吾妻鏡入門第四十六巻

建長八年(1256)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　てんがんかいせい　おうばん　〔そうしゅう　　おんさた　〕　　のぎ　あ　　　　そうしゅう おうしゅう いげ　　　ひとびと　　　ほい　　　き　　　しゅっし
建長八年(1256)正月大一日癸巳。天顏快�ﾘ。垸飯〔相州が御沙汰〕之儀有り。相州・奥州已下の人々、布衣を着て出仕す。

おのおの ていじょう　 れい　ごと　　そうら
　各　庭上に例の如く候う。

　　さきのうまごんのかみ　　　　　　　　　むさしのかみ　　　　　　　　　　 とおとうみのかみ
　前右馬權頭　　　　　武藏守　　　　　　遠江守

　　おわりのぜんじ　　　　　　　　　　　　えちごのかみ　　　　　　　　　　 さがみしきぶのたいふ
　尾張前司　　　　　　越後守　　　　　　相摸式部大夫

　　なかつかさごんのだいゆう　　　　　　さがみうこんのやいふしょうげん　えちごうまのすけ
　中務權大輔　　　　　相摸右近大夫將監　越後右馬助

　　ぎょうぶしょうゆう　　　　　　　　　　　 とおとうみうまのすけ　　　　　　 　むつのいやしろう
　刑部少輔　　　　　　遠江右馬助　　　　陸奥弥四郎

　　おな　　　　ろくろう　　　　　　　　　　おな　　　 しちろう　　　　　　　　あしかがのじろう
　同じき六郎　　　　　同じき七郎　　　　足利次郎

　　おな　　　　さぶろう　　　　　　　　　　するがのしろう　　　　　　　　　　 おわりのじろう

　同じき三郎　　　　　駿河四郎　　　　　尾張次郎

　　むさしのしろう　　　　　　　　　　　　　おな　　　さぶろう　　　　　　　　 とおとうみのたろう
　武藏四郎　　　　　　同じき三郎　　　　遠江太郎

　　えちごのまたたろう　　　　　　　　　　とおとうみのしちろう　　　　　　　 びぜんのさぶろう
　越後又太郎　　　　　遠江七郎　　　　　備前三郎

　　はたけやまのこうづけぜんじ　　　　　ながいのたろう　　　　　　　　　あいだのじょうすけ
　畠山上野前司　　　　長井太郎　　　　　秋田城介

　　おな　　　　さぶろう　　　　　　　　　とおとうみのたろう　　　　　　　　　おな　　　　さぶろう
　同じき三郎　　　　　遠江太郎　　　　　同じき三郎

　　ながいのさぶろうくらんど　　　　　　　おな　　　　ほうがんだい　　　　でわのぜんじ
　長井三郎藏人　　　　同じき判官代　　　出羽前司

　　いずみのぜんじ　　　　　　　　　　　　あしかがかずささぶろう　　　　　あきのぜんじ
　和泉前司　　　　　　足利上総三郎　　　安藝前司

　　おやまのでわぜんじ　　　　　　　　　　えっちゅうぜんじ　　　　　　　　　おおくらごんのしょうゆう
　小山出羽前司　　　　越中前司　　　　　大藏權少輔

　　いずぜんじ　　　〔わかつき〕　　　　　　なわさこんたいふ　　　　　　　　　さきのだざいしょうに
　伊豆前司〔若槻〕　　 那波左近大夫　　　前太宰少貳

　　にったみかわのかみ　　　　　　　　　おおすみぜんじ　　　〔しまづ〕　　 みうらのすけ
　新田三河守　　　　　大隅前司〔嶋津〕　 三浦介

　　すおうのかみ　　　　　　　　　　　　　ひゅうがのかみ　　　　　　　　　　おおすみのかみ
　周防守　　　　　　　日向守〔接津〕　　 大隅守

　　かずさのすけ　　　　　　　　　　　　　むさしうえもんのじょう　　　　　　　こうづけうえもんのじょう
　上総介　　　　　　　武藏右衛門尉　　　上野右衛門尉

　　おおそねじろううえもんのじょう　　　おきのさぶろううえもんのじょう　　　おのでらのしろうさえもんのじょう
　大曽祢次郎右衛門尉　隱岐三郎右衛門尉　小野寺四郎左衛門尉

　　おおすがのじろうさえもんのじょう　　いがのじろうさえもんのじょう　　　ちくぜんじろうさえもんのじょう
　大須賀次郎左衛門尉　伊賀次郎左衛門尉　筑前次郎左衛門尉

　　しちろうさえもんのじょう　　　　　　　　ひごのじろうさえもんのじょう　　　ぬいどののとう
　七郎左衛門尉　　　　肥後次郎左衛門尉　縫殿頭

　　いずみのじろうさえもんのじょう　　とおとうみのさぶろうさえもんのじょう　しきぶのたいふさえもんのじょう
　和泉次郎左衛門尉　　遠江三郎左衛門尉　式部太郎左衛門尉

　　かまたのさぶろうさえもんのじょう　　 おのでらしんさえもんのじょう　　 かまたのじろうひょうえのじょう
　鎌田三郎左衛門尉　　小野寺新左衛門尉　鎌田次郎兵衛尉

　　ひごのいやとうじ　　　　　　　　　　　　ほうきさえもんさぶろう　　　　　とおとうみのじうろうさえもんのじょう
　肥後弥藤次　　　　　伯耆左衛門三郎　　遠江十郎左衛門尉

　　むとうじろうひょうえのじょう　　　　　 かずさのたろうさえもんのじょう　　　おおそねじろうさえもんのじょう
　武藤次郎兵衛尉　　　上総太郎左衛門尉　大曽祢次郎左衛門尉

　　むそうさこんしょうげん　　　　　　　　 おおそねごろうひょうえのじょう　　でわのさぶろう
　武藤左近將監　　　　大曽祢五郎兵衛尉　出羽三郎

　　ないとうごんのかみ　　　　　　　　　とおとうみのさぶろうさえもんのじょう　いせのじろうさえもんのじょう
　内藏權頭　　　　　　遠江三郎左衛門尉　伊勢次郎左衛門尉

　　つちやのいやさぶろう　　　　　　　　かまたしんさえもんのじょう　　　　つちやのしんざぶろう
　土屋弥三郎　　　　　鎌田新左衛門尉　　土屋新三郎

　　ひらがしんざぶろう
　平賀新三郎

 きょう　　　 さる　　じこく　　いへど　　　しょうぐんけ　ごかんらく　 　よっ　 おんみす　たれらる　　　ぎょけん れんちゅう　すす　　い
今日、申の時尅と雖も、將軍家御歡樂�@に依て御簾を垂被る。御釼 簾中に進み入る。

