吾妻鏡入門第卅六巻

寛元三年乙巳(1245)八月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　つるがおかはちまんぐう　しんじたる　　よっ　　　　しょうぐんけおんじぶつどう　　ろう　　い　　　たま
寛元三年(1245)八月大一日癸亥。天�ﾘ。鶴岡八幡宮の 神事爲に依て、將軍家々持佛堂の廊に入り御う。

かく　ところ　ごしょよ　　しょうほうのひがしに あた　　　 いな　　　　おんさた　　へられ　　　おんみょうどう　やから　め　さる　　のうえ　　みかわのかみのりたか さんかん　およ　　　　うんぬん
此の所御所自り正方之 東于當るや否や、御沙汰を經被、陰陽道の輩を召被る之上、 參河守教隆 笇勘に及ぶと云々。

現代語寛元三年(1245)八月大一日癸亥。空は晴です。鶴岡八幡宮の神事なので、将軍家頼嗣様はご自分の持仏堂にお入りになりました。この場所は、御所から真東に当たるかどうか、検討されて陰陽道の連中を呼び集めた上で、三河守清原教隆が計ってみましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 ろうこくはくじ やすつぐ　　だいぜんごんのすけたかとし ら　めしうど　　な　　　おのおの　ひと　めしあず　　らる
寛元三年(1245)八月大二日甲子。天�ﾘ。漏刻博士泰継、　大膳權亮孝俊　等 囚人と爲し、各　 人に召預け被る。

やすつぐ　　 おおくらしょうゆうかげとも これ　あず
泰継は、大藏少輔景朝 之を預かる。

たかとし　　　ださぶろうはちろうにゅうどうのりとし　 うすいのくろうら　なり　　やすつぐ　 たかとしら は　　 すえひさあそん　 しゃていなり
孝俊は、駄三郎八郎入道則俊、臼井九郎等也。泰継、孝俊等者、季尚朝臣が舎弟也。

しか　　　 あにの いえを　つ　　　　ため　　きょねんしょうがつはつか　　すえひさ　ちゃくなん うきょうのりょうなりうじ　せつがい　をはんぬ
而るに兄之家於継がん爲、 去年正月廿日、 季尚が嫡男　右京亮業氏を殺害し 訖。

ろけんせし　　　　よっ　　　　かく　　おんさた　　およ　　　　うんぬん
露顯令むに依て、此の御沙汰に及ぶと云々。

現代語寛元三年(1245)八月大二日甲子。空は晴です。漏刻博士安部泰継と大膳権亮安陪孝俊などが囚人として、それぞれ預かりめしうどとして人に預けられました。泰継は、大蔵少輔遠山景朝が預かりました。安陪孝俊を預かったのは、駄三郎八郎入道則俊と臼井九郎です。安陪泰継と安陪孝俊は、安陪季尚さんの弟です。それなのに、兄の家を貰うために、去年1月20日に季尚の跡取りの息子の右京亮安陪業氏を殺してしまいました。それがばれたので、この処分をしましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぶしゅう　　ふれいへいげん　　こと　しかしなが　だいなごんほういん〔りゅうべん〕　　　きしょう　　こう　　 よ　　　 のよし　　 そ　　　さた　あ
寛元三年(1245)八月大五日丁夘。武州の不例平減の事、 併ら 大納言法印〔隆弁〕が祈精の功に依る之由、其の沙汰有り。

きょう　　にゅうどうだいなごんけ　おんじひつ　 おんしょ　 もっ　　かん　　おお　　らる　　　あまつさ　ぎょけん　 おく　　せし　 たま　　　　うんぬん
今日、入道大納言家御自筆の御書を以て感じ仰せ被る。剩へ 御劔を送ら令め給ふと云々。

現代語寛元三年(1245)八月大五日丁卯。武州北条経時さんの病気が良くなったのは、つくづく大納言法印隆弁のお祈りの手柄によるものだとと、そう決定しました。今日、入道前大納言家頼経様は自筆の感謝状をお与えになりました。そればかりか刀を送らせましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　つるがおかはちまんぐう　ほうじょうえなり　　しょぐんけおんいで　　まいじ　かび　　　つくさる　　　　うんぬん
寛元三年(1245)八月大十五日丁丑。天�ﾘ。 鶴岡八幡宮の 放生會也。將軍家御出。毎事花美を盡被ると云々。

ほうえ　　　ぶがく　　ことおわ　　　とりのこく　　およ　　かんご　　　　うんうん
法會、舞樂、事終り、酉刻に及び還御すと云々。

おんいで　ひょうれつ
御出の行列

せんじん　ずいへい
先陣の隨兵

　　かずさしきぶのたいふときひで　　　　　　　　　　　 するがのごろうさえもんのじょうすけむら
　上総式部大夫時秀�@　　　　　　駿河五郎左衛門尉資村�A

　　ちばのじろうやすたね　　　　　　　　　　　　　　　　　しきぶのひょうえたろうみつまさ
　千葉次郎泰胤�B　　　　　　　　式部兵衛太郎光政�C

　　かじわらのうえもんのじょうかげとし　　　　　　　　　　あそぬまのこじろうみつつな
　梶原右衛門尉景俊�D　　　　　　阿曽沼小次郎光綱�E

　　えちごのごろうときかず　　　　　　　　　　　　　　　　 とおとうみのしろうときなか
　越後五郎時員�F　　　　　　　　遠江四郎時仲�G

　　ほうじょうろくろうときさだ　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのはちろうときたか
　北條六郎時定�H　　　　　　　　相摸八郎時隆�I

