吾妻鏡入門第四十巻

建長二年(1250)三月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぞうかんいんでんざっしょう　こと　　きょうと　　しんらんされ　　ため
建長二年(1250)三月小一日丁夘。造閑院殿雜掌�@の事、京都へ進覽被ん爲、

もと　　やく　　ひと　　い　　　　　はじ　　　　つけらる　　ぶん　　い　　　　　きょうことごと　これ　　ちう　　むすばれ
本の役の人と云ひ、始めて付被る分と云ひ、今日悉く之を注し緝被る。

参考�@雑掌は、荘園経営請負人。辞書中世、本所・領家のもとで荘園に関する訴訟や年貢・公事の徴収などの任にあたった荘官。Goo電子辞書から

ふかざわやましろぜんじとしひら　　なかやまやましろぜじもりときら　ぶぎょうたり　　うんぬん
深澤山城前司俊平、中山城前司盛時等奉行爲と云々。

　そ　　もくろく　　さま
其の目録の樣

　　　　　ごじつ　　ちゅう　いれらる　　ぶん
　　後日に注し入被る分

　　そうたい　ひがし　　　　　　　　　　　　　　　　　　びんごぜんじ
　霜臺�Aの東 　　　　　　　　備後前司

参考�A霜台は、弾正台の唐名。律令制で中央行政の監察・警察機構。検非違使施設後有名無実化。

　　かもんりょう　　　とや　　　　　　　　　　　　　　　 つなしまさえもんにゅうどう
　掃部寮の戸屋　　　　　　　綱嶋左衛門入道

かんいんでんぞうえい　　ざっしょう
閑院殿造營の雜掌

　　ししんでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがみのかみ
　紫震殿�@ 　　　　　　　　　相摸守

　　せいりょうでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 かいのぜんじ　 するがにゅうどう
　�C凉殿�A 　　　　　　　　　甲斐前司　駿河入道

　　じじゅでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しゅりごんのたいふ　 あと
　仁壽殿�B 　　　　　　　　　修理權大夫が跡

　　 ぎょうでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 むつのかみ
　宜陽殿�C 　　　　　　　　　陸奥守

　　ぎょうしょでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちくごにゅうどう　 あと
　校書殿�D 　　　　　　　　　筑後入道が跡

　　しゅんこうでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみにゅうどう　あと
　春興殿�E 　　　　　　　　　遠江入道が跡

参考�@紫宸殿は、内裏において天皇元服や立太子、節会などの儀式 が行われた正殿。南殿、前殿、古くは紫震殿とも。
参考�A清涼殿は、天皇の日常生活の居所として仁寿殿や常寧殿が使用されていたが、 中期にはこの清涼殿がもっぱら天皇の御殿とされ、紫宸殿が儀式を行う殿舎であるのに 対し、日常の政務の他四方拝・叙位・除目などの行事も行われた。
参考�B仁寿殿は、 紫宸殿の北、承香殿の 南にある7間3間の身舎で四面庇の建物。清涼殿が天皇の常住の建物となる以前は、 この仁寿殿が天皇の御在所になっていたこともある。
参考�C宜陽殿は、紫宸殿の東，綾綺殿の南に位置し，歴代の御物を収蔵したところ。
参考�D校書殿は、校書殿西廂の北には蔵人所が置かれ、西廂の南には書籍、文書を整理する校書所が置かれていた。
参考�E春興殿は、紫宸殿の南東，内裏の南門である承明門を入って右側に位置し，左側の安福殿に対していた。西面して，広さは7間3面，東廂の北端は内竪(ないじゅ)所内候の武具の置場であった。コトバンクから

　　ごせちどころ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あいだのじょうすけ

　五節所　　　　　　　　　　秋田城介

参考五節所は、五節の舞姫の控え所。大嘗祭や新嘗祭に行われて五節の舞。

　　　こごしょ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あしかがさまのかみにゅうどう
　小御所　　　　　　　　　　足利左馬頭入道

　　つりどの　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さきのうまごんのかみ
　釣殿　　　　　　　　　　　前右馬權頭

　　きろくじょ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おきのにゅうどう　 あと
　記録所　　　　　　　　　　隱岐入道が跡

参考記録所は、�@初め記録荘園券契所といい、荘園整理の目的で後三条天皇により1069年設置された。1111年には荘園記録所といわれ国司と荘園領主との荘園に関する訴訟審議機関にかわった。ｺﾄﾊﾞﾝｸ�A 源頼朝の要請により、文治3年(1187)訴訟処理を主な目的として朝廷に設置された役所。Goo辞書

　　ちんのざ　〔なら　　　　〕　あづまや　　　　　　　　　おおともぶぜんぜんじ　 あと
　陳座〔并びに〕東屋　　　　 大友豊前々司が跡

　　こんろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきのさぶろうひょうえにゅうどう　　あと
　軒廊　　　　　　　　　　　佐々木三郎兵衛入道が跡

参考軒廊は、寝殿造りで，主要殿舎の左右に付く，屋根のある土間床の渡り廊下。特に，紫宸殿の南庭を囲む回廊。

　　　ゆばでん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんどうなかつかさのじょう　あと
　弓塲殿　　　　　　　　　　近藤中務丞が跡

参考弓場殿は、天皇が射技を見るための弓場の面した御殿。

　　　ゆばでんわたろう　　　　　　　　　　　　　　　　 ゆあさ　 やから
　弓塲殿渡廊　　　　　　　　湯淺の輩

　　みや　おんかた　ひがし　わたろう　　　　　　　 ながぬまあわじぜんじ　　あと
　宮の御方の東の渡廊　　　　長沼淡路前司が跡

　　おな　　　　にし　　わたろう　　　　　　　　　　　 おざわにょぼう
　同じき西の渡廊　　　　　　小澤女房

　　きた　しょうろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いとうやまとのぜんじ
　北の小廊　　　　　　　　　伊東大和前司

　　ほくめん　おんくるまよせ　　　　　　　　　　　　　こうづけにゅうどう
　北面の御車寄　　　　　　　上野入道

　　きた　　たい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かさいいきにゅうどう　　　 あと
　北の對　　　　　　　　　　葛西壹岐入道が跡

　　きた　　おんだいばんどころ〔おゆどの　　もち　　らる　　〕　　　あすけのたろう
　北の御臺盤所〔御湯殿を用い被る〕 足助太郎

　　にし　　たい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ちばのすけ　 あと
　西の對　　　　　　　　　　千葉介が跡

　　にし　　に　　　たい　　　　　　　　　　　　　　　　うつのみやにゅうどう
　西の二の對　　　　　　　　宇津宮入道

　　またきた　　たいはちけん　　　　　　　　　　　　 しなのみんぶにゅうどう
　又北の對八間　　　　　　　信濃民部入道

　　きた　　ひろごしょ　　　　　　　　　　　　　　　　　しまづぶんごぜんじ　　　 あと
　北の弘御所　　　　　　　　嶋津豊後前司が跡

　　おな　　　　にしや　　　　　　　　　　　　　　　　 すおうのぜんじにゅうどう
　同じき西屋　　　　　　　　周防前司入道

　　みずしどころ　　〔　つ　　　　　　　すいとう　　ことねり　　　　にわ〕　　　ちゅうじょうでわのぜんじ　あと

　御厨子所〔付けたり出納小舎人の庭〕　中條出羽前司が跡

参考御厨子所は、節会の酒肴を司る。�A台所・調理場。参考出納は、財物の出納と一切の庶務。

　　にし　　いち　　たい　わたりろう　〔　つ　　　　　　おんゆどの〕　　　 ひたちだいじょう　 あと
　西の一の對の渡廊〔付けたり御湯殿〕　常陸大掾が跡

　　おんだいばんどころ　　　　　　　　　　　　　　　　おぐりのじろう

　御臺盤所　　　　　　　　　小栗次郎

参考臺盤所は、宮中では清涼殿の一室で女房の詰所。

　　せいりょうでんと　いち　たいつくりあわせおんぶっしゃ　　　　かわづいとうぜんじ　　　あと
　�C凉殿 与一の對　造合　御物舎　　河津伊豆前司が跡

　　みや　おんかた　さむらい　〔つ　　　　　　わたりや〕　　　　さどのぜんじ
　宮の御方の侍　〔付けたり渡屋〕　佐渡前司

　　ほんしょ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしだれさいとうさえもんのじょう　あと
　本所　　　　　　　　　　　押垂齋藤左衛門尉が跡

　　くろうどどころ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 せっつのぜんじ　〔　うさみなり　〕
　藏人所　　　　　　　　　　攝津前司〔宇佐美也〕

　　かまどの　〔つ　　　　　　　　いどや　〕　　　　　　　　　つちやのにゅうどう　あと
　釜殿〔付けたり井屋〕　　　　土屋入道が跡

参考釜殿は、宮中や将軍・貴人の 邸内にあった湯殿。また、そこに奉仕した人。

　　みや　おんかたひがしべいちゅうもん〔なら　　 　　〕　 へいじうよんけん　　おきにじろうさえもんのじょう
　宮の御方 東屏 中門〔并びに〕屏十四間　隱岐次郎左衛門尉

　　こごしょ　　　きたべいさんけん　〔へいもんあ　　　〕　　　　なかさえもんにゅうどう
　小御所の北屏三間〔屏門在り〕　那珂左衛門入道

　　くろうどちょう　うしろべいにじうごけん
　藏人町の後屏廿五間

　　じうごけん　　〔へいもんさんあ　　〕　　　　　　　　　　だてのにゅうどう　あと
　十五間〔屏門三在り〕　　　　伊達入道が跡

　　じっけん　　〔へいもんに　あ　　〕　　　　　　　　　　　あさかさつまのぜんじ
　十間〔屏門二在り〕　　　　　安積薩摩前司

参考蔵人町は、蔵人の詰所。校書殿の西、後涼殿の南にあった。

　　にっかもん　　〔　つ　　　　　　さゆうろうおのおのひとままえ　　こばし　〕　おうみにゅうどう　 あと
　日花門〔付けたり左右廊各一間前に小橋〕近江入道が跡

　　げっかもん　 〔みなみろういっけんまえ　 こばし　あ　　　〕　 あまのいずみぜんじ　　 あと
　月花門〔南廊一間前に小橋在り〕天野和泉前司が跡

　　でんか　ちょくろ　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぶぜんぜんじ
　殿下の直廬　　　　　　　　豊前々司

