吾妻鏡入門第四十八巻 　

正嘉二年(1258)正月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　　おうばん　〔そうしゅうぜんしつ　おんさた　〕　　りょうこくし　おおびさし　こう　　らる　　　　そ　　　ほかていじょう　とうざいに　ちゃくざ
正嘉二年(1258)正月大一日辛亥。�ﾘ。垸飯〔相州禪室の御沙汰〕。兩國司�@大庇�Aに候じ被る。其の外庭上の東西于着座す。

にしのざ
西座

　　むさしのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おわりのぜんじ
　武藏前司　　　　　　　　　尾張前司

　　とおとうみのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　 えちごのかみ
　遠江前司　　　　　　　　　越後守

　　ぎょうぶしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　　　  むつのろくろう
　刑部少輔　　　　　　　　　陸奥六郎

　　えちごのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むつのしちろう
　越後四郎　　　　　　　　　陸奥七郎

　　でわのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しもつけぜんじ
　出羽前司　　　　　　　　　下野前司

　　なわぎょうぶごんのしょうゆう　　　　　　　　　　　 いずみのぜんじ
　那波刑部權少輔　　　　　　和泉前司

　　ながとのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 たんごのかみ
　長門前司　　　　　　　　　丹後守

　　えのいわみぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　 あいだのじょうすけ
　江石見前司　　　　　　　　秋田城介

　　ながいのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちくぜんのじろうさえもんのじょう
　長井太郎　　　　　　　　　筑前次郎左衛門尉

　　だんじょうのちゅう　　　　　　　　　　　　　　　　　つしまのぜんじ
　彈正忠　　　　　　　　　　對馬前司

　　ごとういきぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　こうづけのすけ
　後藤壹岐前司　　　　　　　上野介

　　ひゅうがのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささきつしまのかみ
　日向守　　　　　　　　　　佐々木對馬守

　　むとうしょうけい　　　　　　　　　　　　　　　　　　 おおたみんぶのたいふ
　武藤少卿　　　　　　　　　大田民部大夫

　　せいのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　ぜんのさえもんのじょう
　�C左衛門尉　　　　　　　　善左衛門尉

　　じょうのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　おな　　　　ろくろう
　城五郎左衛門尉　　　　　　同じき六郎　　　　　　　　　　　　　

　　じょうのいやくろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひごのじろうさえもんのじょう　〔 だざい 〕
　城弥九郎　　　　　　　　　肥後次郎左衛門尉〔太宰〕

　　おな　　　　さぶろうさえもんのじょう　　　　　　　いずみのろくろうさえもんのじょう
　同じき三郎左衛門尉　　　　和泉六郎左衛門尉

　　でわのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　 ちくぜんのさぶろうさえもんのじょう
　出羽三郎左衛門尉　　　　　筑前三郎左衛門尉

　　おきのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　しきぶのたろうさえもんのじょう
　隱岐三郎左衛門尉　　　　　式部太郎左衛門尉

　　しもつけのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　たけいしのさえもんのじょう
　下野四郎　　　　　　　　　武石左衛門尉

　　ひたちのじろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　ひごのさぶろうさえもんのじょう
　常陸次郎兵衛尉　　　　　　肥後三郎左衛門尉

　　ちくぜんのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　いせのじろうさえもんのじょう
　筑前四郎左衛門尉　　　　　伊勢次郎左衛門尉

　　むとうさこんしょうげん　　　　　　　　　　　　　　　しぶやのたろうさえもんのじょう
　武藤左近將監　　　　　　　澁谷太郎左衛門尉

　　むとうじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　ちくぜんのごろうさえもんのじょう
　武藤次郎左衛門尉　　　　　筑前五郎左衛門尉

　　こうづけのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　ごとういきしんさえもんのじょう
　上野太郎左衛門尉　　　　　後藤壹岐新左衛門尉

　　いずものうえもんのじょう　〔　はたの　〕　　　　　　　　かとうさえもんのじょう
　出雲右衛門尉〔波多野〕　　　加藤左衛門尉

　　ごとうしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　ちょうのまたたろうさえもんのじょう
　後藤四郎左衛門尉　　　　　長又太郎左衛門尉

　　ながとのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 かずさのすけ
　長門守　　　　　　　　　　上総介

　　おおそねさえもんしちろう　　　　　　　　　　　　 いがのしきぶひょうえたろう
　大曽祢左衛門七郎　　　　　伊賀式部兵衛次郎

　　やまのうちのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　さどのごろうさえもんのじょう
　山内三郎左衛門尉　　　　　佐渡五郎左衛門尉

　　といのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こうづけのさぶろう　〔かじわら〕
　土肥四郎　　　　　　　　　上野三郎〔梶原〕

　　つしまのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　 いわみのかみ　〔うつのみや〕
　對馬三郎　　　　　　　　　石見守〔宇都宮〕

ひがしのざ
東座

　　なかつかさだいゆう　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのうまのすけ
　中務大輔　　　　　　　　　越後右馬助

　　さがみしきぶのたいふ　　　　　　　　　　　　　　するがのごろう
　相摸式部大夫　　　　　　　駿河五郎

　　とおとうみのしちろう　　　　　　　　　　　　　　　　むさしさこんたいふしょうげん
　遠江七郎　　　　　　　　　武藏左近大夫將監

　　さがみのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのうまのすけ
　相摸三郎�B　　　　　　　　　遠江右馬助

　　おわりさこんのたいふしょうげん　　　　　　　　　かずさのさぶろう
　尾張左近大夫將監　　　　　上総三郎

　　みんぶごんのだいゆう　　　　　　　　　　　　　　びぜんのさぶろう
　民部權大輔　　　　　　　　備前三郎

　　とおとうみのじろう　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのまたさぶろう
　遠江次郎　　　　　　　　　越後又三郎

　　むさしのごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのしゅりのすけさぶろう
　武藏五郎　　　　　　　　　遠江修理亮三郎

　　むさしのはちろう　　　　　　　　　　　　　　　　　にったみかわのぜんじ
　武藏八郎　　　　　　　　　新田參河前司

　　しょうゆうさこんのたいふ　　　　　　　　　　　　　おやまのでわぜんじ
　少輔左近大夫　　　　　　　小山出羽前司

　　こうづけのさぶろう　〔はたけやま〕　　　　　　　　　 えっちゅうぜんじ
　上野三郎〔畠山〕　　　　　 越中前司

　　おおすみぜんじ　〔しまづ〕　　　　　　　　　　　　　みかわのぜんじ
　大隅前司〔嶋津〕　　　　　 參河前司

　　おおすみぜんじ　〔せっつ〕　　　　　　　　　　　　 おうみのぜんじ
　大隅前司〔攝津〕　　　　　 近江前司

　　とうのひぜんぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　すおうのかみ
　藤肥前々司　　　　　　　　周防守

　　いわみのぜんじ　　　　　　　　　　　　　　　　　　すおうしゅりのすけ
　石見前司　　　　　　　　　周防修理亮

　　かわちしきぶのたいふ　　　　　　　　　　　　　　 びちゅうほうがんだい
　河内式部大夫　　　　　　　備中判官代

　　しらかわいずもごんのかみ　　　　　　　　　　　　おしだてさこんのたいふ
　白河出雲權守　　　　　　　押立左近大夫

　　なわのじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みまさかさこんのたいふ
　那波二郎　　　　　　　　　美作左近大夫

　　しょうゆうもくのすけたろう　　　　　　　　　　　　 あかつかのくらんど
　少輔木工助太郎　　　　　　赤塚藏人

　　あきのさこんくらんど　　　　　　　　　　　　　　　そうかもんのすけ
　安藝左近藏人　　　　　　　宗掃部助

　　ながいのほうがんだい　　　　　　　　　　　　　 いずみのさぶろうさえもんのじょう
　長井判官代　　　　　　　　和泉三郎左衛門尉

　　とくえさこんのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　するがのくらんどじろう
　得江左近大夫　　　　　　　駿河藏人二郎

　　みなよしおおいのすけ　　　　　　　　　　　　　 おおすみしゅりのすけ
　皆吉大炊助　　　　　　　　大隅修理亮

　　おおすみしきぶのたいふ　　　　　　　　　　　　おおすみおおいのかみ
　大隅式部大夫　　　　　　　大隅大炊助

　　しなののくらんど　　　　　　　　　　　　　　　　　　あきかもんのたいふ
　信濃藏人　　　　　　　　　安藝掃部大夫

　　そうみんぶのたいふ　　　　　　　　　　　　　　　さとうみんぶのたいふ
　宗民部大夫　　　　　　　　佐藤民部大夫

　　ごとうのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　かまたのさえもんのじょう
　後藤四郎左衛門尉　　　　　鎌田左衛門尉

　　きいのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょう
　紀伊二郎左衛門尉　　　　　薩摩七郎左衛門尉

　　じんざぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　おぎののしんさえもんのじょう
　進三郎�C左衛門尉　　　　　 荻野�D新左衛門尉

