吾妻鏡入門第卅六巻

寛元二年甲辰(1244)八月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いちかわ　めのこふじわらうじ　こと　　えがらしゃ　　をい　　おちあいくらんどやすむね　　みっつうせざるのよし　　きしょうもん　　か
寛元二年(1244)八月大三日辛未。市河が女子藤原氏の事、荏柄社に於て　落合藏人泰宗　と 密通 不 之由、起請文を書き、

さんろうせし　のあいだ　　おんししゃ　じゃくあ　 せいぶつ　もっ　　けみ　　 くは　　らる　 のところ　 なぬかななよ　そ　 しつな　　　のよし　おのおの　これ　もう
參籠 令む之間、御使者の寂阿、西佛を以て檢見を加へ被る之處、七日七夜其の失無き之由、 各　之を申す。

よっ　　いちかわかもんにゅうどうけんさい　うった　もう　　ところの しなののくに ふなやま　ない あおぬまむら　いせのくに みつよしみょう　かいのくに いちかわ　 　やしきら　は
仍て　市河掃部入道見西が　訴へ申す所之 信濃國　船山�@内　��沼村、　伊勢國　光吉名、甲斐國市河�Aの屋敷等者、

うじめ　　　これ　りょうしょう　せし　べ
氏女が之を領掌　令む可し。

いちかわ　やしき　　いた　　　 は　　 うじめ　いちごののち　 けんさい　　しそん　　たま　　　　べ　　 のよし　　きょう　これ　 さだ　　らる
市河の屋敷に至りて者、氏女一期之後、見西の子孫に賜はる可き之由、今日之を定め被る。

うじめ　は　けんさい　きゅうさいなり　　あいとつ　せし　のはじめ　　も　　　りべつ　　ば　 くだん　しょしょ　　ちぎょうすべ　 のむね　　 けいやく　 な　　のあいだ
氏女者見西が 舊妻也。　相嫁が令む之始、若し離別せ者、件の所々を知行 可き之旨、 契約を成す之間、

けいじょう　まか　あ　　　たま　　　　べ　　のおもむき　 うじめ　　 そしょうあ　　　のとき　　やすむね　みっつうせし　のむね　　けんさいこれ　　もう
契状に任せ充て賜はる可き之趣、　氏女の訴訟有る之時、泰宗と密通 令む之旨、見西　之を申す。

これ　　さしおかれがた　　　よっ　　　きしょうさんろうら　　　さた　　　およ　　　うんぬん
之を閣 被 難きに依て、起請參籠等の沙汰に及ぶと云々。

また　 りょうけ　　しんじ　たるのしょしょ　　こと　　　　ごけにん　そうでん　しょたいら　　ほんじょたり　いへど　　 さ　　　　あやま　な　　かいえき　 をい　　は
又、領家の進止爲之 所々の事は、御家人相傳の所帶等、本所爲と雖も、指せる誤り無き改易に於て者、

せんど　　みぎょうしょのむね　　まか　　　しさい　　もうさる　　べ　　のおもむき　　ろくはら　　　おお　　らる　　　　うんぬん
先度の御教書之旨に任せ、子細を申被る可き之趣、　六波羅へ仰せ被ると云々。

参考�@信濃国船山は、長野県千曲市大字鋳物師屋に船山神社あり。そばに旧埴科郡(ﾊﾆｼﾅｸﾞﾝ)埴生町(ﾊﾆｭｳﾏﾁ)の埴生公民館鋳物師屋分館あり。
参考�A甲斐国市川は、山梨県西八代郡市川三郷町。

現代語寛元二年(1244)八月大三日辛未。市川の旧妻の女子藤原氏について、荏柄天神社で落合蔵人泰宗と密通はしていないと誓約書を書いて、おこもりをしているのを、幕府の使いの平右近入道寂阿と鎌田三郎入道西仏を指名して見届けていた処、七日七夜間神様から叱責はありませんでしたと報告しました。
それなので、市河掃部入道見西が訴訟していた場所の、信濃国船山内青沼村、伊勢国光吉名、甲斐国市川の屋敷などは、藤原氏女がこれを支配しなさい。市川の屋敷だけについては、藤原氏女一代の後は、市川見西の子孫に与えるように、今日これをお決めになられました。
藤原氏女は、市川見西の前の妻です。嫁いだ最初に、もし離婚したらそれらの領地を管理するように契約をしていたのだから、契約書のとおりに割り当てるように、藤原氏女が訴えがあった時は、落合泰宗と密通していたからだと市川見西が云いだしました。これを棄却しにくかったので、誓約書を書いて神様におこもりさせたんだそうな。