参考�@上総時秀は、千葉常胤―千葉胤正―境常秀―境秀胤―境時秀
参考�A三浦資村は、義明―義澄―義村―資村
参考�B千葉泰胤は、常胤―胤正―成胤―泰胤
参考�C伊賀光政は、朝光―光宗―宗義―光政
参考�D梶原景俊は、景時―景茂―景俊
参考�E阿曽沼光綱は、広綱―親綱―光綱(藤性足利氏)
参考�F越後五郎時員は、時房―時盛―時員
参考�G遠江四郎時仲は、時房―朝直―時仲。
参考�H北条六郎時定は、泰時―時氏―時定
参考�I相模八郎時隆は、時房―時村―時隆。

つぎ　　しょたいふ
次に諸大夫

つぎ　　でんじょうびと
次に殿上人

つぎ　　おくるま
次に御車

つぎ　　しょたいふ
次に諸大夫

つぎ　　でんじょうびと
次に殿上人

つぎ　　おくるま
次に御車

　　おおそねたろうさえもんのじょうながつね　　 こうづけのじうろうともむら
　大曾祢太郎左衛門尉長經�@　上野十郎朝村�A

　　かじわらのうえもんさぶろうかげうじ　　　　　　ぜんのうえもんじろうやすあり
　梶原右衛門三郎景氏�B　　　善右衛門次郎康有�C

　　さいとうのさえもんのじょうもととき　　　　　　　うたのさえもんのじょうときかげ
　齋藤左衛門尉基時　　　　雅樂左衛門尉時景

　　しぶやのじろたろうたけしげ　　　　　　　　　 ささきのまごしろうやすのぶ
　澁谷次郎太郎武重�D　　　　佐々木孫四郎泰信�E

　　いとうのじろうすけとも　　　　　　　　　　　　　おのでらのしろうさえもんのじょうみちとき
　伊東次郎祐朝�F　　　　　　小野寺四郎左衛門尉通時�G

　　むとうのしろうよりたか　　　　　　　　　　　　　あわじのまたしろうむねやす
　武藤四郎頼隆　　　　　　淡路又四郎宗泰�H

　　たけいしのさぶろうともたね　　　　　　　　　　かずさのろくろうひでかげ
　武石三郎朝胤�I　　　　　　上総六郎秀景�J

　　へいじさえもんのじょうさねとし　　　　　　　　たちばなさつまよいちきんかず
　平次左衛門尉實俊�K　　　　橘薩摩余一公員�L

　　せじものたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　 ほんまじろうひょうえのじょうのぶただ
　瀬下太郎　　　　　　　　本間次郎兵衛尉信忠�M

　　　　いじょう　　じうはちにん　 ひたたれ　 つ　　　　 たいけんせし　　　 おくるま　　さゆう　　なら　　ある
　　已上の十八人、直垂を着け、帶劔令め、御車の左右に列び歩く。

参考�@大曽根長経は、安達盛長―大曽根時長―長泰―長経
参考�A上野十郎朝村は、結城朝光―朝村
参考�B梶原景氏は、景時―景茂―景俊―景氏
参考�C太田康有は、三善康信―太田康連―康有
参考�D渋谷武重は、重国―高重―武重
参考�E佐々木泰信は、義清―泰清―頼清―泰信カ？
参考�F伊東祐朝は、工藤祐経―伊東祐時―祐朝
参考�G小野寺通時は、通綱＝秀通―通時
参考�H淡路宗泰は、小山政光―長沼宗政―時宗―宗泰
参考�I武石朝胤は、千葉常胤―武石胤盛―胤重―朝胤＊吾妻鏡では胤盛は胤成と記す
参考�J上総秀景は、常胤―胤正―境常秀―上総秀胤―秀景
参考�K平次左衛門尉實俊は、平岡
参考�L橘薩摩余一公員は、橘次公成(業)―公員
参考�M本間信忠は、義忠―忠家―信忠。

つぎ　　ぎょけん　えき　 ひと
次に御劔の役の人

　　わかさのぜんじやすむら
　若狹前司泰村�N

参考�N三浦泰村は、義明―義澄―義村―泰村

つぎ　　ごちょうご　　 えき　　ひと
次に御調度の役の人

　　いせのかとうさえもんのじょう
　伊勢加藤左衛門尉

つぎ　 おんうしろ　　ごい
次に御後の五位

　　さきのうまごんのかみ　〔まさむら〕　　　　　　　　　　ほうじょうさこんたいふしょうげん　〔ときより〕
　前右馬權頭〔政村〕�@　　　　　北條左近大夫將監〔時頼〕�A

　　とおとうみのかみともなお　　　　　　　　　　　　　くないしょうゆうやすうじ
　遠江守朝直�B　　　　　　　　宮内少輔泰氏�C

　　さがみうこんたいふしょうげんときさだ　　　　　　えちごうまのすけときちか
　相摸右近大夫將監時定�D　　　越後右馬助時親�E

　　とおとうみさまのすけきよとき　　　　　　　　　　　もうりひょうえのたいふひろみつ
　遠江左馬助�C時�F　　　　　　毛利兵衛大夫廣光�G

　　あいだのじょうすけよしかげ　　　　　　　　　　　かずさごんのすけひでたね
　秋田城介義景�H　　　　　　　上総權介秀胤�I

参考�@北条政村は、義時―政村(四男)
参考�A北条時頼は、義時―泰時―時氏―時頼
参考�B北条朝直は、時房―朝直
参考�C足利泰氏は、義兼―義氏―泰氏
参考�D相模時定は、時房―時定
参考�E越後時親は、時房―時盛―時親
参考�F遠江清時は、不明
参考�G毛利広光は、大江広元―毛利季光―広光
参考�H安達義景は、盛長―景盛―義景
参考�I上総権介秀胤は、常胤―胤正―常秀―秀胤

