吾妻鏡入門第四十三巻

建長五年(1253)二月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　ねのこく　おおかぜ はなは　あめ　らいでん りょうみこえ
建長五年(1253)二月大三日辛亥。�ﾘ。子尅、大風　甚だ雨。雷電 兩三聲。

きょう　　そうしゅう　しんたん　　わかぎみ　みょうじ　こと　　わかみやそうじょう　これ　さだ　　もう　　　　ふくじゅ　　うんぬん
今日、相州が新誕の若公の名字の事、若宮僧正　之を定め申す。福壽�@と云々。

参考�@福壽丸は、後の宗政。北条時宗が聖寿丸なので、時頼は後に二人の守護のため稲村ケ崎に聖福寺を建立する。又、埼玉県東村山市の正福寺も同様な謂れをもつ。

現代語建長五年(1253)二月大三日辛亥。晴れです。夜中の0時頃大風と土砂降りの雨です。雷も2・3度鳴りました。今日、時頼さんのお誕生の若君の名前について、鶴岡八幡宮筆頭僧正隆弁が決めて上申しました。福寿丸だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　うまのこくおおぢしん　〔りゅうじんどう〕
建長五年(1253)二月大廿五日癸酉。霽。午尅大地震〔龍神動〕。」

せんじつ　ひょうじょう　あいだ　　ごふしん　　こと あ　　　　　　　ほうけ　　 とはれ　　 い
先日、 評定の間、御不審の事有りて、法家に問被て云はく。

こわらわべ ふたり じょうろんいた　　う　　　あわせし　 のところ　 じゅうにさんさいのわらわべ　　いっぽうのかたうど　　な　　　 ほえうち　 いげ　のにんじょう そうら　なり
小童部二人 諍論 致し打ち合令む之處、十二三歳之童部、一方之方人と爲し保惠打�@以下之刃傷 候う也。

ざいか　あ　　 べ　　　　 いな　　　　こと　〔　ほえうち　は　　　　おおほうちょう　　ごと　　　はものなり　〕　　くだん　にんじょうびと　とが　 さだ　 られ　　　　ば
罪科有る可きや否やの事〔保惠打者、大包丁の如き刀物也〕、件の刃傷人の咎を定め被ずん者、

じょうろん こんぽんのわらわべおな　　　　つみたるべ　　　　いな　　　　こと　　しきじょうのおもむきちう　　たま　　べ　　　　そうろう
 諍論 根本之童部 同じく罪爲可きや否やの事、式條�A之　趣 注し給ふ可きに候。

かく　　ごと　　こと　　かんとうさだ　 お　かる　 ことそうら　　　なり　　しきもく　のほかは ちゅうい〔　を　〕　まも　　　　〔　て　〕　　また　じぎ　に　　　　　　おんはから　そうろうなりてへ
此の如き事、關東定め置被る事候はぬ也。式目�B之外者注意〔ヲ〕守り〔天〕。又時儀ニよりて御計ひ 候 也者り。

きょう　　　か　　　ごへんじひょうじょう　みぎり　　みらる　　　 うんぬん　　ちゅうい　〔　に　〕　じうろく いげ は　あがな　　おさ　　　　うんぬん　 か　　にんじょう　 じゅうにさんさい　うんぬん
今日、彼の御返事評定の砌に覽被ると云々。注意〔ニ〕十六以下者贖いを収むと云々。彼の刃傷は十二三歳と云々。

かりょう　　しょさる　　べ　　　　　そ　　　み　　しゅうさるべからずか　　こんぽん とうじょうのわらわ　　しょはんのけいちょう　したが　　　おな　　　　しょくどう　しょさる　　べ　　　か
科料に處被る可き。其の身を収被不可歟。 根本 鬪諍之童、 所犯之 輕重に隨い、同じく贖銅�Cに處被る可き歟。

どうざいもちろんてへ
同罪勿論 者り。

参考�@保恵打は、斧で打つ。
参考�A式條は、律令制度。
参考�B式目は、御成敗式目。
参考�C贖銅は、銅で収める。

現代語建長五年(1253)二月大二十五日癸酉。晴れました。昼の12時頃大地震〔龍神の動き〕。」
先日、政務会議の最中におかしなことがあって、明法家に質問されたのは、「子供が二人、言い争いをしていたのだが、12・3才の子供が片方の味方をして斧で打って怪我をさせました。罪に問われるかどうか〔保恵打ちとは大きな包丁のような斧のようです〕、こういった障害人の罪を決めて置かなくては、言い争いの張本人の子供も同罪になるかどうか、条文の解釈を書いておくべきであろう。このような事は、関東では決めていないのです。御成敗式目の他は、書き置かれたものを守り、又、時節に合わせて取り合撞くべきであろう。」との事です。

今日、その返事を政務会議の席上でご覧になったそうな。書き出しに「16歳以下は銅銭で罰金を払うんだそうな。その傷害事件は12・3才だそうな。罰金刑に処理するのです。身柄を拘束してはなりません。争いの張本人の子供も、その傷害事件の子供の罪の軽重に合わせて、同様に銅銭で処理すべきでしょう。同罪は勿論です。」と書かれていました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　つるがおか　りんとう　　おうか さか　 なり
建長五年(1253)二月大卅日戊寅。�ﾘ。鶴岳の林頭�@の櫻花盛り也。

とりのこく　 しょうぐんけ か　　はな　　み　　 ため　　にはか　もっ　しゅつご　〔　　おんえぼし　　　のうし　　　おくるま　〕
酉剋、將軍家彼の花を覽ん爲、俄に以て出御〔御烏帽子。直衣。御車〕。

つちみかどさいしょうちゅうじょう　かざんいんちゅうじょう　そうしゅう　かもんのすけさねとき　うまのすけちかいえら　ぐぶ　　　　　さきのうてんきゅう　じょうのくろうやすもりら　おっ　　さんか
 土御門宰相中將 ・ 花山院中將 ・相州・掃部助實時・右馬助親家等供奉す。前右典厩・ 城九郎泰盛等追て參加す。

参考�@林頭は、林のほとり。

現代語建長五年(1253)二月大三十日戊寅。鶴岡八幡宮の林のほとりの桜の花が満開です。午後6時頃、宗尊親王将軍家はその花見に行くと云って、急にお出かけです〔烏帽子に直衣。牛車〕土御門宰相中将顕方・花山院中将長雅・相州北条時頼・掃部助北条実時・右馬助親家などがお供をしました。前右典厩北条政村・城九郎安達泰盛が追っかけてきてまざりました。

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