参考直廬は、内裏の摂関大臣大納言の宿直・休息場所。

　　おな　　　　にし　　たい　　　　　　　　　　　　　 しもつけにゅうどう　あと
　同じき西の對　　　　　　　下野入道が跡

　　おな　　　　せいなん　わたりろう　　　　　　　　　おな　　　　ひと
　同じき西南の渡廊　　　　　同じき人

　　おな　　　みなみ　じょうげもん　　　　　　　　　　おな　　　　ひと
　同じき南の上下門　　　　　同じき人

　　おな　　　なんせい　きたべい　〔なら　　　　〕　へいもん　　おな　　　　ひと
　同じき南西の北屏〔并びに〕屏門　同じき人

　　ひがししそく　　さえもん　　　じん　　　　　　　　さはらとおとうみぜんじ　 あと
　東四足、左衛門の陣　　　　佐原遠江前司が跡

　　にししそく　　　　うえもん　　　じん　　　　　　　　あだちさえもんのじょう　 あと
　西四足、右衛門の陣　　　　足立左衛門尉が跡

　　ひがしむねもん　〔さひょうえ　じん〕　　　　　　　　　くさのたいふ　　　あと
　東棟門〔左兵衛の陣〕　　　 草野大夫が跡

　　にしむねもん　　〔うひょうえ　じん〕　　　　　　　　　　だざいしょうに
　西棟門〔右兵衛の陣〕　　　　大宰少貳

　　ぬいどのじん　　つちひらもん　　　　　　　　　　たじまのじろうさえもんのじょう
　縫殿陣の土平門　　　　　　但馬次郎左衛門尉

　　おしこうじづら　　つちひらもん　　　　　　　　　 ないとうさえもんのじょう　　あと
　押小路面の土平門　　　　　内藤左衛門尉が跡

　　あぶらこうじづら　つちひらもん　　　　　　　　　 いがしきぶにゅうどう
　油小路面の土平門　　　　　伊賀式部入道

　　いけ　とびらばし　〔　つ　　　　　　　ひたきや　〕　　　　 やまとにゅうどう　　あと
　池の扉橋〔付けたり火炬屋〕　大和入道が跡

参考火炬屋は、かがり火を焚く衛士の詰所。

　　ふねいっそう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やすのちゅうじょう
　船一艘　　　　　　　　　　安野中將

　　おな　　　　いっそう　　　　　　　　　　　　　　　　なかみかどさんみ
　同じき一艘　　　　　　　　中御門三位

　　とい　にかしょ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 わかさひょうえにゅうどう　あと
　樋二ヵ所　　　　　　　　　若狹兵衛入道が跡

　　いけ　　そうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むつさこんたいふしょうげん
　池の掃除　　　　　　　　　陸奥左近大夫將監

　　　　　　　はしよんかしょ
　　　橋四ヵ所

　　いっしょ　〔さひょうえ　　じんまえ　とびらばし〕　　　　ぎょうぶたいゆうにゅうどう

　一所〔左兵衛の陣前の扉橋〕 刑部大輔入道

　　いっしょ　〔うひょうえ　　じんまえ〕　　　　　　　　　　ちゅうじょううまのすけにゅうどう

　一所〔右兵衛の陣前〕　　　 中條右馬助入道

　　いっしょ　〔にじょう　〕　　　　　　　　　　　　　　　　ひたのじろう　　　あと
　一所〔二條〕　　　　　　　肥田次郎が跡

　　いっしょ　〔おしこうじ　〕　　　　　　　　　　　　　　　しらいしたろう
　一所〔押小路〕　　　　　　白石太郎

　　　　　　　ぎょうじしょや　　〔　ごけんにめん　〕
　　　行事所屋〔五間二面〕

参考行事所は、必要な物資の調達を含む行事事務全般を取り仕切る。

　　さんけん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうまじろう　　　あと
　三間　　　　　　　　　　 相馬次郎が跡

　　　にけん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　といもくのすけ　　　あと
　二間　　　　　　　　　　 土肥木工助が跡

　　　　　　ついぢ はじうはっぽん 〔かきがたじうはちほん〕
　　　築地八十八本〔垣形十八本〕

参考築地は、一般に土塀をさす。参考垣形は、不明。

　　じっぽん　〔　さえもん　　　じんみなみ　かきがた にほん あ　　　〕　　たけだいずにゅうどう　　あと
　十本〔左衛門の陣南、垣形二本在り〕武田伊豆入道が跡

　　じっぽん　〔おな　　　　きた　　　かきがた にほん あ　　　〕　　　　　おがさわらにゅうどう　　あと
　十本〔同じき北、垣形二本在り〕　　小笠原入道が跡

　　よんほん　〔　さえもん　　　じんきた　　かきがた にほん あ　　　〕　　きくちにゅうどう　　あと
　四本〔左兵衛の陣北、垣形二本在り〕菊池入道が跡

　　さんぼん　〔　おしこうじづらつちひらもん　ひがし　　かきがたいっぽんあ　　 〕　おおうちのすけ
　三本〔押小路面土平門の東、垣形一本在り〕大内介

　　さんぼん　〔おな　　　　もん　　にし　　　かきがたいっぽんあ　　 〕　　　　　さぬきうえもん　　　　あと
　三本〔同じき門の西、垣形一本在り〕　佐貫右衛門が跡

　　さんぼん　〔おな　　　　にし　 〕　　　　　　　　　　　　　　たけいしにゅうどう
　三本〔同じき西〕　　　　　　　武石入道

　　　にほん　〔おな　　　　にし　 〕　　　　　　　　　　　　　　はたけやまこうづけぜんじ
　二本〔同じき西〕　　　　　　　畠山上野前司

　　　にほん　〔おな　　　　にし　 〕　　　　　　　　　　　　　　いがのほうがんしろう　　　あと
　二本〔同じき西〕　　　　　　　伊賀判官四郎が跡

　　さんぼん　〔おな　　　　にし　 〕　　　　　　　　　　　　　　えっちゅうさえもんじろう
　三本〔同じき西〕　　　　　　　越中左衛門次郎

　　　ごほん　〔おな　　　　かきがたいっぽんあ　　 〕　　　　　 とうのひょうえにゅうどう　あと
　五本〔同じき垣形一本在り〕　　東兵衛入道が跡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 きうちしもうさぜんじ　　 あと
　　　　　　　　　　　　　　　 木内下総前司が跡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かざはやにゅうどう
　　　　　　　　　　　　　　　 風早入道

　　　ごほん　〔まがりこうじづらつちひらもん　みなみにほん　おな　　　　きたさんぼん　　かきがたにほんあ　　 〕　　おおいのたろう
　五本〔曲小路面土平門の南二本、同じき北三本、垣形二本在り〕大井太郎

　　　ごほん　〔　うえもん　　じんみなみ　かきがたいっぽんあ　　 〕　ひらがひょうえのじょう
　五本〔右衛門の陣南、垣形一本在り〕平賀兵衛尉

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まつばじろうにゅうどう
　　　　　　　　　　　　　　　　　松葉次郎入道

　　ろっぽん　〔おな　　　　きた　　　かきがた にほん あ　　　〕　　　　　あそぬまみんぶ　　　　あと
　六本〔同じき北、垣形一本在り〕　　阿曽沼民部が跡

　　　にほん　〔おな　　　　きた　 〕　　　　　　　　　　　　　　かくたにゅうどう
　二本〔同じき北〕　　　　　　　角田入道

　　いっぽん　〔おな　　　　きた　 〕　　　　　　　　　　　　　　かまたにゅうどう　　あと
　一本〔同じき北〕　　　　　　　鎌田入道が跡

　　さんぼん　〔　さひょうえ　　じんみなみ　かきがたいっぽんあ　　 〕　 へいうえもんにゅうどう　　 あと
　三本〔左兵衛の陣南、垣形一本在り〕平右衛門入道が跡

　　　にほん　〔　うひょうえ　　じんきた　　かきがたいっぽんあ　　 〕　　つちもちにゅうどう
　二本〔右兵衛の陣北、垣形一本在り〕土持入道

　　　ごほん　〔　にじょうつらあぶらこうじかど　　かきがたいっぽんあ　　 〕　　かとううえもんのじょう
　五本〔二條面油小路角、垣形一本在り〕加藤右衛門尉

　　ろっぽん　〔おな　　　ひがしぬいどの　じんにし　　　かきがたいっほん あ　　　〕　にったにゅうどう　 あと
　六本〔同じき東縫殿の陣西、垣形一本在り〕新田入道が跡

　　　ごほん　〔おな　　　　ひがし　　　かきがたいっぽんあ　　 〕　　　　　 かわごえじろう　　あと
　五本〔同じき東、垣形一本在り〕　　河越次郎が跡

　　さんぼん　〔おな　　　　ひがし　 〕　　　　　　　　　　　　　　 さたけにゅうどう　 あと
　三本〔同じき東〕　　　　　　　佐竹入道が跡

　　　　　　　うらついじひゃくくじゅうにほん〔かきがたじゅうななほん〕
　　　裏築地百九十二本〔垣形十七本〕

　　　　　　にじょうづらにじっぽん
　　　二條面二十本

　　　にほん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　ましこさえもんのじょう
　二本〔垣形一本在り〕　　　　益戸左衛門尉