また、上級荘園管理者の領家が地頭の進退をする土地土地の事は、御家人が先祖代々引き継いでいる地頭権限は、最上級荘園管理者の本所であっても、特に失態の無いのに解雇することは、以前の幕府命令書どおりに理由をきちんと述べなきゃダメだとの内容を、六波羅探題へも通知しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さんぬ　つきにじうろくにち　かんいんせんこう　ぶい　　すいこうされ　　のよし　　きょうと よ　　　これ　 もう　　おくられ
寛元二年(1244)八月大八日丙子。去る月 廿六日、閑院遷幸 無爲に遂行被る之由、京都自り之を申し送被る。

現代語寛元二年(1244)八月大八日丙子。先月26日、天皇の引っ越しが無地終ったと京都から云い送って来ました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　つるがおかはちまんぐう　ほうじょうえなり　おおとのなら　　　しょうぐんけぎょさん
寛元二年(1244)八月大十五日癸未。天�ﾘ。鶴岳八幡宮の放生會也。大殿并びに將軍家御參。

　ま　　おんはら　　あ　　　　ぼうもんしょうしょうきよもと ばいぜんたり　　みずたにさえもんたいふしげすけ えきそう　　こう　　　　　ぶがく　　ごらん　ののち　　とりのこく　かんご
先ず御秡へ有り。 坊門少將�C基　陪膳爲。水谷左衛門大夫重輔 役送に候ず。舞樂を御覽之後、酉刻に還御す。

ぐぶにん　　ぎょうれつ

供奉人の行列。

せんじん　ずいへい
先陣の随兵

　　かわごえかもんのすけやすしげ　　　　　　　　　　かずさしゅりのすけまさひで
　河越掃部助泰重　　　　　　上総修理亮政秀

　　ひぜんのたろうさえもんのじょうたねいえ　　　　　はやとのたろうさえもんのじょうみつよし
　肥前太郎左衛門尉胤家　　　隼人太郎左衛門尉光義

　　こうづけのいやしろうさえもんのじょうときみつ　　あまののいずみじろうさえもんのじょうかげうじ
　上野弥四郎左衛門尉時光　　天野和泉次郎左衛門尉景氏

　　おおそねひょうえのじょうながやす　　　　　　　　ちばのしちろうたろうもろとき
　大曾祢兵衛尉長泰　　　　　千葉七郎太郎師時

　　とおとうみしきぶのたいふときあき　　　　　　　　　さがみのうこんたいふしょうげんときさだ
　遠江式部大夫時章　　　　　相摸右近大夫將監時定

つぎ　 おくるま
次に御車

　　さたけのはちろうすけよし　　　　　　　　　　　　　しきぶのひょうえたろうみつまさ
　佐竹八郎助義　　　　　　　式部兵衛太郎光政�@　　参考�@伊賀光政は、朝光―光宗―宗義―光政、初出演。

　　ちばのじろう「やすたね　　　　　　　　　　　　　　うなかみごろうたねあり
　千葉次郎泰胤�A　　　　　　　海上五郎胤有　　　　参考�A千葉泰胤は、常胤―胤正―成胤―泰胤、初出演。

