吾妻鏡入門第四十三巻

建長五年(1253)十一月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あられふ　　たつのこく いご　こさめそそ　　　　けんちょうじ くようなり　　じょうろく　　 じぞうぼさつ　　もっ　 ちゅうそん　　な
建長五年(1253)十一月小廿五日庚子。霰降る。辰尅以後小雨潅ぐ。建長寺供養也。丈六�@の地藏菩薩を以て中尊と爲す。

また　 どうぞうせんたい　 あんち　　　　そうしゅうこと　せいせい　 こ　　 せし　 たま
又、同像千躰を安置す。相州殊に精誠を凝ら令め給ふ。

さんぬ　けんちょうさんねんじういちがつようか　ことはじめあ　　　すで　　つく　をはんぬのあいだ　きょうぼんせき　　の
去る 建長三年十一月八日 事始有りて、已に造り 畢 之間、今日梵席を展べる。

がんもん　そう　　さきのだいあいきしげのりあそん　せいしょ　そうしゅう　　どうし　　そうちょうそう どうりゅうぜんじ
願文の草は前大内記茂範朝臣。�C書は相州。導師は宋朝僧 道隆禪師。

また　 いちにち　 うち　　　ごぶ　だいじょうきょう　うつ　　くようさる
又、一日の内に五部の大乘經を冩し供養被る。

かく　　　さぜん　　ししゅ　　　　うえ　　こうていばんざい　 いの　　　しょうぐんけおよ　じゅうしん　せんしゅう　てんかたいへい
此の作善の旨趣は、上は皇帝万歳を祈り。將軍家及び重臣の千秋・天下太平。

した　　さんだい　じょうしょう　　にいけ　なら　　　　ごいちもん　 かこ　 すうやから　 ぼつご　　とぶら　たま　　　　うんぬん
下は三代�Aの上將・二位家并びに御一門過去の數輩の没後を訪ひ御うと云々。

参考�@丈六は、仏像の背丈の一基準。仏は身長が1丈6尺 (約 4.85m) あるといわれることから仏像も丈六を基準とし，その5倍，10倍，また2分の1などに造像された。坐像の場合の丈六像は半分の約8尺 (2.43m) ，半丈六像は約8尺の立像。
参考�A三代は、源氏三代。

現代語建長五年(1253)十一月小二十五日庚子。霰が降りました。午前8時以後は、小雨が降りました。建長寺の開眼供養です。一丈六尺の地蔵菩薩像を本尊としました。又、同じ地蔵像の小型のを千体据え置きました。時頼さんが特に精魂込めて作らせました。去る建長三年(1251)十一月八日に作事始め式があって、既に完成しましたので、今日開眼供養の式典を展開したのです。願いの文章は前大内記茂範さん、清書は時頼さん、指導僧は、宋の国から来た蘭渓道隆禅師です。
また、一日の内に5部の大乗経を書写して供養しました。この善を施す作業の趣旨は、上は天皇朝廷の万歳を祈り、宗尊親王将軍家それに幕府の重臣の長生きを天下泰平。下は、源氏三代の将軍・二位家政子様それと北条氏一門・幕府創設以来の亡くなった者達の追善供養のためなんだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　すわひょうえにゅうどうれんぶつ　やまのうち　いちどう　こんりゅう　　　　きょう　くよう　　と
建長五年(1253)十一月小廿九日甲辰。�ﾘ。諏方兵衛入道蓮佛、山内に一堂を建立し、今日供養を遂げる。

これ　　ぶしゅうさきのししぜんしつついぶく　おほんため　うんぬん　　たつのひ　ついぜん　ことせんき な　　 のよし　　かたぶ　もう　　のやからあ
是、 武州前刺史�@禪室追福の 奉爲と 云々。辰日の追善の事先規無し之由、傾け申す�A之輩有り。

しか　　　　みかわのかみのりたかまひと かん　　もう　　　　い
而るに 參河守教隆眞人�B勘じ申して�C云はく。

にゅうどうちゅうなごん　〔よしやすきょう〕　ごしらかわほうおうついぶく　おほんため　こうしんびしょうどう　　くよう　　　　　　　うじのあみだどう　　　　くようまたたつのひたり　　これついぜんなり　うんぬん
入道中納言 〔能保卿〕、後白河法皇追福の奉爲、甲辰日小堂を供養す。宇治阿弥陀堂の供養又辰日爲。是追善也と云々。

現代語建長五年(1253)十一月小二十九日甲辰。晴です。諏訪兵衛入道蓮仏は、山内に一つのお堂を建立して、今日開眼供養を行いました。これは、武州前刺史禅室北条経時さんの追善供養のためだそうな。辰の日に追善供養をする例はないと、文句をつける者もありました。しかし、三河守清原教隆真人が上申して云いました。入道中納言一条能保さんは、後白河法皇の追善供養のため、甲辰の日にお堂を開眼供養しました。宇治の平等院の阿弥陀堂の開眼供養も又辰の日でした。これは追善供養だから。」とのことです。。

参考�@刺使は、国司。
参考�A傾け申すは、文句をつける。
参考�B眞人は、姓かばね。新宿の花園神社の神主は大連おおむらじと名乗っている。
参考�C勘じ申しては、先例などを調べて云う。
参考常楽寺の塔頭のひとつか？高時時代には塔頭が４８あったという。

十二月へ

吾妻鏡入門第四十三巻