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすがしろう　　　あと
　三本　　　　　　　　　　　大須賀四郎が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ときさえもん　　　　あと
　三本　　　　　　　　　　　土岐左衛門が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こむろたろう　　　あと

　三本　　　　　　　　　　　小室太郎が跡

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　 じろう　　　あと
　　　　　　　　　　　　　　同じき次郎が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いけがみさえもんのじょう
　三本　　　　　　　　　　　池上左衛門尉

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そがにゅうどう　　あと
　二本　　　　　　　　　　　曽賀入道が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みまさかくらんどにゅうどう　あと
　二本　　　　　　　　　　　美作藏人入道が跡

　　　にほん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　おおいさえもんのじょう
　二本〔垣形一本在り〕　　　　大井左衛門尉

　　　　　 あぶらこうじづらさんじういっぽん
　　　油小路面三十一本

　　　ごほん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　ひろさわさえもんにゅうどう　　あと
　五本〔垣形一本在り〕　　　　廣澤左衛門入道が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぜんうえもんのじょう　あと
　三本　　　　　　　　　　　善右衛門尉が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かわごえさぶろう　あと
　二本　　　　　　　　　　　河越三郎が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちょうはなわさえもん　　あと
　二本　　　　　　　　　　　廳鼻和左衛門が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　てしまさえもん　　　あと
　三本　　　　　　　　　　　豊嶋左衛門が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えんやみんぶのたいふ　あと
　三本　　　　　　　　　　　塩屋民部大夫が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかむらぬいのすけ　あと
　二本　　　　　　　　　　　中村縫殿助が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおたわのじろう　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　大多和次郎が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しながわさぶろうにゅうどう　あと
　二本　　　　　　　　　　　品河三郎入道が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えんやひょうえにゅうどう　あと
　三本　　　　　　　　　　　塩屋兵衛入道が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうだい　ひとびと
　二本　　　　　　　　　　　小代の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とうのひぜんぜんじ
　一本　　　　　　　　　　　藤肥前々司

　　いっぽん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　　　はやとのにゅうどう　あと
　一本〔垣形一本〕　　　　　　隼人入道が跡

　　　　　　　おしこうじづら　にじっぽん
　　　押小路面二十本

　　いっぽん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　　　なすひぜんぜんじ
　一本〔垣形一本〕　　　　　那須肥前々司

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えっちゅうおおたじろうさえもんのじょう
　二本　　　　　　　　　　　越中大田次郎左衛門尉

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つちやいやじろう　　あと
　二本　　　　　　　　　　　土屋弥次郎が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんさぶろうにゅうどう
　二本　　　　　　　　　　　進三郎入道

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちょうのうえもんにゅうどう　あと
　三本　　　　　　　　　　　長右衛門入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いわみのぜんじ
　一本　　　　　　　　　　　石見前司

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くどうなかつかさのじょう
　二本　　　　　　　　　　　工藤中務丞

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しぶやのさぶろうにゅうどう
　二本　　　　　　　　　　　澁谷三郎入道

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まかべたろう　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　眞壁太郎が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちょうのひょうえにゅうどう　あと
　二本　　　　　　　　　　　長兵衛入道が跡

　　いっぽん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　　　かつたひょうごのすけ
　一本〔垣形一本〕　　　　　　勝田兵庫助

　　　　　　　にじょうづら にしのとういん ひがし　にじっぽん
　　　二條面 西洞院 東 廿本

　　　にほん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　　　　つげさえもん　　　　あと
　二本〔垣形一本〕　　　　　　柘杜左衛門が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いわはらげんぱちにゅうどう
　二本　　　　　　　　　　　岩原源八入道

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　にのみやさえもん　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　二宮左衛門が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しちろうさえもんにゅうどう　　あと
　二本　　　　　　　　　　　七郎左衛門入道が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なりたにゅうどう　　あと
　二本　　　　　　　　　　　成田入道が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きいのおさかべにゅうどう　　あと
　二本　　　　　　　　　　　紀伊刑部入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じしぶやさえもん　　あと
　一本　　　　　　　　　　　澁谷左衛門が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はたそうざぶろう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　原宗三郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほんじょうしろうさえもんのじょう
　一本　　　　　　　　　　　本庄四郎左衛門尉

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たまいさえもん　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　玉井左衛門が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うちしまさぶろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　内嶋三郎が跡

　　　にほん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　かいのにのみやじろう　　あと
　二本〔垣形一本在り〕　　　　甲斐二宮次郎が跡

　　　　　　にじょうづらみなみ あぶらこうじにし じうろっぽん
　　　二條面南　油小路西 十六本

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふなこしうまのじょう　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　船越右馬允が跡

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きっかわさえもん　　　あと
　三本　　　　　　　　　　　吉河左衛門が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さがら　ひとびと
　二本　　　　　　　　　　　相良の人々

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さいべなかつかさにゅうどう　あと
　二本　　　　　　　　　　　西部中務入道が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみだひょうえのじょう
　二本　　　　　　　　　　　泉田兵衛尉

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はたのなかつかさ　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　波多野中務が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　よもだのごろう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　四方田五郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うすいにゅうどう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　臼井入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ながえのしろうにゅうどう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　長江四郎入道が跡

　　いっぽん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　　ひさみさえもん　　　あと
　一本〔垣形一本〕　　　　　 久美左衛門が跡

　　　　　　おな　　　　きたじうろっぽん
　　　同じき北十六本

　　　にほん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　　あしわらさえもんにゅうどう
　二本〔垣形一本〕　　　　　 廬原左衛門入道

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ふるなさこん　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　古那左近が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　てしがわらのちのしろう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　勅使河原後四郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たいらこさえもん　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　平子左衛門が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みたのにゅうどう　 あと
　一本　　　　　　　　　　　三田入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きむらのごろう　　 あと
　一本　　　　　　　　　　　木村五郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 わかこだまじろう
　一本　　　　　　　　　　　若兒玉次郎

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 かしわまさえもんにゅうどう
　一本　　　　　　　　　　　柏間左衛門入道

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかむらうまのじょう　あと
　一本　　　　　　　　　　　中村馬允が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 べっぷさえもん
　一本　　　　　　　　　　　別府左衛門

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はらさえもん　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　原左衛門が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あさば　　ひとびと
　一本　　　　　　　　　　　淺羽の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかむらはちろううまにゅうどう　あと
　一本　　　　　　　　　　　中村八郎馬入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こくぶのごろう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　國分五郎が跡

　　いっぽん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　 いわたのさぶろう　　あと
　一本〔垣形一本〕　　　　　岩田三郎が跡

　　　　　　にじょうきたよ　　あぶらこうじづらにじっぽん
　　　二條北自り油小路面廿本

　　いっぽん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　　ひのへいごにゅうどう
　一本〔垣形一本〕　　　　　日野平五入道

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いしぐろたろう
　二本　　　　　　　　　　　石黒太郎

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かわしりたろう
　二本　　　　　　　　　　　河尻太郎　　　参考河尻は、旧神奈川県津久井郡城山町川尻（現相模原市緑区川尻）らしい。

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すえたろう
　二本　　　　　　　　　　　須惠太郎

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さしげんじ
　一本　　　　　　　　　　　佐志源次

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 とよふくごろう
　一本　　　　　　　　　　　豊福五郎

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かんざわじろうさえもんのじょう
　二本　　　　　　　　　　　神澤次郎左衛門尉

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひろたうまのじょう
　二本　　　　　　　　　　　廣田馬允

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかつがわにゅうどう
　一本　　　　　　　　　　　中津河入道

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〔やぎさぶろうおな　　　　　しろう　〕
　一本　　　　　　　　　　〔八木三郎同じき四郎〕

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いほうのさぶろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　伊北三郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いわくにじろう
　一本　　　　　　　　　　　岩國次郎

　　さんぼん　〔かきがたいっぽん〕　　　　　　　　　　 さえきにゅうどう
　三本〔在垣形一本〕　　　　佐伯入道

　　　　　　おしこうじよ　　みなみ　にしのとういんよ　　にし　じうはっぽん
　　　押小路自り南、西洞院自り西、十八本

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あんどうたろう　　 あと
　一本　　　　　　　　　　　安藤太郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しがしちろう　　　 あと
　一本　　　　　　　　　　　志賀七郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うすまのたろう
　一本　　　　　　　　　　　臼間野太郎

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あくさぶろうまるにゅどう
　一本　　　　　　　　　　　悪三郎丸入道

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふじさわしろう　　　あと
　一本　　　　　　　　　　　藤澤四郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こだいら　　ひとびと
　一本　　　　　　　　　　　小平の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いいだかごろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　飯高五郎が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はがたろう　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　波賀太郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はたのいやとうじろうさえもんのじょう
　一本　　　　　　　　　　　波多野弥藤次郎左衛門尉

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふせさえもん　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　布施左衛門が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おごせ　ひとびと
　二本　　　　　　　　　　　越生の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごうしたろう
　一本　　　　　　　　　　　合子太郎

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かねもちひょうえにゅうどう　あと
　二本　　　　　　　　　　　金持兵衛入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 やまな　　ひとびと
　一本　　　　　　　　　　　山名の人々

　　　　　　おしこうじよ　　　みなみ　あぶらこうじよ　　　にし　じういっぽん
　　　押小路自り南、油小路自り西、十一本

　　いっぽん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　よしじきさぶろうにゅうどう　あと
　一本〔垣形一本在り〕　　　　吉敷三郎入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かんださぶろう
　一本　　　　　　　　　　　神田三郎

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いのうえたろう
　一本　　　　　　　　　　　井上太郎

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いわてじうろうひょうえのじょう　あと
　一本　　　　　　　　　　　石手十郎兵衛尉が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やさかうまのじょう
　一本　　　　　　　　　　　八坂右馬允