ぎょけん　さきのうまごんのかみ　　おんゆみや　　ぶしゅうともなお　　おんんむかばき　でわぜんじゆきよし
御釼は 前右馬權頭。 御弓箭は武州朝直�A。御行騰は 出羽前司行義。

　いちのおんうま　むつのいやしろうときもち　　　　　　　　　　 おな　　　 ろくろうよしまさ
　一御馬　陸奥弥四郎時茂　　　　　同じき六郎義政

　　にのおんうま　おおそねじろうさえもんのじょうもりつね　　　おな　　　ごろうひょうえのじょう
　二御馬　大曽祢次郎左衛門尉盛經　同じき五郎兵衛尉

　さんのおんうま　みうらのさぶろうさえもんのじょうやすもり　　 おな　　　じうろうさえもんのじょうよりつら
　三御馬　三浦三郎左衛門尉泰盛　　同じき十郎左衛門尉頼連

　よんのおんうま　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　おな　　　はちろうすけうじ
　四御馬　薩摩七郎左衛門尉祐能　　同じき八郎祐氏

　　ごのおんうま　あしかがのじろうかねうじ　　　　　　　　　　　　くどうじろうさえもんのじょうたかみつ
　五御馬　足利次郎兼氏　　　　　　工藤次郎左衛門尉高光

参考�@御歓楽は、病気忌言葉）。
参考�A武州朝直は、大仏流。

現代語建長八年(1256)正月大一日癸巳。空は大快晴です。将軍への御馳走のふるまい〔時頼さんの負担〕の儀式がありました。時頼さん・重時さん以下狩衣の礼服で出勤しました。それぞれ庭に何時ものように控えました。
　前右馬権頭北条政村　武蔵守北条朝直　　　　　　遠江守北条時直
　尾張前司北条時章　　越後守北条実時　　　　　　相模式部大夫北条時弘
　中務権大輔足利家氏　相模右近大夫将監時定　　　越後右馬助時親
　刑部少輔北条教時　　遠江右馬助北条清時　　　　陸奥弥四郎北条時茂
　同陸奥六郎北条義政　同陸奥七郎北条業時　　　　足利次郎顕氏
　同足利三郎利氏　　　駿河四郎兼時　　　　　　　尾張次郎公時
　武蔵四郎時仲　　　　同武蔵三郎　　　　　　　　遠江太郎清時
　越後又太郎　　　　　遠江七郎時基　　　　　　　備前三郎長頼
　畠山上野前司泰国　　長井太郎時秀　　　　　　　秋田城介安達泰盛
　同安達三郎　　　　　遠江太郎清時　　　　　　　同遠江三郎泰盛
　長井三郎蔵人　　　　同長井判官代泰茂　　　　　出羽前司二階堂行義
　和泉前司二階堂行方　足利上総三郎満氏　　　　　安芸前司親光
　小山出羽前司長村　　越中前司(宇都宮)横田頼業　大蔵権少輔結城朝広
　伊豆前司若槻頼定　　那波左近大夫政茂　　　　　前太宰少弐狩野為佐
　新田三河守頼氏　　　大隅前司島津忠時　　　　　三浦介盛時
　周防守島津忠綱　　　日向守宇佐美祐泰　　　　　大隅守親員（摂津）
　上総介大曾祢長泰　　武蔵右衛門尉　　　　　　　上野右衛門尉

　大曽祢次郎右衛門尉盛経　隠岐三郎右衛門尉二階堂行氏　小野寺四郎左衛門尉通時
　大須賀次郎左衛門尉胤氏　伊賀次郎左衛門尉光房　　　　筑前次郎左衛門尉二階堂行頼
　七郎左衛門尉　　　　　　肥後次郎左衛門尉天野景氏　　縫殿頭中原師連
　和泉次郎左衛門尉二階堂行章　遠江三郎左衛門尉泰盛　　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　鎌田三郎左衛門尉義氏　　小野寺新左衛門尉行通　　　　鎌田次郎兵衛尉行俊
　肥後弥藤次　　　　　　　伯耆左衛門三郎清経　　　　　遠江十郎左衛門尉頼連
　武藤次郎兵衛尉頼泰　　　上総太郎左衛門尉長経　　　　大曽祢次郎左衛門尉盛経
　武藤左近将監兼頼　　　　大曽祢五郎兵衛尉　　　　　　出羽三郎二階堂行資
　内蔵権頭資親　　　　　　遠江三郎左衛門尉泰盛　　　　伊勢次郎左衛門尉二階堂行経
　土屋弥三郎　　　　　　　鎌田新左衛門尉　　　　　　　土屋新三郎光時
　平賀新三郎惟時

今日、午後4時だというのに、宗尊親王将軍家は具合が悪いので、御簾を垂らしました。刀の献上は御簾の中へ持って行きました。刀は、右馬権頭北条政村。弓矢は武州北条朝直。乗馬袴は、出羽前司二階堂行義。
　一の馬　陸奥弥四郎北条時茂　　　と　同六郎塩田流北条義政
　二の馬　大曽祢次郎左衛門尉盛経　と　同大曽祢五郎兵衛尉
　三の馬　三浦三郎左衛門尉泰盛　　と　同十郎左衛門尉頼連
　四の馬　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能と　同伊東八郎助氏
　五の馬　足利次郎兼氏　　　　　　と　工藤次郎左衛門尉高光

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 おうばん　〔おうしゅう　　　おんさた　〕　　　 きょう　　しょうぐんけなんめん　　い　　　たま
建長八年(1256)正月大二日甲午。�ﾘ。垸飯〔奥州の御沙汰〕。今日、將軍家南面へ出で御う。

つちみかどちゅうなごん 〔あきかたきょう　　のうし 〕　おんみす　 あげらる　　　ぎょけん　むさしのかみともなお　おんゆみや　ぎょうぶしょうゆうのりとき　おんむかばばきくつ　あいだのじょうすけやすもり
土御門中納言〔顯方卿。直衣〕御簾を上被る。御釼は武藏守朝直。御弓箭は 刑部少輔教時。御行騰沓は　秋田城介泰盛。

