吾妻鏡入門第四十二巻

建長四年(1252)十一月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　さんぬ　つき にじうさんにち　そう　 こと じしょ とうらい　　　ほういんりゅうべん　ごんのそうじょう　ぶ
建長四年(1252)十一月大三日癸未。天�ﾘ。去る月 廿三日、僧の事除書到來す。法印隆辨、權僧正に補す。

さんぽんしんのうおいの　　　しょうのよし　　しりつけ　　あ　　　　うんぬん
三品親王御祈りの賞之由、尻付に有りと云云。

現代語建長四年(1252)十一月大三日癸未。空は晴です。先月23日に坊さんの人事異動書が来ました。法印隆弁は権僧正に任命されました。宗尊親王将軍家の病気治療の祈祷の賞だと、理由が書かれているそうな。

参考尻付は、叙任や補任の理由付けを書くこと。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　おうしゅう　そうしゅう　〔いじょう　ほい　〕　まんどころ　さん　 せし　 たま
建長四年(1252)十一月大四日甲申。天�ﾘ。奥州・相州〔已上布衣〕政所へ參じ令め給ふ。

ひょうじょうしゅうら　ふさん　 さんこんなら　　　ぎょけん　 おんうまれい　 ごと　　　　これしんぞうさる　　　 よっ　　なり
 評定衆等 不參。三献并びに御劔・御馬例の如し。是新造被るに依て也。

現代語建長四年(1252)十一月大四日甲申。空は晴です。奥州北条重時・相州北条時頼〔以上布衣〕が政務事務所へ参りました。政務会議構成員は来ません。三々九度・刀と馬の献上はいつも通りです。これは、新築したからです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんぞう　　ごしょ　　　をい　　　　ちんたく　 ほう　 おこなはれ　　つるがおかべっとう しんそうじょうりゅうべん　これ　　ほうし
建長四年(1252)十一月大九日己丑。新造の御所に於て、鎭宅の法を行被る。 鶴岡別當　新僧正隆辨、 之を奉仕す。

現代語建長四年(1252)十一月大九日己丑。新築の御所で、家を鎮めるまじないを行いました。鶴岡八幡宮筆頭新僧正隆弁がこれを勤めました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　しんごしょ　　おんじぶつどう　　ごほんぞん　　しゃかぞう　　 やす　　　　おかる
建長四年(1252)十一月大十日庚寅。天�ﾘ。新御所の御持佛堂に御本尊の釋迦像を安んじ置被る。

現代語建長四年(1252)十一月大十日庚寅。空は晴です。新築御所の将軍の守り本尊を祀る持仏堂に本尊の釈迦如来像の開眼供養を行いました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　てんがいかいせい　さるのこく　しょうぐんけしんごしょ　　　　ごいし　なり
建長四年(1252)十一月大十一日辛夘。天顏快霽。 申尅、將軍家新御所へ御移徙也。

じこく　　おくるま　〔ひさし〕　を　しんでん　　　〔そうしゅうおんてい〕　なんめんつまど　ま　　　よ　　　　　　さいしゅうちゅうじょう　〔あきかたきょう　のうし　〕　おんみすどころ　こうじられ
時刻に御車〔庇〕於寢殿の〔相州御亭〕南面妻戸の間に寄せる。宰相中將 〔顯方卿。直衣〕御簾所に候被る。

だいぜんのすけためちかあそん　〔そくたい〕　にちじ　　かんもん　　じさん
 大膳亮爲親朝臣 〔束帶〕日時の勘文を持參す。

ごらんののち　　ひがしつまど　 うち　 さんにゅう　へんばい　つと　　　すなは　　ごい　　 たま　　　 ながいのくらんど これ　　えき
御覽之後、東妻戸の内に參入し反閇を勤む。則ち御衣を給ふ。長井藏人 之を役す。

　そ　　ご　しゅつご　〔　おんえぼし　　　　のうし　〕
其の後出御〔御烏帽子。直衣〕。

　ぐぶにん
供奉人

さきがけ　〔　いかん〕
前駈〔衣冠〕

　　さきのくないだいゆうみつもと　　　　　　　　 するがしんだいぶとしさだ
　前宮内大輔光度　　　　　駿河新大夫俊定

　　さこんたいふしょうげんまさしげ　　　　　　　ながいのくらんど
　左近大夫將監政茂　　　　長井藏人

　　のとのうこんくらんどなかとき　　　　　　　　　あきのさこんくらんどしげちか
　能登右近藏人仲時　　　　安藝左近藏人重親

つい　てんじょうびと　〔　いかん　〕
次で殿上人〔衣冠〕

　　かざんいんちゅうじょうながまさあそん　　　 いよのちゅうじょうきんなおあそん
　花山院中將長雅朝臣　　　伊與中將公直朝臣

　　うひょうえのかみのりさだあそん　〔そくたい〕　おわりのしょうゆうきよもとあそん
　右兵衛督教定朝臣〔束帶〕 尾張少輔�C基朝臣

　　いちじょうしょうしょうよしきよあそん　　　　　 あののしょうしょうきんなかあそん
　一條少將能�C朝臣　　　　阿野少將公仲朝臣

おくるま
御車

　　じょうのしろうときもり　　　　　　　　　　　　　　でわのしちろうゆきより
　城四郎時盛　　　　　　　出羽七郎行頼

　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき　　 ちくぜんさぶろうゆきざね
　和泉次郎左衛門尉行章　　筑前三郎行實