　　かいのぜんじやすひで　　　　　　　　　　　　　　のとのぜんじみつむら
　甲斐前司泰秀�@　　　　　　　能登前司光村�A

　　ほうきのぜんじきよちか　　　　　　　　　　　　　さきのぎょうぶしょうゆうただなり
　伯耆前司�C親�B　　　　　　　前刑部少輔忠成�C

　　おおくらごんのしょうゆうともひろ　　　　　　　　 だざいのしょうにためすけ
　大藏權少輔朝廣�D　　　　　　大宰少貳爲佐�E

　　かみじょうみまさかぜんじゆきつな　　　　　　　　ではのぜんじゆきよし
　上條美作前司行綱�F　　　　　出羽前司行義�G

　　するがしきぶのたいふいえむら　　　　　　　　かみじょうしゅりのすけながたか
　駿河式部大夫家村�H　　　　　上條修理亮長高�I

参考�@長井泰秀は、大江広元―長井時広―泰秀
参考�A三浦光村は、義明―義澄―義村―光村
参考�B葛西清親は、清重―清親
参考�C少輔忠成は、不明
参考�D結城朝広は、朝光―朝広
参考�E狩野為佐は、工藤介茂光―狩野行光―為佐(前名を為光)
参考�F上條行綱は、宇都宮四郎行綱で出演31巻12370623ネット系図にはいない
参考�G二階堂行義は、行政―行村―行義
参考�H三浦家村は、義明―義澄―義村―家村
参考�I上條長高は、宇都宮頼綱―上条時綱―長高

　　ささきのいきぜんじやすつな　　　　　　　　　 とおとうみおおくらしょうゆうかげとも
　佐々木壹岐前司泰綱�@　　　　遠江大藏少輔景朝�A

　　せっつのぜんじもろかず　　　　　　　　　　　　　　ないとうひごぜんじもりとき
　攝津前司師員�B　　　　　　　内藤肥後前司盛時�C

　　えのいわみぜんじよしゆき　　　　　　　　　　　　びんごのかみやすもち
　江石見前司能行�D　　　　　　備後守康持�E

　　たじまのぜんじさだかず　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじゆきかた
　但馬前司定員�F　　　　　　　和泉前司行方�G

　　はやとのしょうみつしげ　　　　　　　　　　　　　　ちくぜんぜんじゆきやす
　隼人正光重�H　　　　　　　　筑前前司行泰�I

参考�@佐々木泰綱は、定綱―信綱―泰綱
参考�A遠山景朝は、加藤次景廉―景朝
参考�B摂津師員は、中原
参考�C内藤盛時は、盛家―盛時
参考�D石見能行は、大江
参考�E町野康持は、三善康信―町野康俊―康持
参考�F但馬定員は、藤原
参考�G二階堂行方は、行政―行村―行方
参考�H伊賀光重は、朝光―光重
参考�I二階堂行泰は、行政―行光―行盛―行泰

　　いせのぜんじゆきつな　　　　　　　　　　　　　　 いがのぜんじときいえ
　伊勢前司行綱�@　　　　　　　伊賀前司時家�A

　　たじまひょうえのたいふさだのり　　　　　　　　　 むつかもんのすけさねとき
　但馬兵衛大夫定範�B　　　　　陸奥掃部助實時�C

　　あしかがのじろうかねうじ　　　　　　　　　　　　　こうづけのさぶろうくにうじ
　足利次郎兼氏�D　　　　　　　上野三郎國氏�E

　　わかさのじろうかげむら　　　　　　　　　　　　　　 おおすがのじろうさえもんのじょうたねうじ
　若狹次郎景村�F　　　　　　　大須賀次郎左衛門尉胤氏�G

　　いきのろくろうさえもんのじょうともひろ　　　　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき
　壹岐六郎左衛門尉朝�C�H　　　和泉次郎左衛門尉行章�I

参考�@二階堂行綱は、行政―行光―行盛―行綱
参考�A伊賀前司時家は、不明
参考�B藤原定範は、定員―定範
参考�C北条実時は、義時―実泰―実時
参考�D足利兼氏は、義兼―義氏―泰氏―兼氏
参考�E上野三郎国氏は、13年後の47巻正嘉元年(1257)10月1日以降には畠山上野三郎國氏と出るが、室町期の奥州畠山国氏とは別人で、上野前司源性畠山泰国の子であろう。
参考�F三浦景村は、義村―泰村―景村
参考�G大須賀胤氏は、千葉常胤―大須賀胤信―胤通―胤氏
参考�H壹岐朝�Cは、葛西清重―朝清
参考�I二階堂行章、行政―行村―行方―行章

　　かずさのごろうさえもんのじょうやすひで　　　　いやぜんたさえもんのじょうやすよし
　上総五郎左衛門尉泰秀�@　　　弥善太左衛門尉康義�A

　　ひごのじろうさえもんのじょうかげうじ　　　　　　　いがのじろうさえもんのじょうみつふさ
　肥後次郎左衛門尉景氏�B　　　伊賀次郎左衛門尉光房�C

　　いがのろくろうさえもんのじょうともなが　　　　　ひろさわのさえもんのじょうさねよし
　伊賀六郎左衞門尉朝長�D　　　廣澤左衛門尉實能�E

　　うさみのとうないさえもんのじょうすけやす　　　ひたちのじろうひょうえのじょうゆきかつ
　宇佐美藤内左衛門尉祐泰�F　　常陸次郎兵衛尉行雄�G

　　おおそねいやさえもんのじょうながやす　　　　 みむらしんさえもんのじょうちかとき
　大曾祢左衛門尉長泰�H　　　　三村新左衛門尉親時�I

　　しなののしろうさえもんのじょうゆきただ
　信濃四郎左衛門尉行忠�J

参考�@上総泰秀は、常胤―胤正―常秀―秀胤―泰秀
参考�A康義は、善と康から三善一族らしいが系図が不明
参考�B肥後景氏は、狩野為佐の子カ？
参考�C伊賀光房は、朝光―光資―光房
参考�D伊賀朝長は、朝光―朝長
参考�E広沢実能は、波多野遠義―広沢実方―実高―実能
参考�F宇佐美祐泰は、祐茂―祐政―祐泰
参考�G二階堂行雄は、、行政―行光―行盛―行泰―行雄
参考�H大曽根長経は、安達盛長―大曽根時長―長泰
参考�I三村親時は、加々美遠光―小笠原長清―長経―三村長時―親時
参考二階堂行忠は、行政―行光―行盛―行忠

