吾妻鏡入門第四十二巻

建長四年(1252)七月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 うまのこく　あいだのじょうすけよしかげ　つまおなご　　へいさん　　　うんぬん　　ごう　　ほりうちどの　 これなり
建長四年(1252)七月大四日丙戌。天�ﾘ。午刻、 秋田城介義景が 妻女子を平産すと云云。号を堀内殿�@は是也。」

きょう　　こさむらいどころ　しき じょうじょうこれ　さだ　　らる　　　　うんぬん
今日、小侍所の式 條々 之を定め被ると云云。

参考�@堀内殿は、時宗の妻となり、北条時宗死後、出家して覚山志道尼となり、東慶寺を建立したと伝えられる。

現代語建長四年(1252)七月大四日丙戌。空は晴です。昼の12時頃、秋田城介安達義景の妻が女の子を安産しましたとさ。名を堀内殿となるのがこの子です。」
今日、宗尊親王将軍家の身の回りの世話をする小侍所の条文の規則を決めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さんぬ　つき にじうさんにち　かんう　いご　　えんかん またすうじつ　およ
建長四年(1252)七月大六日戊子。去る月 廿三日の甘雨以後、炎旱 又數日に及ぶ。

よっ　　　きう　　　こと　しょうちょうじゅいん　　ようふくじ　　みょうおういんら　 おお　　らる　　　ゆきかた　かげよりこれ　 ぶぎょう　　　　うんぬん
仍て祈雨の事、勝長壽院・永福寺・明王院等に仰せ被る。行方・景頼之を奉行すと云云。

現代語建長四年(1252)七月大六日戊子。先月23日のありがたい雨の後、日照りが又数日にもなります。それで雨乞いの祈りを勝長寿院・永福寺・五大堂明王院に命じました。二階堂行方と武藤景頼が指揮担当だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くも　　　　こさめ　うるお　あら
建長四年(1252)七月大八日庚寅。陰り。小雨潤し洒う。

さるのこく　　しょうぐんけ おんかたたが　　　ため　　うひょうえのかみのりさだあそん　いずみがやつてい　〔ひごろしんぞう　　〕　　　　かりざ　に い　　　たま
申刻、將軍家 御方違への爲、右兵衛督教定朝臣 が　泉谷亭 〔日來新造す〕の假座于入り御う。

おんいで　ぎょうれつ
御出の行列

　ま　　おんこし　〔おんみす　　あ　　　らる　　〕
先ず御輿〔御簾を上げ被る〕

ぎょけんやく　ひと　　 おれえぼし
御劔役の人、折烏帽子

　　さがみうこんたいふしょうげんときさだ　　こうづけじうろうともむら
　相摸右近大夫將監時定　上野十郎朝村

　　かとうさぶろうかげつね　　　　　　　　　　 むとうしちろうかねより
　加藤三郎景經　　　　　武藤七郎兼頼

　　たけだのごろしちろうまさひら　　　　　　しきぶのひょうえたろうみつまさ
　武田五郎七郎政平　　　式部兵衛太郎光政

　　なんぶまたじろうときざね　　　　　　　　ぶんごさぶろうさえもんのじょうただとき
　南部又次郎時實　　　　豊後三郎左衛門尉忠時

　　といのしろうさねつな　　　　　　　　　　　おおいずみくろうながうじ
　土肥四郎實綱　　　　　大泉九郎長氏

　　うながみいやじろうたねかげ
　海上弥次郎胤景

　　　　　　いじょうひたたれ　　おれえぼし　　　つ　　　　たいけんせし　　　　おんこし　 さゆう に なら　　ある
　　　已上直垂・折烏帽子を着け、帶劔令め、御輿の左右于列び歩く。

つぎ　おんうしろ
次に御後

　　さいしょうちゅうじょう〔あきかたきょう〕　　　　うひょうえのかみ　〔のりさだあそん　いじょう　ほい　　　きば　〕
　宰相中將〔顯方卿〕　　 右兵衛督〔教定朝臣已上布衣に騎馬〕

