないほど豪華でした。

解説時刻の點は、2時間を5等分したのが点。寅なら3時〜3：24を一点、3：24〜3：48を二点、3：48〜4：12を三点、4：12〜2：36を四点、4：36〜5：00を五点。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　 しょうさく　 さきのぶしゅう たび　　ごしょ　　まい　　せし　　たま　　しかるべき すくろう おお　　もっ　こさむらい　ちゃくざ
嘉禎四年(1238)十月大十四日乙夘。�ﾘ。匠作、前武州 旅の御所へ參ら令め給ふ。可然 宿老 多く以て小侍に着座す。

はいしゃくすうこん　 およ　　　　　さのもくのすけとしもとら　ばいぜん　　そうら　　　　こけ　ひきでもの　　けん　 たま　　　 うんぬん
坏酌數献に及ぶ。佐野木工助俊職等陪膳に候う。虚假引出物を献じ御うと云々。

みのこくしゅつご　ひつじいご　あめふ　　　とりのななめみのうら　 ごしゅく
巳剋出御。 未以後雨降る。酉斜箕浦�@に御宿。

参考�@箕浦は、滋賀県米原市箕浦。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十四日乙卯。晴れです。匠作時房・前武州泰時さんが、将軍の仮住まいへ行きました。それ相応の重臣達の多くが臨時の侍所へ集まり、お酒が振る舞われました。佐野木工助俊職が給仕をしました。佐々木信綱は引き出物を献上しましたとさ。

午前10時頃出発。午後2時頃から雨が降り、午後6時すぎに米原の蓑浦に宿泊です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　ひつじのこく　たるい　　ごしゅく
嘉禎四年(1238)十月大十五日丙辰。霽。未剋。垂井に御宿。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十五日丙辰。晴れました。午後2時頃岐阜県(不破郡垂井町)垂井にお泊りです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　さるのこく　　おぐま　　ごしゅく
嘉禎四年(1238)十月大十六日丁巳。�ﾘ。申剋。小隈に御宿。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十六日丁巳。晴れ。午後四時頃に小隈（岐阜県羽島市小熊町）に御宿泊です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　かやつ
嘉禎四年(1238)十月大十七日戊午。霽。萱津。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十七日戊午。晴れました。萱津(愛知県あま市上萱津)です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　あつたしゃ　　ごほうへい　あ　　　　とりのいってん やはぎしゅくへん　　さまのかみよしうじあそん　　てい　　い　　　たま
嘉禎四年(1238)十月大十八日己未。霽。熱田社�@に御奉幣有り。 酉一點 矢作宿�A邊の左馬頭義氏朝臣が亭へ入り御う。

参考�@熱田社は、愛知県名古屋市熱田区神宮の熱田神宮。
参考�A矢作宿は、愛知県岡崎市矢作町。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十八日己未。晴れました。熱田神宮にお参りです。午後五時過ぎに岡崎の矢作宿辺りの左馬頭足利義氏さんの屋敷へ入りました。

解説時刻の點は、2時間を5等分したのが点。酉なら17時〜17：24を一点、17：24〜17：48を二点、17：48〜18：12を三点、18：12〜18：36を四点、18：36〜19：00を五点。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　よ　　 い　　あめふ　　　　　いぬのいっこく　とよかわのうまや　つ　　 たま
嘉禎四年(1238)十月大十九日庚申。夜に入り雨下る。戌一尅　 豊河驛に 着き御う。

現代語嘉禎四年(1238)十月大十九日庚申。夜になって雨が降りました。午後七時過ぎに愛知県の豊川駅(愛知県豊川市豊川町)に着きました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ふうう　　たつのこくい　　たま
嘉禎四年(1238)十月大廿日辛酉。風雨。辰刻出で御う。

