吾妻鏡入門第四十一巻

建長三年(1251)八月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　なんぷうあ　　　　　こんゆう　　ゆいのうら　　をい　　ふうはくのまつり　おこなはれ　　くにつぐ ためちから これ　　ほうし
建長三年(1251)八月小一日己丑。天�ﾘ。南風悪し。今夕、由比浦に於て風伯之祭を行被る。國継 爲親等之を奉仕す。

いずのたろうさえもんのじょうさねやす おんしたり　　うんぬん
伊豆太郎左衛門尉實保 御使爲と云云。

現代語建長三年(1251)八月小一日己丑。空は晴です。南風が良くないので、今日の夕方、由比浦で風祭を行いました。安陪国継・為親が勤めました。伊豆太郎左衛門尉実保が代参だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　かぜはなは　　ただ　　よ　　　い
建長三年(1251)八月小二日庚寅。天�ﾘ。風甚し。但し夜に入って。

現代語建長三年(1251)八月小二日庚寅。空は晴です。風が強かった。但し夜になってからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　かぜすくな　　こんゆうゆきふ
建長三年(1251)八月小三日辛卯。天霽。風少し。今夕雪下る。

みしましんぐうせんぐう　のぎ　　　およ　　　べいじゅう　　おかぐら　　どうぶ　　　えんねんら　あ　　　　　うんぬん
三嶋新宮遷宮之義に及び、陪從・御神樂・童舞・延年等有りと云云。

現代語建長三年(1251)八月小三日辛卯。空は晴れました。風は少しです。夕方になって雪が降りました。三島神社の引っ越し式をしました。奉納のお祓い・お神楽・稚児踊り・芸能がありましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しょうちょうじゅいん　　こみどう　は　　　こぜんじょう　にいけ　　 ごゆいせき　　らんしょう　た　こと
建長三年(1251)八月小六日甲午。勝長壽院の小御堂者、故禪定二位家の御遺跡。濫觴他に異なる。

しか　　　　きんねんはかい　 およ　　　　そ　　 あとすで　 あらた　　　　　 ほっ
然るに近年破壞に及ぶ。其の跡已に改めんと欲す。

よっ　　しゅうり　　くは　　られ　　ため　　きいのくにさいがのしょう　もっ　　　りょうしょ　　つの　　　　ふじつ　　をい　　こう　　お　　　　　べ　　　　むね
仍て修理を加へ被ん爲、紀伊國雜賀庄を以て、料所に募り、不日に於て功を終える可きの旨、

きょう　びんごぜんじやすもち　　ふ　　　おお　　らる　　　　うんぬん
今日備後前司康持に付し仰せ被ると云云。

現代語建長三年(1251)八月小六日甲午。勝長寿院の奥の小さなお堂は、故二位家政子様のおられた所です。その謂われは他とは比べ物になりません。それなのに近頃壊れてきました。其の後が無くなってしまう事になります。そこで、修理をするために紀伊国雑賀庄の年貢を充てて、早急に修理を終えるように、今日、備後前司三善康持にを指名して云いつけましたとさ。

参考故禅定二位家は、北条政子。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  そらくもり　かぜふ　　　　きょう つるがおかはちまんぐう　ほうじょうえなり　しょうぐんけおんいで
建長三年(1251)八月小十五日癸夘。天陰。風吹く。今日鶴岡八幡宮の放生會也。將軍家御出。

ぎょうれつ
行列

せんじん　ずいへい
先陣の随兵

　　あわのしろうひょうえのじょうまさうじ　　　　　 こうづけのごろうひょうえのじょうしげみつ
　阿波四郎兵衛尉政氏　　　上野五郎兵衛尉重光

　　かさいいきしんさえもんのじょうきよかず　　　 もてぎのうえもんのじょうともさだ
　葛西壹岐新左衛門尉�C員　茂木右衛門尉知定

　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき　　　 むとうじろうひょうえんじょうよりやす
　和泉次郎左衛門尉行章　　武藤次郎兵衛尉頼泰

