吾妻鏡入門第四十一巻

建長四年(1252)二月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　みのいってん　 ひ さんぶせいげん
建長四年(1252)二月大一日乙夘。天�ﾘ。巳一點�@、日三分正現す。

参考�@時刻の點は、2時間を5等分したのが点。巳なら9時〜9：24を一点、9：24〜9：48を二点、9：48〜10：12を三点、10：12〜10：36を四点、10：36〜11：00を五点。

現代語建長四年(1252)二月大一日乙卯。空は晴です。午前9時過ぎに、3分(30%)の日食がきちんと見えました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　ねのこくしょうぼう　 にしは じゅふくじ　のまえ　　ひがしは なごえさんのうどうまえ　みなみは　わがえ　　きたは わかみやおおじかみ
建長四年(1252)二月大八日壬戌。天霽。子尅燒亡。西者壽福寺之前、東者 名越山王堂前。南者和賀江、北者 若宮大路上。

そ　　 うちのこ　ところな　　　　うんぬん
其の内殘る所無しと云云。

現代語建長四年(1252)二月大八日壬戌。空は晴ました。夜中の0時頃火事です。西は寿福寺前。東は名越山王堂前、南は和賀江島、北は若宮大路上まで、その内の残る所はありませんでした。

推理この火事の範囲だと、若見大路幕府まで焼けたことになるが、燒失も再建も記述が無い。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かまくらちゅう こうじ　　せば　　　　　のこと
建長四年(1252)二月大十日甲子。鎌倉中少路を狹める�@之事、

うけたまわ　のむねな　　　くらおきうま　つね　　うしろ　た　　　　　のこと
承り 之旨無く鞍置馬を常に後に立つる�A之事、

ひきゃく　ふじつ　　いできた　　のとき　　いなか　　をい　　た　　　　のこと
飛脚不日に出來る之時、田舎に於て立つる�B之事、

かく　じょうじょう　こと　　いまし　　　　おんさた　　 およ　　　　ほうほう ぶぎょうにんら　　おお　　つけらる　ところなり
此の條々、殊に誡めの御沙汰に及ぶ。保々 奉行人等に仰せ付被る處也。

参考�@少路を狹めるは、民家が道路を侵食する。
参考�A鞍置馬を常に後に立つるは、戦支度をする。
参考�B田舎に於て立つるは、在地からの謀反と判別がつかない。

現代語建長四年(1252)二月大十日甲子。鎌倉中の小道を狭める事。許可なく鞍を乗せた馬を家の裏に用意する事。
伝令が急ぎ必要な時でも、在地から伝令を発進させる事(謀反と判別が付かない)。
これらの条項を特に止めさせることにしました。町内単位の保の管理人に命じましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　かんとうあんぜん　 おいの　　　 ため　　　　そうしゅう　おんだい　 をい　　　 にょいりんほう　　おこなはれ　　うんぬん
建長四年(1252)二月大十二日丙寅。天�ﾘ。關東安全の御祈りの爲に、相州の御第に於て、如意輪法を行被ると云云。

現代語建長四年(1252)二月大十二日丙寅。空は晴です。鎌倉幕府の安泰のために、時頼さんの屋敷で、如意輪観音の法要を行いましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじゆきかた　むとうさえもんのじょうかげより　　しせつ　　な　　じょうらく

建長四年(1252)二月大廿日甲戌。和泉前司行方・武藤左衛門尉景頼、使節と爲し上洛す。

これ　おうしゅう　そうしゅう　とうしょうぐんしっけん　　じ　　　　じょうこうだいいち　さんみや　もうさる　　のあいだ　 おんげこう　あ　　　べ　　　のよし　　もう　　こ　　　　　よっ　　なり
是、奥州・相州、當將軍執權を辞し、上皇第一の三宮に申被る之間、御下向有る可き之由、申し請うに依て也。

 そ　じょう　そうしゅうみずか　ふで　　そ　　　　　おうしゅうはん　くは　　 らる　ところなり　　たにんこれ　　しらず　　うんぬん
其の状、相州自ら筆を染める。奥州判を加へ被る處也。他人之を不知と云云。

現代語建長四年(1252)二月大二十日甲戌。和泉前司二階堂行方。武藤左衛門尉景頼は、幕府の代表として京都へ上ります。これは、重時さん・時頼さんが、今の将軍を廃して、後嵯峨上皇の第一親王三品の宮にお願いしたので、鎌倉へお下りあるように、申し入れるためです。その手紙を時頼さんが自筆で書きました。重時さんが花押を書き足したのです。他の人はこの事を知りませんでしたとさ。

参考和泉前司行方は、二階堂行方。参考奥州は、重時。参考相州は、時頼。参考當將軍は、九条頼嗣。参考上皇第一の三宮は、宗尊親王。参考御下向有る可きは、鎌倉へ下向して欲しい。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 たつのこく　きょうと　　ひきゃくさんちゃく　　さんぬ　にじういちにち いぬのこく　ほっしょうじぜんじょうでんか こう　　　　のよしこれ　　もう
建長四年(1252)二月大廿七日辛巳。辰刻、京都の飛脚參着す。去る　廿一日　戊尅、法性寺禪定殿下 薨ずる之由之を申す。

よっ　おうしゅう　そうしゅう　いげ　　ひとびとぐんさん　　　うんぬん　　か　　　こうご　　　こと　　うんぬん　　せつら　あ　　　　 ぶけ ちゅうさくあ　　　べ　　　のご　なり　　うんぬん
仍て奥州・相州以下の人人群參すと云云。彼の薨御の事と云云。説等有り。武家籌策有る可き之期也と云云。

現代語建長四年(1252)二月大二十七日辛巳。午前8時頃、京都からの伝令が着きました。先日の21日の午後8時頃、法性寺禅定殿下九条道家さんが亡くなったと報告しました。それで、重時さん・時頼さん以下皆さん集まりましたとさ。その死については、風説があり、武士が何か企んだのではないかだとさ。

参考法性寺禪定殿下は、九条道家。頼嗣祖父。頼経将軍に色々と画策した。兼実ー良経ー道家ー頼経ー頼嗣。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　さるのこく　こしごえ　　かいじょうよ　　　　わがえじまのつ　 いた　　て　　 うみのみず　ち　　ごと
建長四年(1252)二月大廿八日壬午。天�ﾘ。申尅、腰越の海上自り、和賀江津に至り而、海之水血の如し。

ひろ　さんじょうばか　　　ばん　 およ　しょうめつ　をはんぬ
廣さ三丈計り。晩に及び消滅し畢。

みかわのぜんじのりたか かんもん　すす　　　うんぬん　　かんけ　　れいあ　　のうえ　　さんぬ　けんぽうねんちゅう　いご　　 かく　 さかい　をい　　こ　　　へんたびたび　およ　　　　うんぬん
三河前司教隆 勘文を進むと云云。漢家の例有る之上、去る 建保年中 以後、此の境に於て此の變度々に及ぶと云云。

現代語建長四年(1252)二月大二十八日壬午。空は晴です。午後4時頃、腰越の海上から和賀江島港まで、海の色が真っ赤で血のようです。広さは三丈9m程です。晩になって消えてしまいました。
三河前司清原教隆が上申を出しました。中国の古い例をがありまして、その上去る建保年中以後、この鎌倉境においてこのような変異がたびたびある。との事です。

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