　　きむらのたろうまさつな　　　　　　　　　　　　　　いとうのろくろううえもんのじょうすけもり
　木村太郎政綱　　　　　　　伊東六郎右衛門尉祐盛

　　むとううこんしょうげんかねより　　　　　　　　　　　しぶやのじうろうつねしげ
　武藤右近將監兼頼　　　　　澁谷十郎經重

　　たちかわひょうえのじょうもとやす　　　　　　　　かずらやまのじろう
　立河兵衛尉基泰　　　　　　葛山次郎　　　　　　　参考�B葛山は、静岡県裾野市葛山。

　　へいしんさえもんのじょうもりとき
　平新左衛門尉盛時

　　　　いじょうじういちにん ひたたれ　たいけん　おくるま　　さゆう　　こう
　　已上十一人 直垂に帶釼、御車の左右に候ず。

おんうしろ　　ごい　ろくい　〔　ほい　　げぐくり　〕
御後の五位六位〔布衣下括〕

　　さきのうまごんのかみまさむらあそん　　　　　　　とおとうみのかみともなお
　前右馬權頭政村朝臣　　　　遠江守朝直

　　ほうじょうさんこんたいふしょうぐねんときより　　　えちごのかみみつとき
　北條左近大夫將監時頼　　　越後守光時

　　くないしょうゆうやすじ　　　　　　　　　　　　　　　むつかもんのすけさねとき
　宮内少輔泰氏　　　　　　　陸奥掃部助實時

　　かいのぜんじやすひで　　　　　　　　　　　　　　わかさのぜんじやすむら
　甲斐前司泰秀　　　　　　　若狹前司泰村

　　せっつのぜんじもろかず　　　　　　　　　　　　　 のとのぜんじみつむら
　攝津前司師員　　　　　　　能登前司光村

　　あいだのじょうすけよしかげ　　　　　　　　　　　　しもつけぜんじやすつな
　秋田城介義景　　　　　　　下野前司泰綱

　　かずさごんのすけひでたね　　　　　　　　　　　 するがしきぶのたいふいえむら
　上総權介秀胤　　　　　　　駿河式部大夫家村

　　さどのぜんじもとつな　　　　　　　　　　　　　　　でわのぜんじゆきよし
　佐渡前司基綱　　　　　　　出羽前司行義

　　さきのだざいしょうにためすけ　　　　　　　　　　もうりひょうえのたいふひろみつ
　前太宰少貳爲佐　　　　　　毛利兵衛大夫廣光

　　おおくらごんのしょうゆうともひろ　　　　　　　　　えのいわみぜんじよしゆき
　大藏權少輔朝廣　　　　　　江石見前司能行

　　ささきいきぜんじやすつな　　　　　　　　　　　　ほうきのぜんじきよちか
　佐々木壹岐前司泰綱　　　　伯耆前司�C親

　　おおかわどのみんぶたいふとしよし　　　　　　　かすかべかいのぜんじさねかげ
　大河戸民部大夫俊義　　　　春日部甲斐前司實景

　　そのだ　あわぜんじ　としもと　　　　　　　　　　　ししどいきぜんじいえちか
　薗田淡路前司俊基　　　　　完戸壹岐前司家周

　　たじまのぜんじさだかず　　　　　　　　　　　　　 はやとのしょうみつしげ
　但馬前司定員　　　　　　　隼人正光重

　　かがのみんぶたいふやすもち　　　　　　　　　　いがのぜんじときいえ
　加賀民部大夫康持　　　　　伊賀前司時家

　　たじまのひょうえたいふさだのり　　　　　　　　　ひたちしゅりのすけしげつぐ
　但馬兵衛大夫定範�B　　　　　常陸修理亮重継　　　　　参考�B藤原定範は、藤原定員の息子。