　　かとうｓばうろうかげつね　　　　　　　　　　　むとうのじろうひょうえのじょうよりやす
　加藤三郎景經　　　　　　武藤次郎兵衛尉頼泰

　　とおとうみじうろうよりつら　　　　　　　　　　　 ささきのいやしろうさえもんのじょうやすのぶ
　遠江十郎頼連　　　　　　佐々木弥四郎左衛門尉泰信

　　しぶやのさえもんのじょうたけしげ　　　　　 ひごのしろうひょうえのじょうゆきさだ
　澁谷左衛門尉武重　　　　肥後四郎兵衛尉行定

　　ひらがしんざぶろうこれとき　　　　　　　　　 かまたのひょうえさぶろうよしなが
　平賀新三郎惟時　　　　　鎌田兵衛三郎義長

　　おおいずみくろうながうじ　　　　　　　　　　　 おおそねさえもんたろうながやす
　大泉九郎長氏　　　　　　大曽祢左衛門太郎長泰

　　うなかみいやたろうたねかげ　　　　　　　　　　といのさえもんしろうさねつな
　海上弥次郎胤景　　　　　土肥左衛門四郎實綱

　　たけだのしちろうまさひら 〔いじょうひたたれ　　き　　つるぎ　　お　　　　　　おくるま　　　さゆう　　　そうら　　〕
　武田七郎政平〔已上直垂を着て劔を帶び、御車の左右に候う〕

つい　ぎょけんやく
次で御劔役

　　さきのうまごんのかみ
　前右馬權頭

つい　 くぎょう
次で公卿

　　つちみかどさいしょうちゅうじょう　〔あきかたきょう〕
　土御門宰相中將　〔顯方卿〕

つい
次で

　　おわりぜんじときあき　　　　　　　　　　　　　おな　　　　じろうきんとき
　尾張前司時章　　　　　　同じき次郎公時

　　かもんのすけさねとき　　　　　　　　　　　　 とおとうみろくろうのりとき
　掃部助實時　　　　　　　遠江六郎教時

　　あしかがのたろういえうじ　　　　　　　　　　　おな　　　　さぶろうとしうじ
　足利太郎家氏　　　　　　同じき三郎利氏

　　むつのいやしろうときもち　　　　　　　　　　　えちごのごろうときいえ
　陸奥弥四郎時茂　　　　　越後五郎時家

　　ととうみのたろうきよとき　　　　　　　　　　　 かずさのさぶろうみつうじ
　遠江太郎�C時　　　　　　上総三郎滿氏

　　しもつけぜんじやすつな　〔うつのみや〕　　　　あいだのじょうすけよしかげ
　下野前司泰綱〔宇都宮〕　　秋田城介義景

　　おな　　　じょうのくろうやすもり　　　　　　　さきのおくらごんのしょうゆうともひろ　〔　ゆうき　〕
　同じき城九郎泰盛　　　　前大藏權少輔朝廣　〔結城〕

　　さきのだざいのしょうにためすけ　　　　　　　あきのぜんじちかみつ
　前太宰少貳爲佐　　　　　安藝前司親光

　　みかわのぜんじよりうじ　　〔　にった　〕　　　　 いきのぜんじやすつな　　〔　ささき　〕
　三河前司頼氏〔新田〕　　 壹岐前司泰綱〔佐々木〕

　　えっちゅうぜんじよりなり　　　　　　　　　　　おおすみぜんじただとき　〔　しまづ　〕
　越中前司頼業　　　　　　大隅前司忠時〔嶋津〕

　　いきのかみもとまさ　　〔　ごとう　〕　　　　　　　 いがぜんじときいえ
　壹岐守基政〔後藤〕　　　 伊賀前司時家

　　びんごのぜんじやすもち　　　　　　　　　　　 いせぜんじゆきつな　〔にかいどう〕
　備後前司康持　　　　　　伊勢前司行綱〔二階堂〕

　　むとうさえもんのじょうかげより　　　　　　　　　おおそねさえもんのじょうながやす
　武藤左衛門尉景頼　　　　大曾祢左衛門尉長泰

　　いやじろうさえもんのじょうちかもり　　　　　　かじわらのうえもんのじょうかげとし
　弥次郎左衛門尉親盛　　　梶原右衛門尉景俊

　　いずみのごろうさえもんのじょうまさやす　　　おおそねじろうさえもんのじょうもりつね
　和泉五郎左衛門尉政泰　　大曽祢次郎左衛門尉盛經

　　おきのさぶろうさえもんのじょうゆきうじ　　　 でわのじろうさえもんのじょうゆきあり
　隱岐三郎左衛門尉行氏　　出羽次郎左衛門尉行有

　　こうづけのごろうひょうえのじょうしげみつ　　 ひたちのじろうひょうえのじょうゆきかつ
　上野五郎兵衛尉重光　　　常陸次郎兵衛尉行雄

　　おのでらのしろうさえもんのじょうみちとき　　かのうのごろうさえもんのじょうためひろ
　小野寺四郎左衛門尉通時　狩野五郎左衛門尉爲廣

　　ちくぜんのじろうさえもんのじょうゆきより　　 おおすがのじろうさえもんのじょうたねうじ
　筑前次郎左衛門尉行頼　　大須賀次郎左衛門尉胤氏

　　おださえもんのじょうときとも　　　　　　　　　 しきぶのひょうえたろうもとまさ
　小田左衛門尉時知　　　　式部兵衛太郎元政

　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　 ぜんのうえもんのじょうやずなが
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　善右衛門尉康長