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たかはしぎょうぶにゅうどう
　二本　　　　　　　　　　　高橋刑部入道

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　えだひょうえにゅうどう
　一本　　　　　　　　　　　枝兵衛入道

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんぽじろうさえもんのじょう
　二本　　　　　　　　　　　眞保次郎左衛門尉

　　いっぽん　〔かきがたあ　　　〕　　　　　　　　　　　　　　きよひささえもん　　　あと
　一本〔垣形在り〕　　　　　　�C久左衛門が跡

　　　　　　にじょうよ　　　きた　にしのとういんづらよ　　ひがし　にじっぽん
　　　二條自り北、西洞院面自り東、廿本

　　　にほん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　かたほのろくろうさえもんのじょう
　二本〔垣形一本在り〕　　　　方穂六郎左衛門尉

　　さんぼん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ますだごんのすけ　あと
　三本　　　　　　　　　　　益田權介が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんどうしち　　あと
　二本　　　　　　　　　　　近藤七が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さんとうたろうにゅうどう　 あと
　二本　　　　　　　　　　　山東太郎入道が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほそかわくないのじょう
　一本　　　　　　　　　　　細川宮内丞

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふるかわとうたひょうえのじょう
　一本　　　　　　　　　　　吉河藤太兵衛尉

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 よこち　　 ひとびと
　一本　　　　　　　　　　　横地の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おのでらなかつかさ　あと
　一本　　　　　　　　　　　小野寺中務が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おかべひょうのじょう　あと
　一本　　　　　　　　　　　岡部兵衛尉が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんどうたろうざえもん　　　 あと
　一本　　　　　　　　　　　近藤太郎左衛門が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かじ　　　ひとびと
　二本　　　　　　　　　　　加治の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たかはしじうろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　高橋十郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あんざいさぶろう
　一本　　　　　　　　　　　安西三郎

　　いっぽん　〔かきがたいっぽんあ　　　〕　　　　　　　　　　あきぜんじ
　一本〔垣形一本在り〕　　　　安藝前司

かわぜき にひゃくさんじうはちじょう
 河堰 二百三十八丈

　　　　　　にしはた
　　　西鰭

参考鰭は、海老名市史2資料編中世に「鰭は端の当て字」とあるので従う。

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 やぎいさこんしょうげん　 あと
　五丈　　　　　　　　　　　楊井左近將監が跡

参考武蔵国大里郡楊井郷らしい。現埼玉県熊谷市楊井。

　　じゅうじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 たいらこじろうにゅうどう　 あと
　十丈　　　　　　　　　　　平子次郎入道が跡

　　じゅうじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 みなもとのうたざえもん
　十丈　　　　　　　　　　　源雅樂左衛門

　　じゅうじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はらとうざえもん
　十丈　　　　　　　　　　　原東左衛門

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ささきろくろうほっきょう　 　あと
　五丈　　　　　　　　　　　佐々木六郎法橋が跡

　　じゅうじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　あさやまうまたいふ　　 　あと
　十丈　　　　　　　　　　　朝山右馬大夫が跡

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　つづきうえもん　 　　あと
　五丈　　　　　　　　　　　都筑右衛門が跡

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　いしらさえもん　 　　　あと
　六丈　　　　　　　　　　　伊志良左衛門が跡

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ひるかわぎょうぶのじょう　あと
　六丈　　　　　　　　　　　　蛭河刑部丞が跡

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ひたのしろう　　あといみたろうひょうえのじょう
　六丈　　　　　　　　　　　日田四郎が跡伊美太郎兵衛尉

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 もちづきしろうひょうえのじょう
　六丈　　　　　　　　　　　望月四郎兵衛尉

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 とよだたろう
　六丈　　　　　　　　　　　豊田太郎

　　よんじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しんじろうさえもんのじょう　 　あと
　四丈　　　　　　　　　　　進次郎左衛門尉が跡

　　じゅうじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えどにゅうどう　 　あと
　十丈　　　　　　　　　　　江戸入道が跡

　　はちじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しらかわほうがんにゅうどう 　あと
　八丈　　　　　　　　　　　白河判官代入道が跡

　　しちじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 かしまなかつかさ　あと
　七丈　　　　　　　　　　　鹿嶋中務が跡

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おしのにゅうどう　 あと
　五丈　　　　　　　　　　　忍入道が跡

　　　　　　ひがしはた
　　　東鰭

　　よんじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いちかわろうくろうべっとう　あと
　四丈　　　　　　　　　　　市河六郎別當が跡

　　じゅうにじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えびなとうのさえもんのじょう　　 あと
　十二丈　　　　　　　　　　海老名藤左衛門尉が跡

　　よんじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 うえしまじろう
　四丈　　　　　　　　　　　上嶋次郎

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 たかちおたろう
　六丈　　　　　　　　　　　高知尾太郎

　　よんじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いつみさぶろう
　四丈　　　　　　　　　　　逸見三郎

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ふじたひょうえのじょう　あと
　六丈　　　　　　　　　　　藤田兵衛尉が跡

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ふじなたろう
　六丈　　　　　　　　　　　藤名太郎

　　じゅうじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 きっかわさぶろう
　十丈　　　　　　　　　　　吉河三郎

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ほんじょうさぶろうさえもんにゅうどう
　六丈　　　　　　　　　　　本庄三郎左衛門入道

　　じゅうにじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 たくのへいた　 　あと
　十二丈　　　　　　　　　　多久平太が跡

　　ろくじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いちかわしょうじ　 あと
　六丈　　　　　　　　　　　市河庄司が跡

　　じゅうにじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 うんのさえもんにゅうどう
　十二丈　　　　　　　　　　海野左衛門入道

　　はちじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんかいあらじろう　  あと
　八丈　　　　　　　　　　　新開荒次郎が跡

　　よんじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぬまたのたろう　　あと
　四丈　　　　　　　　　　　沼田太郎が跡

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あきもとさえもんにゅうどう
　五丈　　　　　　　　　　　秋元左衛門入道

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　しもこうべさえもん　 　　あと
　五丈　　　　　　　　　　　下河邊左衛門が跡

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あんざいたいふ　 あと
　五丈　　　　　　　　　　　安西大夫が跡

　　ごじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さいじょう　ひとびと
　五丈　　　　　　　　　　　西條の人々

　　　　　　はしかわぜき
　　　橋河堰

　　いっしょ　〔にじょうごりかわ〕　　　　　　　　　　　こばやかわみまさかぜんじにゅうどう
　一所〔二條堀河〕　　　　　小早河美作前司入道

　　いっしょ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うさみさえもんにゅうどう　　　　あと
　一所　　　　　　　　　　　宇佐美左衛門入道が跡

　　　　　　　うらついぢ　〔　よういぶん　〕
　　　裏築地〔用意分〕

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あぼぎょうぶのじょう　 あと
　二本　　　　　　　　　　　安保刑部丞が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うじいえごろう　　　あと
　二本　　　　　　　　　　　氏家五郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおこのたろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　大胡太郎が跡

　　　にほん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かすがぎょうぶのじょう　あと
　二本　　　　　　　　　　　春日刑部丞が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あゆさわろくろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　鮎澤六郎が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くずはまさえもんのじょう　あと
　一本　　　　　　　　　　　葛濱左衛門尉が跡

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たかやま　　ひとびと
　一本　　　　　　　　　　　高山の人々

　　いっぽん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さやまのたろう　　あと
　一本　　　　　　　　　　　佐野太郎が跡