　　おやまのごろうさえもんのじょうながむら　　　　　かじわらうえもんのじょうかげとし
　小山五郎左衛門尉長村　　　梶原右衛門尉景俊

　　するがのごろうさえもんのじょうすけむら　　　　　いきのろくろうさえもんのじょうともきよ
　駿河五郎左衛門尉資村　　　壹岐六郎左衛門尉朝�C

　　いやじろうさえもんのじょうちかもり　　　　　　　　とおとうみじろうさえもんのじょうみつもり
　弥次郎左衛門尉親盛　　　　遠江次郎左衛門尉光盛

　　おなじきろくろうひょうえのじょうときつら　　　　　さどのごろうさえもんのじょうもとたか
　同六郎兵衛尉時連　　　　佐渡五郎左衛門尉基隆

　　あさかのろくろうさえもんのじょうすけなが　　　　ひぜんのたろうさえもんのじょうたねいえ
　安積六郎左衛門尉祐長　　肥前太郎左衛門尉胤家

　　いがにじろううえもんのじょうみつやす　　　　　　おおすがのさえもんのじょうたねうじ
　伊賀次郎右衛門尉光泰　　大須賀左衛門尉胤氏

　　うさみのさえもんのじょうすけやす　　　　　　　　　かとうさえもんのじょうゆきかげ
　宇佐美左衛門尉祐泰　　　加藤左衛門尉行景

　　でわのしろうさえもんのじょうみついえ　　　　　　やくしじのしんさえもんのじょうまさうじ
　出羽四郎左衛門尉光家　　藥師寺新左衛門尉政氏

　　せきさえもんのじょうまさやす　　　　　　　　　　　あわじまたしろうさえもんのじょうむねやす
　關左衛門尉政泰　　　　　　淡路又四郎左衛門尉宗泰

　　そうまのごろうさえもんのじょうたねむら　　　　　　むとうさえもんのじょうかげより
　相馬五郎左衛門尉胤村　　　武藤左衛門尉景頼

　　しなののしろうさえもんのじょうゆきただ　　　　　　ごとうじろうさえもんのじょうもとちか
　信濃四郎左衛門尉行忠　　　後藤次郎左衛門尉基親

　　いちのみやぜんうえもんじろうやすあり　　　　　　おのでらしろうさえもんのじょうみちとき
　一宮善右衛門次郎康有　　　小野寺四郎左衛門尉通時

　　ないとうしちろうさえもんのじょうもりつぐ　　　　　　でわのじろうひょうえのじょうゆきあり
　内藤七郎左衛門尉盛繼　　　出羽次郎兵衛尉行有

　　さたけのろくろうじろう　　　　　　　　　　　　　　　　こうづけのさぶろうくにうじ
　佐竹六郎次郎　　　　　　　上野三郎國氏

　　あそぬまのこじろうみつつな　　　　　　　　　　　　きうちのじろうたねいえ
　阿曽沼小次郎光綱　　　　　木内次郎胤家

こうじん　 ずいへい
後陣の隨兵

　　こうづけぜんじやすくに　　　　　　　　　　　　　　みかわのかみよりうじ
　上野前司泰國　　　　　　　三河守頼氏

　　とおつみごろうさえもんのじょうもりとき　　　　　　かじわらさえもんたろうかげつな
　遠江五郎左衛門尉盛時　　　梶原左衛門太郎景綱

　　おやまのしもつけしろうながまさ　　　　　　　　　うつのみやしんうえもんのじょうとももと
　小山下野四郎長政　　　　　宇都宮新右衛門尉朝基

　　じょうのじろうよりかげ　　　　　　　　　　　　　　　つちやのじろうときむら
　城次郎頼景　　　　　　　　土屋次郎時村

　　たけだのごろさぶろうまさつな　　　　　　　　　　おのざわじろうときなか
　武田五郎三郎政綱　　　　　小野澤次郎時仲

　　やまのうちとうないみちかげ　　　　　　　　　　　　ていい
　山内藤内通景　　　　　　　廷尉

現代語寛元二年(1244)八月大十五日癸未。空は晴です。鶴岡八幡宮の生き物を放って贖罪する仏教儀式の放生会です。前大納言家頼経様と将軍頼嗣さまがお参りです。まず、お祓いがありました。坊門少将清基がお給仕です。水谷左衛門大夫重輔が配送係を勤めました。奉納の舞楽を見た後で午後6時頃に帰りました。お供の行列は

前を行く武装儀仗兵
　河越掃部助泰重　　　　　　　と　上総修理亮千葉政秀
　肥前太郎左衛門尉佐原胤家　　と　隼人太郎左衛門尉光義
　上野弥四郎左衛門尉結城時光　と　天野和泉次郎左衛門尉景氏
　大曽根兵衛尉長泰　　　　　　と　千葉七郎太郎師時
　遠江式部大夫名越流北条時章　と　相模右近大夫将監北条時定
次に牛車
　佐竹八郎助義　　　式部兵衛太郎伊賀光政
　千葉次郎泰胤　　　海上五郎胤有
　木村太郎政綱　　　伊東六郎右衛門祐盛
　武藤右近将監兼頼　渋谷十郎経重
　立川兵衛尉基泰　　葛山次郎
　平左衛門尉盛時
　　　以上の11人は、鎧直垂に太刀を帯び、牛車の左右に居ります。
将軍の後ろに続く、五位六位の人〔狩衣で袴は足首で縛る〕
　前右馬権頭北条政村様　　　と　遠江守北条朝直
　左近大夫将監北条時頼　　　と　越後守名越流北条光時
　宮内少輔足利泰氏　　　　　と　陸奥掃部助金沢流北条実時
　甲斐前司大江長井泰秀　　　と　若狭前司三浦泰村
　摂津前司中原師員　　　　　と　能登前司三浦光村
　秋田城介安達義景　　　　　と　下野前司宇都宮泰綱
　上総権介秀胤　　　　　　　と　駿河式部大夫三浦家村
　佐渡前司後藤基綱　　　　　と　出羽前司二階堂行義
　前太宰少弐狩野為佐　　　　と　毛利兵衛大夫広光
　大蔵権少輔結城朝広　　　　と　石見前司大江能行
　壱岐前司佐々木泰綱　　　　と　伯耆前司葛西清親
　民部大夫大川戸俊義　　　　と　甲斐前司春日部実景
　淡路前司薗田俊基　　　　　と　隠岐前司宍戸家周
　但馬前司藤原定員　　　　　と　隼人正伊賀光重
　加賀民部大夫町野康持　　　と　伊賀前司小田時家
　但馬兵衛大夫藤原定範　　　と　常陸修理亮重継
　五郎左衛門尉小山長村　　　と　右衛門尉梶原景俊
　駿河五郎左衛門尉三浦資村　と　壱岐六郎左衛門尉朝清(佐々木？)
　弥次郎左衛門尉親盛　　　　と　遠江次郎左衛門尉佐原光盛
　同六郎兵衛尉佐原時連　　　と　佐渡五郎左衛門尉後藤基隆
　六郎左衛門尉安積祐長　　　と　肥前太郎左衛門尉佐原胤家
　次郎右衛門尉伊賀光泰　　　と　左衛門尉大須賀胤氏
　左衛門尉宇佐美祐泰　　　　と　左衛門尉加藤行景
　出羽四郎左衛門尉中条光家　と　新左衛門尉薬師寺政氏
　左衛門尉関政泰　　　　　　と　淡路又四郎左衛門尉長沼宗泰
　五郎左衛門尉相馬胤村　　　と　左衛門尉武藤景頼
　信濃四郎左衛門尉二階堂行忠と　次郎左衛門尉後藤基親
　一宮右衛門次郎三善康有　　と　四郎左衛門尉小野寺通時
　七郎左衛門尉内藤盛継　　　と　出羽次郎兵衛尉二階堂行有
　佐竹六郎次郎　　　　　　　と　上野三郎国氏
　小次郎阿曾沼光綱　　　　　と　次郎木内胤家