　　ぶんごのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　すおうのさぶろうさえもんのじょう
　豊後新左衛門尉　　　　　　周防三郎左衛門尉

　　きいのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　 ぜんのごろうさえもんのじょう
　紀伊三郎左衛門尉　　　　　善五郎左衛門尉

　　ひらおかのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　とうのひぜんさぶろうさえもんのじょう
　平岡左衛門尉　　　　　　　藤肥前三郎左衛門尉

　　ぜんのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　おおすみしきぶのじょう
　善次郎左衛門尉　　　　　　大隅式部丞

　　とおとうみおおいのすけさぶろう　　　　　　　　すおうのしろうさえもんのじょう
　遠江大炊助三郎　　　　　　周防四郎左衛門尉

　　ごとういやしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　おおすがしんさえもんのじょう
　後藤弥四郎左衛門尉　　　　大須賀新左衛門尉

　　おきのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　おおたのしろうさえもんのじょう
　隱岐次郎左衛門尉　　　　　大田四郎左衛門尉

　　かまたのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　 おさだのさえもんのじょう
　鎌田三郎左衛門尉　　　　　長田左衛門尉

　　つどしんみんぶのじょう　　　　　　　　　　　　　すおうのごろうさえもんのじょう
　津戸新民部丞�E　　　　　　周防五郎左衛門尉

　　かまたのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　　かまたのじろうひょうえのじょう
　鎌田新左衛門尉　　　　　　鎌田二郎兵衛尉

　　いずみのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　 はぎわらうえもんのじょう
　和泉二郎左衛門尉　　　　　萩原右衛門尉

　　なすのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　さいとううまのじょう
　那須左衛門尉　　　　　　　齋藤右馬允

　　おおすみのしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすがのしろう
　大隅四郎　　　　　　　　　大須賀四郎

　　かわちのたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　 すおうのごろう
　河内太郎　　　　　　　　　周防五郎

　　いずものさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　 ひごのしろうひょうえのじょう
　出雲三郎　　　　　　　　　肥後四郎兵衛尉

　　かぢなかつかさのさえもんのじょう　　　　　　　 ふじたしんさえもんのじょう
　加地中務左衛門尉　　　　　藤田新左衛門尉

　　さいとうごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　うまさえもんのじょう
　齋藤五郎左衛門尉　　　　　宇間左衛門尉

　　だいがくのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　いなげのひょうえたろう
　大學允　　　　　　　　　　稻毛兵衛太郎

　　ぶぜんのしろうさえもんのじょう　　　　　　　　　ひらがのしんざぶろう
　豊前四郎左衛門尉　　　　　平賀新三郎

　　かさいのまたたろう　　　　　　　　　　　　　　　　かのうのごろうさえもんのじょう
　葛西又太郎　　　　　　　　狩野五郎左衛門尉

　　おおたわのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　こいずみのごろう
　大多和新左衛門尉　　　　　小泉五郎

　　こうののうえもんしろう　　　　　　　　　　　　　　　あぼのじろうさえもんのじょう
　河野右衛門四郎　　　　　　阿保次郎左衛門尉

　　かねこのへいじさえもんのじょう　　　　　　　　　かわちのさえもんたろう
　金子平次左衛門尉　　　　　河内左衛門太郎

　　あぼのさえもんさぶろう　　　　　　　　　　　　　　たかみずのさこんさぶろう
　阿保左衛門三郎　　　　　　高水左近三郎

　　あぼのさえもんしろう　　　　　　　　　　　　　　　くろさわのたろうひょうえのじょう
　阿保左衛門四郎　　　　　　黒澤太郎兵衛尉

　　ひらがのいやしろう　　　　　　　　　　　　　　　　 さいとうろくろう
　平賀弥四郎　　　　　　　　齋藤六郎

　　ぶぜんのはちろうさえもんのじょう　　　　　　　 やまのうちのひょうえさぶろう
　豊前八郎左衛門尉　　　　　山内兵衛三郎

　　えちぜんのごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うたさえもんたろう
　越前五郎　　　　　　　　　雅樂左衛門太郎

　　ぶぜんのくないさえもんたろう　　　　　　　　　　おおいずみのくろう
　豊前宮内左衛門太郎　　　　大泉九郎

　　おおすがのしんさえもんのじょう　　　　　　　　　びっちゅうこんのたいふ
　大須賀新左衛門尉　　　　　備中右近大夫

　　いずみのしちろうさえもんのじょう　　　　　　　　ながとのさぶろう
　和泉七郎左衛門尉　　　　　長門三郎

　じこく　しょうぐんけおんいで　〔おんそくたい〕　　　つちみかどちゅうなごん おんみす　　あ
時尅。將軍家御出〔御束帶〕。 土御門中納言 御簾を上ぐ。

ぎょけん　むさしのぜんじともなお　 おんゆみや　 おわりのぜんじときあき　　おんむかばき　　えちごのかみさねとき
御劔は武藏前司朝直�F。御弓箭は尾張前司時章�G。御行騰沓は越後守實時。

　 いちのおんうま　とおとうみのしちろうときもと　　　　　　　　 くどうのじろうさえもんのじょうたかみつ
　一御馬　　遠江七郎時基　　　　　工藤次郎左衛門尉高光

　 　にのおんうま　むつのしちろうなりとき　　　　　　　　　　なんじょうしんさえもんのじょう
　二御馬　　陸奥七郎業時　　　　　南條新左衛門尉

　 さんのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　あんどうぎょうぶさえもんのじょう
　三御馬　　新相摸三郎時村　　　　安東刑部左衛門尉

　 よんのおんうま　じょうのしろうさえもんのじょうときもり　　　　おな　　　 ごろうしげかげ
　四御馬　　城四郎左衛門尉時盛　　同じき五郎重景

　 　ごのおんうま　でわのさぶろうさえもんのじょうゆきすけ　　おな　　　 しちろうゆきより
　五御馬　　出羽三郎左衛門尉行資　同じき七郎行頼

参考�@両国司は、執権武蔵守長時と連署相摸守政村の執権と連署を指す。
参考�A大庇は、本屋からひさしを長く出して造る。
参考�B相摸三郎は、時利。後の時輔で北条時宗の兄。
参考�C進三郎は、進士で奈良時代の官僚就職大学出を指したが鎌倉時代は名だけ。
参考�D萩野は、狩野が正しい。
参考�E津戸は、岐阜県中津川市苗木津戸らしい。
参考�F朝直は、大仏流北条氏。
参考�G時章は、名越流北条氏。