　　　　　　けんちょうにねんさんがつにち
　　　建長二年三月日

現代語建長二年(1250)三月小一日丁卯。京都御所の閑院殿を建設する請負人について、京都朝廷へ見せるために、元からの役の人も、新しく割り当てられた人も、今日全てこれを書き出して氏名しました。山城前司深沢俊平と山城前司中原盛時が担当です。
その目録の内容は、
　　後日書き足した分
　霜台(弾正台)の東・・備後前司町野(三善)康持
　掃部寮の戸と家屋・・綱島左衛門入道
閑院殿を建設する請負人
�@紫宸殿・・・・・・・相模守北条時頼
�A清涼殿・・・・・・・甲斐前司長井泰秀と駿河入道中原季時
�B仁寿殿・・・・・・・修理権大夫北条時房の相続人
�C宜陽殿・・・・・・・陸奥守北条重時
�D校書殿・・・・・・・筑後入道八田知家の相続人
�E春興殿・・・・・・・遠江入道名越流北条朝時の相続人
　五節所・・・・・・・秋田城介安達義景
　小御所・・・・・・・足利左馬入道義氏
　釣殿・・・・・・・・前右馬権頭常盤流北条政村
　記録所・・・・・・・隠岐入道二階堂行光の相続人
　天皇の座所と東屋・・豊前前司大友能直の相続人
　軒廊(紫宸殿周り)・・佐々木三郎兵衛入道盛綱の相続人
　弓場殿・・・・・・・近藤中務丞
　弓場殿への渡り廊下・湯淺一族
　宮の舘の東の渡廊下・淡路前司長沼宗政の相続人
　同じ西の渡り廊下・・小沢女官
　北側の小さな廊下・・大和前司伊東祐時
　北側の牛車寄せ・・・上野入道結城朝光
　北の対の屋・・・・・壱岐入道葛西清重の相続人
　北の台所〔湯殿を使う〕・足助太郎
　西の対の屋・・・・・千葉介時胤の相続人
　西の二の対の屋・・・宇都宮入道頼綱の相続人
　また北の対の屋八間・信濃民部入道二階行盛
　北の広い天皇の居間・豊後前司島津忠久の相続人
　同様な西の宿舎・・・周防前司入道塩谷朝親
　調理場御厨子所〔庶務の小間使いの控える庭を追加〕・・
　・・・・・・・・・・出羽前司中条家長の相続人
　西の一の対の屋の渡り廊下〔湯殿を追加〕・・・・・
　・・・・・・・・・・常陸大掾の相続人
　台盤を置く女房の詰所・小栗次郎重信
　清涼殿と一の対の屋との渡り廊下、物置・・・
　・・・・・・・・・・伊豆前司河津尚景の相続人
　宮様の侍詰所〔渡り廊下を追加〕・佐渡前司後藤基綱
　本所・・・・・・・・押垂斉藤左衛門尉の相続人
�F秘書官蔵人の詰所・・摂津前司〔宇佐美です〕
　湯殿〔井戸屋を追加〕・土屋入道の相続人
　宮様の居所の東塀・中門・塀14間・・・・・
　・・・・・・・・・・隠岐次郎左衛門尉佐々木泰清
　小御所の北側の塀3間〔門がある〕・那珂左衛門入道景通
　蔵人町の後ろの塀25間(ま)
　　15間〔門が三つある〕・・伊逹入道の相続人
　　10間〔門が二つある〕・・薩摩前司安積祐長
　日花門〔左右の廊下それぞれに一間までに小橋を追加〕・
　・・・・・・・・・・近江入道佐々木信綱の相続人
　月花門〔南の廊下の一間前に小橋あり〕・・・・
　・・・・・・・・・・和泉前司天野政景の相続人
　摂政の宿直休息場所・豊前前司
　同様の西の対の屋・・下野入道小山朝政の相続人
　同様西南の渡り廊下・同じ人
　同様南の上下の門・・同じ人
　同様南西の北塀〔それと〕塀門・同じ人
　東の四足門で左衛門の陣・遠江前司佐原盛連の相続人
　西の四足門で右衛門の陣・足立左衛門尉遠元の相続人
　東棟門〔左兵衛の陣〕・・草野大夫永平の相続人
　西棟門〔右兵衛の陣〕・・太宰少弐狩野為佐
　縫殿陣の土平門・・・但馬次郎左衛門尉　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　上記内裏図は、当初のものでこの時代は略して縮小されている
　押小路に面した土平門・内藤左衛門尉盛時の相続人
　油小路に面した土平門・伊賀式部入道光宗
　池の扉のついた橋〔衛士の詰所を追加〕・・大和入道の相続人
　船一艘・・・・・・・安野中将藤原隆兼
　同船一艘・・・・・・中御門三位実直
　樋二ヶ所(池へひく)・若狭兵衛入道忠孝
　池の掃除・・・・・・陸奥左近大夫将監極楽寺流北条長時
　　　　橋四カ所
　一ヵ所〔左兵衛の陣前の扉橋〕・刑部大輔入道道成
　一ヵ所〔左兵衛の陣前〕・・・・中条右馬助入道
　一ヵ所〔二条〕・・・・・・・・肥多次郎景明の相続人
　一ヵ所〔押小路〕・・・・・・・白石太郎
　　　　行事を取り仕切る者の詰所〔5間×2面〕
　3間・・・・・・・・・・相馬次郎師常の相続人
　2間・・・・・・・・・・土肥木工助の相続人
　　　　築地塀用柱88本〔垣根18本〕
　10本〔左衛門の陣の南、垣根2本あり〕・・武田伊豆入道信光の相続人
　10本〔　　同じ　　北、垣根2本あり〕・・小笠原入道の相続人
　 4本〔左兵衛の陣の北、垣根2本あり〕・・菊池入道の相続人
　 3本〔押小路に面した土平門の東、垣根1本あり〕・・大内介
　 3本〔　　　　　　　同じ門の西、垣根1本あり〕・・佐貫右衛門広綱の相続人
　 3本〔　　同じ西　　〕・・・・武石入道
　 2本〔　　同じ西　　〕・・・・上野前司源性畠山泰国
　 2本〔　　同じ西　　〕・・・・伊賀判官四郎の相続人
　 3本〔　　同じ西　　〕・・・・越中左衛門次郎
　 5本〔同じ　垣根１本あり〕・・東兵衛入道重胤の相続人・木内下総前司の相続人・風早入道
　 5本〔曲小路に面した土平門の南2本、同じ北3本、垣根2本あり〕・・大井太郎光長
　 5本〔右衛門の陣南、垣根１本あり〕・・平賀兵衛尉・松葉次郎入道助宗
　 6本〔　同じ　　北、垣根１本あり〕・・阿曾沼民部広綱の相続人
　 2本〔　同じ　　北　　　　　　　〕・・角田入道
　 1本〔　同じ　　北　　　　　　　〕・・鎌田入道の相続人
　 3本〔左兵衛の陣南、垣根１本あり〕・・平右衛門入道盛綱の相続人
　 2本〔右兵衛の陣北、垣根１本あり〕・・土持入道
　 5本〔二条に面した油小路角、垣根１本あり〕・・加藤右衛門尉時員
　 6本〔同じ東縫殿の陣西、垣根１本あり〕・・・・新田入道の相続人
　 5本〔　　　同じ　東　、垣根１本あり〕・・・・河越次郎重時の相続人
　 3本〔　　　同じ　東　〕・・・・・・・・・・・佐竹入道の相続人
　　　　裏築地192本〔垣根17本〕
　　　　二条に面して20本
　 2本〔垣根 1本あり〕・・・益子左衛門尉
　 3本・・・・・・・・・・・大須賀四郎胤信の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・土岐左衛門光行の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・小室太郎の相続人・同じ次郎の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・池上左衛門尉
　 2本・・・・・・・・・・・曽我入道の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・美作蔵人入道の相続人
　 2本〔垣根 1本あり〕・・・大井左衛門尉
　　　　油小路に面して31本
　 5本〔垣根１本あり〕・・・広沢左衛門入道実能の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・三善右衛門尉の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・河越三郎重員の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・庁鼻和左衛門の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・豊島左衛門の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・塩谷民部大夫家経の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・中村縫殿助の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・大多和次郎義成の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・品川三郎入道清実の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・塩谷兵衛入道の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・小代の一族
　 1本・・・・・・・・・・・藤原肥前前司
　 1本〔垣根１本あり〕・・・隼人入道三善康清の相続人
　　　　押小路に面して20本
　 1本〔垣根１本あり〕・・・那須肥前々司資村(那須資村)
　 2本・・・・・・・・・・・越中大田次郎左衛門尉
　 2本・・・・・・・・・・・土屋弥次郎忠光の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・進三郎入道
　 3本・・・・・・・・・・・長谷部右衛門入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・石見前司大江能行
　 2本・・・・・・・・・・・工藤中務丞
　 2本・・・・・・・・・・・渋谷三郎入道
　 2本・・・・・・・・・・・真壁太郎の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・兵衛入道長谷部信連の相続人
　 1本〔垣根１本〕・・・・・勝田兵庫助
　　　　二条に面した西の洞院の東20本
　 2本〔垣根１本〕・・・・・柘植？左衛門の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・岩原源八入道経直
　 2本・・・・・・・・・・・二宮左衛門の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・七郎左衛門入道の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・成田入道の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・紀伊刑部入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・渋谷左衛門の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・原宗三郎宗房の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・本庄四郎左衛門尉時家
　 2本・・・・・・・・・・・玉井左衛門の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・内島三郎の相続人
　 2本〔垣根 1本あり〕・・・甲斐二宮次郎の相続人
　　　　二条に面した南で油小路西16本
　 2本・・・・・・・・・・・船越右馬允の相続人
　 3本・・・・・・・・・・・古河左衛門の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・相良の一族
　 2本・・・・・・・・・・・西部中務入道の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・泉田兵衛尉
　 1本・・・・・・・・・・・波多野中務忠綱の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・四方田五郎広綱の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・臼井入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・長江四郎入道明義の相続人
　 1本〔垣根１本〕・・・・・久美左衛門の相続人
　　　　同じ北側16本
　 2本〔垣根１本〕・・・・・芦原左衛門入道
　 1本・・・・・・・・・・・古那左近の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・勅使河原後四郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・平子左衛門の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・三田入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・木村五郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・若児玉次郎
　 1本・・・・・・・・・・・柏間左衛門入道
　 1本・・・・・・・・・・・中村馬允の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・別府左衛門
　 1本・・・・・・・・・・・原左衛門の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・浅羽一族
　 1本・・・・・・・・・・・中村八郎馬入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・国分五郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・岩田三郎の相続人
　　　　二条北から油小路に面して20本
　 1本〔垣根１本〕・・・・・日野平五入道
　 2本・・・・・・・・・・・石黒太郎
　 2本・・・・・・・・・・・川尻太郎
　 2本・・・・・・・・・・・須恵太郎
　 1本・・・・・・・・・・・佐志源次
　 1本・・・・・・・・・・・豊福五郎
　 2本・・・・・・・・・・・神沢次郎左衛門尉
　 2本・・・・・・・・・・・広田馬允
　 1本・・・・・・・・・・・中津川入道
　 1本・・・・・・・・・・・〔八木三郎・同四郎〕
　 1本・・・・・・・・・・・伊北三郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・岩国次郎
　 3本〔垣根１本あり〕・・・佐伯入道
　　　　押小路から南、西洞院から西18本
　 1本・・・・・・・・・・・安藤太郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・志賀七郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・臼間野太郎
　 1本・・・・・・・・・・・悪三郎丸入道
　 1本・・・・・・・・・・・藤沢四郎清親の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・小平一族
　 1本・・・・・・・・・・・飯高五郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・芳賀太郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・波多野弥藤次郎左衛門尉盛高
　 2本・・・・・・・・・・・布施左衛門康高の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・越生一族
　 1本・・・・・・・・・・・合子太郎
　 2本・・・・・・・・・・・金持兵衛入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・山名一族
　　　　押小路から南で油小路から西11本
　 1本〔垣根１本あり〕・・・吉敷三郎入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・神田三郎
　 1本・・・・・・・・・・・井上太郎
　 1本・・・・・・・・・・・岩手十郎兵衛尉の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・八坂右馬允
　 2本・・・・・・・・・・・高橋刑部入道
　 1本・・・・・・・・・・・枝兵衛入道
　 2本・・・・・・・・・・・真保次郎左衛門尉
　 1本〔垣根あり〕・・・・・清久左衛門の相続人
　　　　二条から北で西洞院に面した所から東20本
　 2本〔垣根 1本あり〕・・・方穂六郎左衛門尉
　 3本・・・・・・・・・・・益田権介の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・近藤七国平の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・山東太郎入道の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・細川宮内丞
　 1本・・・・・・・・・・・古川藤太兵衛尉
　 1本・・・・・・・・・・・横地一族
　 1本・・・・・・・・・・・小野寺中務の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・岡部兵衛尉の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・近藤太郎左衛門の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・加治一族
　 1本・・・・・・・・・・・高橋十郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・安西三郎
　 1本〔垣根１本あり〕・・・安芸前司親光
　川の堰238丈(１丈は3.03ｍ)
　　　　西の端
　 5丈・・・・・・・・・・・楊井左近将監の相続人
　10丈・・・・・・・・・・・平子次郎入道の相続人
　10丈・・・・・・・・・・・源雅楽左衛門時景
　10丈・・・・・・・・・・・原東左衛門
　 5丈・・・・・・・・・・・佐々木六郎法橋の相続人
　10丈・・・・・・・・・・・朝山右馬大夫の相続人
　 5丈・・・・・・・・・・・都筑右衛門経景の相続人
　 6丈・・・・・・・・・・・伊志良左衛門の相続人
　 6丈・・・・・・・・・・・蛭川刑部丞の相続人
　 6丈・・・・・・・・・・・日田四郎永俊の相続人伊美太郎兵衛尉
　 6丈・・・・・・・・・・・望月四郎兵衛尉
　 6丈・・・・・・・・・・・豊田太郎
　 4丈・・・・・・・・・・・進次郎左衛門尉の相続人
　10丈・・・・・・・・・・・江戸入道の相続人
　 8丈・・・・・・・・・・・白河判官代入道為親の相続人
　 7丈・・・・・・・・・・・鹿島中務の相続人
　 5丈・・・・・・・・・・・忍入道の相続人
　　　　東の端
　 4丈・・・・・・・・・・・市川六郎別当の相続人
　12丈・・・・・・・・・・・海老名藤左衛門尉忠行の相続人
　 4丈・・・・・・・・・・・上島次郎
　 6丈・・・・・・・・・・・高知尾太郎
　 4丈・・・・・・・・・・・逸見三郎
　 6丈・・・・・・・・・・・藤田兵衛尉の相続人
　 6丈・・・・・・・・・・・藤名太郎
　10丈・・・・・・・・・・・吉川三郎
　 6丈・・・・・・・・・・・本庄三郎左衛門入道
　12丈・・・・・・・・・・・多久平太の相続人
　 6丈・・・・・・・・・・・市川庄司の相続人
　12丈・・・・・・・・・・・海野左衛門入道幸氏
　 8丈・・・・・・・・・・・新開荒次郎実重の相続人
　 4丈・・・・・・・・・・・沼田太郎の相続人
　 5丈・・・・・・・・・・・秋元左衛門入道
　 5丈・・・・・・・・・・・下河辺左衛門行光の相続人
　 5丈・・・・・・・・・・・安西大夫の相続人
　 5丈・・・・・・・・・・・西条一族
　　　　橋と川の堰
　一ヵ所〔二条堀川〕・・・・小早川美作前司入道茂平
　一ヵ所・・・・・・・・・・宇佐美左衛門入道の相続人
　　　　裏の築地塀用柱〔用意しておく分〕
　 2本・・・・・・・・・・・安保刑部丞実光の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・氏家五郎公頼の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・大胡太郎重俊の相続人
　 2本・・・・・・・・・・・春日刑部丞貞幸の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・鮎沢六郎の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・葛浜左衛門尉の相続人
　 1本・・・・・・・・・・・高山一族
　 1本・・・・・・・・・・・佐野太郎基綱の相続人
　　　　慶長2年3月 日