後ろの武装儀仗兵
　上野前司畠山泰国　　　　　と　三河守新田頼氏
　遠江五郎左衛門尉佐原盛時　と　左衛門太郎梶原景綱
　下野四郎小山長政　　　　　と　新右衛門尉宇都宮朝基
　城次郎安達頼景　　　　　　と　次郎土屋時村
　五郎三郎武田政綱　　　　　と　次郎小野沢時仲
　藤内山内通景
検非違使

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　つるがおか ばば の ぎ なり　　ごすくがんあ　　　　　よっ　　　　こと　　けっこう　のぎ　あ　　　　　まいじ　きょねん　 ごと

寛元二年(1244)八月大十六日甲申。天霽。鶴岡馬塲之儀也。御宿願有るに依て、殊に結搆之儀有り。毎事去年の如し。

　ごい　ろくい　ら　　　もっ　　　　じうれつ  まとたて  くらべうま　 えき　 ひとら たり
五位六位等を以て、十列・ 的立・ 競馬の役の人等爲。

よっ　　さくじつ　ぐぶ　せし　　　いへど　　　きょう くだんのえきのやから たれば　　ぐぶ　　　と　　　らる　　　　うんぬｎ
仍て昨日供奉令むと雖も、今日件の役之輩 爲者、供奉を止め被ると云々。

うまのいっこく ごさんぐう　　おんみがため いげ　　こと　　さくじつ　ぎょしゅつ　おな　　　　うんぬん
午一剋 御參宮。御身固以下の事、昨日の御出に同じと云々。

　ばば　　　ぎ
馬塲の儀

じうれつ
十列

　　いちばん　　　ちょうのかもんさえもんのじょう
　一番　　長掃部左衛門尉

　　　にばん　　　いいだかいやじろうさえもんのじょう
　二番　　飯高弥次郎左衛門尉

　　さんばん　　　きいのじろうさえもんのじょう
　三番　　紀伊次郎左衛門尉

　　よんばん　　　おおたわしんさえもんのじょう
　四番　　大多和新左衛門尉

　　　ごばん　　　　とおとうみのろくろうさえもんのじょう
　五番　　遠江六郎左衛門尉

　　ろくばん　　　 かのうのごろうさえもんのじょう
　六番　　狩野五郎左衛門尉

　　しちばん　　　いせのごろうさえもんのじょう
　七番　　伊勢五郎左衛門尉

　　はちばん　　　いやぜんたうえもんのじょう
　八番　　弥善太右衛門尉

　　　くばん　　　　ひごのしろうひょうえのじょう
　九番　　肥後四郎兵衛尉

　　じうばん　　　　といのじろうひょうえのじょう
　十番　　土肥次郎兵衛尉

やぶさめ
流鏑馬

　　いちばん　　　ながえのたろうにゅうどう　　　　　　　　〔　　いて　　しそく　はちろうしろう　　　　　　　　まとたて　のとのぜんじ　〕
　一番　　長江太郎入道　　　　〔射手子息八郎四郎　　　的立能登前司〕　　参考�@長江八男四郎は、景政−景継−長江義景−師景−秀景−頼景−景助−重景−景秀

　　　にばん　　　ほうじょうさこんたいふしょうげん　　　　〔　　いて　　たけだのごろさぶろう　　　　　　　　 まとたて　そうさえもんたいふ　〕
　二番　　北條左近大夫將監　　〔射手武田五郎三郎　　　的立宗左衛門大夫〕

　　さんばん　　　さどのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　 〔　　いて　　まごのいやしろう　　　　　　　　まとたて　せっつさえもんのじょう　〕
　三番　　佐渡前司　　　　　　〔射手孫子弥四郎　　　　的立攝津左衛門尉〕

　　よんばん　　　かずさのすけ　　　　　　　　　　　　　　〔　　いて　　しそく　ろくろう　　　　　　　　　　　　まとたて　いやじろうさえもんのじょう　〕
　四番　　上総介　　　　　　　〔射手子息六郎　　　　　的立弥次郎左衛門尉〕

　　　ごばん　　　じょうのすけ　　　　　　　　　　　　　　　 〔　　いて　　しそく　じろう　　　　　　　　　　　　　まとたて　おしだれさえもんのじょう　〕
　五番　　城介　　　　　　　　〔射手子息次郎　　　　　的立押垂左衛門尉〕