現代語正嘉二年(1258)正月大一日辛亥。晴です。将軍への御馳走のふるまい〔相州禅室時頼の提供〕。両国司(武蔵守長時と相摸守政村)は、広く造った濡れ縁に控えてます。その他は、庭の東西に座ってます。
西の座
　武蔵前司大仏流北条朝直　　　尾張前司名越流北条時章
　遠江前司大仏流北条時直　　　越後守金沢流北条実時
　刑部少輔名越流北条教時　　　陸奥六郎塩田流北条義政
　越後四郎時方　　　　　　　　陸奥七郎極楽寺流北条業時
　出羽前司小山長村　　　　　　下野前司宇都宮泰綱
　那波刑部権少輔政茂　　　　　和泉前司二階堂行方
　長門前司笠間時朝　　　　　　丹後守安達頼景
　江石見前司大江能行　　　　　秋田城介安達泰盛
　長井太郎時秀　　　　　　　　筑前次郎左衛門尉行頼
　弾正忠　　　　　　　　　　　対馬前司矢野倫長
　後藤壱岐前司基政　　　　　　上野介梶原景俊
　日向守宇佐美祐泰　　　　　　佐々木対馬守氏信
　武藤少卿景頼　　　　　　　　大田民部大夫康宗
　清左衛門尉清原満定　　　　　善左衛門尉三善康長
　城五郎左衛門尉重景　　　　　同六郎顕盛
　城弥九郎安達長景　　　　　　肥後次郎左衛門尉太宰為時
　同肥後三郎太宰為成　　　　　和泉六郎左衛門尉天野景村
　出羽三郎左衛門尉二階堂行資　筑前三郎左衛門尉二階堂行実
　隠岐三郎左衛門尉二階堂行氏　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　下野四郎宇都宮景綱　　　　　武石左衛門尉
　常陸次郎兵衛尉行雄　　　　　肥後三郎左衛門尉（内藤か天野）
　筑前四郎左衛門尉二階堂行佐　伊勢次郎左衛門尉二階堂行経
　武藤左近将監兼頼　　　　　　渋谷太郎左衛門尉武重
　武藤次郎左衛門尉頼泰　　　　筑前五郎左衛門尉二階堂行重
　上野太郎左衛門尉梶原景綱　　後藤壱岐新左衛門尉基頼
　出雲右衛門尉波多野　　　　　加藤左衛門尉景経
　後藤四郎左衛門尉　　　　　　長又太郎左衛門尉長谷部
　長門守（不明）　　　　　　　上総介大曽祢長泰
　大曽祢左衛門七郎　　　　　　伊賀式部兵衛次郎
　山内三郎左衛門尉通広　　　　佐渡五郎左衛門尉後藤基隆
　土肥四郎実綱　　　　　　　　上野三郎梶原景氏
　対馬三郎　　　　　　　　　　石見守宇都宮宗朝
東の座
　中務大輔北条教時　　　　　　越後右馬助北条時親
　相模式部大夫北条時弘　　　　駿河五郎北条伊具通時
　遠江七郎時基　　　　　　　　武蔵左近大夫将監時仲
　相模三郎時利　　　　　　　　遠江右馬助清時
　尾張左近大夫将監北条公時　　上総三郎足利満氏
　民部権大輔北条時隆　　　　　備前三郎名越長頼
　遠江次郎佐原光盛　　　　　　越後又三郎
　武蔵五郎時忠(後宣時徒然草)　遠江修理亮三郎
　武蔵八郎頼直（大仏流）　　　新田三河前司頼氏
　少輔左近大夫佐房　　　　　　小山出羽前司長村
　上野三郎畠山国氏　　　　　　越中前司(宇都宮)横田頼業
　大隅前司島津忠時　　　　　　三河前司清原教隆
　大隅前司親員（摂津）　　　　近江前司季実
　藤肥前々司那須　　　　　　　周防守島津忠綱
　石見前司大江能行　　　　　　周防修理亮
　河内式部大夫　　　　　　　　備中判官代定忠
　白河出雲権守　　　　　　　　押立左近大夫資能
　那波二郎　　　　　　　　　　美作左近大夫泰朝
　少輔木工助太郎　　　　　　　赤塚蔵人資茂
　安芸左近蔵人重親　　　　　　宗掃部助
　長井判官代泰茂　　　　　　　和泉三郎左衛門尉
　得江左近大夫　　　　　　　　駿河蔵人二郎経親
　皆吉大炊助文幸　　　　　　　大隅修理亮島津久時
　大隅式部大夫　　　　　　　　大隅大炊助
　信濃蔵人　　　　　　　　　　安芸掃部大夫頼定
　宗民部大夫　　　　　　　　　佐藤民部大夫行幹
　後藤四郎左衛門尉　　　　　　鎌田左衛門尉
　紀伊二郎左衛門尉為経　　　　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能
　進三郎左衛門尉宗長　　　　　狩野新左衛門尉
　豊後新左衛門尉　　　　　　　周防三郎左衛門尉島津忠行
　紀伊三郎左衛門尉　　　　　　善五郎左衛門尉三善康家
　平岡左衛門尉実俊　　　　　　藤肥前三郎左衛門尉
　善次郎左衛門尉三善康有　　　大隅式部丞
　遠江大炊助三郎　　　　　　　周防四郎左衛門尉島津忠泰
　後藤弥四郎左衛門尉　　　　　大須賀新左衛門尉朝氏
　隠岐次郎左衛門尉時清　　　　大田四郎左衛門尉
　鎌田三郎左衛門尉義長　　　　長田左衛門尉広雅
　津戸新民部丞　　　　　　　　周防五郎左衛門尉島津忠景
　鎌田新左衛門尉　　　　　　　鎌田二郎兵衛尉行俊
　和泉二郎左衛門尉行章　　　　萩原右衛門尉定仲
　那須左衛門尉　　　　　　　　齋藤右馬允
　大隅四郎　　　　　　　　　　大須賀四郎
　河内太郎　　　　　　　　　　周防五郎島津忠景
　出雲三郎　　　　　　　　　　肥後四郎兵衛尉行定
　加地中務左衛門尉　　　　　　藤田新左衛門尉
　齋藤五郎左衛門尉　　　　　　宇間左衛門尉
　大学允　　　　　　　　　　　稲毛兵衛太郎
　豊前四郎左衛門尉　　　　　　平賀新三郎惟時
　葛西又太郎定広　　　　　　　狩野五郎左衛門尉為広
　大多和新左衛門尉　　　　　　小泉五郎
　河野右衛門四郎通時　　　　　阿保次郎左衛門尉
　金子平次左衛門尉　　　　　　河内左衛門太郎
　阿保左衛門三郎　　　　　　　高水左近三郎
　阿保左衛門四郎　　　　　　　黒沢太郎兵衛尉
　平賀弥四郎　　　　　　　　　齋藤六郎
　豊前八郎左衛門尉　　　　　　山内兵衛三郎
　越前五郎　　　　　　　　　　雅楽左衛門太郎長谷部
　豊前宮内左衛門太郎　　　　　大泉九郎長氏
　大須賀新左衛門尉朝氏　　　　備中右近大夫忠義
　和泉七郎左衛門尉天野景経　　長門三郎笠間朝景
予定時刻になり、宗尊親王将軍家のお出まし〔束帯〕。土御門中納言顕方さんが御簾を上げました。太刀持ちは武蔵前司大仏朝直、弓矢持ちは尾張前司名越時章、乗馬袴行縢と乗馬沓は越後守金沢実時です。
　一の馬　遠江七郎時基　　　　工藤次郎左衛門尉高光
　二の馬　陸奥七郎業時　　　　南条新左衛門尉頼員
　三の馬　新相摸三郎時村　　　安東刑部左衛門尉
　四の馬　城四郎左衛門尉時盛　同城五郎重景
　五の馬　出羽三郎左衛門尉二階堂行資　同七郎二階堂行頼

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 みゆきはじめ　　ぐぶ　　 ため　こさむらいどころ　おお　　　　　きのう　　ちゃくていにんずう　か　　　しる　　　　 ごてん　　もう　　くだ
正嘉二年(1258)正月大二日壬子。霽。御行始�@の供奉の爲、小侍所に 仰せて、昨日の着庭人數を書き注し、御點�Aを申し下す。

いずみのぜんじゆきかた これ　ぶぎょう
 和泉前司行方�B之を奉行す。

きょう　　　おうばん　おうしゅうぜんもん　　さた　　　おんみす　つちみかどこうもん　 ぎょけん　 おわりのぜんじときあき
今日の垸飯、奥州禪門の沙汰。御簾は土御門黄門�C。御釼は尾張前司時章。

　ごちょうど　　しもつけぜんじやすつな　おんむかばきくつ　だいざいのごんのしょうにかげより
御調度は 下野前司泰綱。御行騰沓は　太宰權少貳�D景頼。

　 いちのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ
　一御馬　　新相摸三郎時村　　　　式部太郎左衛門尉光政

　 　にのおんうま　むさしのごろうときただ　　　　　　　　　　　　おな　　　はちろうよりなお
　二御馬　　武藏五郎時忠　　　　　同じき八郎頼直

　 さんのおんうま　ひごのじろうさえもんのじょうためとき　　　　おな　　　さぶろうさえもんのじょう
　三御馬　　肥後次郎左衛門尉爲時　同じき三郎左衛門尉

　 よんのおんうま　かじわらのたろうさえもんのじょうかげつな　おな　　　さぶろうかげうじ
　四御馬　　梶原太郎左衛門尉景綱　同じき三郎景氏

　 　ごのおんうま　むつのしちろうなりとき　　　　　　　　　　　  はらだとうないさえもんのじょう
　五御馬　　陸奥七郎業時　　　　　原田藤内左衛門尉

おうばんののち　 しょうぐんけ　 そうしゅうぜんしつ　 おんてい　みゆきはじめ
垸飯之後。將軍家、相州禪室の 御亭へ御行始。

 ぐぶにん　　〔　ほい　　げぐく　　〕
供奉人〔布衣に下括り〕

　ごい
五位

　　むさしのぜんじともなお　〔ぎょけん　　も　　　〕　　　　　　　おわりのぜんじときあき
　武藏前司朝直〔御釼を持つ〕　　　尾張前司時章

　　とおとうみのぜんじときなお　　　　　　　　　　　　　　　　えちごのかみさねとき
　遠江前司時直　　　　　　　　　越後守實時

　　えちごうまのすけときちか　　　　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆうのりとき
　越後右馬助時親　　　　　　　　刑部少輔教時

　　おわりさこんのたいふしょうげんきんとき　　　　　　　　　とおとうみうまのすけきよとき
　尾張左近大夫將監公時　　　　　遠江右馬助�C時

　　むさしさこんのたいふしょうげんときなか　　　　　　　　　なかつかさごんのだいゆういえうじ
　武藏左近大夫將監時仲　　　　　中務權大輔家氏

　　あいだのじょうすけやすもり　　　　　　　　　　　　　　　　 でわのぜんじゆきよし
　秋田城介泰盛　　　　　　　　　出羽前司行義

　　しもつけぜんじやすつな　　　　　　　　　　　　　　　　　 ごとういきのぜんじもとまさ
　下野前司泰綱　　　　　　　　　後藤壹岐前司基政

　　いずみのぜんじゆきかた　　　　　　　　　　　　　　　　　みかわのぜんじよりうじ
　和泉前司行方　　　　　　　　　參河前司頼氏

　　かずｓなおぜんじながやす　　　　　　　　　　　　　　　　くらごんのかみちかいえ
　上総前司長泰　　　　　　　　　内藏權頭親家

　　むとうしょうけいかげより 　　　　　　　　　　　　　　　　　　たんごのかみよりかげ
　武藤少卿景頼　　　　　　　　　丹後守頼景

ろくい
六位

　　さがみのさぶろうときとし　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみのしちろうときもと
　相摸三郎時利　　　　　　　　　遠江七郎時基

