吾妻鏡入門第卅五巻

寛元元年癸卯(1243)三月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　いのこく　　わかぎみ　　おいの　　　　ごしょ　　　をい　　しちざ　　たいさんふくんさい　おこなはれ
寛元々年(1243)三月大二日戊寅。天霽。亥剋、若君の御祈り。御所に於て七座の泰山府君祭を行被る。

さだまさ　 すえさだ　 はるかた　のぶかたら　　 あそん　　くにつぐ　 ひろすけ　 もちひらこれ　 ほうし　　　あいだのじょうすけ　 かいのぜんじ　　のとのかみ　　すおうのぜんじら これ　　　さた
定昌、泰貞、�ﾘ賢、宣賢等の朝臣、國継、廣資、以平之を奉仕す。秋田城介、甲斐前司、能登守、周防前司等之を沙汰す。

きょう　　　きょうと　　ししゃとうちゃく　　　かいげん　しょうしょ　　じさん　　　　　さんぬ　つきにじうろくにち　にんじよねん　 あらた　かんげんがんねん　な
今日、京都の使者到着し、改元�@の詔書を持參す。去る月廿六日、仁治四年を改め寛元々年と爲す。

参考�@改元は、後嵯峨天皇即位による。

現代語寛元々年(1243)三月大二日戊寅。空は晴です。午後10時頃、若君のお祈りとして、御所で七人の泰山府君祭を行いました。定昌・泰貞・晴賢・宣賢さん達と国継・広資・以平がこれを勤めました。秋田城介安達義景・甲斐前司長井泰秀・能登守三浦光村・周防前司中原親実がこの担当をしました。
今日、京都からの使いが到着して、改元の公文書を持ってきました。先月の26日に仁治4年を変えて寛元1年にしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　りんじ　　ひょうじょう　おこなはれ　　はとがいひょうえのじょうしげもと そ　　みぎり　まい　　　　ていちうごんじょう　ことあ
寛元々年(1243)三月大十二日戊子。臨時の評定を行被る。　鳩谷兵衛尉重元�@ 其の砌に參り、庭中言上�Aの事有り。

これ　むさしのくにあだちぐんないはとがやぢとうしき　 こと　　つ　　　　せんじつ　かけものおしがき　いだ　をはんぬ
是、武藏國足立郡内鳩谷地頭職の事に就き、先日 懸物押書�Bを出し訖。

ことすで　あきら　　のうえ　　　と　　　もう　　べ　　　のよし　　こんもうせし　　　いへど　　　ぶぎょうにんきょようせず　うんぬん
縡已に明か之上、執り申す可き之由、懇望令むと雖も、奉行人許容不と云々。

そ　　　 さた　あ　　　　　といじょう　くだされ　　べ　　　　　うんぬん
其の沙汰有り。問状を下被る可きと云々。

参考�@鳩谷は、埼玉県川口市桜町1丁目法性寺又は大字里を推定するＨＰがある。法性寺そばには鳩ケ井の語源の湧水公園があるので有力。
参考�A庭中言上は、再審請求の意味もあるらしい。
参考�B懸物押書は、裁判請求の敗訴没収の担保の誓約書。

現代語寛元々年(1243)三月大十二日戊子。臨時の政務会議が行われました。鳩ヶ谷兵衛尉重元がその縁側に来て庭からですが申しあげることがありました。「これは、武蔵国安達郡内鳩ヶ谷の地頭職について、先日裁判の担保として先祖から伝わる文書を提出しました。文書により事は明らかですから、早く処理してくださいとお願いしても、担当者が許してくれません。」とのことです。それについて判断がありました。結審記録を下げ渡す事にしました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　ごしょ　　をい　　てんちさいへんさい　おこなはれ　　やすさだあそんこれ　　ほうし
寛元々年(1243)三月大十五日辛夘。天霽。御所に於て天地災變祭を行被る。泰貞朝臣之を奉仕す。

おんし　　みずたにさえもんたいふしげすけ　　ざっしょう　 もうりくらんどにゅうどうせいあ　　うんぬん
御使は水谷左衛門大夫重輔。雜掌は毛利藏人入道西阿�@と云々。

参考�@毛利藏人入道西阿は、毛利季光で大江広元の四男。毛利庄で現神奈川県厚木市毛利台ほか。

現代語寛元々年(1243)三月大十五日辛卯。空は晴れました。御所で天地災変祭を行いました。泰貞さんが勤めました。代参は水谷左衛門大夫重輔。奉仕料の負担は毛利蔵人入道西阿(季光)だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　うまのこく　しょうぐんけ　にしょ　　ごしょうじんや　　いりたま　　　するがのかみありとき　ていなり
寛元々年(1243)三月大十九日乙未。�ﾘ。午刻、將軍家二所�@の御精進屋へ入御う。駿河守有時の亭也。

参考�@二所は、二所詣でといって箱根權現と伊豆山權現の二箇所に詣でる。必ず三島神社にも詣でる。皆、頼朝が平家討伐を祈願した神社。

現代語寛元々年(1243)三月大十九日乙未。晴れです。正午頃に、将軍頼経様は箱根・走湯の両権現神社詣でのため精進潔斎する仮の屋に入りました。駿河守北条有時の屋敷です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　しょうぐんけ　にしょ　　ごしんぱつ
寛元々年(1243)三月大廿三日己亥。霽。將軍家二所に御進發。

現代語寛元々年(1243)三月大二十三日己亥。晴れました。将軍頼経様は二所権現詣でに出発です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くもり　とりのこく　　にしょ よ　　　 かんご　　　　ごうかんおあいだ　あめふらず　　　よ　　　い　　はなは　あめ
寛元々年(1243)三月大廿七日癸夘。陰。酉時、二所自り還御す。御往還之間 雨降不。夜に入り甚だ雨。

現代語寛元々年(1243)三月大二十七日癸卯。曇り、午後6時頃二所権現詣でからお帰りです。旅の間ははが降りませんでしたが、夜になって大雨です。

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