吾妻鏡入門第四十七巻 　

正嘉元年(1257)七月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　にっちゅうこさめぬれ　　 えんかんのあいだ　かがのほういん　きう　　　こと　たてまつ　　きのう　なぬかび　　 みつ　　うんぬん
正嘉元年(1257)七月大一日癸丑。天�ﾘ。日中小雨灑る。炎旱之間、加賀法印祈雨の事を奉り、昨日七ケ日に滿と云々。

現代語正嘉元年(1257)七月大一日癸丑。空は晴です。日中に小雨が降りました。日照りが続いたので、加賀法印が雨乞いのお祈りを奉仕して、昨日七日目の満願なんだとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かんう　さが　　　　さんぬ　ふつかよ　　　　わかみやべっとうそうじょう　きう　　　ほう　　しゅうさる　　　うんぬん
正嘉元年(1257)七月大五日丁巳。甘雨下る。去る二日自り、若宮別當 僧正祈雨の法を修被ると云々。

現代語正嘉元年(1257)七月大五日丁巳。天の恵みの雨が降りました。先日の二日から鶴岡八幡宮筆頭僧正隆弁が雨乞いの祈りを捧げていたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そらはれ　いずみのぜんじゆきかた　もっ　　おんし　　な　　　　 おんうまぎょけんら を わかみやべっとうぼう　 つか　 さる
正嘉元年(1257)七月大八日庚申。天�ﾘ。和泉前司行方を以て御使と爲し、御馬御劔等於若宮別當坊に遣は被る。

　きう　　　ほう　　　ほうし　　　　　ののち　　いつかよ　　あめさが　　　　おな　　　　ろくしち りょうじつ はなは　あめなり
祈雨の法を奉仕する之後、五日自り雨下り、同じく六七 兩日 甚だ雨也。

現代語正嘉元年(1257)七月大八日庚申。空は晴です。和泉前司二階堂行方を使者として、馬と刀を鶴岡八幡宮筆頭の宿坊へ贈られました。雨乞いの祈りを捧げたのち、5日から雨が降り始め、6・7の両日は大雨だったのです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くも　　　　　ろくはら　　ひきゃくさんちゃく　　　さんぬ　いつか　しょうめいもんいん ほうぎょ のよしこれ　 もう
正嘉元年(1257)七月大十日壬戌。陰り。六波羅の飛脚參着す。去る五日、承明門院�@崩御之由之を申す。

しか　　　 ごさんじょういん　 おんとき　 ようめいもんいんのれい　 まか　　　じょうこう いつかにち　おんふくたるべ　　　　うんぬん
而して後三條院�Aの御時の陽明門院�B之例に任せ、上皇五ケ日の御服爲可きと云々。

参考�@承明門院は、土御門通親の養女で後鳥羽上皇の中宮。
参考�A後三条天皇は、在位1068−1073。
参考�B陽明門院は、後三条院の母親。

現代語正嘉元年(1257)七月大十日壬戌。曇りです。六波羅探題からの伝令が到着しました。先日の5日に、承明門院がお亡くなりになったと報告しました。それなので、後三条院の時代の陽明門院の例のとおりに、後嵯峨上皇は5日間の服喪だそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 くも　　　　くらごんのかみちかいえ しせつ　 な　　じょうらく　　　　にょいん　おんとこ　　よっ　　なり
正嘉元年(1257)七月大十二日甲子。陰り。内藏權頭親家使節と爲し上洛す。女院の御事に依て也。

現代語正嘉元年(1257)七月大十二日甲子。曇り。内蔵権頭親家は、幕府の派遣として京都へ上ります。承明門院のお弔いです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　よ　　　い　　　あめふ　　　　 まえはま　　とりい へん　　をい　　　　かんき　のれい　 まか　　　 ふうはくさい　おこなはれ

正嘉元年(1257)七月大十三日乙丑。�ﾘ。夜に入り雨降る。前濱の鳥居邊に於て、寛喜之例に任せ、風伯祭を行被る。

てんもんはくじためちかあそん　〔そくたい〕　これ　　ほうし　　　　 おんし　　　あだちさえもんたいふ　　〔　ほい　〕

天文博士爲親朝臣〔束帶〕之を奉仕す。御使は足立左衛門大夫〔布衣〕。

さいぶん　そう　きゅりょうひろのり　　せいしょ　 さだいじんほういんげんえ　 これ　　てんかほうねん　 ため　　ごきとう なり

祭文の草�@は給料�A廣範。�C書は左大臣法印嚴惠。是、天下豊稔の爲の御祈祷也。

参考�@草は、下書き。
参考�A給料は、給事部で内舎人(正八位下)を兼ねる。給事中が、大夫・博士・議郎などに他の官職を加える加官であったそうな。

現代語正嘉元年(1257)七月大十三日乙丑。晴れです。夜になって雨が降りました。御霊神社の前の浜の鳥居のあたりで、寛喜三年(1231.6.15)の例に習って、風の神に豊年を祈る風伯祭を行いました。天文博士の安倍為親〔正装の束帯〕で勤めました。幕府からの代参は足立左衛門大夫〔武士の正装の狩衣〕。祭に読み上げる文章の下書きは給事部広範で、清書は左大臣法印厳恵。これは、風邪を治めて天下の豊年のためのお祈りです。

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