　　ろくばん　　　でわのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　 〔　　いて　　しそく　じろうひょうえのじょう　　　　まとたて　かのうのごろうさえもんのじょう　〕
　六番　　出羽前司　　　　　　〔射手子息次郎兵衛尉　　的立狩野五郎左衛門尉〕

　　しちばん　　　おやまのごろうさえもんのじょう　　　　 〔　　いて　　こうづけのじうろう　　　　　　　　　　 まとたて　むとうさえもんのじょう　〕
　七番　　小山五郎左衛門尉　　〔射手上野十郎　　　　　的立武藤左衛門尉〕

　　はちばん　　　いずみのじろうさえもんのじょう　　　　〔　　いて　　あそぬまのしちろう　　　　　　　　  　まとたて　でわのしろうさえもんのじょう　〕
　八番　　和泉次郎左衛門尉　　〔射手阿曾沼七郎　　　　的立出羽四郎左衛門尉〕

　　　くばん　　　いきのろくろうさえもんのじょう　　　　　  〔　　いて　　しそく　さえもんじろう　　　　　　　  まとたて　いずみのろくろうさえもんのじょう　〕
　九番　　壹岐六郎左衛門尉　　〔射手子息左衛門次郎　　的立和泉六郎左衛門尉〕

　　じうばん　　　かすかべかいのかみ　　　　　　　　　　 〔　　いて　　しそく　じろうひょうえのじょう　　 　まとたて　おのでらのしろうさえもんのじょう　〕
　十番　　春日部甲斐守　　　　〔射手子息次郎兵衛尉　　的立小野寺四郎左衛門尉〕

　　じういちばん　おうみのいきぜんじ　　　　　　　　　　  〔　　いて　　しゃていしろうさえもんのじょう　 　まとたて　あわじのしろうさえもんのじょう　〕
　十一番　近江壹岐前司　　　　〔射手舎弟四郎左衛門尉　的立淡路四郎左衛門尉〕

　　じうにばん　　ほうきのいきぜんじ　　　　　　　　　　　 〔　　いて　　しそく　ごろう　　　　　　　　　　　　　まとたて　のとのしろうさえもんのじょう　〕
　十二番　伯耆前司　　　　　　〔射手子息五郎　　　　　的立能登四郎左衛門尉〕

　　じうさんばん　しなののみんぶにゅうどう　　　　　　　  〔　　いて　　しそくろくろうさえもんのじょう　　 　まとたて　うさみのよいちさえもんのじょう　〕
　十三番　信濃民部入道　　　　〔射手子息六郎左衛門尉　的立宇佐美与一左衛門尉〕

　　じうよんばん　こうづけにゅうどう　　　　　　　　　　　　 〔　　いて　　しそく　ごろうひょうえのじょう　　 　 まとたて　おおすがのしちろうさえもんのじょう　〕
　十四番　上野入道　　　　　　〔射手子息五郎兵衛尉　　的立大須賀七郎左衛門尉〕

　　じうごばん　　うまほんのかみ　　　　　　　　　　　　　　 〔　　いて　　いがのしろうさえもんのじょう　　　 まとたて　そのだあわじのかみ　〕
　十五番　右馬權頭　　　　　　〔射手伊賀四郎左衛門尉　的立薗田淡路守〕

　　じうろくばん　わかさのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　 〔　　いて　しゃていごろうさえもんのじょう　　  まとたて　ししどのいきぜんじ　〕
　十六番　若狹前司　　　　　　〔射手舎弟五郎左衛門尉　的立完戸壹岐前司〕

くらべうま
 競馬

　いちばん　　　　〔ひだり　　うたのさえもんのじょう　　　　　　みぎ　　 はたのじろうふしょうかねたね〕
　一番　　〔左　雅樂左衛門尉　　右　泰次郎府生兼種〕

　　にばん　　　　〔ひだり　　とんだのじろうひょうえのじょう　 みぎ　　 しぶかわのいやじろう〕
　二番　　〔左　冨田次郎兵衛尉　右　澁河弥次郎〕

　さんばん　　　　〔ひだり　　しもじょうのしろう　　　　　　　　　みぎ　　 はたのざきよたね〕
　三番　　〔左　下條四郎　　　　右　泰三�C種〕

　よんばん　　　　〔ひだり　　かわむらこしろう　　　　　　　　　 みぎ　　 たかはしろくろうひょうえのじょう〕
　四番　　〔左　河村小四郎　　　右　高橋六郎兵衛尉〕