　　ほうきさえもんさぶろうきよつね　　　　　　　 ちょうのうたさえもんのじょう
　伯耆左衛門三郎�C經　　　長雅樂左衛門尉

　　　　　　　いじょう　ほい　　　げぐく
　　　已上布衣に下括り

みなみもんがい　いた　　おんが　　おろ　　　ためちかあそん こ　　ところ　 さんかい　　　またへんばい　そうら　　　　はし　ま　よ　　　お　　たま
 南門外に 到り御駕を税す。爲親朝臣此の所に參會す。亦反閇に候う。階の間自り下り御う。

参考階間は、「はしのま」で階隠しの間(はがくしのま)とも謂われ、階段を上った上段、簀子に面する庇の間。階隠しは、社殿や寝殿造りの殿舎で、正面の階段上に、柱を2本立てて突出させた庇。社殿では向拝(こうはい)ともいう。

ためちかろく　　たま　　　　　えき　　ひとまえ　　おな　　　　またあめうじ　 ひかれ　　　 いずみのごろうさえもんのじょうまさやす これ　　えき
爲親祿を給はる。役の人前に同じ。又黄牛を牽被る。和泉五郎左衛門尉政泰 之を役す。

おうしゅう　そうしゅう　〔　ほい　〕　あらかじ　さん　　こうぜられ
奥州。相州〔布衣〕豫め參じ候被る。

　ささきのたいふほうがんうじのぶ　　　〔　ほい　〕　　ささきおきのほうがんやすきよ　　〔しろあお〕　みなみもんない　とうざいわき　そうら　　　つい　ひとびとていじょう　ちゃくざ
佐々木大夫判官氏信〔布衣〕・佐々木隱岐判官泰�C〔白襖〕南門内の東西脇に候う。次で人々庭上に着座す。

　そ　　ご　しょうぐんけ しゅつご　　つちみかどさいしょうちゅうじょう おんみす　あ　　 らる　　　　しばらくし　　てそうしゅう　ざ　 た　　　　ごぜん　　すのこ　　さん　　たま
其の後將軍家 出御。　土御門宰相中將　御簾を上げ被る。少時し而相州座を起ち、御前の簀子に參じ給ふ。

いせぜんじゆきつな　　　どうした　　た　　 きっしょ　 ささ　　すす　　　　そうしゅうこれ　　と　　　ごぜん　　おかる
伊勢前司行綱、堂下に立ち吉書を捧げ進む。相州之を取り御前に置被る。

ごらんの　のちゆきつな　　かえ　　くだ　　　の　　 くだ　　せし　 たま　　　　つい　たそがれ　 およ　　　 ひょうぎ　 はじ　　　　おこなはれ
御覽之後行綱に返し下し、退き下り令め給ふ。次で黄昏に及び、評議を始めて行被る。

現代語建長四年(1252)十一月大十一日辛卯。空は快晴です。午後4時頃、宗尊親王将軍家が新築の御所へ引っ越しです。時刻になったら牛車〔物見に庇着き〕を寝殿〔時頼さんの屋敷〕の南面の上がり框の部屋に寄せました。宰相中将〔顕方さんは、公卿装束の直衣〕御簾の所に控えています。大膳亮為親さん〔正装の束帯〕縁起の良い日時を書いた上申書を持ってきました。将軍がご覧になった後、東の扉の内側へ入って、お祓いの踊り的足踏みを勤めました。すぐに着物を与えました。長井蔵人泰元がこの役をしました。
其の後出発です〔烏帽子に公卿装束の直衣〕

参考直衣は、貴族の普段着。公卿装束。参考束帯は、公卿の正装(昼装束)。参考衣冠は、貴族の宮中勤務服。参内用(宿直装束)。

お供の人

先払い〔衣冠〕
　前宮内大輔光度　　　　駿河新大夫俊定
　左近大夫将監那波政茂　長井蔵人泰元
　能登右近蔵人　　　　　安芸左近蔵人重親

次に殿上人〔衣冠〕
　花山院中将長雅さん　　伊予中将公直さん
　右兵衛督教定さん〔束帯〕　尾張少輔清基さん
　一条少将能清さん　　　阿野少将公仲さん

牛車

　城四郎安達時盛　　　　出羽七郎二階堂行頼
　和泉次郎左衛門尉二階堂行章　筑前三郎二階堂行実
　加藤三郎景経　　　　　武藤次郎兵衛尉頼泰
　遠江十郎佐原頼連　　　佐々木弥四郎左衛門尉泰信
　渋谷左衛門尉武重　　　肥後四郎兵衛尉大見行定
　平賀新三郎惟時　　　　鎌田兵衛三郎義長
　大泉九郎長氏　　　　　大曽祢左衛門太郎長泰
　海上弥次郎胤景　　　　土肥左衛門四郎実綱
　武田七郎政平〔以上は鎧直垂を着て太刀を佩き、牛車の左右に控える〕

