吾妻鏡入門第卅九巻  

寳治二年(1248)十二月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こと　　　　ごがん　　　よっ　　　　だいじんぐう　　おかぐらまい　　　よ　　たてま　らる　　　　せいさえもんのじょうみつさだ これ　　ぶぎょう
寳治二年(1248)十二月大五日戊寅。殊なる御願に依て、大神宮�@へ御神樂米�Aを寄せ奉つ被る。 �C左衛門尉滿定 之を奉行す。

参考�@大神宮は、伊勢神宮。
参考�A御神樂米は、御神楽奉納費用としての寄進米。

現代語宝治二年(1248)十二月大五日戊寅。特別な祈願があるので、伊勢神宮へお神楽のための寄進米を寄付しました。左衛門尉清原満定が担当しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうぐんけ　　おんかたたが　のぎ　あ　　　　　　　かいぜんじやすひで　　てい　　い　　 たま　　　　おんひたたれ　たてえぼし　おんきば　なり
寳治二年(1248)十二月大十日癸未。將軍家、御方違へ之儀有りて、甲斐前司泰秀が亭へ入り御う。御直垂 立烏帽子 御騎馬也。

　ま　　おんが
先ず御駕

　　ちょうのさぶろうさえもんのじょうともつら　　　おのざわじろうときなか
　長三郎左衛門尉朝連　　　小野澤次郎時仲

　　むとうのじろうよりやす　　　　　　　　　　　　　ほんまのじろうひょうえのじょうのぶただ
　武藤次郎頼泰　　　　　　本間次郎兵衛尉信忠

　　せっつのしんさえもんのじょう　〔おのおの　かち　　おんうま　　さゆう　　そうら　〕
　攝津新左衛門尉〔 各 歩行。御馬の左右に候う〕

ぎょけん　　えき　　ひと
御劔の役の人

　　むとうさえもんのじょうかげより
　武藤左衛門尉景頼

つぎ　おんうしろ　　ぐぶにん　　〔　きば　〕
次に御後の供奉人〔騎馬〕

　　おわりのぜんじときあき　　　　　　　　　　　　さがみさこんたいふしょうげんときさだ
　尾張前司時章　　　　　　相摸右近大夫將監時定

　　さつまのぜじすけなが　　　　　　　　　　　　いせのぜんじゆきつな
　薩摩前司祐長　　　　　　伊勢前司行綱

　　じょうのくろうやすもり　　　　　　　　　　　　　かじわらうえもんのじょうかげとし
　城九郎泰盛　　　　　　　梶原右衛門尉景俊

　　むとうさえもんのじょうかげより　　　　　　　　あそぬまじろうみつつな
　武藤左衛門尉景頼　　　　阿曽沼次郎光綱

　　いやじろうさえもんのじょうちかもり　　　　　　おおすがじろうさえもんのじょうたねうじ
　弥次郎左衛門尉親盛　　　大須賀次郎左衛門尉胤氏

　　つちやのしんざぶろうみつとき　　　　　　　　せっつのさえもんのじょう
　土屋新三郎光時　　　　　攝津左衛門尉

　かち
歩行

　　おおそねいやじろうさえもんのじょうもりつね　〔ぎょけんやく〕　　　さどのごろうさえもんのじょうもとたか
　大曽祢次郎左衛門尉盛經〔御劔役〕　佐渡五郎左衛門尉基隆

　　しきぶのはちろうひょうえのじょう　　　　　　　いずのたろうさえもんのじょうさねやす
　式部八郎兵衛尉　　　　　伊豆太郎左衛門尉實保

　　でわのさぶろうゆきすけ　　　　　　　　　　　　むとうのしろう
　出羽三郎行資　　　　　　武藤四郎

　　いせのかとうさえもんのじょう　　　　　　　　　　おのざわじろう
　伊勢加藤左衛門尉　　　　小野澤次郎

　　さつまのしちろうすけよし　　　　　　　　　　　おがわのうえもんしろう
　薩摩七郎祐能　　　　　　小河右衛門四郎

　　ほんまやましろじろうひょうえのじょう　　　　　はまなさえもんさぶろう
　本間山城次郎兵衛尉　　　濱名左衛門三郎

現代語宝治二年(1248)十二月大十日癸未。将軍家頼嗣様は、方角替えの儀式があって、甲斐前司長井(大江)泰秀の屋敷へ入りました。直垂に立烏帽子で馬に乗ってます。
まず、馬上の将軍。
　長谷部三郎左衛門尉朝連　小野沢次郎時仲
　武藤次郎頼泰　　　　　　本間次郎兵衛尉信忠
　摂津新左衛門尉〔それぞれ歩きながら、将軍の馬の左右に居ます〕
刀持ちの人
　武藤左衛門尉景頼
次に将軍の後ろを行く人〔乗馬〕
　尾張前司名越流北条時章　相模右近大夫将監北条時定
　薩摩前司安積祐長　　　　伊勢前司二階堂行綱
　城九郎安達泰盛　　　　　梶原右衛門尉景俊
　武藤左衛門尉景頼　　　　阿曾沼次郎光綱
　弥次郎左衛門尉親盛　　　大須賀次郎左衛門尉胤氏
　土屋新三郎光時　　　　　摂津左衛門尉
歩行者
　大曽根次郎左衛門尉盛経〔刀持ち〕　佐渡五郎左衛門尉後藤基隆
　式部八郎兵衛尉　　　　　伊豆太郎左衛門尉実保
　出羽三郎二階堂行資　　　武藤四郎時仲
　伊勢加藤左衛門尉　　　　小野沢次郎時仲
　薩摩七郎伊東祐能　　　　小川右衛門四郎
　本間山城次郎兵衛尉　　　浜名左衛門三郎