　　むつかもんのすけさねとき　　　　　　　　じょうのくろうやすもり　〔いじょうおんこしよせ　　たてえぼし　〕
　陸奥掃部助實時　　　　城九郎泰盛〔已上御輿寄に立烏帽子〕

　　とおとうみのかみときなお　　　　　　　　　あしかがたろういえうじ
　遠江守時直　　　　　　足利太郎家氏

　　むついやしろうときもち　　　　　　　　　　さきのでわのかみながむら
　陸奥弥四郎時茂　　　　前出羽守長村

　　おおくらごんのしょうゆうともひろ　　　　　さきのいずみのかみゆきかた

　大藏權少輔朝廣　　　　前和泉守行方

　　さきのいきのかみやすつな　　　　　　　　さきのみかわのかみよりうじ

　前壹岐守泰綱　　　　　前三河守頼氏

　　さきのえっちゅうのかみよりなり　　　　　　さきのいせのかみゆきつな

　前越中守頼業　　　　　前伊勢守行綱

　とおとうみろくろうさえもんのじょうときつら
　遠江六郎左衛門尉時連

　　　　とおとうみじろうさえもんのじょうさわ　 もう　 のあいだ　　そ　　ためべつ　　　 おお　　　 よっ　　　ぐぶ
　　遠江次郎左衛門尉障り申す之間、其の爲別なる仰せに依て供奉す

　　むとうさえもんのじょうかげより　　　　　　 おおそねさえもんのじょうながやす
　武藤左衛門尉景頼　　　大曽祢左衛門尉長泰

　　　　　　　いじょうおれえぼし　　 ひたたれ　　 きば
　　　已上折烏帽子に直垂。騎馬す。

つぎ　　にょぼうごし
次に女房輿

　　ひがしのおんかた
　東御方

　　いちじょうのつぼね
　一條局

　　べっとうのつぼね
　　別當局

　　　　いじょうこれ　　ひ　　　つら　　　おのおの　さむらい　ふたり　〔　ひたたれ　　たてえぼし　〕　こしょう
　　以上之を舁き連ぬ。　各　侍　二人〔直垂に立烏帽子〕扈從す

つぎ　　ぞうしら
次に雜仕等

現代語建長四年(1252)七月大八日庚寅。曇りです。小雨がしょぼしょぼと地を洗ってます。午後4時頃、宗尊親王将軍家の方角替えのため、右兵衛督教定さんの泉谷の屋敷〔最近新築しました〕の仮屋へ入られました。
お出ましの行列
まず輿〔御簾を上げています〕
太刀持ちの人、折烏帽子
　相模右近大夫将監北条時定　上野十郎結城朝村
　加藤三郎景経　　　　　　　武藤七郎兼頼
　武田五郎七郎政平　　　　　式部兵衛太郎伊賀光政
　南部又次郎時実　　　　　　豊後三郎左衛門尉島津忠時
　土肥四郎実綱　　　　　　　大泉九郎長氏
　海上弥次郎胤景
　　　　以上の人は、鎧直垂に折烏帽子を着け、太刀を佩いて、輿の左右に並んで歩きます。
次に将軍の後
　宰相中将顕方　　　　　　　右兵衛督〔教定さん、以上は正装の布衣で乗馬です〕
　陸奥掃部助実時　　　　　　城九郎安達泰盛〔以上は、輿に寄って立烏帽子です〕
　遠江守北条時直　　　　　　足利太郎家氏
　陸奥弥四郎時茂　　　　　　前出羽守小山長村
　大蔵権少輔結城朝広　　　　前和泉守二階堂行方
　前壱岐守宇都宮泰綱　　　　前三河守新田頼氏
　前越中守(宇都宮)横田頼業　前伊勢守二階堂行綱
　遠江六郎左衛門尉佐原時連
　　遠江次郎左衛門尉佐原光盛が支障を云ってきたので、そのために特別な仰せによってお供をしました
　武藤次郎左衛門尉景頼　大曽祢左衛門尉長泰
　　　以上は折烏帽子に鎧直垂で乗馬です
次に女官達の輿
　東の御方
　一条局
　別当局
　　以上の輿を列に並んでいます。それぞれ侍二人〔鎧直垂に立烏帽子〕がお供をしてます
次に荷物運び達