　　あしかがのたろういえうじ　　　　　　　　　　　 じょうのくろうやすもり
　足利太郎家氏　　　　　　城九郎泰盛

　　とおとうみのろくろうのりとき　　　　　　　　　　えちごのごろうときいえ
　遠江六郎教時　　　　　　越後五郎時家

つい　 しょだいぶ
次で諸大夫

つい　でんじょうびと
次で殿上人

つい　　 くげ
次で公卿

つい　 おくるま
次で御車

　　おおそねのいやごろう　　　　　　　　　　　　　いとうのやまとじうろう
　大曽祢五郎　　　　　　　伊東大和十郎

　　といのさえもんしろうさねつな　　　　　　　　　おな　　　 さぶろうやすすけ
　土肥左衛門四郎實綱　　　同じき三郎泰祐

　　おのざわのじろうときなか　　　　　　　　　　　 おおいずみのくろうながうじ
　小野澤次郎時仲　　　　　大泉九郎長氏

　　いせのかとうさえもんのじょう　　　　　　　　　 きいのしろうさえもんのじょう
　伊勢加藤左衛門尉　　　　紀伊四郎左衛門尉

　　かまたのひょうえさぶろうよしなが　　　　　　はまなのさぶろう
　鎌田兵衛三郎義長　　　　濱名三郎

　　やましろのじろうひょうえのじょう　　　　　　　　ひごのいやとうじ
　山城二郎兵衛尉　　　　　肥後弥藤次

　　　　　　いじょうひたたれ　 き　　　　　たいけん　　　 おくるま　　　さゆう　　そうら
　　　已上直垂を着て、帶劔し、御車の左右に候う。

つい　 ぎょけん　 えき　　ひと
次で御劔の役の人

　　おわりのぜんじときあき
　尾張前司時章

つい　　ごちょうど　　 えき　　ひと
次で御調度の役の人

　　むとうさえもんのじょうかげより
　武藤左衛門尉景頼

おんうしろ〔　ほい　〕
御後〔布衣〕

　　さがみうこんたいふしょうげんときさだ　　　　 ほうじょうろくろうときさだ
　相摸右近大夫將監時定　　北條六郎時定

　　くないしょうゆうやすうじ　　　　　　　　　　　　こうづけぜんじやすくに
　宮内少輔泰氏　　　　　　上野前司泰國

　　おやまのでわぜんじながむら　　　　　　　　さきのおおくらごんのしょうゆうともひろ
　小山出羽前司長村　　　　前大藏權少輔朝廣

　　くらごんのかみすけちか　　　　　　　　　　　　でわぜんじゆきよし
　内藏權頭資親　　　　　　出羽前司行義

　　にったみかわぜんじよりうじ　　　　　　　　　 いずみのぜんじゆきかた
　新田三河前司頼氏　　　　和泉前司行方

　　ごとういきのかみもとまさ　　　　　　　　　　　　とおとうみじろうさえもんのじょうみつもり
　後藤壹岐守基政　　　　　遠江次郎左衛門尉光盛

　　かじわらうえもんのじょうかげとし　　　　　　　じょうのじろうよりかげ
　梶原右衛門尉景俊　　　　城次郎頼景

　　しきぶろくろうさえもんのじょうともなが　　　　 いやじろうさえもんのじょうちかもり
　式部六郎左衛門尉朝長　　弥二郎左衛門尉親盛

　　ぶんごのしろうさえもんのじょうただつな　　　おおそねさえもんのじょうながやす
　豊後四郎左衛門尉忠綱　　大曽祢左衛門尉長泰

　　でわのじろうさえもんのじょうゆきあり　　　　　おきのじろうさえもんのじょうやすきよ
　出羽二郎左衛門尉行有　　隱岐二郎左衛門尉泰�C

　　いやぜんたろうさえもんのじょうやすよし　　 ひごのじろうさえもんのじょうためとき
　弥善太郎左衛門尉康義　　肥後次郎左衛門尉爲時

　　ぜんうえもんのじょうやすなが　　　　　　　　せっつのさえもんのじょう
　善右衛門尉康長　　　　　攝津左衛門尉

こうじん　　ずいへい
後陣の随兵

　　おおそねさえもんのじょうもりつね　　　　　ひたちのじろうひょうえのじょうゆきかつ
　大曽祢左衛門尉盛經　　　常陸二郎兵衛尉行雄

　　たなかうえもんのじょうともつぐ　　　　　　　　いずのたろうさえもんのじょうさねやす
　田中右衛門尉知継　　　　伊豆太郎左衛門尉實保