　いちのおんうま　おわりのじろうきんとき　　　　　　　　　　 　　　　　　おな　　　 さぶろうよりあき
　一御馬　尾張次郎公時　　　　　　　　同じき三郎頼章

　　にのおんうま　ひごのじろうさえもんのじょうためとき　　　　 　　　　いとうのさぶろう
　二御馬　肥後次郎左衛門尉爲時　　　　伊東三郎

　さんのおんうま　とおとうみのさぶろうさえもんのじょうやすもり　〔みうら〕　おな　　　 ごろうさえもんのじょう
　三御馬　遠江三郎左衛門尉泰盛〔三浦〕　同じき五郎左衛門尉

　よんのおんうま　こうづけのたろうかげつな　　　　　　　　　　　　　　　かじわらさえもんたろうかげもと
　四御馬　上野太郎景綱　　　　　　　　梶原左衛門太郎景基

　　ごのおんうま　むつのいやしろうときもち　　　　　　　　　　 　　　　  おな　　　 しちろうなりとき
　五御馬　陸奥弥四郎時茂　　　　　　　同じき七郎業時

現代語建長八年(1256)正月大二日甲午。晴れです。将軍への御馳走のふるまい〔重時さんの負担〕。今日は、宗尊親王将軍家は、公的官邸南面へお出ましです。土御門中納言〔顕方さん、狩衣の礼服〕が、御簾をあげました。刀の献上は武蔵守北条朝直。弓矢は、刑部少輔北条教時。乗馬袴は、秋田城介安達泰盛。
　一の馬　尾張次郎北条公時　　　　　と　同三郎北条頼章
　二の馬　肥後次郎左衛門尉為時　　　と　伊東三郎
　三の馬　三浦遠江三郎左衛門尉泰盛　と　同五郎左衛門尉
　四の馬　上野太郎梶原景綱　　　　　と　梶原左衛門太郎景基
　五の馬　陸奥弥四郎北条時茂　　　　と　同七郎業時

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 おうばん　〔あしかがさぶろうとしうじ　　　　さた　〕　　　おんみす　 こうもん
建長八年(1256)正月大三日乙未。�ﾘ。垸飯〔足利三郎利氏�@が沙汰〕。御簾は黄門�A。

ぎょけん　えちごのかみさねとき　　ごちょうど　　しもつけぜんじやすつな　　おんむかばき　　いずみのぜんじゆきかた
御釼は 越後守實時。御調度は下野前司泰綱。 御行騰は 和泉前司行方。

　いちのおんうま　えちごのまたたろう　　　　　　　　　　 　　　たいへいさえもんたろう
　一御馬　越後又太郎　　　　　　　太平左衛門太郎

　　にのおんうま　とおとうみのさぶろうさえもんのじょうやすもり　おな　　　 じうろうさえもんのじょうよりつら
　二御馬　遠江三郎左衛門尉泰盛　　同じき十郎左衛門尉頼連

　さんのおんうま　かじわらこうづけのたろうかげつな　　　　　 おな　　　 さえもんさぶろうかげうじ
　三御馬　梶原上野太郎景綱　　　　同じき左衛門三郎景氏

　よんのおんうま　びとうのじろうひょうえのじょう　　　　　　　　 びぜんさえもんさぶろう
　四御馬　尾藤次郎兵衛尉　　　　　備前左衛門三郎

　　ごのおんうま　あしかがのじろうかねうじ　　　　　　　　　　　 にったのじろう
　五御馬　足利次郎兼氏　　　　　　新田次郎

参考�@足利三郎利氏は、時頼から頼を受け頼氏となる。
参考�A黄門は、中納言の唐名。

現代語建長八年(1256)正月大三日乙未。晴れです。将軍への御馳走のふるまい〔足利三郎利氏の負担〕。御簾を上げるのは、中納言土御門顕方。刀は、越後守北条実時。弓矢は、下野前司宇都宮泰綱。乗馬袴は、和泉前司二階堂行方。
　一御馬　越後又太郎　　　　　　　太平左衛門太郎
　二御馬　遠江三郎左衛門尉泰盛　　同じき十郎左衛門尉頼連
　三御馬　梶原上野太郎景綱　　　　同じき左衛門三郎景氏
　四御馬　尾藤次郎兵衛尉　　　　　備前左衛門三郎
　五御馬　足利次郎兼氏　　　　　　新田次郎

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうたん　　そうしゅう おんまとはじめ　いて　　きょうみょう　　ひらん　　たま　　　　およ　にじういちにんなり
建長八年(1256)正月大四日丙申。早旦。相州　御的始の射手の交名を披覽し給ふ。凡そ廿一人也。

しかれども　さんぴいちじゅんせず　いはゆる　りょうじょう　もう　やから
  然而、 參否一準不。 所謂、領状を申す輩。

　　はやかわのじろたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くどうのはちろうしろう
　早河次郎太郎　　　　　　　　　　工藤八郎四郎

　　ふせのいやさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おかもろしんひょうえのじょう
　布施弥三郎　　　　　　　　　　　岡本新兵衛尉

　　ひらしまのいやごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　よこみぞしちろうごろう
　平嶋弥五郎　　　　　　　　　　　横溝七郎五郎

　　たがやのいやごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こじまのまたさぶろう
　多賀谷弥五郎　　　　　　　　　　小嶋又次郎

　　ふじさわさこんしょうげん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおせのさぶろうさえもんのじょう
　藤澤左近將監　　　　　　　　　　大瀬三郎左衛門尉

　　たいらのしんさえもんさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　うんののやしろう
　平新左衛門三郎　　　　　　　　　海野矢四郎

　　しぶやのさぶろうさえもんたろう　　　　　　　　　　　　　　　　なんじょうひょうえろくろう
　澁谷三郎左衛門太郎　　　　　　　南條兵衛六郎

　　　　 さわ　　　　もう　 やから
　　障りを申す輩

　　こうづけのじうろう〔ともむら〕　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのじうろうさえもんのじょう
　上野十郎〔朝村〕　　　　　　　　　遠江十郎左衛門尉

　　でわのしちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おがさわらのひこじろう
　出羽七郎　　　　　　　　　　　　小笠原彦次郎