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 みのこく　 しょうぐんけ かめがやつよ　　かんご　　　ぐぶにん　きのう　　おな
建長四年(1252)七月大九日辛夘。天�ﾘ。巳刻、將軍家　龜谷 自り還御。供奉人昨日に同じ。

きょう　　　しんごしょ　　かどかど じょうとう　　　 また　　 とうじ　　　 ごしょ　〔そうしゅうおんてい〕　　みなみめん　ひらもん　 こぼ　　　　はじ　　　　もん　 しんぞうさる　　　　これ　　そうしゅう　　ごさた　なり
今日、新御所の門々上棟す。亦、當時の御所〔相州御亭〕の南面の平門を壞ち、始めて門を新造被る。是、相州の御沙汰也。

現代語建長四年(1252)七月大九日辛卯。空は晴です。午前10時頃、宗尊親王将軍家は、亀谷からお戻りです。お供は昨日と同じです。
今日、新築御所の門などの棟上げ式です。また、現在いる御所〔時頼さんの屋敷〕の南面の平門を分解して、初めて御所用の門を新築しました。これは時頼さんの指図です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 しょや　よ　　はなは あめ　 そそ　　　　ごと　　　　きんごく かんばつのあいだ　　せいびょう ことごと　おうこ　　　みんしょこれ　 うれわざる　な
建長四年(1252)七月大十日壬辰。天�ﾘ。初夜自り甚だ雨、沃ぐが如し。近國 旱魃之間、 ��苗 悉く 黄枯す。民庶之を愁不は莫し。

よっ　　きょう　　あいだのじょうすけぶぎょう　な　　　　　かさ　　　　たんき　　ぬき　　　　べ　　　のむね　つるがおかべっとう ほういんりゅうべん　おお　　らる
仍て今日、秋田城介奉行と爲し、重ねて丹祈を抽んず可し之旨、 鶴岡別當 法印隆辨に 仰せ被る。

すなは　りょうじょう　もう　　　とうぐうはちまんほうぜん　をい　　　　しょしんぐ　　しゅう　　　　 かんげんら　あ
即ち領状を申し、當宮八幡寳前に於て、諸神供を修す。管絃等有り。

また　　みずがきのうち　　をい　　　　て　　　よ　　さいしょうおうきょう　　こうざる　　　　そ　　　ご　ほどな　　　あめふ　　　　　うんぬん
又、瑞籬之内に於て、手づ自り最勝王經を講被る。其の後程無く雨降ると云云。

現代語建長四年(1252)七月大十日壬辰。空は晴です。宵の口午後8時頃から大雨、まるで流しているようです。関東では日照りだったので、青い苗が皆枯れてしまいました。民百姓で嘆かない者はいません。それで、秋田城介安達義景を担当にして、続いてお祈りに励むように、鶴岡八幡宮秘湯法印隆弁に命令しました。直ぐに承知をして、鶴岡八幡宮の神殿前で神様への供養を勤めました。雅楽の演奏も奉納しました。また、瑞垣の中で自ら最勝王経を講じました。その後、まもなく雨が降ったんだそうな。

参考初夜は、前の晩の八時。戌(いぬ)の刻。現在の午後8時ごろ。宵の口。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　らいげつ　　ほうじょうえごさんぐう　　　ぐぶにん　　さんじょうめぐ　のところ　ことごと　もっ　 すい　たてまつ　あ
建長四年(1252)七月大十四日丙申。來月の放生會御參宮の供奉人の散状廻る之處、悉く以て推し奉り有り。

ただ　おおくらごんのしょうゆうともひろ　　あわぜんじともむら　　りょうにんばか　　　　さわ　　もう　　　　うんぬん
但し 大藏權少輔朝廣 ・ 阿波前司朝村の兩人許りが障り申すと云云。

