吾妻鏡入門第四十一巻
建長三年(1251)十月小
| 建長三年(1251)十月小七日癸亥。天晴。藥師堂燒亡。延二階堂大路南。宇佐美判官荏柄家前到也。 |
読下し そらはれ やくしどうしょうぼう にかいどうおおじみなみ の うさみほうがん えがら いえ まえ いた なり
建長三年(1251)十月小七日癸亥。天晴。藥師堂燒亡。二階堂大路南に延び、宇佐美判官が荏柄の家の前に到る也。
現代語建長三年(1251)十月小七日癸亥。空は晴です。大倉薬師堂(後の覚園寺)が燃えました。火は二階堂大路の南まで延びて、宇佐美判官祐泰の荏柄の家の前まで来ました。
| 建長三年(1251)十月小八日甲子。戌刻。相州新造御第〔小町〕御移徙。 |
読下し いぬのこく そうしゅう しんぞう おんだい 〔こまち〕 ごいし
建長三年(1251)十月小八日甲子。戌刻。
相州
新造の御第〔小町〕へ御移徙。
現代語建長三年(1251)十月小八日甲子。午後８時頃、時頼さんは新築の屋敷〔小町〕へ引っ越しです。
参考新造の御第〔小町〕は、宝戒寺の位置と思われる。
| 建長三年(1251)十月小十二日己巳。貢馬見參。奥州以下出仕如例云云。 |
読下し くめ げざん おうしゅういげ しゅっしれい ごと うんぬん
建長三年(1251)十月小十二日己巳。貢馬見參。奥州以下の出仕例の如しと云云。
現代語建長三年(1251)十月小十二日己巳。税として朝廷へ送る馬を見る儀式です。重時さんはじめ幕府への出勤は何時もの通りです。
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建長三年(1251)十月小十九日乙亥。天顏快晴。將軍家并二品。相州新造御第入御。今夜御止宿也。 |
読下し てんがんかいせい しょうぐんけなら にほん そうしゅう しんぞう おんだい
い たま こんや ごししゅくなり
建長三年(1251)十月小十九日乙亥。天顏快晴。
將軍家并びに二品。相州が新造の御第へ入り御う。今夜御止宿也。
ぐぶにん
供奉人
しょうぐん おんかた
將軍の御方
さきのうまごんのかみ むさしのかみ
前右馬權頭 武藏守
さがみうこんたいふしょうげん むつかもんのすけ
相摸右近大夫將監 陸奥掃部助
こうづけぜんじ にったみかわぜんじ
上野前司 新田三河前司
おやまでわぜんじ くらごんのかみ
小山出羽前司 内藏權頭
いずみのぜんじ ごとういきのかみ
和泉前司 後藤壹岐守
ささきいきぜんじ おおすみぜんじ
佐々木壹岐前司 大隅前司
さつまぜんじ いがぜんじ
薩摩前司 伊賀前司
じょうのくろう おおそねさえもんのじょう
城九郎 大曽祢左衛門尉
とおとうみにろうさえもんのじょう みうらのすけ
遠江二郎左衛門尉 三浦介
とおとうみろくろうさえもんのじょう いずみのじろうさえもんのじょう
遠江六郎左衛門尉 和泉次郎左衛門尉
ひごのじろうさえもんのじょう
ぶんごのしろうさえもんのじょう
肥後次郎左衛門尉 豊後四郎左衛門尉
いやじろうさえもんのじょう
さつまのしちろうさえもんのじょう
弥次郎左衛門尉 薩摩七郎左衛門尉
いずのたろうさえもんのじょう たなかさえもんのじょう
伊豆太郎左衛門尉 田中左衛門尉
ひたちのじろうひょうえのひょう むとうじろうひょうえのじょう
常陸二郎兵衛尉 武藤次郎兵衛尉
