吾妻鏡入門第四十一巻

建長三年(1251)二月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　つるがおか　りんじのまつり　　おかぐら　れい　 ごと
建長三年(1251)二月大一日辛夘。天�ﾘ。鶴岡の臨時之祭。御神樂例の如し。」

きょう　　　きょうと　の　ししゃさんちゃく　　さんぬ　つき にじうしちに きたのまんどころ　おさん　 うんぬん　 また　　ふつか しきけんもんいん ほうぎょ　　　うんぬん
今日、京都之使者參着す。去る月 廿二日　北政所�@　御産と云云。又、二日 式乾門院�A崩御すと云云。

参考�@北政所は、摂政近衛兼経妻と思われる。
参考�A式乾門院は、後高倉院の皇女。母は、藤原基家の娘。宗尊親王の猶子親。宗尊親王は一年後の三月に鎌倉へ。

現代語建長三年(1251)二月大一日辛卯。空は晴です。鶴岡八幡宮の臨時の祭りです。お神楽の奉納はいつも通りです。」
今日、京都からの使いが到着しました。先月22日に北政所がお産をしたそうな。また、2日には式乾門院が亡くなったそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　さるのこくらいめい
建長三年(1251)二月大六日丙申。天霽。申刻雷鳴。

現代語建長三年(1251)二月大六日丙申。空は晴れました。午後4時頃、雷が鳴りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　あまなわへん しょうぼう　　　ひ　　ちそうほっきょう　のたくよりおこ
建長三年(1251)二月大十日庚子。天�ﾘ。 甘繩邊 燒亡す。火は地相法橋之宅從起る。

いぬのこくよ　　 ね の いってん　　いた　　　　　 やまず
 戌刻自り子之一點に到るまで不止。

ひがし　わかみやおおじ　みなみ　ゆいのはま　きた　なかのげばばし　　にし　　ささめがやつなり
東は若宮大路。 南は由比濱。北は中下馬橋。西は佐々目谷也。

さがみうこんたいふしょうげんときさだ　　さがみはちろうときたから　　だい いげ すうかしょわざわ　　　　　うんぬん
相摸右近大夫將監時定・相摸八郎時隆等の第以下數箇所災いすと云云。」

きょう　　　そうしゅう みづか　ふで　そ　　　　　おんしょを にじょうどの　 けん　 らる　　　きょうこうみこころやす　ぞん　 べ　　　のよし　　　うんぬん
今日、相州 自ら筆を染め、御書於二條殿�@に献ぜ被る。向後御心安く存ず可き之由と云云。

参考�@二條殿は、良実(元九条家)。頼経の兄。兼実ー良経ー道家ー良実

現代語建長三年(1251)二月大十日庚子。空は晴です。甘縄あたりで火事です。火は地相見の法橋の家から出ました。20時頃か24時過ぎまで止みませんでした。東は若宮大路、南は由比ガ浜、北は中下馬橋、西は笹目谷です。相摸右近大夫将監北条時定・相摸八郎北条時隆の屋敷を始め数ヶ所が燃えてしまいました。」
今日、相州時頼さんが、自筆で手紙を書いて二条良実さんに送りました。今後の対応を心配するには及びませんとの事です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおみんまや　〔こ　　かん しんぞう　　　　　かさいがやつぐち　　かわまた〕　うしろのやまくず　　お
建長三年(1251)二月大廿日庚戌。大御厩〔此の間新造す。葛西谷口の河俣�@〕後之山崩れ顛ち、

ひとおお　もっ　　どせき　のたに　　おされて　ふたり　た　　　　　　　　　な　　　　　　　　　うんぬん
人多く以て土石之谷に推被而二人立ちながら亡くなると云云。

参考�@葛西谷は、鎌倉市小町三丁目１０附近の東勝寺跡地。河俣とは、葛西谷からの流れが滑川にそそぐあたり(東勝寺ひぐらし公園)であろう。

現代語建長三年(1251)二月大二十日庚戌。大型の厩〔最近新築です。葛西谷口の川っプチ〕の後ろの山が崩れて、多くの人が土石に押し流されて、二人が立ったまま亡くなりましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さきのうまごんのかみ　　だい　　をい　　　 とうざ　 さんびゃくろくじっしゅ　 つぎうたあ
建長三年(1251)二月大廿四日甲寅。前右馬權頭の第�@に於て、當座に三百六十首の継歌有り。

にじょうちゅうじょう　おわりしょうしょう　　むさしのかみ　とおとうみのかみ　さどのぜんじ　　かまたのじろうひょうえのじょうら　かいごう
 二條中將・ 尾張少將・ 武藏守・遠江守・ 佐渡前司・鎌田次郎兵衛尉等會合す。

さんびゃくろくじっしゅ　ちょうほう　もっ　　　おきもの　　ほっ　　　　うんぬん
三百六十種の重寳を以て、置物に欲すと云云。

参考�@前右馬權頭の第は、政村の屋敷は、鎌倉市常盤770附近。

現代語建長三年(1251)二月大二十四日甲寅。前右馬権頭北条政村の屋敷(常盤)で、その場で360首の継唄(後の連歌)がありました。二条中将教定・尾張少将坊門清基・武蔵守北条朝直・遠江守北条時直・佐渡前司後藤基綱・鎌田次郎兵衛尉行政が、付き合いました。360種の品物をもって賭け物としたそうな。

三月へ

吾妻鏡入門第四十一巻