　　びぜんのさぶろうながより　　　　　　　　　　　　　　　　　むつのしちろうなりとき
　備前三郎長頼　　　　　　　　　陸奥七郎業時

　　あしかがかずさのさぶろうみつうじ　　　　　　　　　　　　 ながいのたろうときひで
　足利上総三郎滿氏　　　　　　　長井太郎時秀

　　でわのじろうさえもんのじょうゆきあり　　　　　　　　　　　 しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ
　出羽次郎左衛門尉行有　　　　　式部太郎左衛門尉光政

　　さどのごろうさえもんのじょうもとたか　　　　　　　　　　　 すおうのごろうさえもんのじょうただかげ
　佐渡五郎左衛門尉基隆　　　　　周防五郎左衛門尉忠景

　　おきのじろうさえもんのじょうとききよ　　　　　　　　　　　　むとうのじろうさえもんのじょうよりやす
　隱岐次郎左衛門尉時�C　　　　　武藤次郎左衛門尉頼泰

　　いずみのじろうさえもんのじょうゆきあき　　　　　　　　いきのしんさえもんのじょうもとより
　和泉次郎左衛門尉行章　　　　　壹岐新左衛門尉基頼

　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし　　　　　　　　　ひたちのじろうひょうえのじょうゆきかつ
　薩摩七郎左衛門尉祐能　　　　　常陸次郎兵衛尉行雄

　　いちのみやのじろうさえもんのじょうやすあり　　　　　　　かとうさえもんのじょうかげつね
　一宮次郎左衛門尉康有　　　　　加藤左衛門尉景經

　　むとうさこんしょうげんかねより　　　　　　　　　　　　　　　かまたのさぶろうさえもんのじょうよしなが
　武藤左近將監兼頼　　　　　　　鎌田三郎左衛門尉義長

　　おな　　　　じろうひょうえのじょうゆきとし
　同じき次郎兵衛尉行俊

 ごゆう　いご　　　 おんひきでもの　 けん　　らる　　　　えき　 ひと
御遊以後、御引出物を獻じ被る。役の人。

ぎょけん　ぎょうぶしょうゆうのりとき　　　　　　　　 さきん　　でわのぜんじゆきよし
御釼　刑部少輔教時　　　　砂金　出羽前司行義

はね　　　あいだのじょうすけやすもり
羽　　秋田城介泰盛

　 いちのおんうま　さがみのさぶろうときとし　　　　　　　　　　　　 くどうのさぶろうさえもんのじょうみつやす
　一御馬　相摸三郎時利　　　　　　　工藤三郎左衛門尉光泰

　 　にのおんうま　びぜんのさぶろうながより　　　　　　　　　　　　くどうのじろうさえもんのじょうたかみつ
　二御馬　備前三郎長頼　　　　　　　工藤次郎左衛門尉高光

　 さんのおんうま　ちくぜんのじろうさえもんのじょうゆきより　　　　おな　　　　ごろうゆきしげ
　三御馬　筑前次郎左衛門尉行頼　　　同じき五郎行重

ばん　 およ　　　しょうちょうじゅいん　そうもん　〔　しそく〕じょうとうなり　　もと　　もんな　　　　　はじ　　　　これ　　た　　　らる
晩に及び、勝長壽院の惣門〔四足�E〕上棟也。元は門無し。始めて之を建て被る。

ぬいどののとうもろつら　そ　ところ　むか　　　　だいこう　〔　ほい　き　　〕　おんうま　　おんぞら　　　たま
 縫殿頭師連 其の所に向ひ、大工�F〔布衣を着る〕御馬・御衣�G等を賜ふ。

きょう　　　てんかび　たる　のよし　　きら　　もう　　のやからあ　　　いへど　　　 またなだ　 もう　 のやからあるのじょう　　これ　　と　　　らる　　　　うんぬん
今日、天火日�H爲之由、嫌い申す之輩有ると雖も、亦宥め申す之族有之條、之を遂げ被ると云々。

参考�@御行始は、天皇家と摂関家は「おなりはじめ」と読む。
参考�A御点は、合点で将軍が候補者名簿に承諾の点を付ける。
参考�B二階堂行方は、お側役で小侍所別当は、実時。
参考�C黄門は、中納言の唐名。
参考�D太宰少弐は、太宰師が現地に行かないので事実上の守的存在。
参考�E四足門は、主柱二本で前後に支え柱が付くので計六本ある。四脚門とも云う。
参考�F大工は、棟梁で現在の建築プロデューサーを指す。
参考�G御衣は、将軍の着ている着物を下賜する。五衣も同じで五枚ではない(閼伽つき)。
参考�H天火日は、縁起の悪い日。

現代語正嘉二年(1258)正月大二日壬子。晴れました。お出かけ始めのお供用に、小侍所に命令して、昨日の庭へ集合した名簿を書き出させて、印をつけて命じ与えました。和泉前司二階堂行方が担当します。
今日の将軍へのご馳走のふるまいは、奥州禅門極楽寺流重時の負担です。御簾を上げる役は土御門中納言顕方さん。太刀持ちは尾張前司名越時章、弓矢持ちは下野前司宇都宮泰綱、乗馬袴と乗馬沓は太宰少弐武藤景頼。
　一の馬　新相摸三郎時村　　　　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　二の馬　武蔵五郎時忠　　　　　同武蔵八郎頼直
　三の馬　肥後次郎左衛門尉為時　同肥後三郎左衛門尉為成
　四の馬　梶原太郎左衛門尉景綱　同梶原三郎景氏
　五の馬　陸奥七郎業時　　　　　原田藤内左衛門尉宗経
ご馳走のふるまいの後、宗尊親王将軍家は相州禅室時頼の屋敷へお出かけ始めです。
お供の人は〔狩衣に指貫袴は足首で縛る下くくりです〕
五位
　武蔵前司大仏朝直〔太刀持ち〕　尾張前司名越北条時章
　遠江前司大仏流北条時直　　　　越後守金沢流北条実時
　越後右馬助佐助流北条時親　　　刑部少輔名越流北条教時
　尾張左近大夫将監名越公時　　　遠江右馬助北条清時
　武蔵左近大夫将監大仏時仲　　　中務権大輔足利家氏
　秋田城介安達泰盛　　　　　　　出羽前司二階堂行義
　下野前司宇都宮泰綱　　　　　　壱岐前司後藤基政
　和泉前司二階堂行方　　　　　　三河前司新田頼氏
　上総前司大曽祢長泰　　　　　　内蔵権頭親家
　武藤少卿景頼　　　　　　　　　丹後守安達頼景
六位
　相模三郎北条時利　　　　　　　遠江七郎名越時基
　備前三郎名越長頼　　　　　　　陸奥七郎極楽寺業時
　足利上総三郎満氏　　　　　　　長井太郎時秀
　出羽次郎左衛門尉二階堂行有　　式部太郎左衛門尉伊賀光政
　佐渡五郎左衛門尉後藤基隆　　　周防五郎左衛門尉島津忠景
　隠岐次郎左衛門尉清時　　　　　武藤次郎左衛門尉頼泰
　和泉次郎左衛門尉二階堂行章　　壱岐新左衛門尉基頼
　薩摩七郎左衛門尉伊東祐能　　　常陸次郎兵衛尉二階堂行雄
　一宮次郎左衛門尉康有　　　　　加藤左衛門尉景経
　武藤左近将監兼頼　　　　　　　鎌田三郎左衛門尉義長
　同次郎兵衛尉鎌田行俊
お遊び以後に、引き出物を持って出す役の人。
刀は、行部少輔北条教時。砂金は、出羽前司二階堂行義。鷲の羽は、秋田城介安達泰盛。
一の馬は、相模三郎時利と工藤三郎左衛門尉光泰。
二の馬は、備前三郎長頼と工藤次郎左衛門尉高光。
三の馬は、筑前三郎左衛門尉二階堂行頼と同じ五郎二階堂行重。

夜になって勝長寿院の総門〔四足門〕の棟上げ式です。以前は門は有りませんでした。初めて建てました。縫殿頭中原師連は、その場所へ向い大工の棟梁〔正装の狩衣〕に馬や褒美に衣服を与えました。

今日は、縁起の悪い天火の日なので文句をつける連中も居ましたが、逆に気にするなと云う人たちもいたので、実施しましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　 おうばん　〔そうしゅう　　おんさた　〕　　　おんみす　えきさく　　ごと
正嘉二年(1258)正月大三日癸丑。�ﾘ。垸飯〔相州の御沙汰〕。御簾の役昨の如し。