　　なんじょうはちろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　 こうののごろうひょうえんじょう　〔ゆきざね〕
　南條八郎兵衛尉　　　　　　　　　河野五郎兵衛尉〔行眞〕

　　なんじょうさえもんじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 すわのしろうひょうえのじょう
　南條左衛門次郎　　　　　　　　　諏方四郎兵衛尉

まえもっ　　こしょう　 やからのうち　 ともむら　 ゆきざね　　をい　　は おんきょな　　　 さんきんすべ　　のよし　 でんちゅう　をい　 じき　　これ　 あいふれ
前以て故障の輩之中、朝村・行眞に於て者恩許無し。參勤可し之由、殿中に於て直に之に相觸、

りょうじょう　　め　　たてま　られをはんぬ　これ たんのう　のひと　　こ　　　　　　よっ　　なり
 領状を召し奉つ被 訖。 是 堪能之人に越ゆる�@に依て也。

参考�@堪能の人に越えるは、名人。

現代語建長八年(1256)正月大四日丙申。早朝から、時頼さんは、弓始め式の射手の名簿をお見せしました。ほぼ十一人です。しかし、賛否があって意見は一致しませんでした。ようするに承知した人々は、
　早川次郎太郎祐泰　　　　工藤八郎四郎朝高
　布施弥三郎　　　　　　　岡本新兵衛尉重方
　平島弥五郎助経　　　　　横溝七郎五郎忠光
　多賀谷弥五郎重茂　　　　小島又次郎
　藤沢左近将監時親　　　　大瀬三郎左衛門尉惟忠
　平新左衛門三郎頼綱　　　海野矢四郎助氏
　渋谷三郎左衛門太郎重村　南条兵衛六郎

具合が悪いと云っている連中
　上野十郎結城朝村　　　　遠江十郎左衛門尉頼連
　出羽七郎二階堂行頼　　　小笠原彦次郎政氏
　南条八郎兵衛尉　　　　　河野五郎兵衛尉行真
　南条左衛門次郎　　　　　諏訪四郎兵衛尉

前もって具合が悪いと云ってる中で、結城朝村と河野行真は許可が出ません。出勤してくるように、御所で将軍が直に命じて、承知の文書を出させました。これは、弓の名人だからです。

参考このうち得宗被官は工藤、横溝、大瀬、頼綱、渋谷、南条。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 しょうぐんけ　　そうしゅう　おんていに みゆきはじめ　あ　　　べ　　　　よっ
建長八年(1256)正月大五日丁酉。�ﾘ。將軍家、相州の御亭于 御行始 有る可きに依て、

きょう　　しゅっししゅうはちじうごにんのきょうみょう　ちゅう　これ　　ひらん
今日の出仕衆八十五人之交名を注し之を披覽す。

ごてん　　　つ　　　　さんじうはちにん　もっ　　　ぐぶ　　　な　　　　　こ　　　こと　　いぜん りょうさんねんは　　そうしゅう これ　 えら　　　さた　せし　 たま
御點に就き�@、三十八人を以て供奉と爲す。此の事、以前 兩三年者、相州 之を撰び沙汰令め給ふ。

しか　　　　いま　　をい　　は　　はか　　くださる　　べ　　　　むね　　これ　 もうせし　 たま　　　　つ　　　　　ことし　はじ　　　　ごてん　　およ　　　　うんぬん　 ていご ののちしゅつご
而るに今に於て者、計り下被る可きの旨、之を申令め給ふに就き、今年始めて御點に及ぶと云々。亭午�A之後出御。

　ぐぶにん　〔　ほい　　　げぐくり　〕
供奉人〔布衣に下括〕

　　さきのうまごんのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むさしのかみともなお
　前右馬權頭　　　　　　　　　　　武藏守朝直

　　おわりのぜんじときあき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのかみときなお
　尾張前司時章　　　　　　　　　　遠江守時直

　　えちごのかみさねとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さがみうこんたいふしょうげんときさだ
　越後守實時　　　　　　　　　　　相摸右近大夫將監時定

　　ぎょうぶしょうゆうのりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのじろうきんとき
　刑部少輔教時　　　　　　　　　　尾張次郎公時

　　むつのいやしろうときもち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おな　　　　ろくろうよしまさ
　陸奥弥四郎時茂　　　　　　　　　同じき六郎義政

　　おな　　　　しちろうなりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　 むさしのごろうときただ
　同じき七郎業時　　　　　　　　　武藏五郎時忠

　　とおとうみのたろうきよとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なかつかさごんのだいゆういえうじ
　遠江太郎�C時　　　　　　　　　　中務權大輔家氏

　　あしかがのじろうかねうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おな　　　　さぶろうとしうじ
　足利次郎兼氏　　　　　　　　　　同じき三郎利氏

　　ながいのたろうときひで　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 でわのぜんじゆきよし
　長井太郎時秀　　　　　　　　　　出羽前司行義

　　さきのおおくらごんのしょうゆうともひろ　　　　　　　　　　　 あいだのじょうすけやすもり
　前大藏權少輔朝廣　　　　　　　　秋田城介泰盛

　　しもつけぜんじやすつな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いずものぜんじゆきかた
　下野前司泰綱　　　　　　　　　　和泉前司行方

　　みかわのぜんじよりうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすみぜんじただとき
　參川前司頼氏　　　　　　　　　　大隅前司忠時

　　ぬいどののとうもろつら　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのかみみつもり
　縫殿頭師連　　　　　　　　　　　遠江守光盛

　　かずさのすけながやす　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ　〔　いが　〕
　上総介長泰　　　　　　　　　　　式部太郎左衛門尉光政〔伊賀〕

　　おおそねしろうさえもんのじょうもりたね　　　　　　　　　　　おのでらしろうさえもんのじょうみちとき
　大曾祢四郎左衛門尉盛種　　　　　小野寺四郎左衛門尉通時

　　むとうさえもんのじょうかげより　　　　　　　　　　　　　　　　　おな　　　　じろうさえもんのじょうよりやす
　武藤左衛門尉景頼　　　　　　　　同じき次郎左衛門尉頼泰

　　でわのさぶろうゆきすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき
　出羽三郎行資　　　　　　　　　　和泉次郎左衛門尉行章