次いで太刀持ち
　前右馬権頭北条政村

次に公卿
　土御門宰相中将〔顕方卿〕

次いで
　尾張前司北条時章　　　　　　同次郎北条公時
　掃部助北条実時　　　　　　　遠江六郎北条教時
　足利太郎家氏　　　　　　　　同三郎足利利氏
　陸奥弥四郎時茂　　　　　　　越後五郎時家
　遠江太郎清時　　　　　　　　上総三郎足利満氏
　下野前司宇都宮泰綱　　　　　秋田城介安達義景
　同城九郎安達泰盛　　　　　　前大蔵権少輔結城朝広
　前太宰少弐狩野為佐　　　　　安芸前司親光
　三河前司新田頼氏　　　　　　壱岐前司佐々木泰綱
　越中前司(宇都宮)横田頼業　　大隅前司島津忠時
　壱岐守後藤基政　　　　　　　伊賀前司時家
　備後前司三善康持　　　　　　伊勢前司二階堂行綱
　武藤左衛門尉景頼　　　　　　大曽祢左衛門尉長泰
　弥次郎左衛門尉親盛　　　　　梶原右衛門尉景俊
　和泉五郎左衛門尉天野政泰　　大曽祢次郎左衛門尉盛経
　隠岐三郎左衛門尉二階堂行氏　出羽次郎左衛門尉二階堂行有
　上野五郎兵衛尉結城重光　　　常陸次郎兵衛尉二階堂行雄
　小野寺四郎左衛門尉道時　　　狩野五郎左衛門尉為広
　筑前次郎左衛門尉二階堂行頼　大須賀次郎左衛門尉胤氏
　小田左衛門尉時知　　　　　　式部兵衛太郎伊東元政
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　三善右衛門尉康長
　伯耆左衛門三郎葛西清経　　　長谷部雅楽左衛門尉朝連
　　　以上は、布衣に袴は足首絞り

南門の外まで来て、牛車から(階の間へ)降ります。大膳亮為親さんがその場所に合わせて来て、またお祓いの踊り的足踏みを勤めました。為親は褒美を与えられました。この役は前と同じ人です。階段上の間から降りられました。また、牛車の牛を牽いていきました。和泉五郎左衛門尉天野政泰が担当しました。
奥州重時さんと相州時頼さんは、前もって来ていました。佐々木大夫判官氏信〔武家の礼装の布衣〕・佐々木隠岐判官泰清〔表裏とも白色の狩衣〕は、南門の内側の東西の脇に控えています。ついで人々は庭の上に座りました。
その後、宗尊親王将軍家がお出ましです。土御門宰相中将顕方が御簾を上げました。少しして時頼さんは席を立って、将軍の御前の濡れ縁へ行きました。伊勢前司二階堂行綱は、建物前の地面に建ったまま吉書を捧げて前へ出ました。時頼さんがこれを受け取って将軍の前へ置きました。
将軍は御覧になってから、行綱に返し渡し、奥へお下がりになられました。ついで夕方になって、政務会議を将軍交代後初めて行いました。

参考布衣は、狩衣で武家の束帯に次ぐ礼装。参考白襖は、表裏共に白の狩衣。

参考肩書きは、後日書き込まれたもの。参考黄牛（あめうじ）は、立派な牛。参考吉書は、１に神仏。２に春耕。３に秋穫。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　くもり　 さるのいっこく　はじ　　　 おんうまごらん
建長四年(1252)十一月大十二日壬辰。天�ﾘ。陰。申一刻。始めて御馬御覽。

さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　ぶぎょう　　な　　　　まり　　おんつぼ　　ひ　　　たてせし
薩摩七郎左衛門尉祐能　奉行と爲し、鞠の御坪に引き立令む。

また　おんくだしゅう　さだ　　らる　　　　こさむらいどころ　をい　　は　　いま　 ぞうひつされ　　　のあいだ　　みんまや　さうらいにつくべ　　　　ちゃくとうはにつうたるべ
又、御簡衆を定め被る。 小侍所に 於て者、未だ造畢被ざる之間、御厩の侍于 着可し。着到者二通爲可し。

いっつうは　　まいよ つね　　　ごしょ　　すのこ　　 をい　　 よ　　　もう　　 ののち　　ごぜん　　すす　　お　　　べ　　　　　いっつうは　そうしゅう　おんかた　 けん　　べ　　　　うんぬん
一通者、毎夜常の御所の簀子に於て讀み申す之後、御前に進め置く可し。一通者、相州の御方に献ず可しと云云。

また　　といげんざ　　けちばん　　おな　　さだ　　くださる　　　　かもんのすけさねときぬし これ　　ぶぎょう
又、問見參の結番、同じく定め下被る。 掃部助實時主 之を奉行す。