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つるがおか　しんじれい　　ごと　　　しょうぐんけ ごさんぐう な　　　　　さがみしきぶのたいふ　〔ときひろ〕　ほうへい　 おんしたり
建長二年(1250)三月小三日己巳。鶴岡の神事例の如し。將軍家御參宮無し。相摸式部大夫〔時弘〕奉幣の御使爲。」

きょう　　　しょこく　　しゅご　けんだん　　こと　　そ　　　さた　あ
今日、諸國の守護檢断の事、其の沙汰有り。

せちがい　こと　　しゅごにんら　　　 もう　　 ごと　　は　　　そ　　　み　　　う　　　と　　　べ　　　のところ
殺害の事、守護人等の申す如き者、其の身を請け取る可き之處、

ぐんごう　　ぢとうら　　ろくはら　　　 から　 すす　　　　　じょういは　　な　　　　うんぬん
郡郷の地頭等六波羅へ搦め進むるの條謂れ無きと云々。

ぢとうら　　　もう　　 ごと　　 は　　　しゅごしょ　　　から　　わた　　のところ　けいちょう　ろんぜず　すなは　ほうめん　　のあいだ
地頭等の申す如き者、守護所へ搦め渡す之處、輕重を不論、即ち放免する之間、

かへ　 て　そ　　わずら　あ　　　　　よっ　　　　　ろくはら　　　めしすす　　　　　 うんぬん
還っ而其の煩ひ有るに依て、六波羅へ召進むると云々。

これ　　つ　　　　　ろくはら　　おお　　つか　　され　　い　　　　　　 しゅご せいばい　こと　　 しょこく　　さだ　　お　　 れるのあいだ　　 げち　　　くは　　らる　　べ
之に就き、六波羅へ仰せ遣は被て云はく、守護成敗の事、諸國に定め置か被之間、下知を加え被る可し。

ただ　　ぢとうら　　　 うち　　 むどう　　いたさず　　　ば　　しゅごにんは　　 うった　 もう　　　　つ　　　たず　 あか　　　 ちう　　もうさる　　べ
但し地頭等の中、無道を致不ん者、守護人者、訴へ申すに就き尋ね明し、注し申被る可し。

こと　　　　ごさた　あ　　　べ　　　なり　　うんぬん
殊に御沙汰有る可き也と云々。

現代語建長二年(1250)三月小三日己巳。鶴岡八幡宮の上巳の節句の神事は何時もの通りです。将軍家頼嗣様のお参りは有りません。相模式部大夫時弘が幣を納める代参です。」
今日、諸国の守護の業務範囲について、その検討がありました。殺人犯については、守護達が云うには、「その身柄を受け取ろうとすると、郡や郷の地頭が、直接六波羅探題へ護送して行くのは、業務の範囲では無い。」と云っている。
地頭達の言い分は、「守護の所へ身柄を渡しても、罪の大きさを検討せず、すぐに解き放つので、かえって面倒が増えるので六波羅探題へ連れて行きたい。」と云ってる。
このことについて、六波羅探題へ命令されて云うには、「守護の裁決権については、諸国に決めて置いているのだ。」と、命令をしなさい。但し、地頭達が無法をしていないのなら、守護人が訴えてきたことは、詳しく調べて書き出してよこしなさい。特に幕府で判断をしましょう。だとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きょう ひょうじょう　　　じょうじょう　さだ　　おお　 らる　　ことあ
建長二年(1250)三月小五日辛未。今日評定す。條々の定め仰せ被る事有り。

ひとつ　 よせさた　　 ちょうじすべ　　こと
一　寄沙汰を停止可き事

　　けんもん　　い　　　かり　　じゆう　　　さた　　　いたせし　　ば　　 しゅじん　かけ　　こと　　ちょうか　　しょさる　　べ
　權門の威を假、自由の沙汰を致令め者、主人に懸て殊に重科に處被る可し。

ひとつ　さんもん　　そうと よせさた　　　こと
一　山門の僧徒寄沙汰の事

　きんねん　ほうきのあいだ　しょにんのわずら　たり
　近年蜂起之間、諸人之煩ひ爲。

　　いさ　　　　おんさた　あ　　　べ　　　のよし　　ないない　 とみこうじどの　　 もう　　い　　　らる　　べ　　　のむね　　ろくはら　　　おお　　らる　　べ 
　誡めの御沙汰有る可し之由、内々に富小路殿に申し入れ被る可き之旨、六波羅へ仰せ被る可し。

ひとつ　やまとのくに　あくとうら　　　こと
一　大和國の悪黨等の事

　 かく　　こと　　せんじつ　ろくはら　　おお　　　　　 いちじょういんだいじょういん　もう　　い　　　　　　いへど　　　　 こと　 おこな　ざる　　うんぬん
　此の事、先日六波羅へ仰せて、一乘院、大乘院へ申し入れると雖も、事を行は不と云々。

　　いまよ　　　いご　　　をい　　は　　　　ぶし　　　さ　　　つか　　　　　　そ　　　み　　　め　　　と　　　か
　今自り以後に於て者、武士を差し遣はし、其の身を召し取る歟。

　　かれら　　　あと　　いた　　　 は　　 ちうしんせし　　べ　　　　　ぢとう　　かいぶされざれば　　きょうこうろうぜき　 だんぜつ　べからざるか
　彼等の跡に至りて者、注進令む可し。地頭を改補被不者、向後狼藉は断絶す不可歟。

　　かく　おもむき　もっ　　ふ　　 もう　　べしてへ　　　　　おな　　　　　ろくはら　　 おお　 らる　　べ
　此の趣を以て觸れ申す可者れば、同じく六波羅へ仰せ被る可し。