　　おだじまのごろうさえもんのじょうよしはる　　きいのごろうさえもんのじょうためつね
　小田嶋五郎左衛門尉義春　紀伊五郎左衛門尉爲經

　　たけいしのしろうたねうじ　　　　　　　　　　　あだちのさえもんさぶろうもとうじ
　武石四郎胤氏　　　　　　足立左衛門三郎元氏

　　おおすがしんさえもんのじょうともうじ　　　　あだちのたろうさえもんのじょうなおもと
　大須賀新左衛門尉朝氏　　足立太郎左衛門尉直元

現代語建長三年(1251)八月小十五日癸卯。空は曇りで風が吹いています。今日、鶴岡八幡宮の生き物を放して贖罪する放生会です。将軍家頼嗣様のお出ましです。
行列は、
前を行く武装儀仗兵
　阿波四郎兵衛尉薬師寺政氏　　　上野五郎兵衛尉結城重光
　葛西壱岐新左衛門尉清員　　　　茂木右衛門尉知定
　和泉次郎左衛門尉二階堂行章　　武藤次郎兵衛尉頼泰
　足利太郎家氏　　　　　　　　　城九郎安達泰盛
　遠江六郎北条教時　　　　　　　越後五郎北条時家

次に五位の公卿
次に殿上人(昇殿を許された人)
次に公卿

次に牛車
　大曽祢五郎　　　　　　　　　　伊東大和十郎
　土肥左衛門四郎実綱　　　　　　同三郎泰祐
　小野沢次郎時仲　　　　　　　　大泉九郎長氏
　伊勢加藤左衛門尉　　　　　　　紀伊四郎左衛門尉
　鎌田兵衛三郎義長　　　　　　　浜名三郎
　山城二郎兵衛尉　　　　　　　　肥後弥藤次
　　　以上は鎧直垂を着て、太刀を佩いて、牛車の左右に居ます
次に刀持ち　　　　尾張前司名越流北条時章
次に弓矢を担ぐ人　武藤左衛門尉景頼
将軍の後ろ行く人〔布衣の正装〕
　相模右近大夫将監時定　　　　　北条六郎時定
　宮内少輔足利泰氏　　　　　　　上野前司畠山泰国
　小山出羽前司長村　　　　　　　前大蔵権少輔結城朝広
　内蔵権頭資親　　　　　　　　　出羽前司二階堂行義
　新田三河前司頼氏　　　　　　　和泉前司二階堂行方
　後藤壱岐守基政　　　　　　　　遠江次郎左衛門尉佐原光盛
　梶原右衛門尉景俊　　　　　　　城次郎安達頼景
　式部六郎左衛門尉伊賀朝長　　　弥二郎左衛門尉親盛
　豊後四郎左衛門尉島津忠綱　　　大曽祢左衛門尉長泰
　出羽二郎左衛門尉二階堂行有　　隠岐二郎左衛門尉佐々木泰清
　弥善太郎左衛門尉三善康義　　　肥後次郎左衛門尉藤原為時
　善右衛門尉三善康長　　　　　　摂津左衛門尉
後ろを行く武装儀仗兵
　大曽祢左衛門尉盛経　　　　　　常陸二郎兵衛尉二階堂行雄
　田中右衛門尉知継　　　　　　　伊豆太郎左衛門尉実保
　小田島五郎左衛門尉義春　　　　紀伊五郎左衛門尉為経
　武石四郎胤氏　　　　　　　　　足立左衛門三郎元氏
　大須賀新左衛門尉朝氏　　　　　足立太郎左衛門尉直元

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さんぬ　ようしのこくあめふ　　　みのこく　　はれ　　なんぷうふ
建長三年(1251)八月小十六日甲辰。去る夜丑刻雨降る。巳刻に�ﾘ。南風吹く。

きょう　　つるがおか　やぶさめ　いげ　　　　ばば　のぎれい　　ごと　　　　　しょうぐんけごほうへいあ　　　　　 ぐぶにんら　きのう　　　おな
今日、鶴岡の流鏑馬以下、馬塲之義例の如し。將軍家御奉幣有り。供奉人等昨日に同じ。

現代語建長三年(1251)八月小十六日甲辰。夕べの午前2時頃雨が降る。午前10時には晴れて、南の風が吹きました。今日、鶴岡八幡宮での流鏑馬など奉納の馬場での儀式は何時もの通りです。将軍家頼嗣様の幣の納めもあり、お供の人は昨日と同じです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　しょうぐんけゆいのうら　　をい　おんいで　さきのうまごんのかみ　むさしのかみ　ろうにゃくこしょうせざ　　　　な
建長三年(1251)八月小廿一日己酉。天�ﾘ。將軍家由比浦に於て御出。前右馬權頭・武藏守、 老若 扈從不るは無し。