　　おきのさぶろうさえもんのじょうゆきうじ　　　　　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし
　隱岐三郎左衛門尉行氏　　　　　　薩摩七郎左衛門尉祐能

　　かまたのさぶろうさえもんのじょうよしうじ　　　　　　　　　　　ちくぜんじろうさえもんのじょうゆきより
　鎌田三郎左衛門尉義氏　　　　　　筑前次郎左衛門尉行頼

おんひきでものれい　　ごと　　　　ぎょけん　なかつかさごんのだいゆういえうじ　さきん　ぎょうぶしょうゆうのりとき　　はね　　あいだのじょうすけやすもり
御引出物例の如し。御釼は中務權大輔家氏。砂金は刑部少輔教時。羽は秋田城介泰盛。

　いちのおんうま　おわりにじろうきんとき　　　　　　　　　　　　すわのさぶろうさえもんのじょうもりつね
　一御馬　尾張次郎公時　　　　　　諏方三郎左衛門尉盛經

　　にのおんうま　とおとうみのたろうきよとき　　　　　　　　　　 おな　　　　じろうときみち
　二御馬　遠江太郎�C時　　　　　　同じき次郎時通

　さんのおんうま　ちくぜんじろうさえもんのじょうゆきより　　　 おな　　　　さぶろうゆきざね
　三御馬　筑前次郎左衛門尉行頼　　同じき三郎行實

参考�@御点に就きては、合点。
参考�A亭午は、丁午でまひる正午。

現代語建長八年(1256)正月大五日丁酉。晴れです。宗尊親王将軍家は、時頼さんの屋敷へお出かけ始めを予定してるので、今日の出勤者八十五人の名簿を書いてお見せしました。将軍が選んで印をつけたので三十八人をお供としました。この選考は今迄の二・三年は時頼さんが指示しておりました。しかし、今回は将軍にお決めになられるように、云いだしましたので、今年初めて将軍が選考し印をつけましたとさ。正午に出発です。
お供の人〔狩衣の正装で袴紐は足首で締めます〕
　前右馬権頭北条政村　　　武蔵守北条朝直
　尾張前司北条時章　　　　遠江守北条時直
　越後守北条実時　　　　　相模右近大夫将監北条時定
　刑部少輔北条教時　　　　尾張前司北条公時
　陸奥弥四郎北条時茂　　　同六郎塩田流北条義政
　同七郎業時　　　　　　　武蔵五郎時忠(後の宣時)
　遠江太郎清時　　　　　　中務權大輔足利家氏
　足利次郎兼氏　　　　　　同じき三郎足利利氏
　長井太郎三善時秀　　　　出羽前司二階堂行義
　前大蔵権少輔結城朝広　　秋田城介安達泰盛
　下野前司宇都宮泰綱　　　和泉前司二階堂行方
　三川前司新田頼氏　　　　大隅前司島津忠時
　縫殿頭中原師連　　　　　遠江守三浦芦名光盛
　上総介大曽祢長泰　　　　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　大曽祢四郎左衛門尉盛種　小野寺四郎左衛門尉通時
　武藤左衛門尉景頼　　　　同次郎左衛門尉武藤頼泰
　出羽三郎二階堂行資　　　和泉次郎左衛門尉二階堂行章
　隠岐三郎左衛門尉二階堂行氏　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　鎌田三郎左衛門尉義氏　　筑前次郎左衛門尉二階堂行頼
将軍への引き出物は何時もの通りです。刀は中務権大輔足利家氏。砂金は刑部少輔北条教時。鷹の羽は秋田城介安達泰盛。
　一の馬　尾張次郎北条公時　と　諏訪三郎左衛門尉盛経
　二の馬　遠江太郎北条清時　と　同次郎北条通時
　三の馬　筑前次郎左衛門尉二階堂行頼　と　同三郎二階堂行実

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きた　　じういちにち　　ねんし　　ごしんぱいたり　つるがおかはちまんぐう　ぎょさんあ　　べ　　　　　よっ　　　　  ぐぶにん　　 もよ　　さる
建長八年(1256)正月大七日己亥。來る十一日、年始の御神拝爲。 鶴岳八幡宮へ御參有る可きに依て、供奉人を催ほ被る。

おのおの　ほい　　き　　　　さんきんすべ　　のよし　　うんぬん
 各 布衣を着て、參勤可し之由と云々。

　　いちばん
　一番

　　　　こうづけじうろうともむら　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はやかわのじろたろう
　　上野十郎朝村　　　　　　　　　早河次郎太郎

　　　にばん
　二番

　　　　おかもとしんひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　ひらしまのいやごろう
　　岡本新兵衛尉　　　　　　　　　平嶋弥五郎

　　さんばん
　三番

　　　　こうののごろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　 くどうのはちろうしろう
　　河野五郎兵衛尉　　　　　　　　工藤八郎四郎

　　よんばん
　四番

　　　　ふせのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 よこみぞのしちろうごろう
　　布施三郎　　　　　　　　　　　横溝七郎五郎

　　　ごばん
　五番

　　　　たがやのいやごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ふじさわさこんしょうげん
　　多賀谷弥五郎　　　　　　　　　藤澤左近將監

　　ろくばん
　六番

　　　　おおせのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　 たいらのしんさえもんさぶろう
　　大瀬三郎左衛門尉　　　　　　　平新左衛門三郎

　　しちばん
　七番

　　　　こじまのいやじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 なんじょうひょうえろくろう
　　小嶋弥次郎　　　　　　　　　　南條兵衛六郎

　　はちばん
　八番

　　　　しぶやのさえもんたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うんののやしろう
　　澁谷左衛門太郎　　　　　　　　海野矢四郎

現代語建長八年(1256)正月大七日己亥。来る十一日に年始のお参りのために、鶴岡八幡宮へお出でになるので、お供の人を催促しました。それぞれ礼服の狩衣で出勤するようにとのことです。
　一番　上野十郎結城朝村　　　早川次郎太郎祐泰
　二番　岡本新兵衛尉重方　　　平島弥五郎助経
　三番　河野五郎兵衛尉行真　　工藤八郎四郎朝高
　四番　布施三郎行忠　　　　　横溝七郎五郎忠光
　五番　多賀谷弥五郎重茂　　　藤沢左近将監時親
　六番　大瀬三郎左衛門尉惟忠　平新左衛門三郎頼綱
　七番　小島弥次郎家範　　　　南条兵衛六郎
　八番　渋谷左衛門太郎朝重　　海野矢四郎助氏