現代語建長二年(1250)三月小五日辛未。今日、政務会議をしました。条文の決め事がありました。
一つ　権威の利用を止めされる事
　　　権威のある家柄の威光をかさに着て、勝手なふるまいをする者は、その権威者に頼んで重罪に処分するように。
一つ　比叡山の武装僧侶が寺の威光をかさに着る事
　　　最近、武装蜂起するたびに、人々にとって迷惑な事である。諫めの言葉をかけるように、内々に富小路殿に申し入れるよう、六波羅探題に伝える事。
一つ　大和の国の反体制の無法者の事
　　　この事は、先日六波羅探題に云いつけて、一乗院・大乗院へ申し入れたけれども。何も行っていないそうな。今後については、武士を派遣してその身柄を捕獲させようか。彼らの管理していた領地については、書き出してよこしなさい。地頭を改めて任命しなければ、今後も犯罪が絶えることが無いであろう。
この内容を、世間に告示するように、又同様の内容を六波羅探題へも通知しなさい。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うだいしょうけ　ほけどう　　　おんぶつじ　　こうれいたり　 いへど　　　なお　　べち　　くようら　　ことあ
建長二年(1250)三月小十三日己夘。右大將家法花堂の御佛事、恒例爲と雖も、猶、別の供養等の事有り。

むほん　　やからあ　　べ　　　のよし　　ばっかおうしゅう　ゆめ　　い　　　　　しめ　　おお　 らる　　のむねあ　　　　　うんぬん
謀叛の輩有る可き之由、幕下奥州の夢に入り、示し仰せ被る之旨有りと云々。

現代語建長二年(1250)三月小十三日己卯。頼朝様の法華堂で法要です。毎月13日の恒例の事ですけど、今日は特別の事がありました。謀反人達がいるぞと、頼朝様が奥州重時さんの夢の中に出て、知らせて来たからなんだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かまくうらちゅう　ほうほうぶぎょうにんら　 おお　　　　　むえき　　やかららのきょうみょう　ちゅう　　　いなか　　おいつか
建長二年(1250)三月小十六日壬午。鎌倉中の保々奉行人等に仰せて、無益の輩等之交名を注し、田舎へ追遣はし、

よろ　　　　のうさく　　つと　　　　したが　　　　　のよし　　うんぬん
宜しく農作の勤めに随はせる之由と云々。

現代語建長二年(1250)三月小十六日壬午。鎌倉中の町内会保の差配人に命令して、無職の連中の名前を書き出して、田園へ連れて行かせて、農業の勤めをさせるようになんだとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さんぬ　つきよっか　　だいじんぐう　きねんさい　　れいじつたる　よっ　　　そうしゅうへいもつ　たてま　らる

建長二年(1250)三月小廿日丙戌。去る月四日、大神宮 祈年祭の例日爲に依て、相州幣物を奉つ被る。

とうじょうじろうたいふ　おんし　　な　　　　　さんぐうのところ　　か　　　みもすそがわ　みず　いろべに　ごと　　　　いちにちいちや　 へ　　　もと　 ながれ　かえ
東條次郎大夫御使と爲し、參宮之處、彼の御裳濯河�@の水の色紅の如し。一日一夜を經て本の流に皈る。

およ　　こんたび　　こうけ　　　ごへいぶつら　　れい　　まか　　うらべかんじんぶぎょう　　な　　つつ　たてまつ　のとき　　かく　 ごと　　かいい あ
凡そ今度の公家の御幣物等、例に任せ占部官人奉行と爲し裹み奉る之時、此の如き恠異有り。

べん　しょうけいら さいしゅ　 わた　　のご　　　およ　　　　こと　 おどろ　もう　　　　さんぬ　じょうきゅうさんねん　こ　　　　きとくら　あ　　　　　うんぬん
弁の上卿等祭主に渡す之期に及び、殊に驚き申す。去る　承久三年　此の奇特等有りと云々。

参考�@御裳濯河は、五十鈴川。

現代語建長二年(1250)三月小二十日丙戌。先月の4日は、伊勢神宮に五穀豊穣と国家繁栄を祈願する祭典だったので、相州時頼さんは、奉納する幣と寄付をしました。東条次郎大夫が使いとして、お参りをしたところ、五十鈴川の水の色が紅の様に赤くなりました。一日一夜を過ぎたら元の流れに戻りました。そもそも、今回の寄付物は、昔の例のとおりに占い部の役人を担当として寄付物を包んで奉納した時に、このような不思議な出来事がありました。弁官の筆頭職が祭主に渡す時だったので、特別驚きました。去る承久三年(承久の乱)にもこのような不思議な事がありましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　しょうぐんけおんかたたが　　ため　　そうしゅう　おんてい　い　　　たま　　　　　ぐぶ　　 ひとびと　ほい　　　げぐく
建長二年(1250)三月小廿五日辛夘。天霽。將軍家御方違への爲、相州の御亭へ入り御う。供奉の人々布衣に下括り。

　　さきのうまごんのかみ　　　　　　　　　　　むさしのかみ
　前右馬權頭　　　　　　武藏守

　　おわりのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　びぜんぜんじ
　尾張前司　　　　　　　備前々司

　　くないしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのかみ
　宮内少輔　　　　　　　遠江守

　　さがみうこんたいふしょうげん　　　　　　むつかもんのすけ
　相摸右近大夫將監　　　陸奥掃部助

　　さがみしきぶのたいふ　　　　　　　　　　ほうじょうろくろう
　相摸式部大夫　　　　　北條六郎

　　えちごのごろう　　　　　　　　　　　　　　　むさしのしろう
　越後五郎　　　　　　　武藏四郎

　　おわりのじろう　　　　　　　　　　　　　　　むさしのごろう
　尾張次郎　　　　　　　武藏五郎

　　さがみのはちろう　　　　　　　　　　　　　とおとうみのたろう
　相摸八郎　　　　　　　遠江太郎

　　こうづけのぜんじ　　　　　　　　　　　　　なわさこんたいふ
　上野前司　　　　　　　那波左近大夫

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　　　　おな　　　　じろう
　秋田城介　　　　　　　同じき次郎

　　おな　　　　くろう　　　　　　　　　　　　　ごとうさどのぜんじ
　同じき九郎　　　　　　後藤佐渡前司

　　さきのおおくらごんのしょうゆう　　　　　　おやまのでわぜんじ
　前大藏權少輔　　　　　小山出羽前司

　　しもつけぜんじ　　　　　　　　　　　　　　 にったみかわぜんじ
　下野前司　　　　　　　新田三河前司

　　さきのだざいしょうに　　　　　　　　　　　 くらごんのかみ
　前太宰少貳　　　　　　内藏權頭

　　いずみのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　ひごぜんじ
　和泉前司　　　　　　　肥後前司

　　あきのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　のとさこんたいふ
　安藝前司　　　　　　　能登左近大夫

　　いきのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　おおすみぜんじ
　壹岐前司　　　　　　　大隅前司

　　ちくぜんぜんじ　　　　　　　　　　　　　　 さつまぜんじ
　筑前々司　　　　　　　薩摩前司

　　おおそねさえもんのじょう　　　　　　　　とおとうみのじろうさえもんのじょう
　大曽祢左衛門尉　　　　遠江次郎左衛門尉

　　おな　　　　ろくろうひょうえのじょう　　　おな　　　　しんさえもんのじょう
　同じき六郎兵衛尉　　　同じき新左衛門尉

　　むとうさえもんのじょう　　　　　　　　　　 おおすがさえもんのじょう
　武藤左衛門尉　　　　　大須賀左衛門尉

　　いずみのじろうさえもんのじょう　　　　　 こうじまのこじろう
　和泉次郎左衛門尉　　　幸嶋小次郎

　　こうづけじうろう　　　　　　　　　　　　　　　さつまのくろう
　上野十郎　　　　　　　薩摩九郎

　　たけだのごろしちろう　　　　　　　　　　　 おがさわらよいち
　武田五郎七郎　　　　　小笠原余一

　　かぢのごろじろう　　　　　　　　　　　　　　といのしろう
　加地五郎次郎　　　　　土肥四郎

　　おおそねごろう　　　　　　　　　　　　　　ほんまのじろうひょうえのじょう
　大曽祢五郎　　　　　　本間次郎兵衛尉

　　おのでらしろうさえもんのじょう　　　　　　いとうさぶろう
　小野寺四郎左衛門尉　　伊東三郎

　　みうらのすけ　　　　　　　　　　　　　　　とうのなかつかさしょうゆう
　三浦介　　　　　　　　東中務少輔

現代語建長二年(1250)三月小二十五日辛卯。空は晴れました。将軍家頼嗣様は、方角替えの為、相州時頼さんの屋敷へ入りました。お供の人達は布衣の正装に指貫の袴紐は足首で結わえています。
　前右馬権頭常盤流北条政村　と　武蔵守大仏流北条朝直
　尾張前司名越流北条時章　　と　備前前司名越流北条時長
　宮内少輔足利泰氏　　　　　と　遠江守大仏流北条時直
　相模右近大夫将監北条時定　と　陸奥掃部助金沢流北条実時
　相模式部大夫時弘　　　　　と　得宗家北条六郎時定
　越後五郎佐助流北条時家　　と　武蔵四郎大仏流北条時仲
　尾張次郎公時　　　　　　　と　武蔵五郎時忠
　相模八郎時隆　　　　　　　と　遠江太郎清時
　上野前司畠山泰国　　　　　と　那波左近大夫将監政茂
　秋田城介安達義景　　　　　と　城次郎安達頼景
　安達九郎泰盛　　　　　　　と　佐渡前司後藤基綱
　前大蔵権少輔結城朝広　　　と　出羽前司小山長村
　下野前司宇都宮泰綱　　　　と　新田三河前司頼氏
　前太宰少弐狩野為佐　　　　と　内蔵権頭資親
　和泉前司二階堂行方　　　　と　肥後前司内藤盛時
　安芸前司親光　　　　　　　と　能登左近大夫中原仲時
　壱岐前司宍戸国家　　　　　と　大隅前司島津忠時
　筑前前司二階堂行泰　　　　と　薩摩前司安積祐長
　大曾祢左衛門尉長泰　　　　と　遠江次郎左衛門尉佐原光盛
　同六郎兵衛尉佐原時連　　　と　新左衛門尉佐原経光
　武藤左衛門尉景頼　　　　　と　大須賀左衛門尉朝氏
　和泉次郎左衛門尉二階堂行章と　幸嶋小次郎時村
　上野十郎結城朝村　　　　　と　薩摩九郎伊東祐朝
　武田五郎七郎政平　　　　　と　小笠原余一長隆
　加地五郎次郎章綱　　　　　と　土肥四郎實綱
　大曽根五郎　　　　　　　　と　本間次郎兵衛尉信忠
　小野寺四郎左衛門尉通時　　と　伊東三郎左衛門尉祐綱
　三浦介盛時　　　　　　　　と　東中務少輔胤重