　　ごばん　　　　〔ひだり　　あさばさえもんしろう　　　　　　　みぎ　　 かわむらさぶろう〕
　五番　　〔左　淺羽左衛門四郎　右　河村三郎〕

現代語寛元二年(1244)八月大十六日甲申。空は晴れました。鶴岡八幡宮に奉納する馬場での儀式です。願い事があるので特別に盛大に構えました。行事内容は去年と同様です。五位や六位の位の人達を飾り馬の馬長が十列、的立役、競馬の役の人にしました。それなので、昨日はお供の行列にいましたけど、今日はこの役の人達は、お供の行列からはずしましたとさ。
午の一刻(1200−1224)にお詣りです。身の回りのお祓いなどは昨日の外出時と同じだそうな。
馬場での行事
馬の馬長が十列
　1番、長谷部掃部左衛門尉秀連
　2番、飯高弥次郎左衛門尉
　3番、紀伊次郎左衛門尉為経
　4番、大多和新左衛門尉
　5番、遠江六郎左衛門尉佐原時連
　6番、狩野五郎左衛門尉為広
　7番、伊勢五郎左衛門尉
　8番、弥善太右衛門尉三善康義
　9番、肥後四郎兵衛尉行定
 10番、土肥次郎兵衛尉朝平
流鏑馬
　１番、長江太郎入道重景分　　　〔射手は、息子の八郎四郎景秀。　　的立は、能登前司三浦光村〕
　２番　北条左近大夫将監時頼分　〔射手は、武田五郎三郎政綱。　　　的立は、宗左衛門大夫〕
　３番　佐渡前司後藤基綱分　　　〔射手は、孫の弥四郎。　　　　　　的立は、摂津左衛門尉狩野為光〕
　４番　上総介境秀胤分　　　　　〔射手は、息子の六郎秀景。　　　　的立は、弥次郎左衛門尉親盛〕
　５番　城介安達義景分　　　　　〔射手は、息子の次郎頼景　　　　　的立は、押垂左衛門尉時基〕
　６番　出羽前司二階堂行義分　　〔射手は、息子の次郎表兵衛尉行有。的立は、狩野五郎左衛門尉為広〕
　７番　小山五郎左衛門尉長村分　〔射手は、上野十郎結城朝村。　　　的立は、武藤左衛門尉景頼〕
　８番　和泉次郎左衛門尉天野景氏分〔射手は、阿曾沼七郎。　　　　　　的立は、出羽四郎左衛門尉中条光宗〕
　９番　壱岐六郎左衛門尉朝清分　〔射手は、息子の左衛門次郎。　　　的立は、和泉六郎左衛門尉〕
１０番　春日部甲斐守実景分　　　〔射手は、息子の次郎兵衛尉。　　　的立は、小野寺四郎左衛門尉通時〕
１１番　近江壱岐前司佐々木泰綱分〔射手は、弟の四郎左衛門尉氏信。　的立は、淡路四郎左衛門尉時宗〕
１２番　伯耆前司葛西清親分　　　〔射手は、息子の五郎。　　　　　　的立は、能登四郎左衛門尉〕
１３番　信濃民部入道二階堂行盛　〔射手は、息子の六郎左衛門尉。　　的立は、宇佐美与一左衛門尉祐時〕
１４番　上野入道結城朝光分　　　〔射手は、息子の五郎兵衛尉重光。　的立は、大須賀七郎左衛門尉重信〕
１５番　右馬権頭北条政村分　　　〔射手は、伊賀四郎左衛門尉朝行。　的立は、薗田淡路守俊基〕
１６番　若狭前司三浦泰村分　　　〔射手は、弟の五郎左衛門尉資村。　的立は、宍戸壱岐前司家周〕
くらべ馬
　１番　〔左は、雅楽左衛門尉源時景。右は、秦次郎府生兼種〕
　２番　〔左は、冨田次郎兵衛尉。　　右は、渋川弥次郎〕
　３番　〔左は、下條四郎。　　　　　右は、秦三清種〕
　４番　〔左は、河村小四郎。　　　　右は、高橋六郎兵衛尉〕
　５番　〔左は、浅羽左衛門四郎。　　右は、河村三郎〕

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ごしょ　　みなみどの　をい　　　だいはんやきょう　てんどくさる　　　　うんぬん
寛元二年(1244)八月大十七日乙酉。御所の南殿に於て、大般若經を轉讀被ると云々。

現代語寛元二年(1244)八月大十七日乙酉。御所の南側の寝殿で、大般若経を摺り読みさせましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おな　　　　ごしょ　　　をい　　　　きょう　よ　　　ごだんほう　　しゅうさる　　　　うんぬん
寛元二年(1244)八月大十九日丁亥。同じく御所に於て、今日自り五壇法�@を修被ると云々。

参考�@五壇法は、密教の中で五大明王を個別に安置し国家安穏を祈願する修法。

現代語寛元二年(1244)八月大十九日丁亥。一昨日と同様に御所で、今日から五大明王を個別に安置して祈願を始めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　ごしょ　　おんじぶつどう　くようなり　　　どうし　　たかなかほういん　しちそうほうえ　　な　　なり

