吾妻鏡入門第卅六巻

寛元三年乙巳(1245)四月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　にゅうどうじゅしいげぎょう とおとうみのかみ たいらのあそんともとき　〔ほうみょうせいせい〕　そつ　　としごじうさん
寛元三年(1245)四月小六日庚午。天�ﾘ。入道從四位下行 遠江守　　平朝臣朝時 〔法名生西〕卒。年五十三。

すうげつ かっけ　 ちゅうびょう　ら　なや　　　　うんぬん  こうし　これ　　おし　　ざる　　な　　　　うんぬん
數月脚氣、痮病�@等に惱むと云々。公私之を惜ま不は莫しと云々。

参考�@痮病は、腹水で、腹膜の炎症や肝臓・心臓・腎臓の疾患などにより腹腔内にたまった液体。Goo電子辞書から

現代語寛元三年(1245)四月小六日庚午。空は晴です。出家して入道従四位下行遠江守平朝臣名越流北条朝時〔出家名生西〕亡くなりました。歳は53才です。数か月脚気と腹水の病気で苦しんでいたそうな。幕府も個人もこの人の死を惜しまない人はなかったそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　 さまのかみにゅうどうまさよし　みまさかのくに　りょうしょよ　　しょうらい　のよし　しょう　　　 さるを　ごしょ　　けん
寛元三年(1245)四月小廿一日乙酉。天�ﾘ。左馬頭入道政義、美作國の領所�@自り將來之由を稱し、猿於御所に献ず。

　か　　さる　　ぶどう　　　じんりん　　ごと　　　おおとのなら　　　 しょうぐんけ ごぜんに しょうらん　　　　けう　　　ことたる　のむね　　　ごさた　　　およ
彼の猿の舞踏は人倫の如し。大殿并びに將軍家御前于召覽す。希有の事爲之旨、御沙汰に及ぶ。

のりたか い　　　　　　これただなること　あらざ　か
教隆云はく、是直也事に匪る歟。

参考�@美作國の領所は、垪和郷(ﾊｶﾞｺﾞｳ)で現岡山県久米郡美咲町中垪和に中垪和簡易郵便局がある。八条院領。

現代語寛元三年(1245)四月小二十一日乙酉。空は晴です。左馬頭入道足利政義が、「美作国の領地垪和郷から呼び寄せました。」と云って、猿を将軍に献上しました。この猿の踊りは、まるで人が踊っているようです。前大納言家頼経様と将軍頼嗣様の前に招いて見物しました。「珍しい事だなぁー。」と感心しました。清原教隆がいうのには「こりゃ、普通の事ではありませんなぁー。」だと。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かまくたちう　　ほうほうぶぎゅうにんら　　ぞんち せし　　 さた　いた　　べ　　　じょうじょう　きょう　さだ　　らる
寛元三年(1245)四月小廿二日丙戌。鎌倉中の保々奉行人等、存知令め沙汰致す可きの條々、今日定め被る。

さどのぜんじもとつなぶぎょうたり
佐渡前司基綱奉行爲。

　　　　　ほしぶぎょうにん ぞんちすべ　　　じょうじょう
　　保司奉行人存知可きの條々

ひとつ　みち　 つく　　ざる　　こと
 一　道を作ら不の事

ひとつ　いえ　 のきを みち　　さしいだ　　こと
 一　宅の檐於路に差出す事

ひとつ　まちや　　つく　 ぜんぜん　 みち　 せま　　　　　　こと
 一　町屋を作り漸々に路を狹くする事

ひとつ　　こや を みぞじょう　つく　　か　　　　　こと
 一　小家於溝上に造り懸ける事

ひとつ　やぎょうせざ　こと
 一　夜行不る事

　　みぎ　　まえ　　ごかじょう　　もっ　　　　ほうほうぶぎょうにん　　おお　　　　　きんぜいさる　　べ　　　なり
　右の前の五箇條を以て、保々奉行人に仰せて、禁制被る可き也。

　　かつう　あいふる　 ののち　　これ　 しちかにち　た　　　　　　 をい　 は　　ほうぶぎょうにんは ししゃ　　あいぐ　　　はきゃくさる　　べ　　　のじょう　　おお　　　 よっ　 しったつ くだん　ごと
　且は相觸る之後、之を七ケ日立つるに於て者、保奉行人者使者を相具し破却被る可き之状、仰せに依て執達 件の如し。

　　　　　　かんげんさんねんしがつにじうにち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのかみ
　　　寛元三年四月廿二日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　武藏守

　　　　　　　　　　　さどのぜんじどの
　　　　　佐渡前司殿

現代語寛元三年(1245)四月小二十二日丙戌。鎌倉中の町内の単位の保の支配人達に、承知して処理するべきの規則を箇条書きにして、今日決めました。佐渡前司後藤基綱が指揮担当です。
　町内単位の保を管理する支配人は、承知してい置くべき条文
一つ、道を作らないで何処でも勝手に歩いて道にする事
一つ、家の軒を道路に飛び出させない事
一つ、店を作って道路に品物を置いてだんだんはみ出して不法占拠する事
一つ、小屋を水路の上に建て掛けて不法占拠する事
一つ、夜は出歩かない事
　右の前の五か状を発布して、保の管理支配人に命令して、禁止するようにする。
　また、伝えた後、七日たっても守らない分には、保管理支配人は使いの喪を派遣して壊してしまえとの内容、将軍の命令によって、書き下す事はこの通りです。
　　　寛元3年4月22日　　　　　　　　　　　　武蔵守北条経時
　　　　　佐渡前司後藤基綱殿

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もとつな　　うつ　 さんぬ　にじうににち　みぎょうしょ　　きょう　ほうほうぶぎょうにん　 あいふる　　　うんぬん
寛元三年(1245)四月小廿七日辛夘。基綱が寫す去る廿二日の御教書、今日保々奉行人に相觸ると云々。

現代語寛元三年(1245)四月小二十七日辛卯。後藤基綱が書き写した先日22日の命令書は、今日、保の管理支配人に配布しましたとさ。

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