吾妻鏡入門第四十七巻 　

正嘉元年(1257)八月小

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　いぬのこくおおぢしん
正嘉元年(1257)八月小一日癸未。�ﾘ。戌尅大地震。

現代語正嘉元年(1257)八月小一日癸未。晴です。午後8時頃大地震です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　くも　　　　ゆう　　こさめ　ふ　　　みなみかぜ
正嘉元年(1257)八月小十二日甲午。陰り。夕に小雨降る。南風。

　だいじじ　　　くよう　　あいだ　こと　　ひぜんぜんじ　　みついさえもんのじょう　　まつばにゅうどうら おお　　 うけたまは　 おんみょうじ　 あいともな
大慈寺の供養の間の事、肥前々司・三井左衛門尉・松葉入道等仰せを奉り、陰陽師を相伴ひ、

そうぶぎょう　ひたちにゅうどうぎょうじつ　いえ　　むか　　これ　　あいだん
 惣奉行　常陸入道行日�@の家へ向ひ之を相談ず。

はるかた　はるもち　ひろすけ　もちひら　　ふみもとら　おのおのべっし　　もっ　　　　おんかたたが　あ　　　べ　　　 のよし 　 かん　　もう
�ﾘ賢・�ﾘ茂・廣資・以平・文元等、各　別紙を以て、御方違へ有る可き之由を勘じ申す。

ただ　 もちひらもう　　　　い　　　　　　　 ひごろ　　だいぼんど　　ひと　　　　　じけ　　　　さた たる のよし　　うえは ごちょうもん のぎ　　よっ　　　　おんかたたが　 あ
但し以平申して云はく。日來の大犯土�A、偏へに寺家の沙汰爲之由、上者御聽聞之儀に依て、御方違へ有り。

はなは　もっ　　かんしんせず　うんぬん　　しか　　　　くよう　　いた　　　　は　　もっぱ　　おんさたたり　　かたたが　　な　　　　て　おんいで　　ことあ
 太だ以て甘心不と云々。而るに供養に至りて者、專ら御沙汰爲。方違へ無くし而御出の事有り。

もっと　そ　　 はばか　あ　　　べ　　　のよし　　しゅうぎちじょう　　　　うんぬん

尤も其の憚り有る可き之由、衆議治定すと云々。

参考�@常陸入道行日は、二階堂行久。
参考�A犯土は、土を掘るので地鎮祭。

現代語正嘉元年(1257)八月小十二日甲午。曇りです。夕方に小雨が降り、南風が吹きました。大慈寺の法要について、肥前前司藤原・三井左衛門尉・松葉入道次郎助宗は、命じられて陰陽師を連れて、修繕総監督の常陸入道行日二階堂行久の家へ行って相談しました。地鎮祭の儀式は、全て寺の関係者の分担であるのに、将軍がお経を聞きに出席するに当たっては、方角替えがありました。たかがその程度で方角替えをするのは、全く感心しません。それなので、修理開眼供養に至っては将軍の主催ですよ。方角替えをなくして出席するなんて、絶対に差し障りがあるはずですと、意見が一致し決めましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 つしまのかみうじのぶ　　あす　　ほうじょうえ　に　ごさんぐう　ぐぶ　　　にんずうたるべ　　　のよし　　おお　 いださる
正嘉元年(1257)八月小十四日丙申。對馬守氏信、明日の放生會于御參宮供奉の人數爲可き之由、仰せ出被る。

よっ　 あいもよお　べ　　　のむね　 ゆきかたおお　を えつしゅう　つた　　　　うんぬん
仍て相催す可き之旨、行方仰せ於越州に傳うと云々。

現代語正嘉元年(1257)八月小十四日丙申。対馬守佐々木氏信は、明日の鶴岡八幡宮の放生会にお供をするメンバーに入れるよう仰せになられました。そこで、催促するように、二階堂行方は越後守北条実時に伝えたそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　　ゆう　　あめふ　　　つるがおか　ほうじょうえ　　しょうぐんけ ぎょしゅつ いげ れい　　ごと
正嘉元年(1257)八月小十五日丁酉。�ﾘ。夕に雨降る。鶴岳の放生會。將軍家 御出 已下例の如し。

せんじん　ずいへい
先陣の随兵

　 かわごえのじろうつねしげ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごとういきのさえもんのじょうもとより
　河越次郎經重　　　　　　　　　　　後藤壹岐左衛門尉基頼