寛元二年(1244)八月大廿二日庚寅。天�ﾘ。御所の御持佛堂供養也。導師は竹中法印。七僧法會を爲す也。

現代語寛元二年(1244)八月大二十二日庚寅。空は晴です。御所の将軍用の仏を祀る持仏堂の法要です。指導僧は竹中法印。七人の坊さんでの法要としました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いせのくに　あそやま　なら　　　　くまのさん　　あくとう ほうき のあいだ
寛元二年(1244)八月大廿四日壬辰。伊勢國阿曾山�@并びに熊野山の惡黨蜂起之間、

きょう　りんじ　　ひょうじょう あ　　　　　　　そ　　　　さた　　　へ　らる
今日臨時の評定 有りて、其の沙汰を經被る。

せいばつ　　ためゆきむか　べ　　のよし　　ぢとう　ごけにん　ら　　　おお　 られをはんぬ
征伐の爲行向う可き之由、地頭御家人等に仰せ被 訖。

ただ　 ゆきむか　のやから　をい　　は　　 かん　 おぼ　 め　さる　　のよし　　おお　　つか　　さる　　べ
但し行向う之輩に於て者、感じ思し食被る之由、仰せ遣は被る可き。

ゆきむか　 ざるのやから　いた　　　 は　 きょうみょう　ちうしんさる　　べ　　　のむね　　しゅごがた　　おお　　らる　　　　うんぬん
行向は不之族に至りて者、交名を注申被る可き之旨、守護方に仰せ被ると云々。

また　　いまでがわどの　よ　　　もうさる　　こと　　せっつぜんじもろかずあそん　　 さどのぜんじもとつなら　　　ぶぎょう　　な　　　　さた　あ
又、今出河殿�A自り申被る事、攝津前司師員朝臣、佐渡前司基綱等を奉行と爲し沙汰有り。

　けびいしどころしき　　いげ　じょうじょうなり
檢非違使所職以下の條々也。

しゅごだいひょうごたいふすけのり　ひほう　あいだ　こと　　ちんぜいしゅご　せいばい　　　こと　　をい　　は
守護代兵庫大夫資範非法の間の事、鎭西守護の成敗する事に於て者、

うだいしょうけ　　おんときよ　　　　　べつぎ　　もっ　　さだ　　お　かる　　のあいだ　　だいだい　おんくだしぶみ　お　　　　 さた いた　ところなり
右大將家の御時自り、別儀を以て定め置被る之間、代々の御下文を帶び、沙汰致す所也。

　よこく　　　しゅご　さた　　　なぞら　もうさる　　べからざることなり
餘國の守護沙汰に准ひ申被る不可事也。

ただ　　さいさいひほう　　よし　 こと　　たず　 くだされ　　　そう　　　もうさる　　べ　　　　のよし　　ぐんぎ　　およ　　　　うんぬん
但し細々非法の由の事を尋ね下被、左右を申被る可き之由、群議に及ぶと云々。

参考�@阿曽山は、三重県度会郡大紀町阿曽らしい。
参考�A今出河殿は、西園寺公経らしい。

現代語寛元二年(1244)八月大二十四日壬辰。伊勢国阿曽山それに熊野山の体制反逆者のの悪党が徒党を組んで跳梁しているので、今日臨時の政務会議を開き、その事を検討しました。反逆者を征伐するために進軍するように、地頭をしている御家人に命令を出しました。但し、進軍していく連中については、特に将軍がお褒めになると伝えるように、進軍していかない一族については、名前を書き出すように守護の者に命令を出しましたとさ。
また、今出川殿西園寺公経さんから言ってきている事について、摂津前司中原師員・佐渡前司後藤基綱を担当として、検討しました。検非違使職などについてです。
守護の現地代官の兵庫大夫資範が非法な行為をしている事案について、九州の守護が持っている権限の行使は、頼朝様の時代から別扱いに決めているので、守護は代々の幕府からの命令書に従って処理しているのです。他の土地の守護の権限と同じように伝えてはいけません。但し、こまごまとした部分的な非法の話を聞いてきているので、処分をお伝えするように、会議で検討しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおとの みゅうしゅん ごじょうらくあ　　　べ　　　こと　　　さた　あ　　　　　　　ちじょう　　　　うんぬん
寛元二年(1244)八月大廿九日丁酉。大殿　明春　御上洛有る可き事、沙汰有りて、治定すと云々。

現代語寛元二年(1244)八月大二十九日丁酉。前大納言家頼経様が、来春京都へ上る事につて、指令があってお決めになりましたとさ。

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吾妻鏡入門第卅六巻