また　　　ごはいが　　　ぐぶにん　　こと　　おな　　　　もっ　　これ　　あいもよ　 さる　　　　きた　 はちがつごはいが　あ　　べ
又、御拝賀の供奉人の事、同じく以て之を相催お被る。來る八月御拝賀有る可し。

おのおの　ほう　　ごと　　うのこくいぜん　　さんきんさる　　べ　　　のじょう　　おお　　　　よっ　　まわ　ところ　くだん　ごと　　てへ　　　　　さんじょうおく　　の　　　らる　ところなり
　各　法の如く卯刻以前に參勤被る可し之状、仰せに依て廻す所、件の如し者れば、散状奥に載せ被る所也。

現代語建長四年(1252)七月大十四日丙申。来月の生き物を放して原罪する儀式の放生会お詣りのお供の回覧を回したところ、皆全員が招致するとありました。但し、大蔵権少輔結城朝広と阿波前司結城朝広の両人が支障があると云ってるそうな。又、社殿へのお参りのお供に付いて、同様にこれを催促しました。
来る8月お参りをします。それぞれ正確に午前6時前に出勤するようにとの手紙を、仰せによって将軍の回した所、そのとおりで良いと云われたので、回覧の奥書に載せたのです。

参考散状は、回覧。参考進奉は、奉じるを進めるで承知。参考如法は、法の如くは、正確に

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また　　おんかたたが　あ　　　　　きば　　　　ぐぶにん は　せんど　のぎ　　たが　　な
建長四年(1252)七月大廿日壬寅。又、御方違へ有り。騎馬の供奉人者先度之儀に違い無し。

かちしゅう　のうち　　こうずけしちろうさえもんのじょう　　でわのさぶろうさえもんのじょうら　さわ　　　　もう
歩行衆之中、上野七郎左衛門尉・出羽三郎左衛門尉等 障りを申す。

えっちゅうしろうさえもんのじょう はじ　は　すす　たてまつ　 のち　 また　　さわ　　　　もう　　のあいだ　　しゅつごのとき　　のぞ　　　　かとうさぶろう　　めし　ぐさる　　　　うんぬん
越中四郎左衛門尉 始め者進め奉り、後に又、障りを申す之間、出御之時に臨み、加藤三郎を召具被ると云云。

現代語建長四年(1252)七月大二十日壬寅。また、方角替えがありました。乗馬でお供をするものは、前回と変わりありません。歩きの連中の内、上野七郎左衛門尉結城と出羽三郎左衛門尉二階堂行資が支障を云ってます。越中四郎左衛門尉(宇都宮)横田時業は初めは承知してましたが、後になって支障を云いだしましたので、出発の時に加藤三郎景経を呼んでお供にしましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　ごしょ　 いしずえら　す
建長四年(1252)七月大廿一日癸卯。天�ﾘ。御所の礎等を居う。

現代語建長四年(1252)七月大二十一日癸卯。空は晴です。建設中の御所の礎石をすえました。

参考礎は、礎石。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　よ　　　い　　　あめふ　　　　とらのこくおおぢしん
建長四年(1252)七月大廿三日乙巳。天�ﾘ。夜に入り雨降る。寅尅大地震。」