かのうのごろうさえもんのじょう せっつしんさえもんのじょう
狩野五郎左衛門尉 攝津新左衛門尉
いきのしんさえもんのじょう
ぜんうえもんのじょう
壹岐新左衛門尉 善右衛門尉
あだちのたろうさえもんのじょう
足立太郎左衛門尉
にほん おんかた
二品の御方
びぜんぜんじ とおとうみぜんじ
備前々司 遠江前司
えちごのごろう むとうしろう
越後五郎 武藏四郎
むつのしろう
あいだのじょうすけ
陸奥四郎 秋田城介
おな じろう でわぜんじ
同じき次郎 出羽前司
しもつけぜんじ とおやまさきのおおくらしょうゆう
下野前司 遠山前大藏少輔
かじわらうえもんのじょう おおそねじろうさえもんのじょう
梶原右衛門尉 大曽祢次郎左衛門尉
でわのじろうさえもんのじょう おきしんさえもんのじょう
出羽次郎左衛門尉 隱岐新左衛門尉
おな しろうさえもんのじょう
ひこじろうさえもんのじょう
同じき四郎左衛門尉 彦次郎左衛門尉
いずものごろうさえもんのじょう あわのしろうさえもんのじょう
出雲五郎左衛門尉 阿波四郎左衛門尉
といさえもんしろう おのざわのじろう
土肥左衛門四郎 小野澤次郎
いやぜんたさえもんのじょう みむらしんさえもんのじょう
弥善太左衛門尉 三村新左衛門尉
きいのごろうさえもんのじょう いせのかとうさえもんのじょう
紀伊五郎左衛門尉 伊勢加藤左衛門尉
やましろじろうさえもんのじょう
山城次郎左衛門尉
現代語建長三年(1251)十月小十九日乙亥。空はは快晴です。将軍家頼嗣様それと母の二品は、時頼さんの屋敷へ訪問です。今夜はお泊りです。
お供の人
将軍家頼嗣様の分
前右馬権頭北条政村 武蔵守北条朝直
相模右近大夫将監北条時定 陸奥掃部助北条実時
上野前司畠山泰国 新田三河前司頼氏
小山出羽前司長村 内蔵権頭資親
和泉前司二階堂行方 後藤壱岐守基政
佐々木壱岐前司泰綱 大隅前司島津忠時
薩摩前司安積祐長 伊賀前司小田時家
城九郎安達泰盛 大曽祢左衛門尉長泰
遠江次郎左衛門尉佐原光盛 三浦介盛時
遠江六郎左衛門尉佐原時連 和泉次郎左衛門尉二階堂行章
肥後次郎左衛門尉藤原為時 豊後四郎左衛門尉島津忠綱
弥次郎左衛門尉頼盛 薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
伊豆太郎左衛門尉実保 田中左衛門尉知継
常陸次郎兵衛尉二階堂行雄 武藤次郎兵衛尉
狩野五郎左衛門尉 摂津新左衛門尉
壱岐新左衛門尉後藤基頼 善右衛門尉三善
足立太郎左衛門尉直元
母の二品の分
備前前司名越流北条時長 遠江前司北条時直
越後五郎北条時家 武蔵四郎北条時仲
陸奥四郎時茂 秋田城介安達義景
同次郎 出羽前司二階堂行義
下野前司宇都宮泰綱 遠山前大蔵少輔景朝
梶原右衛門尉景俊 大曽祢次郎左衛門尉盛経
出羽次郎左衛門尉二階堂行有 隠岐新左衛門尉佐々木時清
同四郎左衛門尉二階堂行義 彦次郎左衛門尉
出雲五郎左衛門尉波多野宣時 阿波四郎左衛門尉薬師寺政氏
土肥左衛門四郎実綱 小野沢次郎時仲
弥善太左衛門尉三善 三村新左衛門尉時親
紀伊五郎左衛門尉長経 伊勢加藤左衛門尉
山城次郎左衛門尉
参考二品は、頼嗣の母。頼経正妻は御臺所で出演。
| 建長三年(1251)十月小廿日丙子。將軍家并二品。相州從御第還御。亭主御引出物等被令献之云云。」今夜太白驚輿鬼。占文云。大將軍廢云云。 |