つぎ　　こうじん　　ずいへい
次に後陣の隨兵

　　あしかがのたろういえうじ　　　　　　　　　　　　 かわごえかもんのすけやすしげ
　足利太郎家氏�@　　　　　　　河越掃部助泰重�A

　　しもつけしちろうつねつな　　　　　　　　　　　 でわのじろうひょうえのじょうゆきあり
　下野七郎經綱�B　　　　　　　出羽次郎兵衛尉行有�C

　　こうじまのじろうときむら　　　　　　　　　　　　　 つちやのしんざぶろうみつとき
　幸嶋次郎時村�D　　　　　　　土屋新三郎光時�E

　　さつまのしちろうすけよし　　　　　　　　　　　　　　ぜんうえもんごろうやすいえ
　薩摩七郎祐能�F　　　　　　　善右衛門五郎康家�G

　　こうづけごろうひょうえんじょうしげみつ　　　　　　 さどのごろうさえもんのじょうもとたか
　上野五郎兵衛尉重光�H　　　　佐渡五郎左衛門尉基隆�I

参考�@足利家氏は、義兼―義氏―泰氏―家氏
参考�A河越泰重は、重隆―能隆―重頼―重時―泰重
参考�B宇都宮経綱は、頼綱―泰綱―経綱
参考�C二階堂行有は、行政―行村―行義―行有
参考�D幸嶋次郎時村は、不明
参考�E土屋光時は、中村宗平―土屋宗遠―宗光―光時
参考�F伊東祐能は、工藤祐経―伊東祐時―安積祐長―伊東薩摩祐能
参考�G康家は、善と康から三善一族らしいが系図が不明。
参考�H結城重光は、朝光―重光
参考�I後藤基隆は、基清―基綱―基隆

きょう　　　ぶしゅう　　ふれい げんきのあいだ　 だいなごんほういん　〔りゅうべん〕　ぎょうほう　けちがんせし　　　ほんぼう　　かえ
今日、武州の不例減氣之間、大納言法印〔隆弁〕 行法を結願令め、本坊へ皈る。

よっ　　ぶしゅう　　くないひょうのじょう　　もっ　　おんし　　な　　　　つるぎなら　　　うま　　まきぎぬさんじっぴき　おく　 つか　 さる
仍て武州、宮内兵衛尉を以て御使と爲し、劔并びに馬、巻絹三十疋を送り遣は被る。

また　 さまのかみにゅうどうまさよし　さんしにじっぴき　ごめんひゃくりょう おな　　　これ　　おく　　　　こ　　ほか　　わかさのぜんじ　 あいだのじょうすけら めんめん　これ　 が　さる
又、左馬頭入道政義、桑絲廿疋、呉綿百兩 同じく之を送る。此の外、若狹前司、秋田城介等 面々に之を賀被る。

くだん　 ふれい　 へいゆ　　ひと　　　かんとう　　だいけいたる　 よっ　 なり　　うんぬん
件の不例の平愈、偏へに關東の大慶爲に依て也と云々。

現代語寛元三年(1245)八月大十五日丁丑。空は晴です。鶴岡八幡宮の生き物を放って贖罪する儀式放生会です。将軍家頼嗣様のお出ましです。行事がすべて豪華にしているそうな。法要・舞の奉納などの行事が終わり、午後6時頃になって御帰りだそうな。
お出ましの行列は、
先へ行く武装儀仗兵
　上総式部大夫境時秀　　と　駿河五郎左衛門尉三浦資村
　千葉次郎泰胤　　　　　と　式部兵衛太郎伊賀光政
　梶原右衛門尉景俊　　　と　阿曾沼小次郎光綱
　越後五郎北条時員　　　と　遠江四郎北条時仲
　北条六郎時定　　　　　と　相模八郎北条時隆
次に諸大夫(五位)
次に殿上人(昇殿を許された人)
次に将軍の牛車
　大曽根太郎左衛門尉長経　と　上野十郎結城朝村
　梶原右衛門三郎景氏　　　と　善右衛門次郎太田康有
　斉藤左衛門尉基時　　　　と　雅楽左衛門尉源時景
　渋谷次郎太郎武重　　　　と　佐々木孫四郎泰信
　伊東次郎祐朝　　　　　　と　小野寺四郎左衛門尉通時
　武藤四郎頼隆　　　　　　と　淡路又四郎長沼宗泰
　武石三郎朝胤　　　　　　と　上総六郎秀景
　平次左衛門尉平岡実俊　　と　橘薩摩余一公員
　瀬下太郎　　　　　　　　と　本間次郎兵衛尉信忠
　　以上の18�u人は、鎧直垂を着て、太刀を佩き、牛車の左右を並んで歩く。
次に将軍の太刀持ち役の人　若狭前司三浦泰村
次に将軍の弓矢を担ぐ役の人　伊勢加藤左衛門尉
次に将軍の牛車の後ろに付く五位の人
　前右馬権頭北条政村　　と　北条左近大夫将監時頼
　遠江守北条朝直　　　　と　宮内少輔足利泰氏
　相模右近大夫将監時定　と　越後右馬助時親
　遠江左馬助清時　　　　と　毛利兵衛大夫広光
　秋田城介安達義景　　　と　上総権介秀胤
　甲斐前司大江長井泰秀　と　能登前司三浦光村
　伯耆前司葛西清親　　　と　前刑部少輔忠成
　大蔵権少輔結城朝広　　と　太宰少弐狩野為佐
　上条美作前司行綱　　　と　出羽前司二階堂行義
　駿河式部大夫三浦家村　と　上条修理亮長高
　佐々木壱岐前司泰綱　　と　遠江大蔵少輔加藤遠山景朝
　摂津前司中原師員　　　と　内藤肥後前司盛時
　石見前司大江能範　　　と　備後守三善康持
　但馬前司藤原定員　　　と　和泉前司二階堂行方
　隼人正伊賀光重　　　　と　筑前前司二階堂行泰
　伊勢前司二階堂行綱　　と　伊賀前司時家
　但馬兵衛大夫藤原定範　と　陸奥掃部助北条実時
　足利次郎兼氏　　　　　と　上野三郎畠山国氏
　若狭次郎三浦景村　　　と　大須賀次郎左衛門尉胤氏
　壱岐六郎左衛門尉葛西朝清　と　和泉次郎左衛門尉二階堂行章
　上総五郎左衛門尉泰秀　と　弥善太左衛門尉康義
　肥後次郎左衛門尉景氏　と　伊賀次郎左衛門尉光房
　伊賀六郎左衛門尉朝長　と　広沢左衛門尉実能
　宇佐美藤内左衛門尉祐泰と　常陸次郎兵衛尉二階堂行雄
　大曽根左衛門尉長泰　　と　三村新左衛門尉親時
　信濃四郎左衛門尉二階堂行忠
次に後ろの武装儀仗兵
　足利太郎家氏　　　　　と　河越掃部助泰重
　下野七郎宇都宮経綱　　と　出羽次郎兵衛尉二階堂行有
　幸島次郎時村　　　　　と　土屋新三郎光時
　薩摩七郎伊東祐能　　　と　善右衛門五郎康家
　上野五郎兵衛尉結城重光と　佐渡五郎左衛門尉後藤基隆