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　しょいぐんけたび　　ごしょ　　をい　　 ごゆうえんら　あ
建長二年(1250)三月小廿六日壬辰。天�ﾘ。將軍家旅の御所に於て御遊宴等有り。

ま　　　いまと　　み　　　べ　　　のよし　　おお　 らる　 のあいだ　　こさむらいどころ　 もよ　　さる　　　　およばず
先ず射的を覽る可き之由、仰せ被る之間、 小侍所に 催お被るに不及。

とうざ　　　をい　　　　そうしゅう ぐぶにん　　うち　　　　はか　 えら　　　　じき　 めしおお　　　　よっ　　とんぴ　　　　　　　ほっ　　　　　ところな　　　おのおの いちごど　これ　　い
當座に於て、相州供奉人の中から計り撰び、直に召仰す。仍て遁避せんと欲するに所無し。 各 一五度�@之を射る。

つい　　おんまりえあ　　　　　にじょうじじゅうおお　うけたまは　　　にんずう　ちゅう　もうさる　　　あいだ　　あいだのじょうすけよしかげ ぶぎょうたり
次で御鞠會有り。二條侍從仰せを承り、人數を注し申被るの間、　秋田城介義景　奉行爲。

みのいってんひとびと　もよお　　うま　　げこく　　のりさだあそん　いげ　さんしん
巳一点人々を催す。午の下剋、教定朝臣以下參進す。

むとうさえもんのじょう　　　しあくさこんにゅうどう　　もっ　　　　あげまり　　こと　　のりさだあそん に　ごもんどう あ　　　　　かねのりあそんあげまり　 えきたるべ　　　　うんぬん
武藤左衛門尉、塩飽左近入道を以て、上鞠の事、教定朝臣于御問答有り。兼教朝臣上鞠の役爲可しと云々。

 そ　　ご　　　たいふまさあり　〔じっさい〕　　おんまりを　かか　　　うち　　お　　　　　のりさだあそん そ　 しゅう　はから　た
其の後、大夫雅有〔十歳〕御鞠於懸りの中に�A置く。教定朝臣其の衆を計ひ立つ。

かず　えき　　 しあくさこんたいふのぶさだ　　 ごとうさえもんのじょうときなおはか　 もう　　　　これそうしゅう　おお　　　　うんぬん　 とおと　じんな　　　　　よっ　　なり
算の役、塩飽左近大夫信貞、後藤左衛門尉説尚計り申す。是相州の仰せと云々。尊き仁無きに依て也。

参考�@一五度は、四十九巻正元二年(1260)正月十二日・十四日の記事により、一五度は、二本づつ五度で、二五度は二本づつ五度を二回らしい。
参考�A御鞠於懸りの中には、蹴鞠場に四本の木を植える。懸りの輪の坪と云う。艮(東北)に梅。巽(東南)に柳。坤(西南)に楓。乾(西北)に松。

おんまと　　いて
御的の射手

　 いちばん　 とおとうみのたろうきよとき　　　　　　　　　　じょうのじろうよりかげ
　一番　遠江太郎�C時�@ 　　　　　城次郎頼景

　 　にばん　 とおとうみのろくろうさえもんのじょうときつら　おがさわらのよいちながたか
　二番　遠江六郎左衛門尉時連　　小笠原余一長隆

　 さんばん　 こうじまのこじろうときむら　　　　　　　　　　　さつまのくろうすけとも
　三番　幸嶋小次郎時村　　　　　薩摩九郎祐朝

　 よんばん　こうづけのじうろうともむら　　　　　　　　　　　　かぢのごろじろうあきつな
　四番　上野十郎朝村　　　　　　加地五郎次郎章綱

　 　ごばん　 たけだのごろしちろうまさひら　　　　　　　　　 といのしろうさねつな
　五番　武田五郎七郎政平　　　　土肥四郎實綱

参考�@遠江太郎清時は、時房―時直―清時

おんまり　しゅう
御鞠の衆

　 おわりのしょうしょう　〔きよもとあそん〕　　　　　　　　　　　　にじょうのしょうしょう　〔かねのりあそん〕
　尾張少將〔�C基朝臣〕　　　　　　二條少將〔兼教朝臣〕

　 　ひょうえのすけただとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　たいふまさあり
　兵衛佐忠時　　　　　　　　　　大夫雅有

　 　むつかもんのすけさねとき　〔いじょう　ほい　〕　　　　　　　くまおうまる
　陸奥掃部助實時〔已上布衣〕　　　熊王丸

　 　ゆきひさ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゆきのぶ
　行久　　　　　　　　　　　　　行信

　 　すけよし　〔いじょうひたたれくずばかま〕　　　　　　　　　　　　ひととし　〔とうしん　　ころも〕
　資能〔已上直垂葛袴〕　　　　　　仁俊〔等身の衣〕

けんじょ
見證

　 　おうしゅう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そうしゅう
　奥州　　　　　　　　　　　　　相州

　 　さきのうまごんのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのぜんじ
　前右馬權頭　　　　　　　　　　尾張前司

　 　ぎょうぶたいふにゅうどうみちなり　　　　　　　　　　　　 あいだのじょうすけよしかげ
　刑部大夫入道々成　　　　　　　秋田城介義景

　 　ごとうさどぜんじもとつな　　　　　　　　　　　　　　　　　 しなのみんぶたいふにゅうどうゆきなり
　後藤佐渡前司基綱　　　　　　　信濃民部大夫入道行成

現代語建長二年(1250)三月小二十六日壬辰。空は晴です。将軍家頼嗣様は、方角替えの訪問先で遊びの宴がありました。
まず弓箭の腕前を見たいと云うので、身の回りの世話をする小侍所の手を煩わせることなく、その席で相州時頼さんは、お供の人の中から考えて選んで直接命じました。それなので、逃げ出すわけにはいきませんでした。それぞれ二本を五度づつ弓を射ました。
次に蹴鞠の会がありました。二条侍従教定は、命を聞いて名簿を書き出したので、秋田城介安達義景が実施担当です。
9時すぎに人々に知らせました。12時すぎに教定さん以下がそろいました。将軍から武藤左衛門尉景頼と塩飽左近大夫入道信貞を使いとして、スタート役の上鞠について、教定さんに質問がありました。二条少将兼教さんがスタート指導役だと答えましたそうな。
その後、大夫二条雅有〔10歳〕が、鞠を蹴鞠場の真中に置きました。教定さんが蹴鞠メンバーを呼び出しながら位置を決めて立たせました。蹴鞠数を数える役は、塩飽左近大夫入道信貞と後藤左衛門尉説尚が数えます。これは時頼さんの指示だそうな。身分の高い人がいないからです。
的矢の射手は、
　一番が、遠江太郎北条清時　　　ＶＳ　城次郎安達頼景
　二番が、遠江六郎左衛門尉時連　ＶＳ　小笠原余一長隆
　三番が、幸嶋小次郎時村　　　　ＶＳ　薩摩九郎伊東祐朝
　四番が、上野十郎結城朝村　　　ＶＳ　加治五郎次郎章綱
　五番が、武田五郎七郎政平　　　ＶＳ　土肥四郎実綱
蹴鞠のメンバーは、
　尾張少将藤原清基さん　二条少将兼教さん　兵衛佐姉小路忠時　大夫二条雅有　陸奥掃部助北条実時〔以上は正装の布衣です〕　熊王丸　所行久　行信　押立資能〔以上は直垂に葛袴〕　仁俊〔等身の衣〕
見聞役
　奥州北条重時　相州北条時頼　前右馬権頭北条政村　尾張前司北条時章　刑部大夫入道道成　秋田城介安達義景　佐渡前司後藤基綱　信濃民部大夫入道二階堂行成

解説時刻の點は、2時間を5等分したのが点。巳なら9時〜9：24を一点、9：24〜9：48を二点、9：48〜10：12を三点、10：12〜2：36を四点、10：36〜11：00を五点。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おやまのでわぜんじながむら　　 どうくようなり

建長二年(1250)三月小廿八日甲午。小山出羽前司長村、堂供養也。

これ　　そふ　しもつけにゅうどうせいせい　じうさんねんきしん　むか　　　　こ　　　 さぜん　　およ

是、祖父 下野入道生西が十三年忌辰�@を迎へ、此の作善に及ぶ。

しょうじつ　　あすたり　　いへど　　 くりあげ　　　　うんぬん

正日は明日爲と雖も、牽上ると云々。

参考�@祖父下野入道生西が十三年忌辰は、嘉禎4年(1238)3月大30日に死亡記事あり。

現代語建長二年(1250)三月小二十八日甲午。出羽前司小山長村が、お堂の開眼供養です。これは、祖父下野入道生西小山朝政の13回忌なので、この法要をしました。本当の命日は明後日ですが、日繰り上げたそうです。

四月へ

吾妻鏡入門第四十巻