　 じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　　　　　　　　　　　　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき
　城四郎左衛門尉時盛　　　　　　　　和泉次郎左衛門尉行章

　 でわのさぶろうさえもんのじょうゆきしげ　　　　　　　　　　　　　ひたちのじろうひょうえのじょうゆきかつ
　出羽三郎左衛門尉行重　　　　　　　常陸次郎兵衛尉行雄

　 ながいのたろうときひで　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ちばのすけたねより
　長井太郎時秀　　　　　　　　　　　千葉介頼胤

　 むつのしちろうなりとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのしちろうときもと
　陸奥七郎業時　　　　　　　　　　　遠江七郎時基

つぎ　まえがけ
次に前駈

つぎ　おんくるま
次に御車

　 いせのじろうさえもんのじょうゆきつね　　　　　　　　　　　　　　　おきのじろうさえもんのじょうとききよ
　伊勢次郎左衛門尉行經　　　　　　　隱岐次郎左衛門尉時�C

　 かじわらこうづけのさぶろうかげうじ　　　　　　　　　　　　　　　　　といのしろうさねつな
　梶原上野三郎景氏　　　　　　　　　土肥四郎實綱

　 ひごのろくろううえもんのじょうときかげ　　　　　　　　　　　　　　ぜんのじろうさえもんのじょうやすあり
　肥後六郎右衛門尉時景　　　　　　　善次郎左衛門尉康有

　 おおそねたろうながより　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひごのさぶろうためなり
　大曽祢太郎長頼　　　　　　　　　　肥後三郎爲成

　 ぜんのさえもんじろうもりむら　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすがさえもんしろう
　善左衛門次郎盛村　　　　　　　　　大須賀左衛門四郎

　 かずさのさぶろうよしやす　〔　おおそね　〕　　　　　　　　　　　　　ひらがしんざぶろうこれとき
　上総三郎義泰〔大曽祢〕　　　　　　 平賀新三郎惟時

　 こいずみさえもんしろうよりゆき　　　　　　　　　　　　　　　　　　かまたのじろうひょうえのじょうゆきとし
　小泉左衛門四郎頼行　　　　　　　　鎌田次郎兵衛尉行俊

　 ひごのしろうひょうえのじょうゆきさだ
　肥後四郎兵衛尉行定

　　　　　　いじょうひたたれ　たいけん　　　おくるま　　 さゆう　　そうら
　　　以上直垂に帶釼し、御車の左右に候う。

ぎょけん　 えき　 ひと
御釼の役の人

　 むさしのかみともなお
　武藏守朝直

　ごちょうど

御調度

　 むとうさえもんのじょうよりやす
　武藤左衛門尉頼泰

つぎ　おんうしろ
次に御後

　ごい　　〔　ほい　　　　げぐく　　〕
五位〔布衣に下括り〕

　 とおとうみぜんじときなお　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぎょうぶしょうゆうのりとき
　遠江前司時直　　　　　　　　　　　刑部少輔教時

　 とおとうみうまのすけきよとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりさこんたいふしょうげんきんとき
　遠江右馬助�C時　　　　　　　　　　尾張左近大夫將監公時

　 むさしさこんたいふしょうげんときなか　　　　　　　　　　　　　　　みんぶだいゆうときたか
　武藏左近大夫將監時仲　　　　　　　民部大輔時隆

　 あいだのじょうすけやすもり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しもつけぜんじやすつな
　秋田城介泰盛　　　　　　　　　　　下野前司泰綱

　 ながとぜんとときとも　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いずみのぜんじゆきかた
　長門前司時朝　　　　　　　　　　　和泉前司行方

　 ひゅうがのかみすけやす　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かずさぜんじながつね
　日向守祐泰　　　　　　　　　　　　上総前司長經

　 だいざいのごんのしょうにかげより　　　　　　　　　　　　　　　　　つしまのかみうじのぶ
　大宰權少貳景頼　　　　　　　　　　對馬守氏信

　 いわみのかみむねとも
　石見守宗朝

ろくい　　〔　ほい　　　げぐく　〕
六位〔布衣に下括り〕

　 しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ　　〔　みうら　〕　　　　　　　こうづけのたろうさえもんのじょうかげつな
　式部太郎左衛門尉光政〔三浦〕　　　上野太郎左衛門尉景綱

