吾妻鏡入門第四十一巻

建長三年(1251)四月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　そうしゅう　わしだいみょうじん　ほうへい　ため　 おんしを　むさしのくに　　つか　　　 べ　　 のところ　　みしまの　しんじなり
建長三年(1251)四月小十三日癸夘。天�ﾘ。相州、鷲大明神�@に奉幣の爲、御使於武藏國へ遣はす可き之處、三嶋之神事也。

たしゃ　　　ごほうへい　　こと　　あえ　　そ　　はばか　あ　　　べ　　　のよし　　とうしゃかんぬしもう
他社の御奉幣の事、敢て其の憚り有る可き之由、當社神主申す。

よっ　　しさいを　わかみやべっとうほういん　ゆずらる　のあいだ　 きょう　しんぱつ　　　 うんぬん
仍て子細於若宮別當法印に讓被る之間、今日進發すと云云。

参考�@鷲大明神は、埼玉県久喜市鷲宮１丁目６−１の鷲宮神社。

現代語建長三年(1251)四月小十三日癸卯。空は晴れました。相州時頼さんは、鷲宮神社へ幣を納める為に、代参を武蔵国へ行かせようとしたら、八幡宮境内社の三島神社の神事でした。八幡宮内の神事の際に、他社へ幣を納めるのは、神様同士がやきもち焼くので、遠慮した方が良いと当社の神主が云いました。そこで、使者を鶴岡八幡宮寺筆頭の法印隆弁に譲ったので、今日出発しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こくし　　　りょうけ　　ねんぐ　　こと　　こと　　せいせい べんさい いた　　べ
建長三年(1251)四月小廿日庚戌。國司・領家の年貢の事、殊に精誠 辯濟 致す可し。

 も　　はるさんがつ　いご　　 こ　　　こと　　つ　　　　　ほんじょ　そしょうしゅつらい　ば　　　ぢとうを　 ほんじょ　 ちうぶんさる　 べ　　　のよし　　おお　　いださる　　　　うんぬん
若し春三月已後、此の事に就き、本所の訴訟出來せ者、地頭於本所に中分被る可き�@之由、仰せ出被ると云云。

参考�@地頭於本所に中分被る可きは、武士としての地頭ではなく、年貢現地徴収権を指してる。

現代語建長三年(1251)四月小二十日庚戌。国税権利者の国司・庄園上級債権者の領家への年貢について、特にきちんと納付するように。もし、春3月以後に、この滞納について、庄園最上級債権者の本所から訴訟があった場合は、年貢現地徴収権の地頭職を本所の下司と折半させるようにしようと、仰せになられましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あめ　 わかみやべっとうほういん　むさしのくに わしみやよ　　　きさん　　　　ごきがんじょうじゅ　　きずい ひとつならず
建長三年(1251)四月小廿二日壬子。雨。若宮別當法印、 武藏國 鷲宮自り歸參す。御祈願成就し奇瑞 不一。

さんぬ　じうくにち　　しゃとう　　をい　　おかぐらのみぎり　　ひと　　の　みごと　　たくせんもっと　げんじゅう　 こと　　そ　　　 きとく　あ　　のよし　　うんぬん
去る十九日、社頭に於て御神樂之砌、一つ之見事な託宣尤も嚴重。殊に其の奇特有る之由と云云。

現代語建長三年(1251)四月小二十二日壬子。雨です。鶴岡八幡宮筆頭の法印隆弁が、武蔵国鷲宮神社から帰って来ました。願はかないました。良い前兆が一つだけではありませんん。19日には、神社の本殿前での奉納神楽の最中に、一つ素晴らしい神のお伝えがしっかりとありました。特に良い証があったのだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はなは　あめ　にじういちにちよ　いま　　や　　　　　　　こんやねのこくこうずい
建長三年(1251)四月小廿三日癸丑。甚だ雨。廿一日自り未だ止まず。今夜子刻洪水。

そんり　　いえ　 たがや　ところ　なえ　ことごと　もっ　りゅうしつ　　　　うんぬん
村里の家、耕す所の苗、悉く以て流失すと云云。

現代語建長三年(1251)四月小二十三日癸丑。二十一日からの雨がいまだに止みません。今夜洪水がおこりました。村里の家や耕している苗が全て流されてしまいましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さんぬ　じうくにち　こうづけのくにあかぎだけ　や
建長三年(1251)四月小廿六日丙辰。去る十九日、上野國赤木嶽燒ける。

せんれい　ひょうがく　きざしたるのよし　ざいちょうらもうせし　　のよし　　うんぬん
先例は兵革の兆爲之由、在廳等申令む之由と云云。

現代語建長三年(1251)四月小二十六日丙辰。先達ての十九日に、上野国の赤城山で山火事(或いは噴火)です。古い例では、戦争が起こると云う兆しだと、国衙の役人が云って来ましたとさ。

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