今日、武州経時さんの病気が回復してきたので、大納言法印隆弁は祈祷の修め儀式をして、自分の宿舎へ帰りました。そこで、経時さんは宮内兵衛尉を代理にして刀や馬、絹の反物30匹(60反)を送り届けさせました。
又、左馬頭入道足利政義は、絹糸20疋、呉の綿百両を同様に届けました。この他、若狭前司三浦泰村・秋田城介安達義景等が、それぞれ顔を出して祝いの言葉をかけました。この病気の快復したのは、なんといっても関東の大きな祝い事なんだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 てんがんかいせい　つるがおか　　ばば　のぎ　　　こと　　けっこうさる　　　 ことすで　 きょねん　 ごと
寛元三年(1245)八月大十六日戊寅。天顏快霽。 鶴岡の馬塲之儀、殊に結搆被る。縡已に去年の如し。

しょうぐんけおんいで　　ぐぶにん　　きのう　　おな　　　　ごほうへい　あ　　　　　さくいままた おんはら　　あ　　　　はるかたこれ　そうら
將軍家御出。供奉人は昨日に同じ。御奉幣有り。昨今又 御秡へ有り。�ﾘ賢之に候う。

ぼうもんしょうしょう 〔きよもと〕　　おわりちうじょうばいぜんたり　　みずたにうえもんたいふしへすけ えきそう　　とつ
坊門少將〔�C基〕、尾張中將陪膳爲。水谷右衛門大夫重輔 役送を勤む。

　こ　　うえ　　だいなごんほういん　〔りゅうべん〕　おんかじ　　そうら　らる　　　　うんぬん　　　ばば　　のぎ　　けっこう　　きょねん　 おな　　　　　　きだい　　そうかんなり
此の上、大納言法印〔隆弁〕御加持に候は被ると云々。馬塲之儀の結搆は去年に同じく、希代の壯觀也。

にゅうどうだいなごんけ　　 さじき　　 をい　 ごけんぶつあ　　　　 うんぬん　　　ばば　　　ぎ　　　みこ　でんがく　　　ばばら　つね　　ごと　　　　うんぬん
入道大納言家、棧敷に於て御見物有りと云々。馬塲の儀、神子田樂、馬塲等常の如しと云々。

じうれつ
十列

　　いちばん　　　おおすみのたろうさえもんのじょう
　一番　　大隅太郎左衛門尉�@

　　　にばん　　　ぶんごのじうろうさえもんのじょう
　二番　　豊後十郎左衛門尉

　　さんばん　　　せきどのさえもんのじょう
　三番　　石戸左衛門尉�A

　　よんばん　　　あだちのたろうさえもんのじょう
　四番　　足立太郎左衛門尉

　　　ごばん　　　みうらのしんさえもんのじょう
　五番　　三浦新左衛門尉

　　ろくばん　　　　かぢのしちろううえもんのじょう
　六番　　加地七郎右衛門尉�B

　　しちばん　　　たなかのうえもんのじょう
　七番　　田中右衛門尉

　　はちばん　　　そうまのしろうひょうえのじょう
　八番　　相馬四郎兵衛尉

　　　くばん　　　さぬきのじろうひょうえのじょう
　九番　　佐貫次郎兵衛尉

　　じうばん　　　　さわらのろくろうさえもんのじょう
　十番　　佐原六郎左衛門尉

参考�@大隅太郎重村は、三浦義澄―大河戸重隆―重村、宝治合戦で親子共々に滅びる。
参考�A石戸左衛門尉は、埼玉県北本市石戸宿かも知れない。
参考�B加地七郎氏綱は、佐々木盛綱―信実の子孫であろう。

 やぶさめ
流鏑馬

　 いちばん　　　 ながえのしろうにゅうどう　　　　　　　〔　いて　　　おな　　　　　こじろう　　　　　　　　　　　　 まとたて　　とおとうみおおくらしょうゆう〕
　一番　　長江四郎入道　　　〔射手は同じき小次郎　　　　的立は遠江大藏少輔〕