　　さだ
　定め

　　　　　　　といげんざ　　けちばん　　こと
　　　問見參の結番の事

　　いちばん　　う　とり
　一番　夘酉

　　　　　かじわらうえもんのじょう　　　　　　　なかやまさえもんのじょう
　　梶原右衛門尉　　　　中山左衛門尉

　　　　　いやじろうさえもんのじょう
　　弥次郎左衛門尉

　　　にばん　　たついぬ
　二番　辰戌

　　　　　じょうのじろう　　　　　　　　　　　　　ひごのじろうさえもんのじょう
　　城次郎　　　　　　　肥後次郎左衛門尉

　　　　　しなののしろうさえもんのじょう　　　しぶやのさえもんのじょう
　　信濃四郎左衛門尉　　澁谷左衛門尉

　　さんばん　　み　い
　三番　巳亥

　　　　　いずみのごろうさえもんのじょう　　　たけだのごろじろう
　　和泉五郎左衛門尉　　武田五郎次郎

　　　　　おやまのしちろう
　　小山七郎

　　よんばん　　ね　うま
　四番　子午

　　　　　おおそねじろうさえもんのじょう　　　おしだれくらんど
　　大曽祢次郎左衛門尉　押垂藏人

　　　　　えんどううえもんのじょう
　　遠藤右衛門尉

　　　ごばん　　うしひつじ
　五番　丑未

　　　　　ごとういきのかみ　　　　　　　　　　おな　　　　ごろうさえもんのじょう
　　後藤壹岐守　　　　　同じき五郎左衛門尉

　　　　　しきぶのひょうえたろう　　　　　　　ひらおかのさえもんのじょう
　　式部兵衛太郎　　　　平岡左衛門尉

　　ろくばん　　とらさる
　六番　寅申

　　　　　いがのじろうさえもんのじょう　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょう
　　伊賀次郎左衛門尉　　薩摩七郎左衛門尉

　　　　　むとうのしちろう
　　武藤七郎

現代語建長四年(1252)十一月大十二日壬辰。空は晴です。午後3時過ぎに、初めて幕府へ納付されてきた馬を見る儀式です。薩摩七郎左衛門尉伊東祐能が担当して、蹴鞠用の坪庭へ引いてきました。
出勤札を決めました。将軍の身の回りの世話をする者のたまり場の小侍所では、未だ完成していないので、馬屋番の侍だまりに着けなさい。出勤簿は二通作成しなさい。一通は、毎晩将軍が普段おられる座敷の濡れ縁で読んで、将軍の前へ置きなさい。一通は、時頼さんの所へ献上しなさいだとさ。
また、将軍への取次者の順番を同様にお決めになられました。掃部助北条実時さんが、担当です。

　決め事
　　　　将軍への取次の順番について
　一番　卯と酉の日
　　梶原右衛門尉景俊　　　中山左衛門尉
　　弥次郎左衛門尉親盛
　二番　辰と戌の日
　　城次郎頼景　　　　　　肥後次郎左衛門尉為時
　　信濃四郎左衛門尉二階堂行胤　渋谷左衛門尉武重
　三番　巳と亥の日
　　和泉五郎左衛門尉天野政泰　　武田五郎次郎信時
　　小山七郎宗光
　四番　子と午の日
　　大曽祢次郎左衛門尉盛経　　　押垂蔵人
　　遠藤右衛門尉
　五番　丑と未の日
　　後藤壱岐守基政　　　　　　　同五郎左衛門尉基隆
　　式部兵衛太郎伊賀光政　　　　平岡左衛門尉実俊
　六番　寅と申の日
　　伊賀次郎左衛門尉光房　　　　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　　武藤七郎兼頼

参考坪、壷は、三方以上に建物が有る庭。参考簡衆は、出勤札。参考着到は、着到状。出席届。参考問見参は、將軍への取次。見参を問う。
参考定は、壁書と思われる。参考城次郎は、後に霜月騒動で北条側についた。参考平岡は、政所寄人で得宗被官。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ
建長四年(1252)十一月大十三日癸巳。天�ﾘ。

　ごけにん　ら　　ほうこう　　こと　　まいにちこれ　 かんが　　 おな　　　　そ　　　きんぴ　　つ　　　　しょうばつ　　　さた あ　　　べ　　　のよし　　おお　 くださる　　　　うんぬん

御家人等の奉公の事、毎日之を勘へ、同じく其の勤否に就き、賞罰の沙汰有る可き之由、仰せ下被ると云云。

現代語建長四年(1252)十一月大十三日癸巳。空は晴です。御家人達の幕府への勤めについて、毎日これを観察し、その勤務状態によって、賞罰の判断をするようにと、仰せになれましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　 しんごしょ　　　ゆどのはじ　　なり　そうしゅうしゅうしせし　 たま
建長四年(1252)十一月大十四日甲午。天�ﾘ。新御所の湯殿始め也。相州出仕令め給ふ。

　いどう　　ただもちあそん　おんみょうじ　ためちかあそんなり　　いずみのぜんじゆきｋたきょう　　ぶぎょうたり
醫道は忠茂朝臣。陰陽師は爲親朝臣也。和泉前司行方今日の奉行爲。