おうしゅう　そうしゅう あらかじ　おんさじき　　そうら　らる
奥州・相州 豫め御棧敷に候は被る。

にゅうごののち　　ま　　　こん　のぎ　あ　　　　 つい　 とおがさがけ　み　　　　すなは　またこれ　 い　せし　 たま　　　おんや しき　　　　てきちゅう　　　ひとかん　 もう　をはんぬ
入御之後、先ず献之義有り。次で遠笠懸を覽る。則ち又之を射令め給ふ。御箭頻りに的中す。人感じ申し焉。

つい　　いぬおうものこれあ　　 しょにんとおなわ　 うち　　しきがわ　　そうら　　　かれこれ いて　　 め
次で犬遂者之有り。諸人遠繩の内に敷皮に候う。彼頃射手を召す。

おのおの なわぎわ　　まい　　のとき　　いきのぜんじやすつな　かくしつ　のけ あ　　　のよしこれ　 しょう
　各　繩際に參る之時、壹岐前司泰綱 確執之氣有る之由之を稱す。

きゅう　もっ　　こしょうのあいだ　　か　　　あいて じょうのくろうやすもり おな　　　　げば　をはんぬ　　えんゆう　 しょうげなり
急に以て故障之間、彼の合手 城九郎泰盛 同じく下馬し畢。 宴遊の障碍也。

やすつな　 かわ　 て　しこう　のひと　 さ　　　しん　　べ　　　のむね　　そうしゅう　もうさる
泰綱に代り而伺候之人を差し進ず可き之旨、相州に申被る。

そうしゅうこと　　こじ　　　　　たと　　　いて　これあ　　　　いへど　　すうやから　　ごけにん　　さしお　　　　　さ　　　しん　　がた　をはんぬ
相州殊に固辞す。縱い射手之有ると雖も、數輩の御家人を差置いて差し進じ難き焉。

いはん　また　　そ　　　ひとな　　　　をいて　　や　　　おのおの　しか　べからざるのよし　うんぬん
况や又、其の人無きに於而を耶。　各　然る不可之由と云云。

しかれ　　さいさん　　おお　　　　よっ　　　　よこみぞごろう　　しん　 せし　 たま
然ども再三の仰せに依て、横溝五郎を進じ令め給ふ。

よこみぞの　ぐそく　　よういされざるのあいだ　そうしゅう おんゆみや むかばき　　たま　　をはんぬ　〔おんよろい　からびつ　　おんゆみ　　　そや　　　　ひきめら　　これ　　もたれ　　　　　みなよこみぞ　あずか　なり　〕
横溝之具足の用意被不之間、相州 御弓箭 行騰を賜はり焉　〔御鎧・唐櫃・御弓・征矢・引目等之を持被る。皆横溝が預る也〕。

うまは　　　うちじまうこんにゅうどう　　　きば　　 てん　 たま　　　　〔かすげ　　　いま　　　なわぎわら　　　たてなら　　　　　　ただ　　　こうじおうはん　　　　きば　　に　もち　　　　ばか　　なり　〕　
馬者、内嶋右近入道が騎馬を點じ給ふ〔糟毛。未だ繩際等に立馴ばず。只に小路往反の騎馬于用うる計り也〕。

これ　　が　　　　 よっ　　いまはじ　　　 あせ　　ぬぐ　　　　あえ　　これ　　き
之に駕す。仍て今始めて汗を拭ひ、敢て之に騎す。

　けみ　　すうたん　 さいそく　 したが　　　まい　　くわ　　　　　いへど　　　なおしんしゃくあ　　　　　　そう　な　　　　や　　はなたず
檢見の數反の催促に隨い、參り加はると雖も、猶斟酌有りて、左右無く箭を發不。

いぜん　 はな　いぬよんひき これ　 およ　　ときはじ　　　 これ　 い　　　　　しちゅうじゅうそ　　しつな　　　　きょう　　いつきょう　こ　　ことなり
以前に放つ犬四疋 之に及ぶ時始めて之を射る。始中終其の失無し。今日の逸興此の事也。