ぎょけん　えちごのかみさねとき　ごちょうど　さこんのたいふしょうげんきんとき　　おんむかばきくつ　いずみのぜんじゆきかた
御釼は越後守實時。御調度は左近大夫將監公時。 御行騰沓は 和泉前司行方。

　いちのおんうま　むつのしちろうなりとき　　　　　　　　　　　　　　いなづのさえもんのじょう
　一御馬　陸奥七郎業時　　　　　　　稻津左衛門尉

　　にのおんうま　びぜんのさぶろうながより　　　　　　　　　　　　 ひろかわのごろうさえもんのじょう
　二御馬　備前三郎長頼　　　　　　　廣河五郎左衛門尉

　さんのおんうま　えちごのしろうときかた　　　　　　　　　　　　　　いがのさぶろうさえもんのじょうさねきよ
　三御馬　越後四郎時方�@　　　　　　伊賀三郎左衛門尉實�C

　よんのおんうま　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ　　　　　いがのさえもんさぶろうともふさ
　四御馬　式部太郎左衛門尉光政　　　伊賀左衛門三郎朝房

　　ごのおんうま　しんさがみのさぶろうときむら　　　　　　　　　　　かすやのさえもんさぶろうゆきむら
　五御馬　新相摸三郎時村　　　　　　糟屋左衛門三郎行村

参考�@越後四郎時方は、顕時と名を変える。

現代語正嘉二年(1258)正月大三日癸丑。晴れです。将軍への御馳走のふるまい〔相州政村の提供〕。御簾を上げる役は昨日と同じ土御門中納言顕方さんです。刀の献上は越後守金沢実時。弓矢の献上は左近大夫将監名越公時。乗馬袴と乗馬沓は、和泉前司二階堂行方。
　一の馬　陸奥七郎北条業時　　　　　稲津左衛門尉
　二の馬　備前三郎名越長頼　　　　　広川五郎左衛門尉
　三の馬　越後四郎時方　　　　　　　伊賀三郎左衛門尉実清
　四の馬　式部太郎左衛門尉伊賀光政　伊賀左衛門三郎朝房
　五の馬　新相摸三郎時村　　　　　　糟谷左衛門三郎行村

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おんまとはじめ　いて　　　こと　 ないない　にんずう　 さだ　 らる
正嘉二年(1258)正月大六日丙辰。御的始の射手の事、内々に人數を定め被る。

　なんかど　　いへど　　きゅうろう　 えら　　もち　　らる　　べ　　　のむね　そうしゅうぜんしつ　げんめいあ
何ケ度と雖も、舊勞�@を撰び用ひ被る可き之旨、相州禪室の嚴命�A有り。

しか　　　　　ちく　　うえもん　ごろう　は　　　たねんごんじ　　　いて　たり　いへど　　　　とうじ しなののくに　あ
而るに知久右衛門五郎�B者、多年勤仕の射手爲と雖も、當時信濃國に在り。

よっ　 このたび　　ほのき　　もれる　のところ　すわひょうえにゅうどうれんぶつ　こんみょうのあいだ　さだ　　　　さんじょうすべ　　のよし あ　　もう　　　　つ　　　　 か　　のせらる　　　　うんぬん
仍て今度の風記�Cに漏被之處、諏方兵衛入道蓮佛、今明 之間に定めし參上可き之由擧げ申す�Dに就き、書き載被ると云々。

れんぶつ さんぬ　ころ　 ひきゃくを　か　　くに　　つか　　　　　 うんぬん
 蓮佛 去る比、飛脚於彼の國へ遣はすと云々。

　いて　　　ほのき
射手の風記

　　しぶやのさえもんたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　よこみちさえもんじろう
　澁谷左衛門太郎　　　　　　　　横路左衛門次郎

　　へいしんざえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　ほんまのいやしろうさえもんのじょう
　平新左衛門尉　　　　　　　　　本間弥四郎左衛門尉

　　すわにしろうひょうえのじょう　　　　　　　　　　　　　　　くどうのいやさぶろう
　諏方四郎兵衛尉　　　　　　　　工藤弥三郎

　　　すき　ひょうえしろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　よこみぞのいやしち
　周枳兵衛四郎�E　　　　　　　　　横溝弥七

　　　ちく　うえもん　ごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かやま　さえもん　じろう
　知久右衛門五郎　　　　　　　　萱間左衛門二郎

　　おかもとしんざえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　こじまのいやたろう
　岡本新左衛門尉　　　　　　　　小嶋弥次郎

参考�@舊勞(旧労)は、今までの実績。
参考�A相州禅室厳命は、得宗専制の表れか？
参考�B知久氏は、満仲の弟満快の子孫信濃国伊那谷(長野県飯田市知久)。
参考�C風記（ほのき）は、下書き。
参考�D擧げ申すは、推挙する。
参考�E周枳は、京都府京丹後市大宮町周枳。

現代語正嘉二年(1258)正月大六日丙辰。弓矢初め式の射手について、内々に選手を選びました。何度にもなろうと実績のある人を選考するように、相模禅室時頼から厳しい命令がありました。それなのに知久右衛門五郎信貞は、長年勤めた射手ですけど、現在信濃の国元におります。それで今回の下書きに漏れていたので、諏訪兵衛入道蓮仏(盛重)が、今日明日の間に必ず出仕しますと推挙したので、書き載せましたとさ。蓮仏(盛重)は先日飛脚を信濃へ行かせていましたとさ。
射手の下書き
　渋谷左衛門太郎　　　横路左衛門次郎長重
　平新左衛門尉頼綱　　本間弥四郎左衛門尉
　諏訪四郎兵衛尉　　　工藤弥三郎
　周枳四郎兵衛尉頼泰　横溝弥七郎
　知久右衛門五郎信貞　萱間左衛門二郎
　岡本新左衛門尉重方　小島弥次郎家範

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きた　　とおか　　つるがおかはちまんぐうに　ごほうへいあ　　　べ　　　　　よっ　　　　 ぐぶにん　　ため　　おうばん　あいだ　ちゃくとう　 しんらん
正嘉二年(1258)正月大七日丁巳。來る十日、 鶴岳八幡宮 于御奉幣有る可きに依て、供奉人の爲、垸飯の間に着到を進覽し、

 ごてん　　もう　　 くだ　　　　 そ　　しゅう　　あいふれ　 ところなり
御點を申し下し、其の衆を相觸被る所也。

 か　 ちゃくとう　　の　　　　　　いへど　　　　ごてん　　も　　　　 ひとびと
彼の着到に載せると雖も、御點に漏れる人々

　　むさしのごろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かずさのさぶろう
　武藏五郎　　　　　　　　　　　上総三郎

　　えちごのまたたろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でわのしちろう
　越後又太郎　　　　　　　　　　出羽七郎

　　なわぎょうぶごんのしょうゆう　　　　　　　　　　　　　　　えのいわみぜんじ
　那波刑部權少輔　　　　　　　　江石見前司

　　つしまのかみ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すおうのかみ
　對馬守　　　　　　　　　　　　周防守

　　おおすみぜんじ　〔せっつ〕　　　　　　　　　　　　　　　　ぬいどののとう
　大隅前司〔攝津〕　　　　　　　　縫殿頭

　　かじわらこうづけのすけ　　　　　　　　　　　　　　　　　いわみのかみ
　梶原上野介　　　　　　　　　　石見守

　　かずさのたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　 えちゅうのしろうさえもんのじょう
　上総太郎左衛門尉　　　　　　　越中四郎左衛門尉

　　ながとのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすみしゅりのすけ
　長門三郎　　　　　　　　　　　大隅修理亮

　　すおうのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　おな　　　　ごろうさえもんのじょう
　周防三郎左衛門尉　　　　　　　同じき五郎左衛門尉

　　ながいのほうがんだい　　　　　　　　　　　　　　　　　　びっちゅううこんのたいふ
　長井判官代　　　　　　　　　　備中右近大夫

　　かじわらこうづけのさぶろう　　　　　　　　　　　　　　　 いずみのろくろうさえもんのじょう
　梶原上野三郎　　　　　　　　　和泉六郎左衛門尉

　　おな　　　　しちろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　 さつまのくろう
　同じき七郎左衛門尉　　　　　　薩摩九郎

　　おな　　　　じうろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おおすがしんざえもんのじょう
　同じき十郎　　　　　　　　　　大須賀新左衛門尉

　　おな　　　　しろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おきのじろうさえもんのじょう
　同じき四郎　　　　　　　　　　隱岐二郎左衛門尉

　　ひごのじろうさえもんのじょう　　　〔ざだい〕　　　　　　　　　おな　　　　さぶろうさえもんのじょう
　肥後二郎左衛門尉〔太宰〕　　　 同じき三郎左衛門尉

　　ぜんのうえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ぜんのごろうさえもんのじょう
　善右衛門尉　　　　　　　　　　善五郎左衛門尉