　　 にばん　　　 いずのにゅうどう　　　　　　　　　　　 〔　いて　　　おな　　　　　ごろしちろう　　　　　　　　　　まとたて　　　いきぜんじやすつな〕
　二番　　伊豆入道　　　　　〔射手は同じき五郎七郎　　　的立は壹岐前司泰綱〕

　 さんばん　　　 おがさわらのろくろう　　　　　　　　　〔　いて　　　おな　　　　　しろたろう　　　　　　　　　　 　まとたて　　さきのはやとのしょうみつしげ〕
　三番　　小笠原六郎　　　　〔射手は同じき四郎太郎　　　的立は前隼人正光重〕

　 よんばん　　　 かずさのすけ　　　　　　　　　　　　　〔　いて　　　しろく　ろくろう　　　　　　　　　　　　　　　　まとたて　　　ないとうひごぜんじもりとき〕
　四番　　上総介　　　　　　〔射手は子息六郎　　　　　　的立は内藤肥後前司盛時〕

　　 ごばん　　　 さどのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　〔　いて　　　おきのさえもんしろう　　　　　　　　　　　　 まとたて　　　ないとうぶんごぜんじ〕
　五番　　佐渡前司　　　　　〔射手は隱岐左衛門四郎　　　的立は内藤豊後前司〕

　 ろくばん　　　 しなののみんぶにゅうどう　　　　　　　〔　いて　　　しそく　しろう　さえもんのじょう　　　 　　 　まとたて　　　くないさえもんのじょう〕
　六番　　信濃民部入道　　　〔射手は子息四郎左衛門尉　　的立は宮内左衛門尉〕

　 しちばん　　　でわのぜんじ　　　　　　　　　　　　　 〔　いて　　　　しそく　じろう　ひょうえのじょう　　　 　　　まとたて　　ひごのたろうさえもんのじょう〕
　七番　　出羽前司　　　　　〔射手は子息二郎兵衛尉　　　的立は肥前太郎左衛門尉〕

　 はちばん　　　 おやまのほうがんながむら　　　　　〔　いて　　　やまのうちひょうえさぶろう　　　 　　　　　　まとたて　　　ひぜんのしろうさえもんのじょう〕
　八番　　小山判官長村　　　〔射手は山内兵衛三郎　　　　的立は肥前四郎左衛門尉〕

　　　くばん　　　　こうづけのにゅうどう　　　　　　　　　〔　いて　　　おな　　　　いやさぶろう　　　　　 　　　　　まとたて　　　とおとうみのろくろうさえもんのじょう〕
　九番　　上野入道　　　　　〔射手は同じき弥三郎　　　　的立は遠江六郎左衛門尉〕

　　じうばん　　　　あわじのしろうさえもんのじょう　　　〔　いて　　　しそく　　いやしろう　　　　　　　　　　　　　　まとたて　　　ひごのじろうさえもんのじょう〕
　十番　　淡路四郎左衛門尉　〔射手は子息弥四郎　　　　　的立は肥後次郎左衛門尉〕

　　じういちばん　 いずみのじろうさえもんのじょう　　〔　いて　　　わたなべぼうえもんしろう　　　　 　　　　　　まとたて　　ぶんごのしろうさえもんのじょう〕
　十一番　和泉次郎左衛門尉　〔射手は渡部右衛門四郎　　　的立は豊後四郎左衛門尉〕

　　じうにばん　　　ささきのいきぜんじ　　　　　　　　　〔　いて　　　ささきのろくろうさえもんのじょう　 　　　　　まとたて　　いずみのじろうさえもんのじょう〕
　十二番　佐々木壹岐前司　　〔射手は佐々木六郎左衛門尉　的立は和泉次郎左衛門尉〕

　　じうさんばん　  そうまのこごろう　　　　　　　　　　　〔　いて　　　そうまのさえもんさぶろう　　　　　　 　　　　　まとたて　　かずさしきぶのたいふ〕
　十三番　相馬小五郎�B 　　　〔射手は相馬左衛門三郎　　　的立は上総式部大夫〕

　　じうよんばん　　ほうじょうさこんたいふしょうげん　 〔　いて　　　たけだのごろさぶろう　　　　　　　　 　　　　　まとたて　　こうづけおおくらしょうゆう〕
　十四番　北條左近大夫將監　〔射手は武田五郎三郎　　　　的立は上野大藏少輔〕

　　じうごばん　　　うまごんのかみ　　　　　　　　　　　 〔　いて　　　いがのろくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　 まとたて　　いわみのぜんじよしゆき〕
　十五番　右馬權頭　　　　　〔射手は伊賀六郎　　　　　　的立は石見前司能行〕

　　じうろくばん　　わかさのぜんじ　　　　　　　　　　　〔　いて　　　さわらのしりさえもんのじょう　　　　　　　　　　まとたて　　のとのぜんじ〕
　十六番　若狹前司　　　　　〔射手は佐原七郎左衛門尉　　的立は能登前司〕