　 さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　　　　　　　　　　　　　みうらのしんさえもんのじょうときちか
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　　　三村新左衛門尉時親

　 ぜんのうえもんのじょうやすなが　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むとううこんしょうげんかねより　〔おんかさ　　てなが　〕
　善右衛門尉康長　　　　　　　　　　武藤右近將監兼頼〔御笠の手長�@〕

こうじん　ずいへい
後陣の随兵

　 むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　するがのごろうみちとき
　武藏五郎時忠　　　　　　　　　　　駿河五郎通時�A

　 しもつけのしろうかげつな　〔うつのみや〕　　　　　　　　　　　　　　たけいしのさぶろうさえもんのじょうともたね
　下野四郎景綱〔宇都宮〕　　　　　　武石三郎左衛門尉朝胤

　 しぶやのさえもんのじょうたけしげ　　　　　　　　　　　　　　　　　あだちのたろうさえもんのじょうなおもと
　澁谷左衛門尉武重　　　　　　　　　足立太郎左衛門尉直元

　 こうづけのじうろうともむら　〔　ゆうき　〕　　　　　　　　　　　　　　　すおうのしろうひゅえのじょうやすとも
　上野十郎朝村〔結城〕　　　　　　　周防四郎兵衛尉泰朝

　 ちばのしちろうたろうもろとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすがのしんさえもんのじょうともうじ
　千葉七郎太郎師時　　　　　　　　　大須賀新左衛門尉朝氏

かいろう　　おんざのあいだ　　さがみのかみまさむら　むさしのかみながとき　むさしぜんじともなお　おおすみぜんじちかかず　しもつけぜんじやすつな　さきのだざいしょうにためすけ
廻廊に御座之間、相摸守政村・武藏守長時・武藏前司朝直・大隅前司親員・下野前司泰綱・前大宰少貳爲佐・

びんごのぜんじやすもち　かじわらこうづけぜんじかげとしら　　　そ　ところ　こうじら　　　うんぬん
備後前司康持・梶原上野前司景俊等、其の所に候被ると云々。

参考�@手長は、物を運ぶ係。
参考�A駿河五郎通時は、伊具流北条氏。義時の末っ子で陸奥國伊具郡を貰う。

現代語正嘉元年(1257)八月小十五日丁酉。晴れですが、夕方になって雨が降りました。鶴岡八幡宮の放生会です。宗尊親王将軍家のお出ましは何時もの通りです。
先を行く武装儀仗兵
　河越次郎経重　　　　　　　　後藤壱岐左衛門尉基頼
　城四郎左衛門尉安達時盛　　　和泉次郎左衛門尉二階堂行章
　出羽三郎左衛門尉二階堂行重　常陸次郎兵衛尉二階堂行雄
　長井太郎時秀　　　　　　　　千葉介頼胤
　陸奥七郎北条業時　　　　　　遠江七郎時基
次が露払い
次に将軍の牛車
　伊勢次郎左衛門尉行経　隠岐次郎左衛門尉時清
　梶原上野三郎景氏　　　土肥四郎実綱
　肥後六郎右衛門尉時景　次郎左衛門尉三善康有
　大曽祢太郎長頼　　　　肥後三郎天野為成
　左衛門次郎三善盛村　　大須賀左衛門四郎朝氏
　上総三郎大曽祢義泰　　平賀新三郎惟時
　小泉左衛門四郎頼行　　鎌田次郎兵衛尉行俊
　肥後四郎兵衛尉行定
　　　以上は、鎧直垂を着て、太刀を佩き、牛車の左右に居る。
刀持ちの人
　武蔵守北条朝直
弓矢を肩に掛ける人
　武藤左衛門尉頼泰
次に将軍の後ろについていく人
五位〔狩衣で袴は足首縛り〕
　遠江前司北条時直　　　刑部少輔北条教時
　遠江右馬助北条清時　　尾張左近大夫将監北条公時
　武蔵左近大夫将監時仲　民部大輔時隆
　秋田城介安達泰盛　　　下野前司宇都宮泰綱
　長門前司笠間時朝　　　和泉前司二階堂行方
　日向守宇佐美祐泰　　　上総前司大曽祢長経
　太宰権少弐武藤景頼　　対馬守佐々木氏信
　石見守宗朝
六位〔狩衣で袴は足首縛り〕
　式部太郎左衛門尉三浦光政　上野太郎左衛門尉梶原景綱
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　三村新左衛門尉時親
　右衛門尉三善康長　　　　　武藤右近将監兼頼〔日笠を持ってます〕
後ろを行く武装儀仗兵
　武蔵五郎時忠　　　　　　　駿河五郎通時
　下野四郎宇都宮景綱　　　　武石三郎左衛門尉朝胤
　渋谷左衛門尉武重　　　　　足立太郎左衛門尉直元
　上野十郎結城朝村　　　　　周防四郎兵衛尉泰朝
　千葉七郎太郎師時　　　　　大須賀新左衛門尉朝氏
八幡宮の回廊に座っている間、相模守政村・武蔵守長時・武蔵前司朝直・大隅前司島津親員・下野前司宇都宮泰綱・前太宰少弐狩野為佐・備後前司大田康持・梶原上野前司景俊たちは、そこに控えていましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はなは　あめ　しょうぐんけつるがおか　おんいで
正嘉元年(1257)八月小十六日戊戌。甚だ雨。將軍家鶴岳へ御出。