　　ちくぜんのしろうさえもんのじょう　〔もとよ　　　こしょう〕　　　　おな　　　　ごろう
　筑前四郎左衛門尉〔本自り故障〕　同じき五郎

　　きいのじろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　ないとうぶんごさぶろうさえもんのじょう
　紀伊二郎左衛門尉　　　　　　　内藤豊後三郎左衛門尉

　　やまのうちのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　じんざぶろうさえもんのじょう
　山内三郎左衛門尉　　　　　　　進三郎左衛門尉

　　ひごのさえもんさぶろう　　　　〔だざい〕　　　　　　　　　　ひらがしんざぶろう
　肥後左衛門三郎〔太宰〕　　　　 平賀新三郎

　　かのうのごろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　 ぜんのひょうえたろう
　狩野五郎左衛門尉　　　　　　　善兵衛太郎

　　といのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　　　 しぶやのさえもんのじょう
　土肥左衛門尉　　　　　　　　　澁谷左衛門尉

　　ないとうひごのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　 いずもごんのかみ
　内藤肥後三郎左衛門尉　　　　　出雲權守

　　ちょうのまたたろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　 ごとうのしろうさえもんのじょう
　長又太郎左衛門尉�@　　　　　　 後藤四郎左衛門尉

　　おおたわのさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　　　あぼのさえもんじろう
　大多和左衛門尉　　　　　　　　阿保左衛門次郎

　　　　　　　こ　　　うち　　ごじつまたしょう しょうごてん あ　　　　　うんぬん
　　　此の内、後日又 少々 御點有りと云々。

参考�@長又太郎は、長谷部又太郎。

現代語正嘉二年(1258)正月大七日丁巳。来る十日に、鶴岡八幡宮へお詣りをするので、そのお供の為に将軍への御馳走のふるまい中に名簿を見て戴き、了解の印を云ってもらい、その連中に知らせたのです。その名簿に書かれていても、了解に漏れた人々は、
　武藏五郎時忠　　　　　　　上総三郎満氏
　越後又太郎　　　　　　　　出羽七郎二階堂行頼
　那波刑部權少輔政茂　　　　江石見前司能行
　対馬守矢野倫長　　　　　　周防守島津忠綱
　〔攝津〕大隅前司親員　　　縫殿頭中原師連
　梶原上野介景俊　　　　　　石見守宗朝
　上総太郎左衛門尉長経　　　越中四郎左衛門尉(宇都宮)横田時業
　長門三郎笠間朝景　　　　　大隅修理亮島津久時
　周防三郎左衛門尉島津忠行　同五郎左衛門尉島津忠景
　長井判官代泰茂　　　　　　備中右近大夫忠義
　梶原上野三郎景氏　　　　　和泉六郎左衛門尉天野景村
　同七郎左衛門尉天野景経　　薩摩九郎伊東
　同十郎伊東祐広　　　　　　大須賀新左衛門尉朝氏
　同大須賀四郎　　　　　　　隠岐二郎左衛門尉泰清
　肥後二郎左衛門尉天野景氏　同三郎左衛門尉天野為成
　善右衛門尉三善康長　　　　善五郎左衛門尉三善康家
　筑前四郎左衛門尉二階堂行佐〔本から故障〕　同五郎二階堂行重
　紀伊二郎左衛門尉為経　　　内藤豊後三郎左衛門尉
　山内三郎左衛門尉通広　　　進三郎左衛門尉宗長
　〔太宰〕肥後左衛門三郎為成　平賀新三郎惟時
　狩野五郎左衛門尉為広　　　善兵衛太郎
　土肥左衛門尉惟時　　　　　澁谷左衛門尉武重
　内藤肥後三郎左衛門尉　　　出雲権守為政
　長又太郎左衛門尉　　　　　後藤四郎左衛門尉
　大多和左衛門尉義清　　　　阿保左衛門次郎
　　　これらの名簿の内から、又少々再採用があったそうな。

参考すでに名簿が書かれたのは理解できるが、何故選洩れ名簿をわざわざ書き出すのであろうか。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はれ　ひょうじょう はじ　　　おこなはれ　　そうしゅう　ぶしゅう　ひとびとしゅっし　　たま
正嘉二年(1258)正月大八日戊午。�ﾘ。評定 始めを行被る。相州・武州・人々出仕し給ふ。

 そ　　ご　しんぎょうえあ　　　　　しょうぐんけ ふたむね　ごしょ　　 おんいで
其の後心經會�@有り。將軍家二棟の御所�Aへ御出。

参考�@心経会は、般若心経を唱える法事。
参考�A二棟の御所とは、二棟をくっつけた建物であろうか？

現代語正嘉二年(1258)正月大八日戊午。晴れです。政務会議の御用始式を行いました。相州政村・武州長時や政務会議員が登庁しました。その後、新年最初の般若心経を唱える法事がありました。宗尊親王将軍家は二棟御所へお出ましです。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　しょうぐんけ　つるがおかぐう　ぎょさん
正嘉二年(1258)正月大十日庚申。�ﾘ。將軍家、鶴岳宮へ御參。

おんいで　ぎょうれつ
御出の行列

さきがけはちにん〔げろうさきたり〕
前駈八人〔下臈先爲〕

　　あかつかさこんくらんどすけもち　　　　　　　　　　　　びっちゅうほうがんだいさだただ
　赤塚左近藏人資茂　　　　　　　備中判官代定忠

　　おしだてさこんのたいふすけよし　　　　　　　　　　　　 あきかもんのたいふよりさだ
　押立左近大夫資能　　　　　　　安藝掃部大夫頼定

　　みまさかさこんのたいふやすとも　　　　　　　　　　　　 おうみのぜんじひでざね
　美作左近大夫泰朝　　　　　　　近江前司秀實

　　びっちゅううこんのたいふしょうげんかげもち　　　　　 しょうゆうさこんのたいふしょうげんすけふさ
　備中右近大夫將監景茂　　　　　少輔左近大夫將監佐房

つぎ　てんじょうびと　〔げろうさきたり〕
次に殿上人〔下臈先爲〕

　　おわりのじじゅうきよとき　　　　　　　　　　　　　　　　　　にじょうのじじゅうまさあり
　尾張侍從�C時　　　　　　　　　二條侍從雅有

　　あねこうじひょうえのすけただとき　　　　　　　　　　　　ぼうじょうしょうしょうきんあつ
　姉小路兵衛佐忠時　　　　　　　坊城少將公敦

　　なかみかどちゅうじょうきんひろあそん　　　　　　　　　いちじょうちゅうじょうよしもとあそん
　中御門中將公寛朝臣　　　　　　一條中將能基朝臣

つぎ　　　くげ
次に公卿

　　ぎょうぶきょう　〔むねのり〕　　　　　　　　　　　　　　　　 にじょうのさんみ　〔のりさだ〕
　刑部卿〔宗教〕　　　　　　　　二條三位〔教定〕

　　にんなじのさんみ　〔あきうじ〕　　　　　　　　　　　　　かざんいんのさいしょうちゅうじょう　〔ながまさ〕
　仁和寺三位〔顯氏〕　　　　　　花山院宰相中將〔長雅〕

　　つちみかどちゅうなごん　〔あきかた　みやなか　　さんかい　　〕
　土御門中納言〔顯方　宮中に參會す〕

つぎ　おくるま
次に御車

　　すおうのごろうさえもんのじょうただかげ　　　　　　　　　おきのじろうさえもんのじょうとききよ
　周防五郎左衛門尉忠景　　　　　隱岐次郎左衛門尉時�C

　　やまのうちのさぶろうさえもんのじょうみちかど　　　　　さつまのじうろうきんかず
　山内三郎左衛門尉通廉　　　　　薩摩十郎公員

　　といのしろうさねつな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かのうのさえもんしろうかげもち
　土肥四郎實綱　　　　　　　　　狩野左衛門四郎景茂

　　ひごのさぶろうさえもんのじょう　　　　　　　　　　　　　　おおいずみのくろうながうじ
　肥後三郎左衛門尉　　　　　　　大泉九郎長氏

　　ひらがしんざぶろうこれとき　〔いじょう　ひたたれ　たいけん　　　　おくるま　　さゆう　　　　そうら　　〕
　平賀新三郎維時〔以上直垂、帶釼して御車の左右に候う〕

ぎょけんやく
御釼役

　　むさしのぜんじともなお
　武藏前司朝直

　ごちょうど
御調度

　　むとうのじろうさえもんのじょうよりやす
　武藤次郎左衛門尉頼泰

おんうしろ
御後

　ごい　　〔　ほい　　げぐくり〕
五位〔布衣下括〕

　　さがみしきぶのたいふときひろ　　　　　　　　　　　　　　ぎょうぶしょうゆうのりとき
　相摸式部大夫時廣　　　　　　　刑部少輔教時

　　えちごうまのすけときちか　　　　　　　　　　　　　　　　　おわりさこんのちあふしょうげんきんとき
　越後右馬助時親　　　　　　　　尾張左近大夫將監公時

　　むさしさこんおたおふしょうげんときなか　　　　　　　　みんぶごんのだいゆうときたか
　武藏左近大夫將監時仲　　　　　民部權大輔時隆

　　なかつかさごんのだいゆういえうじ　　　　　　　　　　　　 でわのぜんじゆきよし
　中務權大輔家氏　　　　　　　　出羽前司行義

　　おやまでわぜんじながむら　　　　　　　　　　　　　　　　みかわのぜんじよりうじ
　小山出羽前司長村　　　　　　　參河前司頼氏

　　いずみのぜんじゆきかた　　　　　　　　　　　　　　　　　 ながとのぜんじときとも
　和泉前司行方　　　　　　　　　長門前司時朝

　　くらごんのかみちかいえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごとういきぜんじもとまさ
　内藏權頭親家　　　　　　　　　後藤壹岐前司基政