参考�B相馬小五郎は、千葉常胤―相馬師常―義胤―胤綱―(五郎)胤村―小五郎であろう。

くらべうま
競馬

　　いちばん　　〔ひだり　　くどうのうえもんのじょうじろう　　　　　みぎ　　はたのじろうふしょう〕
　一番　〔左　工藤右衛門尉次郎　右　泰次郎府生�C〕

　　　にばん　　〔ひだり　　とんだのじろうひょうえのじょう　　　　　みぎ　　さがわのいやごろう〕
　二番　〔左　冨田次郎兵衛尉　　右　相良弥五郎〕

　　さんばん　　〔ひだり　ほんまのさぶろうひょうえのじょう　　　　みぎ　　かわむらのこしろう〕
　三番　〔左　本間三郎兵衛尉　　右　河村小四郎〕

　　よんばん　　〔ひだり　　やまぐちのさぶろうひょうえのじょう　　みぎ　　しもじょうのしろう〕
　四番　〔左　山口三郎兵衛尉　　右　下條四郎〕

　　　ごばん　　〔ひだり　　しょうそねうのこじろう　　　　　　　　　　みぎ　　かさいのまたじろう〕
　五番　〔左　樟曾祢小二郎　　　右　葛西又太郎〕

参考�C府生は、六衛府・検非違使の下級役人。

現代語寛元三年(1245)八月大十六日戊寅。空の顔色は快晴です。鶴岡八幡宮への奉納の馬場での儀式は、特に用意しました。種目は去年と同じです。将軍家頼嗣様のお出まし。お供の人は昨日と同じです。幣の奉納がありました。昨日も今日もお祓いがありました。安陪晴賢がこれを勤めました。坊門少将清時と尾張中条がお手伝いです。水谷右衛門大夫重輔が運搬係です。その上、大納言法印隆弁が加持祈祷を行いましたとさ。奉納の馬場での儀式は去年と同じですが、まれにみる盛大な物でした。入道前大納言家頼経様は、仮設見物席の桟敷で見ていました。馬の競技・神に仕える下っ端の田楽舞など馬場では何時もの通りだったそうな。
飾り馬の馬長は、十人です。
一番は、大隅太郎左衛門尉大河戸重村。
二番は、豊後十郎左衛門尉島津
三番は、石戸左衛門尉
四番は、足立太郎左衛門尉直光
五番は、三浦新左衛門尉
六番は、加地七郎右衛門尉氏綱
七番は、田中右衛門尉知継
八番は、相馬四郎兵衛尉
九番は、佐貫次郎兵衛尉
十番は、佐原六郎兵衛尉時連

流鏑馬
　一番は、長江四郎明義入道の分　　　〔射手は、同長江小次郎　　　　的立は、遠江大蔵少輔加藤遠山景朝〕
　二番は、伊豆入道武田信光の分　　　〔射手は、同武田五郎七郎政平　的立は、壱岐前司佐々木泰綱〕
　三番は、小笠原六郎時長の分　　　　〔射手は、同小笠原四郎太郎　　的立は、前隼人正伊賀光重〕
　四番は、上総介秀胤の分　　　　　　〔射手は、息子の六郎秀景　　　的立は、内藤肥前前司盛時〕
　五番は、佐渡前司後藤基綱の分　　　〔射手は、隠岐左衛門四郎　　　的立は、内藤豊後前司〕
　六番は、信濃民部入道二階堂行盛の分〔射手は、息子の四郎左衛門尉行忠　的立は、宮内左衛門尉公景〕
　七番は、出羽前司二階堂行義の分　　〔射手は、息子の次郎兵衛尉行有　的立は、肥前太郎左衛門尉胤家〕
　八番は、小山判官長村の分　　　　　〔射手は、山内兵衛三郎　　　　的立は、肥前四郎左衛門尉光連〕
　九番は、上野入道結城朝光の分　　　〔射手は、同弥三郎　　　　　　的立は、遠江六郎左衛門尉時連〕
　十番は、淡路四郎左衛門尉長沼時宗分〔射手は、息子の弥四郎宗員　　的立は、肥後次郎左衛門尉狩野景氏〕
十一番は、和泉次郎左衛門尉二階堂行章〔射手は、渡部右衛門四郎　　　的立は、豊後四郎左衛門尉島津忠綱〕
十二番は、佐々木壱岐前司泰綱の分　　〔射手は、佐々木六郎左衛門尉　的立は、和泉次郎左衛門尉天野景氏〕
十三番は、相馬小五郎の分　　　　　　〔射手は、相馬左衛門三郎　　　的立は、上総式部大夫時秀〕
十四番は、北条左近大夫将監時頼の分　〔射手は、武田五郎三郎政綱　　的立は、上野大蔵少輔結城朝広〕
十五番は、右馬権頭北条政村の分　　　〔射手は、伊賀六郎光重　　　　的立は、石見前司大江能行〕
十六番は、若狭前司三浦泰村　　　　　〔射手は、佐原七郎左衛門尉政連　的立は、能登前司三浦光村〕

競馬
　一番は、左が工藤右衛門尉次郎　　　右が秦次郎府生
　二番は、左が冨田次郎兵衛尉　　　　右が相良弥五郎
　三番は、左が本間三郎兵衛尉　　　　右が河村小四郎
　四番は、左が山口三郎兵衛尉　　　　右が下条四郎
　五番は、左が樟曽祢小次郎　　　　　右が葛西又太郎

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　 みのこく　　しょうぐんけ　 にはか　 ごふれい　　　じゃき　 うんぬん
寛元三年(1245)八月大十八日庚辰。天�ﾘ。巳尅、將軍家、俄に御不例。邪氣と云々。

　ごきとう　　　こと　　だいなごんほういん　〔りゅうべん〕　　　おお　　つけらる　　　　ひごろ ぶしゅう　　きとう　　こと　　よっ　　　　はなは　きゅうくつ
御祈祷の事、大納言法印〔隆弁〕に仰せ付被る。日來武州の祈祷の事に依て、甚だ窮屈。

あまつさ　はつびょう　およ　 のよし　　しき　　　　じ　　　もう　　　いへど　　　　おお　 さいさん　 およ　　　りょうじょうせし　　すなは　　ごしょちう　　　さんろう　　　うんぬん
 剩へ發病に及ぶ之由、頻りに辞し申すと雖も、仰せ再三に及び、領状令め、即ち御所中へ參籠すと云々。