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うまのこく　　しょうぐんけかえ　 たま　　　　かいのぜんじ　　おんうま　いげ　　おんひきでもの　　けんじょう　　　うんぬん
寳治二年(1248)十二月大十一日甲申。午尅。將軍家還り御う。甲斐前司、御馬以下の御引出物を献上すと云々。

　　げんないじうろう　　　　　　　　　　　　　　　　 へいうこんたろう
　源内十郎　　　　　　　　平右近太郎

現代語宝治二年(1248)十二月大十一日甲申。昼頃に将軍家頼嗣様は帰りました。甲斐前司長井泰秀は、馬を始めとする引き出物を献上しました。
（馬引き）　源内十郎　平右近太郎

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょこくぢとう　しょむ　　こと　　かさ　　　　そ　　　　さた　あ
寳治二年(1248)十二月大十二日乙酉。諸國地頭所務�@の事、重ねて其の沙汰有り。

こくし　　　りょうけ　　けんちゅちょう　まか　　　　ほんぢとう　は　せんれい　よ　　　　　しんぢとう　は　りっぽう　　まも　　　　　さた　いた　　べ
國司・領家の檢注帳に任せ、本地頭�A者先例に依り、新地頭�B者率法�Cを守り、沙汰致す可し。

らんぎょう　およ　　べからずのよし　　おお　 いでらる　ところなり
濫行に及ぶ不可之由、仰せ出被る所也。

参考�@所務は、領地関係。金銭相続関係が雑務。
参考�A本地頭は、承久の乱以前。
参考�B新地頭は、承久の乱以後。
参考�C率法は、１１町につき１町、反別五升。

現代語宝治二年(1248)十二月大十二日乙酉。諸国の地頭の領地関係につて、なおも決裁指示がありました。国司(国衙)や荘園上級権利者の検地台帳のとおり、元からの地頭は先例通りに、新しく任命された地頭は、(11町につき1町、反別五升)税率を守って処理するようにし、勝手な略奪をしてはいけないと、命令を出したのです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じんじゃぶつじりょう　こと　　　ぢとう　　 しんぎ　　ちょうじ　　　　げんみつ　　　さた　　　いた　　べ
寳治二年(1248)十二月大廿日癸巳。神社佛寺領の事、地頭の新儀�@を停止し、嚴密の沙汰を致す可し。

かね　　また　　だいじんぐう　いげ　むねとたるのしんりょうら　ざっしょう　　げは　　　とうらいせし　　　したが　　　けいすくせず　と　　もう　　べ　　　のよし　　ひごろ　そ　　ひょうじょうあ
兼て又、大神宮以下の宗爲之神領等の雜掌�Aの解者、到來令むに隨い、經宿不�B執り申す可き之由、日來其の評定有り。

きょう　　　おおたのみんたいふ　　　いせぜんじ　　　　　やのげきたいふ　　　　しなのみんぶたいふにゅうどう　せいさえもんのじょうらに　おお　　つ　　 らる　ところなり
今日、大田民部大夫、伊勢前司、矢野外記大夫、信濃民部大夫入道、�C左衛門尉等于仰せ付け被る所也。

参考�@新儀は、非法、先例どおり。
参考�A雜掌は、小役人。
参考�B経宿不は、留め置かず。

現代語宝治二年(1248)十二月大二十日癸巳。神社仏閣の領地について、地頭の不法な新例は止めて、先例通りきちんとしなさい。又同様に、伊勢神宮など大神社の領地の小役人の申し出書は、受け取り次第留め置かないで処理をするように、政務会議で決定しました。今日、大田民部大夫康連・伊勢前司二階堂行綱・外記大夫矢野倫重・信濃民部大夫入道行然・左衛門尉清原満定に命令しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さしんえい　 おんてい　 をい　　　だいはんにゃきょう　しんどく　しぎょうさる　　　　これ　　かいいら　　　こと　　しゃされ　 ためなり
寳治二年(1248)十二月大廿四日丁酉。左親衛が御亭に於て、大般若經の信讀�@を始行被る。是、恠異等の事を謝被ん爲也。

参考�@信読は、正しく全部読む眞読。略読みを転読。

現代語宝治二年(1248)十二月大二十四日丁酉。時頼さんの屋敷で、大般若経の正しく全部読む法要を始めました。これは、黄蝶が飛ぶなどの不可解な現象を政務担当として神仏に謝るためです。

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