　　ひゅうがぜんじすけやす　　　　　　　　　　　　　　　　　たんごのかみよりかげ
　日向前司祐泰　　　　　　　　　丹後守頼景

　　かずさぜんじながやす　　　　　　　　　　　　　　　　　　だざいのしょうにかげより
　上総前司長泰　　　　　　　　　太宰少貳景頼

 ろくい　〔どうぜん〕
六位〔同前〕

　　さがみのさぶろうときとし　　　　　　　　　　　　　　　　　 むつのしちろうなりとき
　相摸三郎時利　　　　　　　　　陸奥七郎業時

　　びぜんのさぶろうながより　　　　　　　　　　　　　　　　 とおとうみのしちろうときもと
　備前三郎長頼　　　　　　　　　遠江七郎時基

　　ながいのたろうときひで　　　　　　　　　　　　　　　　　　しもつけのしろうかげつな
　長井太郎時秀　　　　　　　　　下野四郎景綱

　　さどのごろうさえもんのじょうもとたか　　　　　　　　　　　でわのじろうさえもんのじょうゆきあり
　佐渡五郎左衛門尉基隆　　　　　出羽次郎左衛門尉行有

　　かじわらのたろうさえもんのじょうかげつな　　　　　　　しきぶのたろうさえもんのじょうみつまさ
　梶原太郎左衛門尉景綱　　　　　式部太郎左衛門尉光政

　　いきのしんざえもんのじょうもとより　　　　　　　　　　　　さつまのしちろうさえもんのじょうすけよし
　壹岐新左衛門尉基頼　　　　　　薩摩七郎左衛門尉祐能

　　いちのみやのじろうさえもんのじょうやすあり　　　　　　かとうさえもんのじょうかげつね
　一宮次郎左衛門尉康有　　　　　加藤左衛門尉景經

　　いせのじろうさえもんのじょうゆきつね　　　　　　　　　　かまたのさぶろうさえもんのじょうよしなが
　伊勢次郎左衛門尉行經　　　　　鎌田三郎左衛門尉義長

　　おな　　　　じろうひょうえのじょうゆきとし　　　　　　　　むとうさこんしょうげんかねより
　同じき次郎兵衛尉行俊　　　　　武藤左近將監兼頼

こ　　ほか
此の外

　　とうとうみのじろう　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みやでらのくらんど
　遠江次郎　　　　　　　　　　　宮寺藏人

　　　　　　いじょうりょうにん　もよおされざる　いへど　　　お　　　　まい　　　　うんぬん
　　　以上兩人。催被不と雖も、推して參ると云々。

現代語正嘉二年(1258)正月大十日庚申。晴れです。宗尊親王将軍家は鶴岡八幡宮へお参りです。お出かけの行列は、
露払いが八人です〔身分の低い方が先です〕
　赤塚左近蔵人資茂　　　　　　　備中判官代定忠
　押立左近大夫資能　　　　　　　安芸掃部大夫頼定
　美作左近大夫泰朝　　　　　　　近江前司秀実
　備中右近大夫将監景茂　　　　　少輔左近大夫将監佐房
次に殿上人〔身分の低い方が先です〕
　尾張侍従清時　　　　　　　　　二条侍従雅有
　姉小路兵衛佐忠時　　　　　　　坊城少将公敦
　中御門中将公寛さん　　　　　　一条中将能基さん
次に公卿です
　刑部卿〔難波宗教〕　　　　　　　　二条三位〔教定〕
　仁和寺三位〔顕氏〕　　　　　　花山院宰相中将〔長雅〕
　土御門中納言〔顕方　八幡宮中で会います〕
次に牛車
　周防五郎左衛門尉忠景　　　　　隠岐次郎左衛門尉時清
　山内三郎左衛門尉通廉　　　　　薩摩十郎公員
　土肥四郎実綱　　　　　　　　　狩野左衛門四郎景茂
　肥後三郎左衛門尉　　　　　　　大泉九郎長氏
　平賀新三郎維時〔以上は、鎧直垂を着て剣を佩き牛車の左右に従います〕
刀持ちは、武蔵前司大仏朝直
弓矢担ぎは、武蔵次郎左衛門尉頼泰
すぐ後ろに
五位〔狩衣に袴は裾縛り〕
　相模式部大夫北条時広　　　　　刑部少輔名越教時
　越後右馬助佐助時親　　　　　　尾張左近大夫将監名越公時
　武蔵左近大夫将監大仏時仲　　　民部権大輔北条時隆
　中務權大輔足利家氏　　　　　　出羽前司二階堂行義
　小山出羽前司長村　　　　　　　三河前司新田頼氏
　和泉前司二階堂行方　　　　　　長門前司笠間時朝
　内蔵権頭親家　　　　　　　　　後藤壱岐前司基政
　日向前司宇佐美祐泰　　　　　　丹後守安達頼景
　上総前司大曽祢長泰　　　　　　太宰少弐武藤景頼
六位〔前に同じ〕
　相模三郎時利　　　　　　　　　陸奥七郎業時
　備前三郎長頼　　　　　　　　　遠江七郎時基
　長井太郎時秀　　　　　　　　　下野四郎景綱
　佐渡五郎左衛門尉基隆　　　　　出羽次郎左衛門尉行有
　梶原太郎左衛門尉景綱　　　　　式部太郎左衛門尉光政
　壱岐新左衛門尉基頼　　　　　　薩摩七郎左衛門尉祐能
　一宮次郎左衛門尉康有　　　　　加藤左衛門尉景経
　伊勢次郎左衛門尉行経　　　　　鎌田三郎左衛門尉義長
　同鎌田次郎兵衛尉行俊　　　　　武藤左近将監兼頼
この他に
　遠江次郎時通　　　　　　　　　宮寺蔵人政員
　　　以上の二人は、指名されないのに押しかけてきましたとさ。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　えら　 さだ　 らる　 おんまとはじめ　 いて　　　いじょうじうさんにん　 ふたごど なり
正嘉二年(1258)正月大十一日辛酉。撰び定め被る御的始の射手、已上十三人。二五度也。

しか　　　ふじさわのさこんしょうげんときちか と おかもとしんひょうえのじょうしげかた　ばんさる　のところ　　しげかたちさんのあいだ　 よこみぞしちろうごろうただみつ　もっ
而るに 藤澤左近將監時親　与　岡本新兵衛尉重方　番被る之處、重方遲參之間、 横溝七郎五郎忠光を以て、

ときちか　 あいて　　 な　　　　 しげかたあと の　ごど よ　　　これ　 い
時親の合手と爲す。重方後之五度自り之を射る。

　 いちばん
　一番

　　　　にのみやいやじろうときもと　　　　　　　　　　　　　　　ちくさえもんごろうのぶさだ
　　二宮弥次郎時元　　　　　　　知久左衛門五郎信貞

　 　にばん
　二番

　　　　おがさわらのひこじろうまさうじ　　　　　　　　　　　　　よこぢさえもんじろうながしげ
　　小笠原彦次郎政氏　　　　　　横路左衛門次郎長重

　 さんばん
　三番

　　　　たいらしんさえもんさぶろうよりつな　　　　　　　　　　かくとばりのこじろう
　　平新左衛門三郎頼綱　　　　　加久帳小次郎

　 よんばん
　四番

　　　　すきひょうえしろうよりやす　　　　　　　　　　　　　　　 こじまいやじろういえのり
　　周枳兵衛四郎頼泰　　　　　　小嶋弥次郎家範

　 　ごばん
　五番

　　　　たがやのいやごろうしげもち　　　　　　　　　　　　　 よこみぞいやしちろう
　　多賀谷弥五郎重茂　　　　　　横溝弥七郎

　 ろくばん
　六番

　　　　ふじさわさこんしょうげんときちか　　　　　　　　　　　よこみぞしちろうごろうただみつ
　　藤澤左近將監時親�@　　　　　横溝七郎五郎忠光

　 しちばん
　七番

　　　　おかもとしんひょうえのじょうしげかた　〔おく　　まい　　はじ　　　　　　ごど　これ　　　いず　〕
　　岡本新兵衛尉重方　 〔遲れ參り初めの五度之を射不〕

参考�@藤沢時親は、諏訪神党。長野県諏訪郡富士見町富士見の御射山神社での諏訪神党の御狩神事が有名。

現代語正嘉二年(1258)正月大十一日辛酉。改めて選ばれ決められた弓矢初め式の射手は13人で、二本づつ五回を二度です。それなのに藤沢左近将監時親と岡本新兵衛尉重方は組まされたけれど、重方が遅れているので、横溝七郎五郎忠光を時親の相手としました。重方は後の方の5本を射ました。