　こ　　ほか　　ないがい　　ごきとう　すうざ　　　よ　　　い　　　これ　 しぎょう　　　 うんぬん
此の外、内外の御祈祷數座、夜に入り之を始行すと云々。

現代語寛元三年(1245)八月大十八日庚辰。空は晴です。午前10時頃、将軍家頼嗣様が急に具合が悪くなりました。何か悪い病気らしい。祈祷をするように大納言法印隆弁に命令しました。此の処、武州経時の祈祷をしているので、とても手が廻りません。ましてや、発病してからではと、盛んに遠慮しましたが、命令が何度にも及んだので、承知しました。すぐに御所の中へ出かけ籠りました。この他にも、仏教や陰陽道の御祈祷を数人、夜になって始めさせましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　　ごふれい　　ことは　　 おんくび　こぶはれせし　 たま
寛元三年(1245)八月大十九日辛巳。天霽。御不例の事者、御頚の瘻腫令め給ふ。

すこぶ　ましげ　　 じゃき あいまざ　　たま　　のよし　　そ　　　さた　あ
頗る増氣、邪氣相交り御う之由、其の沙汰有り。

ごしょちう　　　をい　　　　にょほうたいさんふくん　　おこなはれ　　だいどくうら　　まつり　　おな　　たつみかた　をい　ぞくしょうさいあ
御所中に於て、如法泰山府君を行被る。大土公等の祭、同じく巽方に於て属星祭有り。

くらのかみすけちか　こ　　あいだ　こと　　ぶぎょう　　　　うんぬん
内藏頭資親 此の間の事を奉行すと云々。

現代語寛元三年(1245)八月大十九日辛巳。空は晴です。将軍家頼嗣様の病気については、首に瘤が腫れたからです。病気が進行して、悪い病気が重なったらしいと決定し、御所の中で、規則通りの泰山府君祭を行いました。大土公(土地神様)などの祭(祈祷)・同様に東南の方角で属星祭もありました。内蔵頭資親が、これらの進行を指揮担当しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 おな　　　おいのり　　だいやくさい　これ　しゅうさる　　 ふみながあそんこれ　 ほうし
寛元三年(1245)八月大廿日壬午。天�ﾘ。同じき御祈、代厄祭�@之を修被る。文永朝臣之を奉仕す。

きょう　　　にじょうどのよ　　　こぐるま　　すす　　らる　　　 ごしょうがん　　　 いささ　　ごしんく　　　やす　　　　　 ごと　　　　うんぬん
今日、二條殿�A自り小車を進め被る。御賞翫す。聊か御辛苦を休むるが如しと云々。

参考�@代厄祭は、陰陽道で行われる祭祀のひとつ。病気や厄年を避けるために行う。
参考�A二条殿は、頼経兄の二条良実。九条道家の次男。母は西園寺公経の娘綸子。
参考�B小車は、八葉の模様が小さい小八葉車と思われる。

現代語寛元三年(1245)八月大二十日壬午。空は晴です。昨日同様にお祈りや、厄を払う祭祀などを行いました。安部文永さんが勤めました。今日、二条殿良実様から小八葉の牛車を送って来ました。大喜びです。多少病をいやす事になりましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　しょうちょうじゅんべっとうそうじょう　〔りょうしん〕　みょうどうく　しゅう　　　おな　　　　ごきとうなり
寛元三年(1245)八月大廿一日癸未。天�ﾘ。勝長壽院別當僧正〔良信〕冥道供�@を修す。同じき御祈祷也。

参考�@冥道供は、閻魔大王に罪の消滅と長寿を祈願する密教の供養法。

現代語寛元三年(1245)八月大二十一日癸未。空は晴です。勝長寿院筆頭の僧正良信が閻魔様に原罪と長寿を祈る冥道供を勤めました。同じような御祈祷です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　きょう　　　れいしょ　　おはら　　　おこなはれ　　　ごふれい　　おいのり　　うんぬん

寛元三年(1245)八月大廿四日丙戌。天�ﾘ。今日、靈所�@の御秡へを行被る。御不例の御祈と云々。

参考�@靈所は、35巻延応2年6月15日に霊所七瀬祓へとあるので、七瀬祓いとした。

現代語寛元三年(1245)八月大二十四日丙戌。空は晴です。今日、霊所七瀬のお祓いをしました。病気平癒のお祈りだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　しょうぐんけ　　ごふれい　　なおふかいのあいだ　 せんど　　おんはら　　　おこなはれ
寛元三年(1245)八月大廿六日戊子。天�ﾘ。將軍家の御不例、猶不快之間、千度の御秡へを行被る。

 よ　　　い　　　ごしょ　　をい　　そ　　　ぎ　あ　　　　　にょほうたいさんふくんさい　はるかたこれ　　ほうし
夜に入り御所に於て其の儀有り。如法泰山府君祭、�ﾘ賢之を奉仕す。

さいりょう　　くださる　　のうえ　　おんうまいぴき　〔しろくら　　　お　　　〕　　　ぎょけん 〔ぎんづくり 〕　 ら　　　くは　　らる　　　さぬきのかみちかざね　〔いかん〕　おんしたり　　うんぬん
祭料を下被る之上、御馬一疋〔白鞍を置く〕、御劔〔銀作〕等を加へ被る。讃岐守親實〔衣冠〕御使爲と云々。

現代語寛元三年(1245)八月大二十六日戊子。空は晴です。将軍家頼嗣様の病気が、まだ治らないので、千回のお祓いを行いました。夜になって、御所でその儀式がありました。規則通りの泰山府君祭を晴賢が勤めました。お勤め料を下賜したばかりか、馬を一頭〔銀覆輪の鞍置き〕、刀〔銀細工〕などを追加しました。讃岐守三条親実〔衣冠束帯〕が使者となりましたとさ。

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吾妻鏡入門第卅六巻