　　おわりのぜんじ　　　　　　　　　　さがみうこんたいふしょうげん
　尾張前司　　　　　相摸右近大夫將監

　　むつのしろう　　　　　　　　　　　　たけだのごろしちろう
　陸奥四郎　　　　　武田五郎七郎

　　しなのしろうさえもんのじょう　　　かがのぜんじ
　信濃四郎左衛門尉　加賀前司

　　こうじまじろう　　　　　　　　　　　　かぢのごろじろう
　幸嶋次郎　　　　　加地五郎次郎

　　とおとうみのじろうさえもんのじょう　さつまのくろう
　遠江次郎左衛門尉　薩摩九郎

　　いやまでわぜんじ　　　　　　　　　みうらのすけ
　小山出羽前司　　　三浦介

いぬおうもの　　　いて
犬追者の射手

　　　　いちばん
　　一番

　　ほうじょうろくろう　　　　　　　　　　とおとうみたろう
　北條六郎　　　　　遠江太郎　参考遠江太郎は、清時。時房―時直―清時

　　じょうのくろう　　　　　　　　　　　　よこみぞごろう
　城九郎　　　　　　横溝五郎

　　とおとうみしんさえもんのじょう　　おがさわらよいち
　遠江新左衛門尉　　小笠原余一

　　　　　にばん
　　二番

　　とおとうみろくろうさえもんのじょう　たけだのごろさぶろう
　遠江六郎左衛門尉　武田五郎三郎

　　さつまのしちろうさえもんのじょう　やまとのじろうさえもんのじょう
　薩摩七郎左衛門尉　大和次郎左衛門尉

　　じょうのじろう　　　　　　　　　　　　こうづけのじうろう
　城二郎　　　　　　上野十郎

　けみ
檢見

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　　はたのいずものぜんじ
　秋田城介　　　　　波多野出雲前司

現代語建長三年(1251)八月小二十一日己酉。空は晴です。将軍家頼嗣様は由比浦にお出ましです。前右馬権頭北条政村・武蔵守北条北条朝直など老いも若きもお供をしない者はおりません。奥州重時・相州時頼は前もって桟敷に待ってました。桟敷へお入りになられた後、まず、お乾杯の式がありました。
次に、遠笠懸を見ました。すぐにまた、これをまたご自分で射てみました。矢は沢山的に当たりました。人は感心しておりました。
次に、柵の中に犬を放して射る犬追ものがありました。皆さんは区画用の縄を張った内側に敷皮を敷いていました。そして射手を招集しました。それぞれが縄のそばに来た時、壱岐前司佐々木泰綱が、不和があると言い出しました。急に故障したので、その相手の城九郎安達泰盛も同様に馬から降りてしまいました。折角のお遊びの妨げです。佐々木泰綱に変わり手を身内から指名するように時頼さんに云いました。
時頼さんは辞退しました。たとえ射手がいたとしても、数人の御家人を差し置いてまたものを差し出し難いのです。ましてやそれに合った人が居なけりゃなおの事です。身内の人々もそれは出来ないとの事でした。
しかし、何度も催促されたので、横溝五郎実重を推薦しました。横溝は、軽武装の用意が無かったので、時頼さんが弓矢と馬上袴を与えました〔鎧・唐櫃・弓・戦闘用の矢・鏃をとった匹目などを持ってました。全て横溝が預かっていました〕。
馬は、内島右近入道盛経の乗馬を貸し与えました〔糟毛。未だに縄際に立ったことはありません。もっぱら街中を歩くために乗っているだけです〕。この馬に乗りました。それで馬は初めて汗をかいてるのを拭いて、あえてこれに乗りました。審判の何度かの催促に従って、群れに入りましたが、なおも状況を考えてたやすく矢を射らないのです。放されていた犬が四匹になって初めてこれを射ました。始めから終わりまで失敗は有りません。今日一番の見ものはこの事でした。
　尾張前司北条時章　　　　　　相模右近大夫将監時定
　陸奥四郎時茂　　　　　　　　武田五郎七郎政平
　信濃四郎左衛門尉二階堂行忠　加賀前司
　幸島次郎時村　　　　　　　　加地五郎次郎章綱
　遠江次郎左衛門尉佐原光盛　　薩摩九郎伊東祐
　小山出羽前司長村　　　　　　三浦介盛時
犬追ものの射手
　　一番
　北条六郎時定　　　　　　　　遠江太郎清時
　城九郎安達泰盛　　　　　　　横溝五郎実重
　遠江新左衛門尉佐原経光　　　小笠原余一長澄
　　二番
　遠江六郎左衛門尉佐原時連　　武田五郎三郎政綱
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　大和次郎左衛門尉
　城二郎安達頼景　　　　　　　上野十郎結城朝村
審判
　秋田城介安達義景　　　　　　波多野出雲前司義重