現代語建長四年(1252)十一月大十四日甲午。空は晴です。新御所のお風呂始め式です。時頼さんも出勤してきました。医者は、丹波忠茂さん、陰陽師は安倍為親さんです。和泉前司二階堂行方が、今日の指揮担当です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　さきのだいぜんのすけためちか　おんいの　　はじ　　　　こと　　ほうし
建長四年(1252)十一月大十七日丁酉。天�ﾘ。 前大膳亮爲親、 御祈り始めの事を奉仕す。

　ごれいしゃ　　まえ　　うみべ　　　をい　　　ななせはら　　　ごんぎょう　　　いせのぜんじゆきつな　　ぞうじ　　　　さた　　　　 すおうしゅりのすけ　　おんし　　 な　　　そ　　ところ　むか
御靈社の前の海邊に於て、七瀬秡へを勧行す。伊勢前司行綱、雜事を沙汰す。周防修理亮、御使と爲し其の所へ向う。

現代語建長四年(1252)十一月大十七日丁酉。空は晴です。前大膳亮安倍為親は、お祈り始めの行事を勤めました。御霊神社の前の海辺で、七回水で穢れを洗い流すお祓いを勤めました。伊勢前司二階堂行綱が、諸雑事の指図をしました。周防修理亮が、将軍お使いとしてその場所へ行きました。

説明七瀬払いは、26巻貞応3年6月6日条では、由比ガ浜・七里ヶ浜・片瀬川・六浦・鼬川・森戸海岸・江の島龍穴。
又、27巻寛喜2年(1230)十一月13日条では霊所、由比ガ浜、七里ヶ浜、片瀬川、六浦、鼬川、森戸海岸、田越川が書かれている。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　らいめいひとこえ　　きた　にじういちにち　しんぞう　　ごしょ　　をい　　おんまとはじ　　あ　　　べ　　　　　よっ　　　　きょう　そ　　　いて　　もよおさる
建長四年(1252)十一月大十八日戊戌。雷鳴一聲。來る廿一日、新造の御所に於て御的始め有る可きに依て、今日其の射手を催被る。

むつかもんのすけさねとき　　これ　　ぶぎょう
陸奥掃部助實時、之を奉行す。

　　　　たけだぼごろしちろう　　　　　まいたのごろじろう
　　武田五郎七郎　　眞板五郎次郎

　　　　はやかわのじろたろう　　　　　ささきのさえもんしろう
　　早河次郎太郎　　佐々木左衛門四郎

　　　　くわばらへいない　　　　　　　やましろさぼるさえもんのじょう
　　桑原平内　　　　山城三郎左衛門尉

　　　　といのさえもんしろう　　　　　　くどううこんさぶろう
　　土肥左衛門四郎　工藤右近三郎

　　　　にのみやのいやじろう　　　　 さぬきのいやしろう
　　二宮弥次郎　　　佐貫弥四郎

　　　　おな　　　　しちろう　　　　　　ふじさわのこしろう
　　同じき七郎　　　藤澤小四郎

　　　　さつまのじうろう　　　　　　　　ひらいのはちろう
　　薩摩十郎　　　　平井八郎

　　　　ふせのさぶろう
　　布施三郎

　　みぎ　　　　きた　にじういちにち おんゆんばはじ　あ　　　べ　　　　おのおの　いて　　 な　　 さんきんさる　　べ　　のじょう　　おお　　　　よっ　　めぐ　　　ところ　くだん　ごと
　右は、來る 廿一日 御弓塲始め有る可し。 各 射手と爲し參勤被る可き之状、仰せに依て廻らす所、件の如し。

現代語建長四年(1252)十一月大十八日戊戌。雷が一度鳴りました。来る21日に新築の御所で、弓始め式を行いますので、今日の出演射手を催促しました。陸奥掃部助北条実時がこれを指揮担当します。

　　武田五郎七郎政平　　真板五郎次郎経朝
　　早川次郎太郎祐泰　　佐々木左衛門四郎
　　桑原平内盛時　　　　山城三郎左衛門尉忠氏
　　土肥左衛門四郎実綱　工藤右近三郎
　　二宮弥次郎時光　　　佐貫弥四郎広信
　　同佐貫七郎広経　　　藤沢小四郎
　　薩摩十郎工藤祐広　　平井八郎清頼
　　布施三郎行忠
　右は、来る21日の弓場始め式があります。それぞれ射手として参加を勤めるようにとの文書は、将軍の仰せに従って回覧するのはこのとおりです。

参考陸奥掃部助実時は、小侍所別当。参考眞板は、京都の久世荘。久世流藤原氏の領地であるが、チョイチョイ上納を忘れる。参考桑原は、伊豆。得宗被官。
参考弓場は、ゆば関東。ゆみば京都。参考廻らすは、回覧する。領状を出す。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 そらはれ　　しょうぐんけ　 しんぞう　　ごしょ　　　ごいし　　　ののち　　はじ　　　おうしゅう　てい　　い　　　たま
建長四年(1252)十一月大廿日庚子。天�ﾘ。將軍家、新造の御所へ御移徙之後、始めて奥州の亭へ入り御う。