きょう　　しょうぐんけ かたたが　　　　 ぐぶにん　まえ　　ごと
今日、將軍家御方違へ。供奉人前の如し。

ぎょけんやく
御劔役

　　とおとうみろくろうのりとき
　遠江六郎教時

　かち
歩行

　　とおとうみじうろうよりつら　　　　　　　　　つちやしんざぶろうみつとき
　遠江十郎頼連　　　　　土屋新三郎光時

　　おおそねたろうながつね　　　　　　　　　おのでらしんさえもんのじょうゆきみち
　大曽祢太郎長經　　　　小野寺新左衛門尉行通

　　むとうじろうひょうえのじょうよりやす　　　しんじさぶろうさえもんのじょうむねなが
　武藤次郎兵衛尉頼泰　　進士三郎左衛門尉宗長

　　かまたさぶろうよしなが　　　　　　　　　　かとうさぶろうかげつね
　鎌田三郎義長　　　　　加藤三郎景經

　　　　　　 いじょう　おんが　　さゆう
　　　以上御駕の左右

つぎ　おんうしろ　〔　きば　〕
次に御後〔騎馬〕

　　むさしぜんじともなお　　　　　　　　　　　びぜんぜんじときなが
　武藏前司朝直　　　　　備前々司時長

　　むつかもんのすけさねとき　　　　　　　　でわぜんじゆきよし
　陸奥掃部助實時　　　　出羽前司行義

　　いきのかみもとまさ　　　　　　　　　　　　 いずみぜんじゆきかた
　壹岐守基政　　　　　　和泉前司行方

　　いがぜんじときいえ　　　　　　　　　　　　ちくぜんぜんじゆきやす
　伊賀前司時家　　　　　筑前々司行泰

　　のとうこんくらんどなかとき　　　　　　　　 おきほうがんやすきよ
　能登右近藏人仲時　　　隱岐判官泰�C

　　おやまごろうさえもんのじょうときなが　　とおとうみじろうさえもんのじょうみつもり
　小山五郎左衛門尉時長　遠江次郎左衛門尉光盛

　　いずみごろうさえもんのじょうまさやす　　じょうのじろうよりかげ
　和泉五郎左衛門尉政泰　城次郎頼景

　　あそぬまこじろうみつつな　　　　　　　　 ぶんごしろうさえもんのじょうただつな
　阿曽沼小次郎光綱　　　豊後四郎左衛門尉忠綱

　　むとうさえもんのじょうかげより　　　　　　とうのなかつかさしょうゆうたねしげ
　武藤左衛門尉景頼　　　東中務少輔胤重

現代語建長四年(1252)七月大二十三日乙巳。空は晴です。夜になって雨が降りました。午前4時頃大地震です。」
今日、宗尊親王将軍家方角替えです。お供の人は前と同じです。
太刀持ち　遠江六郎教時
歩きの人
　遠江十郎頼連　　　　土屋新三郎光時
　大曽祢太郎長経　　　小野寺新左衛門尉行通
　武藤次郎兵衛尉頼泰　進士三郎左衛門尉宗長
　鎌田三郎義長　　　　加藤三郎景経
　　　以上が乗馬の将軍の左右です
次に将軍の後ろ〔乗馬〕
　武蔵前司北条朝直　　　　備前前司北条時長
　陸奥掃部助北条実時　　　出羽前司二階堂行義
　壱岐守後藤基政　　　　　和泉前司二階堂行方
　伊賀前司時家　　　　　　筑前前司二階堂行泰
　能登右近蔵人仲時　　　　隠岐判官佐々木泰清
　小山五郎左衛門尉時長　　遠江次郎左衛門尉佐原光盛
　和泉五郎左衛門尉天野政泰　城次郎安達景頼
　阿曾沼小次郎光綱　　　　豊後四郎左衛門尉島津忠綱
　武藤左衛門尉景頼　　　　東中務少輔胤重

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 あめふ　　　　 そうたん　おうしゅう　おんかたたが　ごしょ　　まい　　せし　　たま　　　　そ　　 ほか　 ひとびとぐんさん
建長四年(1252)七月大廿四日丙午。雨降る。早旦、奥州 御方違へ御所に參り令め給ふ。其の外の人々群參す。

みのこくはれ　ぞく　　　すなは　かんご　のぎ　 あ
巳刻�ﾘに属す。則ち還御之儀有り。

現代語建長四年(1252)七月大二十四日丙午。雨降りです。早朝に奥州北条重時さんが御所へお越しになりました。その他の人々も群れ集まりました。午前10時頃晴れてきました。すぐにお帰りの儀式です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そうしゅう　　ほくとぐ　　しゅうさる　　　　これ　　しつけかいにん　おいのりなり
建長四年(1252)七月大廿八日庚戌。相州 北斗供を修被る。是、室家懷姙の御祈也。

現代語建長四年(1252)七月大二十八日庚戌。時頼さんは、北斗星の供養を勤めさせました。これは、奥さんが妊娠したのでそのお祈りです。

八月へ

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