一番　二宮弥次郎時元　　知久右衛門五郎信貞
二番　小笠原彦次郎政氏　横路左衛門次郎長重
三番　平新左衛門尉頼綱　加久帳小次郎
四番　周枳兵衛四郎頼泰　小島弥次郎家範
五番　多賀谷弥五郎重茂　横溝弥七郎忠景
六番　藤沢左近将監時親　横溝七郎五郎忠光
七番　岡本新左衛門尉重方〔遅れて来たので始めの5本は射てません〕

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　ごしょ　　ゆんば　　をい　おんゆみはじめあ　　　　いて　じゅうにん　ふたごど　これ　　い
正嘉二年(1258)正月大十五日乙丑。御所の弓塲に於て御弓始有り。射手十人。二五度之を射る。

しか　　　　やましろのさぶろうさえもんのじょうちかただは　けんじつおお　られざるのあいだ　　えら　 さだ　　らる　　のとき うけたま　ざる　いへど　　　 ご　　 のぞ　　これ　 めしくわ　 らる
而るに 山城三郎左衛門尉近忠者、　兼日仰せ被不之間、 撰び定め被る之時 承は不と雖も、期に臨み之を召加へ被る。

ことし　しか　　べ　　　いて　すくな　　　よっ　 なり　 きゅうせん　めんもくたり　 うんぬん
今年然る可き射手少きに依て也。弓箭の面目爲と云々。

　 いちばん
　一番

　　　　 にのみやいやじろうときみつ　〔とお〕　　　　　　　　　　よこぢさえもんじろうながしげ
　　二宮弥次郎時光〔十〕　　　　 横路左衛門次郎長重

　 　にばん
　二番

　　　　 やましろさぶろうさえもんのじょうちかただ　　　　　　　ちくさえもんごろうのぶさだ
　　山城三郎左衛門尉近忠　　　　知久左衛門五郎信貞

　 さんばん
　三番

　　　　 ふじさわさこんしょうげんときちか　　　　　　　　　　　 たがやいやごろうしげもち
　　藤澤左近將監時親　　　　　　多賀谷弥五郎重茂

　 よんばん
　四番

　　　　 すきひょうえしろうよりうじ　　　　〔とお〕　　　　　　　　よこみぞのいやしちただかげ
　　周枳兵衛四郎頼泰〔十〕　　　 横溝弥七忠景

　 　ごばん
　五番

　　　　 おまもとしんひょうえのじょうしげかた　　　　　　　　　こじまいやじろういえのり
　　岡本新兵衛尉重方　　　　　　小嶋弥次郎家範

現代語正嘉二年(1258)正月大十五日乙丑。御所内の弓場での弓矢始め式がありました。射手は十人で二本づつ五回を二度射ました。それだけど、山城三郎左衛門尉近忠は、前もって云われていなかったので、承知もしていませんでしたけど、始めるにあたって射手に加えられました。今年はそれ相応の射手が少ないからです。彼にとっては弓矢の面目がたったそうな。
一番　二宮弥次郎時光〔10〕　横路左衛門次郎長重　　
二番　山城三郎左衛門尉近忠　知久右衛門五郎信貞
三番　藤沢左近将監時親　　　多賀谷弥五郎重茂
四番　周枳兵衛四郎頼泰〔10〕横溝弥七郎忠景
五番　岡本新左衛門尉重方　　小島弥次郎家範

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　うしのこく　あいだのじょうすけやすもり　　あまなわ　　たく　　しっか　　なんぷうしき　　　　あお
正嘉二年(1258)正月大十七日丁夘。霽。丑尅。 秋田城介泰盛が 甘繩の宅で失火。南風頻りに扇ぐ。

やくしどう　　うしろやま　　こ　　　　　じゅふくじ　　いた　　　　そうもん　 ぶつでん　　 くり　　　ほうじょう いげ　　かくないいちうのこらず
藥師堂�@の後山を越え、壽福寺に到り、惣門・佛殿・庫裏・方丈已下、郭内一宇殘不。

 よえん　　しんしみずじ　　いわやどうなら　　　 そ　　 あたり　みんや　 わかみや　 ほうぞう　　おな　　　 べっとうぼうらしょうしつ
餘炎、新�C水寺�A・窟堂�B并びに其の邊の民屋、若宮の寳藏、同じく別當坊等燒失す。

参考�@薬師堂は、無量寿院跡地のあたりと思われるので同寺内に薬師堂もあったのであろう。
参考�A新清水寺は、頼朝建立と云われる廃寺。ここの鉄観音がこの火事で飛び込んだ井戸が「鉄の井」。後、明治に観音頭部を日本橋人形町の大観音寺にあり。
参考�B窟堂は、雪ノ下二丁目２０の不動茶屋の脇。崖崩れのため岩屋ではなくお堂になってしまった。

現代語正嘉二年(1258)正月大十七日丁卯。晴れました。午前2時頃に、秋田城介安達泰盛の甘縄の屋敷で失火。南風は強く吹いたので、火炎が薬師堂の裏山を超えて寿福寺まで飛び火して、総門・仏殿・庫裏・方丈を始めとしてひとつ残らず燃えてしまいました。炎は、新清水寺・岩屋不動それにそのあたりの民家と八幡宮の宝蔵庫や別当房なども焼失しました。

推測この記事から察するに、安達泰盛の甘縄の宅は、鎌倉市御成町14番附近であった可能性がある。恐らく宝治合戦後千葉地を貰ったのだろう。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　しょうちょうじゅいん　ごとう　　もと　　ざいしょ　　あらた　　ひがしやま　ふもと　もっ　　そ　　ところ　　な
正嘉二年(1258)正月大廿日庚午。�ﾘ。勝長壽院の御塔、本の在所を改め、東山の麓を以て其の所と爲す。

現代語正嘉二年(1258)正月大二十日庚午。晴れです。勝長寿院内の尼御台所政子様が建てた三重塔を元からの場所を変えて、東山の麓をその場所と決めました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　しょうちょうじゅいんしょどう　そ　　す
正嘉二年(1258)正月大廿一日辛未。�ﾘ。勝長壽院諸堂の礎�@を居える。

参考�@礎は、礎石。関東では千葉県印旛郡栄町龍角寺２３９の龍角寺に7世紀にさかのぼる伽藍阯にある。建築史的には、掘立柱(伊勢神宮)から礎石建築(国分寺など)・路盤建築へと発展する。鎌倉では、建長寺が初めて。東村山市の徳蔵寺に板碑の博物館とともに路盤が掘り出してある。

現代語正嘉二年(1258)正月大二十一日辛未。晴れです。勝長寿院のそれぞれのお堂の礎石を堀り置きました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 わかみや　みえいどうなら　　　ゆきのした　べっとうぼうら　じょうとう
正嘉二年(1258)正月大廿二日壬申。若宮の御影堂并びに雪下の別當坊等上棟す。

参考御影堂は、建長三年時頼奉納の僧形八幡神像と思われる。

現代語正嘉二年(1258)正月大二十二日壬申。若宮鶴岡八幡宮の僧形八幡神のお像をかざる御影堂それと雪ノ下の別当房の棟上げ式です。

推測1月大17日の火事で焼けたので再建しているのであろう。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 はれ　しょうちょうじゅいん　しそくわきもん　　つく　をはんぬ
正嘉二年(1258)正月大廿四日甲戌。�ﾘ。勝長壽院の四足脇門�@を造り畢。

あす　にじうごにちよ　　　　　にがつせつのあいだ　ため　きゅうそく　えいさく　　お　　　らる　　　　うんぬん
明日廿五日自り、二月節之間の爲、急速の營作を終え被ると云々。

参考�@四足脇門とは、総門ではないか？四足とは、門扉を取り付ける門柱の前後に二本づつ足が付くので全部で６本に見える。

現代語正嘉二年(1258)正月大二十四日甲戌。晴れです。勝長寿院の四足の脇門を造り終えました。明日の25日から二月節になるので急いで工事を終えたんだそうな。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 こと　　　　ごがん　　　よっ　　　　ぎょけんを　にしょだいじんぐう　たてまつらる　　ぶぜんだんじょうのちゅう　これ　ぶぎょう
正嘉二年(1258)正月大廿七日丁丑。殊なる御願に依て、御釼於二所太神宮へ奉被る。　豊前彈正忠　之を奉行す。

現代語正嘉二年(1258)正月大二十七日丁丑。特別な願いがあるので、刀二ふりを伊勢皇大神宮へ奉納します。豊前弾正忠が担当します。

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吾妻鏡入門第四十八巻