そうしゅう あらかじ　か　 ところ　 そうら　せし　 たま　　　　うんぬん
 相州 豫め彼の所に候ひ令め給ふと云云。

 ぐぶにん　　〔　ほい　〕
供奉人〔布衣〕参考布衣は、布製の狩衣の別称。狩衣は武家社会では、束帯に次ぐ礼装であった。

　　さきのうまごんのかみ　〔ぎょけんやく〕　　　　　おわりのぜんじときあき
　前右馬權頭〔御劔役〕　　 尾張前司時章

　　むつかもんのすけさねとき　　　　　　　　　　さがみしきぶのたいふときひろ
　陸奥掃部助實時　　　　　相摸式部大夫時弘

　　とおとうみろくろうのりとき　　　　　　　　　　　むさしのしろうときなか
　遠江六郎教時　　　　　　武藏四郎時仲

　　とおとうみたろうきよとき　　　　　　　　　　　　あしかがのたろういえうじ
　遠江太郎�C時　　　　　　足利太郎家氏

　　おな　　　　じろうかねうじ　　　　　　　　　　　あいだのじょうすけよしかげ
　同じき次郎兼氏　　　　　秋田城介義景

　　しもつけぜんじやすつな　　　　　　　　　　　さきのだざいしょうにためすけ
　下野前司泰綱　　　　　　前太宰少貳爲佐

　　あきぜんじちかみつ　　　　　　　　　　　　　　みかわのぜんじよりうじ
　安藝前司親光　　　　　　三河前司頼氏

　　いずみのぜんじゆきかた　　　　　　　　　　　さきのおおくらごんのしょうゆうともひろ
　和泉前司行方　　　　　　前大藏權少輔朝廣

　　いきぜんじやすつな　　　　　　　　　　　　　 おおすみぜんじただとき
　壹岐前司泰綱　　　　　　大隅前司忠時

　　いきのかみもとまさ　　　　　　　　　　　　　　　いがぜんじときいえ
　壹岐守基政　　　　　　　伊賀前司時家

　　えちゅうぜんじよりなり　　　　　　　　　　　　　いせぜんじゆきつな
　越中前司頼業　　　　　　伊勢前司行綱

　　びんごのぜんじやすもち　　　　　　　　　　　じょうのじろうよりかげ
　備後前司康持　　　　　　城次郎頼景

　　おおそねさえもんのじょうながやす　　　　　かじわらうえもんのじょうかげとし
　大曽祢左衛門尉長泰　　　梶原右衛門尉景俊

　　でわのじろうさえもんのじょうゆきあり　　　　 ちくぜんじろうさえもんのじょうゆきより

　出羽次郎左衛門尉行有　　筑前次郎左衛門尉行頼

　　おのでらのしろうさえもんのじょうみちとき　　おおそねじろうさえもんのじょうもりつね
　小野寺四郎左衛門尉通時　大曾祢次郎左衛門尉盛經

　　ぶんごのさえもんのじょうただとき　　　　　　　そうまのまごじろうさえもんのじょうたねむら
　豊後左衛門尉忠時　　　　相馬孫五郎左衛門尉胤村

　　おおすがのじろうさえもんのじょうたねうじ　　むとうさえもんのじょうかげより
　大須賀次郎左衛門尉胤氏　武藤左衛門尉景頼

　　いずみのごろうさえもんのじょうまさやす　　 おだのさえもんのじょうときとも
　和泉五郎左衛門尉政泰　　小田左衛門尉時知

　　ぜんのうえもんのじょうやすなが　　　　　　　おさないさえもんのじょう
　善右衛門尉康長　　　　　長内左衛門尉

　　ちょうのじろううえもんのじょうよしつら　　　　ひたちじろうひょうえのじょうゆきかつ
　長次郎右衛門尉義連　　　常陸次郎兵衛尉行雄

　　かのうのごろうさえもんのじょうためひろ　　　おおいずみじろうひょうえんじょううじむら
　狩野五郎左衛門尉爲廣　　大泉次郎兵衛尉氏村

　　たけいしのしろうたねうじ　　　　　　　　　　　　ほうきさえもんさぶろうきよつね
　武石四郎胤氏　　　　　　伯耆左衛門三郎�C經

現代語建長四年(1252)十一月大二十日庚子。空は晴です。宗尊親王将軍家は、新築の御所へ引っ越してから、初めて重時さんの屋敷へお入りです。時頼さんは前もってその屋敷で待っていましたとさ。
お供の人〔布衣(礼装)〕
　前右馬権頭北条政村〔太刀持〕　尾張前司北条時章
　陸奥掃部助北条実時　　　　　　相模式部大夫北条時弘
　遠江六郎北条教時　　　　　　　武蔵四郎北条時仲
　遠江太郎北条清時　　　　　　　足利太郎家氏
　同足利次郎兼氏　　　　　　　　秋田城介安達義景
　下野前司宇都宮泰綱　　　　　　前太宰少弐藤原為佐
　安芸前司親光　　　　　　　　　三川前司新田頼氏
　和泉前司二階堂行方　　　　　　前大蔵権少輔結城朝広
　壱岐前司佐々木泰綱　　　　　　大隅前司島津忠時
　壱岐守後藤基政　　　　　　　　伊賀前司時家
　越中前司(宇都宮)横田頼業　　　伊勢前司二階堂行綱
　備後前司三善康持　　　　　　　城次郎安達頼景
　大曽祢左衛門尉長泰　　　　　　梶原右衛門尉景俊
　出羽次郎左衛門尉二階堂行有　　筑前次郎左衛門尉二階堂行頼
　小野寺四郎左衛門尉通時　　　　大曽祢次郎左衛門尉盛経
　豊後左衛門尉島津忠時　　　　　相馬孫五郎左衛門尉胤村
　大須賀次郎左衛門尉胤氏　　　　武藤左衛門尉景頼
　和泉五郎左衛門尉天野政泰　　　小田左衛門尉時知
　善右衛門尉三善康長　　　　　　長内左衛門尉長谷部
　長次郎右衛門尉長谷部義連　　　常陸次郎兵衛尉行雄
　狩野五郎左衛門尉為広　　　　　大泉次郎兵衛尉氏村
　武石五郎胤氏　　　　　　　　　伯耆左衛門三郎葛西清経