ひつじ　なな　　　いささ　はれ　　ぞく　のあいだ　　やぶさめら　ぶい　　　これ　　すいこうされ　ところなり
未の斜め�@に聊か�ﾘに属す之間、流鏑馬等無爲�Aに之を遂行被る所也。

参考�@未斜めは、未の終わり頃で午後三時過ぎ。
参考�A無為は、無事。戦では勝利。病では治る。

現代語正嘉元年(1257)八月小十六日戊戌。土砂降りです。宗尊親王将軍家は鶴岡八幡宮へお出かけです。午後3時過ぎになって多少晴れて来たので、流鏑馬など馬場神事は問題なく実施できました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　　ゆう　　あめふ　　　　ひゅうぎあ　　　　　だいじじ　くようのあいだ　　おんかたたが　あ　　べ
正嘉元年(1257)八月小十七日己亥。�ﾘ。夕に雨降る。評議有り�@。大慈寺供養之間、御方違へ有る可し。

ごほんじょ　　さいみょうじたる　べ　　のよしこれ　　さだ　　らる
御本所は最明寺爲可き之由之を定め被る。

おんみょうどう もう　　　　 い　　　　　　　　だいじじ　は　　さいみょうじ よ　　とうほう　　あいあた　　　　しか　　べからず　　うんぬん
 陰陽道 申して云はく。大慈寺者、最明寺自り東方に相當り、然る不可と云々。

よっ　　ひのでまえ　　　おんみょう　やから　あいともな　さんじょう　のぼ
仍て日出前に、陰陽の輩を相伴い 山上に登る。

ほうがく　　さゆう　　ただ　　　　もう　　べ　　のむね　　せいさえもんのじょうみつさだ　あんどうさえもんのじょうみつなりあ　　おお　　らる
方角の左右を糺し、申す可き之旨、�C左衛門尉滿定・安東左衛門尉光成等に仰せ被る。」

ばん　　およ　　　くらごんおかみちかいえ きょうとよ　　　きさん
晩に及び、内藏權頭親家�A京都自り歸參す。

参考�@評議有りは、評定衆の会議。
参考�A内藏權頭親家は、加賀守藤原親任の子。建長4年(1252)6代将軍宗尊親王の鎌倉下向に随行。承明門院の崩御で使節として7月12日に出発した。

現代語正嘉元年(1257)八月小十七日己亥。晴れですが、夕方に雨が降りました。政務会議があって、大慈寺の修繕開眼供養に、方角替えをすることになりました。出発現在地は、最明寺にしようと決めました。陰陽師が云うのには、「大慈寺は最明寺から東に当るのよくありません。」との事です。そこで日の出前に、陰陽師達を引き連れて山上に登りました。方角の左右を調べて報告するように、清原左衛門尉満定・安東左衛門尉光成に命じました。」
夜になって、内蔵権頭藤原親家が京都から帰って来ました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　ひつじのこく　みつさだ　みつなりなら　　　はるもち　ためちか　ひろすけ　いげ　　おんみょうじら　ひょうじょうしょ　まい
正嘉元年(1257)八月小十八日庚子。�ﾘ。未尅、　滿定・光成并びに�ﾘ茂・爲親・廣資已下の陰陽師等 評定所に參り、