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうしゅう　　おんてい　をい　ひょうじょう はじ　あ　　　　さきのうてんきゅう　いげ　　　ほい　　　き　　　しゅっし　　　　はいしゃく れい　　ごと
建長八年(1256)正月大十日壬寅。相州が御亭に於て評定 始め有り。前右典厩�@已下、布衣を着て出仕す。 盃酌 例の如し。

ごさんぐうｊはじ　みょうにちひつじょうのあいだ　　ぐぶにん　　もよ　　さる　　　　これひたたれ　き　　たいけんせし　　　さん　つかまつ　べ　　 のよし　 うんぬん　　たいりゃく しん　たてまつ
御參宮始め明日 必定 之間、供奉人を催ほ被る。是直垂を着て帶劔令め、參じ仕る可き之由と云々。 太略 進じ奉る。

いせのじろうさえもんのじょうは　　　しょろう　のよし　　もう　　　　とおとうみのさぶろうさえもんのじょう　 つい　　ぜひ の　とこう　　　もうさず　　うんぬん
伊勢次郎左衛門尉者、所勞之由を申す。遠江三郎左衛門尉は、遂に是非之左右を不申と云々。

おんまとはじ　きた　じうさんにちたるべ　　　　よっ　 さくじつ いて　じうはちにんのうち　 せいせん　かな　 ぶんじうにん　　いつて　　ばんさる　ところなり
御的始め來る十三日爲可き。仍て昨日射手十八人之中、�C撰に叶う分十人。五手を番被る�A所也。

あいふれ　のところ　おのおの　しん　たてまつ　うんぬん　　そ　　じょう　　かきよう
相觸る之處、 各　進じ奉ると云々。其の状の書樣は、

　　みぎ おのおの きた　　じうさんにち　　ほう　　ごと　 うのこくいぜん　　　ひがしみかど　 じんや　　まいらる　　べ　　 のじょう　　おお　　　 よっ　　めぐ　　　ところくだん　ごと
　右　各　來る十三日、法の如く夘尅以前に、東御門の陣屋へ參被る可き之状、仰せに依て廻らす所件の如し。

　　　　　　けんちょうはちねんしょうがつとおか
　　　建長八年正月十日

参考�@右典厩は、右馬權頭の唐名。
参考�A五手に番は、五班。

現代語建長八年(1256)正月大十日壬寅。相州時頼さんの家で、政務会議始め式がありました。前右典厩北条政村以下が、礼服の狩衣で出勤しました。盃ごとは何時もの通りです。初詣は明日は必ず実施するので、お供の人を催促しました。これは、鎧直垂を着て太刀を佩いて、出勤するようにとの事です。ほとんどが了承の返事を提出しました。
伊勢次郎左衛門尉二階堂行経は、病気だと云ってきてます。遠江三郎左衛門尉三浦泰盛は、とうとうどっちなのか返事をしていませんとさ。
弓矢初め式は、来る十三日です。そこで昨日射手18人のうち、旨くて選ばれたのは十人で、五班に組んだのです。連絡した所、それぞれ参加すると返事をよこしました。
その書状の書き方は、
　右のそれぞれ来る十三日は、規則通り間違いなく午前5時前に、東御門の詰所へ来るようにとの手紙は、将軍の命令によって回覧するのはこの通りである。
　　　　建長八年正月十日

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　たつのこく　たいはく たつかた　み　　　 しゅうじつしゅつげん　てん　へ　　なり
建長八年(1256)正月大十一日癸夘。�ﾘ。辰尅、太白 辰方に見ゆ。終日出見�@、天を經る也。

ひつじのこく　しょうぐんけ つるがおかぐう　ぎょさん
 未尅、 將軍家　鶴岡宮へ御參。

 ま 　　おくるま
先ず御車

 　おおそねのごろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　 かずさのたろうさえもんのじょう
　大曽祢五郎兵衛尉　　　　　　　　上総太郎左衛門尉

 　おおそねのさえもんたろうながより　　　　　　　　　　　　　　　といのしろうさねつな
　大曽祢左衛門太郎長頼　　　　　　土肥四郎實綱

 　おきのじろうさえもんのじょうとききよ　　　　　　　　　　　　　　ひごのしろうひょうえのじょうゆきさだ　〔　おおみ　〕
　隱岐次郎左衛門尉時�C　　　　　　肥後四郎兵衛尉行定〔大見〕

 　やまのうちのとうないさえもんさぶろうみちかど　　　　　　　 かまたのさぶろうさえもんのじょう
　山内藤内左衛門三郎通廉　　　　　鎌田三郎左衛門尉

 　ひらがのしんざぶろうこれとき　　　　　　　　　　　　　　　　　つちやのいやさぶろう
　平賀新三郎惟時　　　　　　　　　土屋弥三郎

 　かまたのじろうひょうえのじょうゆきとし　　　　　　　　　　　　　 ひごのいやとうじ
　鎌田次郎兵衛尉行俊　　　　　　　肥後弥藤次

 　　　　　 いじょうひたたれ　 き　　 たいけん　　　 おくるま　　 さゆう　　そうら
　　　以上直垂を着て帶釼し、御車の左右に候う。

ぎょけんやく　ひと
御釼役の人

 　さきのうまごんのかみ
　前右馬權頭

 ごちょうどやく
御調度役

 　おきのさぶろうさえもんのじょうゆきうじ
　隱岐三郎左衛門尉行氏

おんうしろ
御後

 　ぎょうぶしょうゆうのりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さがみしきぶのたいふときひろ
　刑部少輔教時　　　　　　　　　　相摸式部大夫時弘

 　えちごのうまのすけときちか　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むつのいやしろうときもち
　越後右馬助時親　　　　　　　　　陸奥弥四郎時茂

 　おな　　　　しちろうなりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりのじろうきんとき
　同じき七郎業時　　　　　　　　　尾張次郎公時

 　むさしのしろうときなか　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おな　　　　ごろうときただ
　武藏四郎時仲　　　　　　　　　　同じき五郎時忠

 　とおとうみのたろうきよとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 するがのしろうかねとき
　遠江太郎�C時　　　　　　　　　　駿河四郎兼時