読下し
しょうぐんけなら にほん そうしゅう おんだいよりかえ たま てい あるじ
おんひきでものら これ けん せし
らる うんぬん
建長三年(1251)十月小廿日丙子。將軍家并びに二品、相州の御第從還り御う。亭の主
御引出物等之を献じ令め被ると云云。」
こんや たいはく よき おどろ せんぶん い だいしょうぐん
はい うんぬん
今夜、太白輿鬼を驚かす。占文に云はく。大將軍
廢すと云云。
現代語建長三年(1251)十月小二十日丙子。将軍家頼嗣様それと母の二品は、時頼さんの屋敷から帰りました。屋敷の主は、引き出物を献上しましたとさ。」
今夜、きんせいがかに座に迫りました。占いの文章には、大将軍が廃止になるそうです。
参考二品は、頼嗣の母。参考太白星（タイハクセイ）は、金星。参考輿鬼は、かに座。
| 建長三年(1251)十月小廿一日丁丑。天晴。北風嚴。寒氣殊甚。今日。相州新誕若公五十日百日之義有之云云。 |
読下し そらはれ きたかぜはげ かんきこと はなは きょう そうしゅう しんたんわかぎみ ごじゅうにち ひゃくにちのぎ
これあ うんぬん
建長三年(1251)十月小廿一日丁丑。天晴。北風嚴し。寒氣殊に甚だし。今日、相州の
新誕若公、 五十日・百日之義之有りと云云。
現代語建長三年(1251)十月小二十一日丁丑。北風が厳しく寒さが烈しいです。今日、時頼さんの新しく生まれた若君の50日・100日の儀式がありましたとさ。
参考新誕若君は、後の時宗。50日100日祝いといってるが、5月15日生まれなので、すでに184日に当たるので、良くわからない。
| 建長三年(1251)十月小廿三日己夘。丑刻雷鳴一聲。地震兩度云云。 |
読下し うしのこく
らいめいひとこえ ぢしんりょうど うんぬん
建長三年(1251)十月小廿三日己夘。丑刻
雷鳴一聲。地震兩度と云云。
現代語建長三年(1251)十月小二十三日己卯。午前２時頃雷が一度。地震が二度だそうな。
| 建長三年(1251)十月小廿九日乙酉。奥州。相州并評定衆等。於幕府別參。御所艮唯評定所之屋可被建之由。有其沙汰。被尋陰陽道輩之處。丑寅之方遊年也。今年中不快之由依勘申而。被止其義云々。 |
読下し おうしゅう そうしゅうなら ひょうじょうしゅうら ばくふ をい
べつ さん
建長三年(1251)十月小廿九日乙酉。奥州・相州并びに評定衆等、幕府に於て別に參ず。
ごしょ うしとら ただ ひょうじょうしょ
のや たてらる べ のよし そ さた あ
御所の艮に唯の評定所之屋を建被る可き之由、其の沙汰有り。
おんみょうどう やから たず らる のところ うしとらのほう ゆうねんなり ことしじゅう ふかい のよしかん もう よって そ ぎ や らる うんぬん
陰陽道の輩に尋ね被る之處、丑寅之方は遊年也。今年中は不快之由勘じ申すに依而、其の義を止め被ると云々。
現代語建長三年(1251)十月小二十九日乙酉。重時さん、時頼さんそれに政務会議メンバーが、幕府に特別にやって来ました。御所の東北に普段用の政務会議所の建物を立てようと、検討しました。陰陽道の連中に聞いたところ、東北の方角は建築・移転などを避けなくてはならない方角です。今年中は良くありませんと上申したので、その事を止める事にしましたとさ。
吾妻鏡入門第四十一巻