おのおのもう　　　　い　　　　　　　けさ　みめい　　　ま　　にしみかどやま　　のぼ　　　　ときにざんげつにし　 あ　　　　　ひひがし　　　い
 各 申して云はく。今朝未明、先ず西御門山へ登る。時于殘月西に在り。日東より出ず。

かれこれほうがく　ただ　　　さいみょうじ　よ　　　だいじじ　　　さ　　　　 たついぬ　 あいあた　　　　さいみょうじ　　ようふくじ　　　うとり　　あいあた
彼是方角を糺し、最明寺自り大慈寺を指す。辰戌に相當る。最明寺と永福寺は夘酉に相當る。

つい　 ひきがやつやま　 いた　　　ごしょ と　さきのびしゅうときあき　なごえていこれ　 み　　　　なんぼくなり　　せんねんたつかた　のよしこれ　　もう　　　　うんぬん
次で比企谷山に到る。御所与前尾州時章の名越亭之を見る。南北也。先年辰方之由之を申す云々。

か　　 たび　　　うかがいみざるか　うんぬん　　　さた　あ　　　　　いきのぜんじやすつな　やくしどう　　さんそううよろ　　　　　べ　　　のよしこれ　　さだ　　らる
彼の度には窺見不歟と云々。沙汰有り。壹岐前司泰綱が藥師堂の山庄宜しかる可き之由之を定め被る。

現代語正嘉元年(1257)八月小十八日庚子。晴れです。午後2時頃、清原満定・安東光成それと安陪晴茂・為親・広資以下の陰陽師達が御所にやって来て、それぞれが云うのには、「今朝の未明にまず西御門の山に登りました。その時は、未だ月が西にあって、日が東から上りはじめました。色々と方角を調べて、最明寺から大慈寺を指して辰戌(東南東と西北西)にあたり、最明寺と永福寺は卯酉(東と西)にあたります。
次に比企谷の山に行きました。御所と前尾州北条時章の名越亭を見ると、南北でした。以前には、辰(東南東)だったと報告していました。その時はちゃんと見なかったのではないでしょうか。」との事です。決定しました。壱岐前司佐々木泰綱の薬師堂山荘が良いだろうとお決めになられました。

推測この記事から察すると、最明寺と大慈寺の辰戌、最明寺と永福寺の卯酉は若宮大路を南北としている。北条氏の名越亭は、釈迦堂谷上ではない。若宮大路を南北とすると本覚寺あたりになり、正南なら安養院あたりになる。なお、当時の鎌倉の山は良く見渡せるので、殆ど木が無かったようだ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  はれ　　　だいじじ　くよう　　　　まんだらぐ　　　　だいあじゃりら　　　 ことひょうぎあ
正嘉元年(1257)八月小廿一日癸夘。霽。大慈寺供養の曼陀羅供は大阿闍梨等の事評議有り。

ひとびと　　いけんおなじ　せず　いへど　　けんちょうのれい　 まか　　　さんみそうじょうらいけん　あんじょうじそうじょうりょうゆ　わかみたべっとうそうじょうりゅうべん
人々の意見 同う不と雖も、建長之例に任せ、三位僧正頼兼・安祥寺�@僧正良瑜・若宮別當僧正隆辨・

まつどのほういんりょうき　　　　　　　　　　　　　　　　　　だいじんほういん　　　　　　　 　　　　　　いえら なり
松殿法印良基�A〔□□□□□□□□〕□(左)大臣法印□□(厳恵)□□□□□(日光法印尊)家等也。

よにん　　　　　　　 　くじ　　　もっ　ぶやく　さだ　　らる　　べ　　　　　うんぬん
四人□□□孔子�Bを以て賦と定め被る可きと云々。

か　　　ろく　　　　　　　　　　　　か　　　はこに　い　　　　ほんがん しょうりょう うだいじんけ ほけどう べっとう　のもと　　つか　され
彼の六□(合)□□□□□を書き函于入れ、本願 聖靈 右大臣家法華堂�C別當之許へ遣は被、

なぬかにち　　　ごま　　　しゅう　　　ののち　　いちごう　　と　　　すす　 べ　　　 のよしおお　 くださる　　　せいさえもんのじょう ぶぎょうたり
七ケ日の護摩を修する之後、一合を執り進む�D可し之由仰せ下被る。�C左衛門尉 奉行爲。