 　びぜんのさぶろうながより　　　　　　　　　　　　　　　　　　 とうのなかつかさしょうゆうたねしげ
　備前三郎長頼　　　　　　　　　　東中務少輔胤重

 　なかつかさごんのだいゆういえうじ　　　　　　　　　　　　　　あしかがのさぶろうとしうじ
　中務權大輔家氏　　　　　　　　　足利三郎利氏

 　あしかがのかずささぶろうみつうじ　　　　　　　　　　　　　　　おやまのでわぜんじながむら
　足利上総三郎滿氏　　　　　　　　小山出羽前司長村

 　みかわのぜんじよりうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 でわのぜんじゆきよし
　三川前司頼氏　　　　　　　　　　出羽前司行義

 　あいだのじょうすけやすもり　　　　　　　　　　　　　　　　　　 いずものぜんじゆきかた
　秋田城介泰盛　　　　　　　　　　和泉前司行方

 　ながいのたろうときひで　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えっちゅうぜんじよりなり
　長井太郎時秀　　　　　　　　　　越中前司頼業

 　みうらのとおとうみのかみみつもり　　　　　　　　　　　　　　 すおうのぜんじただつな
　三浦遠江守光盛　　　　　　　　　周防前司忠綱

 　かずさのすけながやす　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおそねのじろうさえもんのじょうもりつね
　上総介長泰　　　　　　　　　　　大曾祢次郎左衛門尉盛經

 　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ　〔おんかさ　　てなが〕　　ひごのじろうさえもんのじょうためとき
　式部太郎左衛門尉光政〔御傘の手長�A〕肥後次郎左衛門尉爲時

 　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　　　　　　　　　 いずものじろうさえもんのじょうゆきあき
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　　和泉次郎左衛門尉行章

参考�@出見は、出現。
参考�A手長は、持って行って差しかける。

現代語建長八年(1256)正月大十一日癸卯。晴れです。午前8時頃、金星が東南東に見え、一日中出ていて空を廻りました。午後2時頃、宗尊親王将軍家は鶴岡八幡宮へお参りです。
まずは、牛車
　大曽祢五郎兵衛尉　　　　上総太郎左衛門尉長経
　大曽祢左衛門太郎長頼　　土肥四郎実綱
　隠岐次郎左衛門尉清時　　肥後四郎兵衛尉大見行定
　山内藤内左衛門三郎通廉　鎌田三郎左衛門尉義氏
　平賀新三郎惟時　　　　　土屋弥三郎
　鎌田次郎兵衛尉行俊　　　肥後弥藤次
　　　以上は、鎧直垂を着て太刀を佩いて、牛車の左右に居る。
刀持ちの人　前右馬権頭北条政村
弓矢を担いでいる人　隠岐三郎左衛門尉二階堂行氏
将軍の後ろを行く人
　刑部少輔北条教時　　相模式部大夫北条時弘
　越後右馬助北条時親　陸奥弥四郎北条時茂
　同七郎北条業時　　　尾張次郎北条公時
　武蔵四郎北条時仲　　駿河四郎北条兼時
　備前三郎名越長頼　　東中務少輔胤重
　中務権大輔足利家氏　足利三郎利氏
　足利上総三郎満氏　　小山出羽前司長村
　三川前司新田頼氏　　出羽前司二階堂行義
　秋田城介安達泰盛　　和泉前司二階堂行方
　長井太郎(大江)時秀　越中前司(宇都宮)横田頼業
　三浦遠江守時秀　　　周防前司島津忠綱
　上総介大曽祢長泰　　大曽祢次郎左衛門尉盛経
　〔将軍に傘を掲げる役〕
　式部太郎左衛門尉光政　肥後次郎左衛門尉藤原為時(天野カ？)
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　和泉次郎左衛門尉二階堂行章

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　 う　　　　じこく　　そうしゅう　にえどの　　 をい　　　　しもべ　　おとこひとり　ねじ　　　　さんじっかにち　え　たるべ　　　　うんぬん
建長八年(1256)正月大十二日甲辰。�ﾘ。夘の時尅、相州の贄殿�@に於て、下部の男一人寢死ぬ。卅ケ日の穢爲可きと云々。

参考�@贄殿(にえどの)は、台所。

現代語建長八年(1256)正月大十二日甲辰。晴れです。午前6時頃、時頼さんの台所で、下男が、寝たまま死んでいました。三十日の穢れだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　 おんまとはじ　　　　いて　じうにん　　ふたご　ど　これ　　い　　　　うんぬん

建長八年(1256)正月大十三日乙巳。�ﾘ。御的始め。射手十人。二五度之を射ると云々。

 　いちばん
　一番

 　　　　はやかのじろたろうすけやす　　　　　　　　　　　　　　 ひらしまのいやごろうすけつね
　　早河次郎太郎祐泰　　　　　　　平嶋祢五郎助經

 　　にばん
　二番

 　　　　よこみぞのしちろうごろうただみつ　　　　　　　　　　　　　たがやのいやごろうかげもち
　　横溝七郎五郎忠光　　　　　　　多賀谷弥五郎景茂

 　さんばん
　三番

 　　　　こうののごろうひょうえのじょうゆきざね　　　　　　　　　　 くどうのはちろうしろうともたか
　　河野五郎兵衛尉行眞　　　　　　工藤八郎四郎朝高

 　よんばん
　四番

 　　　　ふじさわのさこんしょうげんときちか　　　　　　　　　　　 しぶやのさえもんたろうともしげ
　　藤澤左近將監時親　　　　　　　澁谷左衛門太郎朝重

 　　ごばん
　五番

 　　　　うんののやしろうすけうじ　　　　　　　　　　　　　　　　 おかもとしんひょうえのじょうしげかた
　　海野矢四郎資氏　　　　　　　　岡本新兵衛尉重方

現代語建長八年(1256)正月大十三日乙巳。晴れです。弓矢初め式。射手は十人。二本づつ五回を二度射ましたとさ。
　一番　早川次郎太郎祐泰　　平島弥五郎助経
　二番　横溝七郎五郎忠光　　多賀谷弥五郎景茂
　三番　河野五郎兵衛尉行真　工藤八郎四郎朝高
　四番　藤沢左近将監時親　　渋谷左衛門太郎朝重
　五番　海野矢四郎資氏　　　岡本新兵衛尉重方