参考時頼があらかじめ行っているのは、北条一族への訪問と受け取っているのではないか。参考三善康持は、太田備前。参考小田は、八田の子孫。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しんぞうごしょ　　　ゆんば　　をい　　おんまとはじ　　あ　　　　りょうこくし　いげ　　　しゅっしきのう　　ごと
建長四年(1252)十一月大廿一日辛丑。新造御所の弓塲に於て御的始め有り。兩國司以下の出仕昨日の如し。

　いて　じうにん　おのおの　すいかんくずばかま　き　　　　　あさぐつ　　ゆんば　　さゆうに　あいわか　　ちゃくざ
射手十人。　各　水干 葛袴 を着て、淺沓、弓塲の左右于相分ち着座す。

しょうぐんけ しゅつごののち　いずみのぜんじゆきかた　いて　　　め　　　　 ふたごど　これ　　い　　　　　ことをは　　　たいしゅつ　　うんぬん
將軍家出御之後、 和泉前司行方 射手を召す。二五度之を射る。事畢りて退出すと云云。

　　いちばん
　一番

　　　　　　　たけだのごろしちろうまさひら　　　　　　　　はやかわのじろたろうふじわらすけやす
　　　武田五郎七郎政平　　　　早河次郎太郎藤原祐泰　　　

　　　にばん
　二番

　　　　　　　まいたのごろじろうおおなかとみつねとも　さつまのじうろうふじわらすけひろ
　　　眞板五郎次郎大中臣經朝　薩摩十郎藤原祐廣

　　さんばん
　三番

　　　　　　　ひらいのはちろうみなもときよかげ　　　　　さぬきのいやしろうふじわらひろのぶ
　　　平井八郎源�C景　　　　　佐貫弥四郎藤原廣信

　　よんばん
　四番

　　　　　　　やましろさぶろうさえもんのじょうみなもとただうじ　くわばらへいないたいらのもりとき
　　　山城三郎左衛門尉源忠氏　桑原平内平盛時

　　　ごばん
　五番

　　　　　　　ふせのさぶろうふじわらゆきただ　　　　　　さぬきのしちろうふじわらひろたね
　　　布施三郎藤原行忠　　　　佐貫七郎藤原廣胤

現代語建長四年(1252)十一月大二十一日辛丑。新築御所の弓場で弓始め式がありました。重時・時頼の両国司以下の出勤は昨日と同じです。射手は10人。それぞれ水干に葛袴を着て、浅い木沓で弓場の左右に分かれて座っています。宗尊親王将軍家がお出ましの後、和泉前司二階堂行方が射手を呼びました。二本づつ五度射ました。儀式が終わって引き下がりましたとさ。
　一番
　　　武田五郎七郎政平　　　　ＶＳ　早川次郎太郎藤原祐泰
　二番
　　　真板五郎次郎大中臣経朝　ＶＳ　薩摩十郎藤原工藤祐広
　三番
　　　平井八郎源清景　　　　　ＶＳ　佐貫弥四郎藤原広信
　四番
　　　山城三郎左衛門尉源忠氏　ＶＳ　桑原平内平盛時
　五番
　　　布施三郎藤原行忠　　　　ＶＳ　佐貫七郎藤原広胤

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　ごしょ　　　おんじぶつどう　　　くよう　　どうし　　さだいじんほういんげんえ
建長四年(1252)十一月大廿二日壬寅。天�ﾘ。御所の御持佛堂の供養。導師は左大臣法印嚴惠。

現代語建長四年(1252)十一月大二十二日壬寅。空は晴です。御所の将軍の守り本尊の持仏堂の開眼供養です。指導僧は、左大臣法印厳恵。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　　　くめ　ごらん　　すなは　はま　いなせがわへん　　かどで　　　　うんぬん
建長四年(1252)十一月大廿三日癸夘。天�ﾘ。貢馬御覽。則ち濱稻名瀬河邊へ出門すと云云。

現代語建長四年(1252)十一月大二十三日癸卯。空は晴です。朝廷への献上馬を将軍がご覧になる儀式です。すぐに浜稲瀬河へ向けて出発しましたとさ。

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吾妻鏡入門第四十二巻