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ひょうじょうしゅう うち　 しょろう　 さんきんせざ　 のやから　 をい　　　　　ちゃくとう　　の　　　べからずのよし　　そ　　　さた　あ
建長三年(1251)八月小廿三日辛亥。評定衆の中、所勞で參勤不る之輩に於ては、着到に乘す不可之由、其の沙汰有り。

 そ　　しゅう　じ　せし　　ざるのほどは　　　かきの　　べからずのむね　　おお　 いださる　　　うんぬん
其の衆を辞令め不之程者、書乘す不可之旨、仰せ出被ると云云。

現代語建長三年(1251)八月小二十三日辛亥。政務会議メンバーで、病気で欠勤している人については、政務名簿に載せてはいけないと、その命がありました。その人々を止めさせない限り、書いてよこす必要はないと言い出しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　しょうぐんけかさ　て おんはまいであ　　　　　ぐぶ　　ひと　そ　　かず　　しらず　　 ま　　おんかさがけなり
建長三年(1251)八月小廿四日壬子。天�ﾘ。將軍家重ね而御濱出有り。供奉の人其の數を不知。先ず御笠懸也。

つるがおかのべっとうほういん　〔りゅうべん〕　おんさじき　　をい　　しこうのあいだ　　おんや　　かじ　せし　　　　うんぬん　　つい　　いぬおうものこれあ
 鶴岡 之別當法印〔隆弁〕御棧敷に於て伺候之間、御矢を加持令むと云云。次で犬追者之有り。

 いて
射手

　　　　いちばん
　　一番

　　ほうじょうろくろう　　　　　　　　　　じょうのくろう
　北條六郎　　　　　城九郎

　　　　ささきいきぜんじ　　　　　　　みうらのすけろくろう
　佐々木壹岐前司　　三浦介六郎

　　とうとうみしんさえもんのじょう　　　おがさわらよいち
　遠江新左衛門尉　　小笠原余一

　　　　　にばん
　　二番

　　とうとうみろくろうさえもんのじょう　たけだのごろさぶろう
　遠江六郎左衛門尉　武田五郎三郎

　　こうじまじろう　　　　　　　　　　　　しなののしろうさえもんのじょう
　幸嶋二郎　　　　　信濃四郎左衛門尉

　　じょうのくろう　　　　　　　　　　　　こうづけじうろう
　城二郎　　　　　　上野十郎

　　　　さんばん
　　三番

　　おやまでわぜんじ　　　　　　　　　うじいえよいち
　小山出羽前司　　　氏家余一

　　かぢのごろじろう　　　　　　　　　　といさえもんしろう
　加地五郎次郎　　　土肥左衛門四郎

　　さつまのくろう　　　　　　　　　　　くどうろくろうさえもんのじょう
　薩摩九郎　　　　　工藤六郎左衛門尉

　けみ
檢見

　　あいだのじょうすけ　　　　　　　　いずもぜんじ
　秋田城介　　　　　出雲前司

現代語建長三年(1251)八月小二十四日壬子。空は晴です。将軍家頼嗣様は、浜辺へのお出ましがありました。お供の人は数えきれません。
ます、自分で笠懸です。鶴岡八幡宮筆頭法印隆弁が、桟敷にきていたので、矢を当たるように加持祈祷しましたとさ。
次に犬追うものがありました。
射手は、
　　一番
　北条六郎時定　　　　　　　城九郎安達泰盛
　佐々木壱岐前司泰綱　　　　三浦介六郎
　遠江新左衛門尉佐原経光　　小笠原余一長澄
　　二番
　遠江六郎左衛門尉佐原時連　武田五郎三郎政綱
　幸島次郎時村　　　　　　　信濃四郎左衛門尉二階堂行忠
　城二郎安達頼景　　　　　　上野十郎結城朝村
　　三番
　小山出羽前司長村　　　　　氏家余一
　加地五郎次郎章綱　　　　　土肥左衛門四郎
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　工藤六郎左衛門尉
　　審判
　秋田城介安達義景　　　　　波多野出雲前司義重

九月へ

吾妻鏡入門第四十一巻