吾妻鏡入門第四十三巻

建長五年(1253)九月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あめふ　　　らいめいすうこえ　じょうすけにゅどう　ひゃっかにち　ぶつじ　あまなわ　きゅうたく　　をい　　これ　おこな
建長五年(1253)九月大十四日己丑。雨降る。雷鳴數聲。城介入道が百ケ日の佛事、甘繩の舊宅に於て之を行う。

どうし　　わかみやそうじょう りゅうべん
導師は若宮僧正 隆弁。

現代語建長五年(1253)九月大十四日己丑。雨降りです。雷も少し鳴ってます。城介入道安達義景の百か日の法要です。甘縄の古い方の家で行いました。指導僧は、鶴岡八幡宮筆頭僧正隆弁です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　うまのこくぢしん　　 よ　　 い　　　こさめうるお　　　きょう　　　しんせい　　こと　　さだ　　らる
建長五年(1253)九月大十六日辛夘。�ﾘ。午尅地震。夜に入り小雨灑す。今日、新制の事�@を定め被る。

えんおう　ほう　のほか　　じうさんかじょう　 くは　　られ　　かんとうごけにん なら　　　 かまくらきょじゅう　ひとびと　　　かさ　　ちょうじすべ　じょうじょうなり
延應の法�A之外、十三ケ條を加へ被、關東御家人并びに鎌倉居住の人々、過差を停止可き條々也。

これ　さんぬ　しちがつじうににちせんげさる　ところなり　　くろうどのとう くないきょう たいらにときつぐあそん ぶぎょうたり
是、去る七月十二日宣下被る所也。　藏人頭�B宮内卿�C平時継朝臣　奉行爲。

これ　 よっ　　せんげ　　まも　　のじょう　 じゅんぎょう せし　べ　　　　　かつう　じうがつついたち　よ　　これ　　ちょうじせし　　べ
之に依て宣下を守る之状  遵行 令む可し。且は 十月一日 自り之を停止令む可し。

　も　　　　なおじょようせざ　　のもの　　かつう　ほう　　まか　きゅうだん　 くは　　　かつう　ざいか　おこなはれ　 べ　　 のむね　　おお　　い　　　さる　　　　うんぬん
若しも猶叙用不る之者、且は法に任せ糺断を加ふ。且は罪科に行被る可き之旨、仰せ出だ被ると云々。

参考�@新制の事は、建長新制。
参考�A延応の法は、泰時の時。
参考�B藏人頭は、天皇の秘書的蔵人所の長官。
参考�C宮内卿は、宮内省長官。

現代語建長五年(1253)九月大十六日辛卯。晴れです。昼頃に地震です。夜になって小雨が降りました。
今日、新しい法について決めました。延応(1239-1240)の法の他に13条を加え、関東御家人それと鎌倉居住の人々に、贅沢を禁止するようにとの条文です。この内容は、去る7月12日に朝廷が宣言したものです。蔵人頭宮内卿平時継さんが担当しました。これによって宣言を守るようにとの手紙を下部へ伝えなさい。10月1日から止める事。もしもなお守らない者は、一つは法に照らして罪を問い但し、一つは刑を執行するようにと、仰せになられましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ともながぶぎょう　な　　　　 でんちゅう　をい　 ないない　　　さた　　　ことあ
建長五年(1253)九月大廿六日辛丑。倫長�@奉行と爲し、殿中に於て内々に沙汰の事有り。

これ　 さんもんりょうのほか　 さんそう　　もっ　あずかりどころしき　ぶ せし　　　　こと　　ちょうじさる　　べ　　　のよしなり　 さんぬ　はつか　ひょうじょうのとき　そ　　　さた　あ
是、山門領之外、山僧を以て 預所職に 補令める事、停止被る可き之由也。去る廿日�A、評定之時其の沙汰有り。

くだん　きんぜいは　さんぬ　えんのうがんしちがつにじうろくにち これ　　さだ　　られ　　　ろくはら　　おお　　られをはんぬ
 件の禁制者、去る　延應元七月廿六日　之を定め被、六波羅へ仰せ被 訖。

しか　　　　のとのくにごけにんたかはたのたろうともひさ　　か　　 しきもくあんぶん　　びしん　　　のあいだ　　こうごう　　ためうつ　　しん　　べ　　　　むね
而るに能登國御家人高畠太郎式久�Bは彼の式目案文を備進する之間、校合の爲寫し進ず可きの旨、

みぎょうしょをぶんぎぜんじやすもちのところ　　くださる
御教書於備後前司康持之處へ下被る。

きんきたる　　よっ　　　　おな　　　にじうろくにち とうのにゅうどうただあき　 おお　 られ　ただあきこれ　 うつ　　しん　　　　よっ　　こうごうさる　　のところ　　そうい　な
禁忌爲に依て�C、同じき廿六日　東入道唯明に 仰せ被、々々之を寫し進ず。仍て校合被る之處、相違無し。

ひょうじょうのとき　　ことがき　　せいぶん　　じさんすべ　　のよし　　かさ　　　　おお　　くださる　ところなり
 評定 之時、事書の正文を持參可き之由、重ねて仰せ下被る所也。

参考�@倫長は、矢野倫長で、三善倫重(35巻寛元二年(1244)六月四日死亡)息子。
参考�A去る二十日は、この頃評定は五と十日のごとうびらしい。
参考�B式久は、式の音は文字は漢和辞典の人命では「つね・のり・もち」とあるが、「ともひさ」と読ませるらしい。
参考�C禁忌爲に依ては、意味が分からないので、乞う教授。物忌中と訳した。

現代語建長五年(1253)九月大二十六日辛丑。矢野倫長が担当して、御所内で色々と決定がありました。これは、比叡山の領地以外に、武装下部僧を現地管理人に任命する事を止めさせるようにとの事です。先日の20日政務会議の時その決定がありました。この禁止事項は、去る延応1年(1239)7月26日これを定めて六波羅探題へ通知しました。しかし、能登国御家人高畠太郎式久は、その式目の写しを見せてきたので、付け合わせるために写しを提出するように、命令書を備後前司三善康持に与えました。物忌中で公務につけないので、同じ26日に東入道唯明に仰せになり、唯明はこれを写して提出しました。そこで付け合わせた処、間違いありません。政務会議の時、決定書の本文を持ってくるように、なおも仰せになられました。

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