つぎ　がんもん　　そう　　こと　　しげのりあそん　そ　　やくたるべ　　のところ　 つねのりきょう　ふっか　　あた　　なり
次に願文の草�Eの事、茂範朝臣其の役爲可き之處、 經範卿 服暇に中る也。

しか　　　 のりたかまひと　せんき　　まか　 ふく　 のぞ　　せし　　　　かきすす　 べ　　 か　のよし これ　 もう　　　　いへど　　しそくしゅうさいひろのり すで　たいぎょう　をはんぬ
而るに教隆眞人�F先規に任せ服を除か令め、書進む可き歟之由之を申すと雖も、子息秀才�G廣範 既に大業し畢。

か　　　あそん　　おお　　らる　　べ　　　のむね　 おな　　　 これ　　さだ　 らる　　　　うんぬん
彼の朝臣に仰せ被る可し之旨、同じく之を定め被ると云々。

参考�@安祥寺は、京都市東山区。
参考�A松殿法印良基は、松殿流藤原氏。
参考�B孔子は、くじ引き。
参考�C右大臣家法華堂は、勝長寿院内に合ったお思われる。法華堂は二間四方で別当が居るので寺化していたようだ。
参考�D一合を執り進めは、ひと箱を取って。
参考�E草は、下書き。
参考�F眞人は、大和朝廷で与えられた性(かばね)。村主(すぐり)も同じ。臣籍降下した元天皇家が真人を名乗る。
参考�G秀才は、得業士で役人を作るための大学を出た人。鎌倉時代には大学はないので成功(じょうごう)で与えられた名。

現代語正嘉元年(1257)八月小二十一日癸卯。晴れました。大慈寺修繕開眼の曼荼羅供養は、大阿闍梨等について評定会議がありました。人々の意見がまちまちなので、建長年間の例の通りに、�@三位僧正頼兼・�A安祥寺僧正良瑜・�B若宮別当僧正隆弁・�C松殿法印良基〔〇〇〇〇〇〇〇〇〕・�D左大臣法印厳恵・�E日光法印尊家等です。四人〔〇〇〇〕くじを使ってぶやくを決めるようにとの事です。その六つの箱〔〇〇〇〇〇〕に書いて大箱に入れ、中心の精霊となる実朝さまの法華堂の責任者の所へ渡して、七日の護摩炊きをした後で、一つの箱を取り出すようにと仰せになられました。清原左衛門尉満定が担当です。次に神様への願文の草案について、前大内記茂範さんをその役にしようとしましたが、経範さんの服喪中なのです。それなら教孝真人に先例に習って喪を祓わせて、書かせたらどうだと云ってますが、息子の秀才職の広範がすでに大成しております。その彼に云いつけるように、同様にお決めになりましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　いぬのこくおおぢしん　おとあ　　　　じんじゃぶっかくいちう　　　　て　まった　な　　　　さんがく　 たいほう　　じんおく　 てんとう
正嘉元年(1257)八月小廿三日乙巳。�ﾘ。戌尅大地震。音有り。神社佛閣一宇とし而全き無し。山岳は頽崩。人屋は顛倒。

ついぢ　みなことごと　はそん　　　　しょしょ　　ち　　さ　　　　　 みずわきいで　　　なかのげばばしへん　　ち　れっぱ　　　　そ　　　なかよ　　 かえんもえいで　　　いろあお　　うんぬん
築地�@は皆悉く破損す。所々の地は裂け、水涌出る�A。中下馬橋 邊の地裂破し、其の中自り火炎燃出る�B。色��と云々。」

きょう　　　　だいじじ　　くよう　　　おんふせ　　こと　　　さた　いた　　べ　　　のよし　　みぎょうしょを　　ごけにんら　　　くださる　　なり
今日、大慈寺供養の御布施の事、沙汰致す可き之由、御教書於御家人等に下被る也。

参考�@築地は、掻揚げの土手。
参考�A所々の地は裂け、水涌出るは、液状化現象。
参考�B中下馬橋邊云々は、太古はラグーンであったらしいのでメタンガスでも噴き出したのであろう。