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　おうしゅう だいどころ　まいられ
建長八年(1256)正月大十四日丙午。霽。奥州 臺所に參被る。

さきのうてんきゅう　ぶしゅう　　おわりのぜんじときあき　　かもんのすけさねとき　でわのぜんじゆきよし　いげ　ひょうじょうしゅうら　　おな　　　　もっ　　さんこう
前右典厩・ 武州・尾張前司時章・ 掃部助實時・出羽前司行義已下の評定衆等、同じく以て參候す。

おうしゅう もうされ　　い　　　　　　 そうしゅうさんじっかにち　　けがれ　け　　 よっ　　ふさん
 奥州 申被て云はく。相州三十ケ日の穢の氣に依て不參。

しか　　　さくちょうしょにんしさい　　しらず　　　て　か　　 てい　はいらる　のあいだ　　すで　かまくらじゅう しょくえなり
而るに昨朝諸人子細を不知し而彼の亭へ入被る之間、已に鎌倉中 觸穢也。

しからば　しゅっしさる　　のじょう　　なん　 なんあ　　　　　や　　うんぬん
然者、出仕被る之條、何の難有らん哉と云々。

よっ　　 くらのかみちかいえ　　　もっ　　　みかわのかみのりたか　めされ　　おたずねあ　のところ　　か　　　まひと　　もう　　　　い
仍て内藏權頭親家を以て、參河守教隆を召被、御尋有る之處、彼の眞人�@申して云はく。

しょくえ　　をい　　は　　　きつじ　　はばか　な　　　ちょうきょうぶく　いた　　　　は　　　きつじ　　はばか　あ　　　　　ごしゅっしさら　　はばか　あ　　 べからず　うんぬん
觸穢に於て者、吉事に憚り無し。重輕服に至りて者、吉事に憚り有り。御出仕更に憚り有る不可と云々。

よっ　　ゆきよし　　もっ　　しゅっしせし　　たま　　べ　　　のよしそうしゅう　もうさる　　　　うんぬん
仍て行義を以て出仕令め給ふ可き之由相州に申被ると云々。

参考�@眞人は、清原陰陽師。

現代語建長八年(1256)正月大十四日丙午。晴れました。奥州駿河守北条重時さんが、台所へ来ました。前右典厩北条政村・武州北条朝直・尾張前司北条時章・掃部助北条実時・出羽前司二階堂行義以下の政務会議メンバーも同様に来ました。奥州重時さんが云はれるのには、「時頼さんが三十日の穢れの為来ません。しかし、昨日の早朝、一般の人が事情を知らずに、彼の屋敷へ入ってしまったので、すでに鎌倉中が穢れてしまいました。それならば、穢れついでに出仕しても何も問題ないでしょう？」だとさ。
そこで内蔵権頭親家に命じて、三河守清原教隆を呼んで、お尋ねした所、かの清原教隆真人が云うのには、「穢れについては、良い行事には遠慮はいりません。重いのも軽いのも服喪の場合は良い行事は遠慮すべきですが、執務については全く遠慮はいりません。」とのことです。
そこで、二階堂行義を使いにして出勤するように、時頼さんに伝えましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　おお　　　　つ　　　　　きょう　　そうしゅう しゅっしせし　 たま
建長八年(1256)正月大十五日丁未。�ﾘ。仰せに就き、今日、相州 出仕令め給ふ。

現代語建長八年(1256)正月大十五日丁未。晴です。重時さんからの言葉に従って、今日時頼さんは出勤しました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 えちぜんひょうごすけまさむね そっ　　〔　とし　ごじうし　〕　　　　にばんひきつけ　ゆうひつなり

建長八年(1256)正月大十六日戊申。 越前兵庫助政宗 卒す〔年五十四〕。二番引付の右筆也。

現代語建長八年(1256)正月大十六日戊申。越前兵庫政宗が亡くなりました〔年は五十四です〕。裁判担当官二班の筆記係です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ひゅうがのかみすけやす うれ　　もう　　ことあ　　　　　これしょうぐんけ ことし はじ　　　　ごがってん　 くは　　らる
建長八年(1256)正月大十七日己酉。　日向守祐泰　愁い申す事有り。是將軍家今年始めて御合點を加へ被る。

　ぐぶ　　　にんずう　 こと　 はか　　せし　 たま　　のところ　じょう ちゅう じゅん　あいだ　すで　りょうど　　ごしゅっし　あ　　　　いへど　 ごい　ろくい　　やからのうち
供奉の人數の事を計り令め御う之處、上 中 旬の間、已に兩度の御出仕有ると雖も五位六位の輩之中、

いっしん　　ごてん　　もる　　のじょう　　 も　　　こと　　　　しさい　あ　　　か　のよし　 しゅうしょう　　　うんぬん
一身が御點に漏る之條、若し殊なる子細有る歟之由、周章すと云々。

ないない そうしゅうう　もう　　　　なにごと　　これ　あ　　　　や　　のよしおお　　あ
 内々 相州に申す。何事か之有らん哉�@之由仰せ有り。

また　　にょぼう　 　ぞく　 ごんじょう　　　 ただ じねん　　も　　をはん　 か　のむね　　おお　 いださる　　　うんぬん　　そ　　ほか　　かたがた　もう　　　　 うんぬん
又、女房�Aに属し言上す。只自然�Bに漏れ畢ぬ歟之旨、仰せ出被ると云々。其の外、方々に申すと云々。

参考�@何事か之有らんやは、たいしたこっちゃない。
参考�A女房は、女官。
参考�B自然じねんは、思いもかけず。

現代語建長八年(1256)正月大十七日己酉。日向守宇佐美祐泰が、嘆き訴えてきている事があります。これは、宗尊親王将軍家が今年初めてのお供の選考名簿に合点をお加えになったのです。お供の人数を数えていた処、上旬と中旬の二度のお出かけがありましたが、五位六位の連中のうち、私だけが合点に漏れているのは、なにか特別な理由があるのかなあと、悩んでいたそうな。これを内々に時頼さんに話したところ、「大したこっちゃない気にするな。」と仰せがありました。もう一度、女官に頼んで上申しました。「何気なしに漏れてしまったのだろう。」と仰せになったそうな。その他にも漏れた人々に云ったそうな。

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吾妻鏡入門第四十六巻