もとのがはら　 をい　 はなは　あめぼうふう　 しかれども　おんこし　 ぜんご　　ひとびとは　　かさ　　よう　　　　　　およばず　　みなもっ　 はな　　な
本野原�@に於て甚だ雨暴風。 然而、御輿の前後の人々者、笠を擁するに不及。皆以て鼻を舐める。

うまのこく　いご　はれ　 ぞく　　　とりのこく はしもと　　ごしゅく
午刻以後�ﾘに属す。酉剋 橋本�Aに御宿。

参考�@本野原は、愛知県豊川市本野ケ原。
参考�A橋本は、静岡県浜名郡新居町浜名。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十日辛酉。雨に風です。午前8時頃出発です。豊川の本野原ではひどい暴風雨でした。それでも輿の前後の警備の人達は笠をかぶりませんでした。顔に当たる雨を舐めていました。昼頃から晴れました。午後6時頃静岡県の浜名に宿泊です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　いけだ
嘉禎四年(1238)十月大廿一日壬戌。霽。池田。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十一日壬戌。池田（静岡県磐田市池田）です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　かけがわ
嘉禎四年(1238)十月大廿二日癸亥。�ﾘ。懸河。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十二日癸亥。掛川（静岡県掛川市掛川）です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　しまだ
嘉禎四年(1238)十月大廿三日甲子。�ﾘ。嶋田。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十三日甲子。晴です。島田(静岡県島田市)です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　　かんばら〔　てごし　〕
嘉禎四年(1238)十月大廿四日乙丑。霽。蒲原〔手越〕。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十四日乙丑。晴れました。蒲原〔手越では？〕です。

疑問蒲原〔手越〕は、蒲原ではなく手越ではないかとの、後人の疑問らしい。手越は、静岡市駿河区手越。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　かんばらしゅく　ごとうりゅう　　いささ　　ごふれい　　よっ　　なり
嘉禎四年(1238)十月大廿五日丙寅。霽。蒲原宿に御逗留。聊か御不例に依て也。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十五日丙寅。晴れました。蒲原宿に連泊です。多少体調が悪いからです。

解説蒲原は、静岡県静岡市清水区蒲原。前日も蒲原でよかったようだ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　ひつじのこく　くるまがえし　ごしゅく
嘉禎四年(1238)十月大廿六日丁夘。�ﾘ。 未剋　車返�@に御宿。

参考�@車返は、静岡県沼津市三枚橋。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十六日丁卯。晴れです。午後二時頃、沼津の車返しに宿泊です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　たけのした　〔あいざわ〕　　ごしゅく
嘉禎四年(1238)十月大廿七日戊辰。霽。竹下�@〔鮎澤�A〕に御宿。

参考�@竹下は、駿東郡小山町竹之下。鮎沢川沿い。
参考�A鮎澤は、静岡県御殿場市新橋鮎沢に鮎澤神社あり。東名御殿場インターのそば。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十七日戊辰。晴れました。御殿場の竹之下〔鮎沢では？〕に宿泊です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　さかわのうまや　はまべのごしょ
嘉禎四年(1238)十月大廿八日己巳。�ﾘ。酒匂驛�@。濱部御所�A。

参考�@酒匂驛は、神奈川県小田原市酒匂。
参考�A濱部御所は、鴨宮駅あたりらしい。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十八日己巳。晴れです。酒匂の宿、浜辺の御所です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 とらのこくこさめ　　みのさんてんはれ　　ぞく　　とりのいっこくかまくら　 ごしょ　　つ　　　たま
嘉禎四年(1238)十月大廿九日庚午。寅剋小雨。巳三點�ﾘに属す。酉一剋鎌倉の御所へ着き御う。

現代語嘉禎四年(1238)十月大二十九日庚午。午前二時頃小雨です。午前十時頃に晴れました。午後五時過ぎに鎌倉の御所へ着きました。

解説時刻の點は、2時間を5等分したのが点。巳なら9時〜9：24を一点、9：24〜9：48を二点、9：48〜10：12を三点、10：12〜10：36を四点、10：36〜11：00を五点。

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