現代語正嘉元年(1257)八月小二十三日乙巳。晴れです。午後8時頃大地震です。地鳴りの音が有りました。神社仏閣一軒たりとも無事ではありませんでした。山々は崖崩れを起こし、人家は倒れ、築地は皆すべて破壊されました。所々の地面が割れて、液状化現象を起こしました。中の下馬橋へんでは、地面が避けてその中から炎が燃え出ています。色は青だそうです。」
今日、大慈寺供養のお布施について、命令するように将軍からの命令書を御家人達に配りました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　あめふ　　　　　ぢしん しょうどう　ごろくど
正嘉元年(1257)八月小廿五日丁未。雨降る。地震 小動五六度。

ちくぜんじろうさえもんのじょうゆきよりぶぎょう　　な　　　　　ぢしん　　よっ　　　ごきとう　　　いた　　べ　　　のよし　　ごじそう　なら　　　おんみょうどうのやから　 おお　 くださる
筑前次郎左衛門尉行頼奉行と爲し、地震に依て御祈祷を致す可き之由、御持僧并びに陰陽道之輩に仰せ下被る。

また　しょうちょうじゅいん ぞうえい あ　　べ　　　のよし　　おな　　　　だいぎょうじ　ぬいどののとうもろつら　いきぜんじもとまさ　　びんごぜんじやすもち ら　　おお　 らる　　なり
亦、勝長壽院�@造營 有る可き之由、同じく大行事縫殿頭師連・壹岐前司基政・備後前司康持等に仰せ被る也。

また　　ぞうえい　　ざっしょう　さだ  らる　　　　ほんどう　〔しょうちょうじゅいん　 ごう　　　　　これなり　〕　　　さいみょうじぜんしつ　　ごさた
又、造營の雜掌�Aを定め被る。本堂〔勝長壽院と号すは是也〕は最明寺禪室の御沙汰。

みろくどう　　さきのぶしゅう　　ごぶつどう　ぷしゅうぜんもん　さんじゅうのとう　そうしゅう
弥勒堂は前武州。五佛堂は奥州禪門。三重塔は相州。

参考�@勝長壽院は、昨年暮れに燃えている。
参考�A雜掌は、本来事務官だが、ここでは資金提供者を云ってるようだ。

現代語正嘉元年(1257)八月小二十五日丁未。雨降りです。地震ですが小ゆれが五・六回です。筑前次郎左衛門尉二階堂行頼が担当して、地震があったので将軍の為の災害除けの祈祷をするように、身辺守りの坊主や陰陽師の連中に命じられました。又、勝長寿院を再建するように、同様に大行事の縫殿頭中原師連・壱岐前司後藤基政・備後前司三善康持に命じられたのです。
又、造営の費用提供の担当達をお決めになりました。本堂〔中心の勝長寿院がこれです〕は、最明寺禅室北条時頼の負担。弥勒堂は前武州北条朝直、五仏堂は奥州禅門北条重時、三重塔は、相州北条政村です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　はれ　　 ほけどう　　はこのうちいちごうこれ　　と　　　すす　　　　ひらんのところ　　さんみそうじょうらいけん　みょうじなり
正嘉元年(1257)八月小廿八日庚戌。�ﾘ。法華堂の凾之内一合之を取り進め、披覽之處、三位僧正頼兼が名字也。

よっ　　そ　　　ざ　よ　　　　いずみのぜんじゆきかた　だざいごんのしょうにかげよりら　 もっ　　　　　だいじじ　くよう　　まんだらぐ　　　　だいあじゃり　たるべ
仍て其の座自り、和泉前司行方・太宰權少貳景頼等を以て、大慈寺供養曼陀羅供の大阿闍梨爲可き、

ひら　さんしゅうはっく　 あいともな　さんきんさる　　べ　　　のよし　　そうじょう　つか　　　ふれらる　　　　うんぬん
平の讃衆八口を相伴ひ參勤被る可き之由、僧正に遣はし觸被ると云々。

現代語正嘉元年(1257)八月小二十八日庚戌。晴れです。実朝法華堂の大箱のうちから小箱一つを取り出して提出し、将軍が見た処、三位僧正頼兼の名でした。そこでその場から、和泉前司二階堂行方・太宰権少弐武藤景頼を使って、大慈寺開眼の曼荼羅供養の指導僧大阿闍梨と決め、お供の坊主8人を連れて参加し勤めるように、僧正に伝言させましたとさ。

九月へ

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