吾妻鏡入門第四十八巻 　

正嘉二年(1258)四月大

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　ひつじのこく　しょうちょうじゅいん　さんじゅうのとう　いっさききょうぞうら じょうとう
正嘉二年(1258)四月大十九日戊戌。�ﾘ。 未尅、 勝長壽院の 三重塔・一切經藏 等上棟す。

しょうぐんけみつみつ　にゅうご　〔にょぼうごし　　もち　　らる　　〕　　　　　つちみかどちゅうなごん あらかじ　こう　　らる　　　さきのぶしゅう　ぶしゅうら　おっ　 さんにゅうさる
將軍家密々に入御〔女房輿を用い被る〕。 土御門中納言 豫め 候じ被る。前武州・武州等追て參入被る。

でわのぜんじ　　しもつけぜんじ　　あいだのじょうすけ　いげ　　 さんかいにん さいさいたり
出羽前司・下野前司・ 秋田城介 已下の參會人　濟々焉。

たくみ　ら　　〔　ほい　〕　ほんどうまえ　 れっきょ　　　　だいこう　 おんうまさんびき　〔いっぴき　　くら　　お　　　　〕　　ごい　　〔みころも〕　ら　　　たま
工匠等〔布衣〕本堂前に列居す。大工�@は御馬三疋〔一疋は鞍を置く〕御衣�A〔三衣〕等を給はる。

ひきがしらなら　　おさら　いっぴき　〔くら　　お　　　〕　　 いちりょう　 たま　　　　　　はくぼ　　およ　　かんご
引頭并びに長等一疋〔鞍を置く〕、一領を給はる。薄暮に及び還御す。

参考�@大工は、現在の大工ではなく建築プロデューサー(棟梁)を指すのであえて「だいこう」とかなをふる。
参考�A御衣は、五衣とも書かれるがファイブではない。

現代語正嘉二年(1258)四月大十九日戊戌。晴です。午後2時頃に、勝長寿院の三重塔と一切経蔵の棟上げ式です。宗尊親王将軍家は非公式にお出ましです。土御門中納言顕方は前もって来ております。前武州朝直と武州長時は追ってまいりました。出羽前司小山長村、下野前司宇都宮泰綱、秋田城介安達泰盛以下の参会者は大勢です。
建築技師たち〔布衣〕は、本堂前に並びました。棟梁には馬3頭〔1頭は鞍置き〕と着物〔3着〕等を与えられました。材木運びの責任者と班長等には、馬1頭〔鞍置き〕着物1着を与えました。日暮れになってお帰りです。

説明勝長寿院は、47巻正嘉元年(1257)8月23日の大地震で破壊され、25日に修復の分担をしている。本堂＝時頼。弥勒堂＝朝直。五仏堂＝重時、三重塔＝政村。部下の主催なので将軍は非公式な出席なのであろう。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　　きょうと　　ひきゃくとうちゃく　　　もう　　　　 い
正嘉二年(1258)四月大廿一日庚子。�ﾘ。京都の飛脚到着し、申して云はく。

さんぬ　じゅうしちにち うのこく　　 ひえ　　　みこし　〔 さんき 〕　を　ぬいどのじんぐち　　ふ　たてまつ
去る 十七日 夘尅、日吉の神輿〔三基〕於縫殿陣口に振り奉る�@。

けいごのやからしょもん　とざ　　のあいだ　 みしょうたい　　と　　　　ついがきない　　な　　 い　　　　 これ　 おんじょうじかいだん　こと　　ちょっきょ あ　　 べ　　　　よっ　　なり
警固之輩諸門を鎖す之間、御正躰を取り、築垣内に投げ入る。是、園城寺戒壇�Aの事、勅許 有る可きに依て也。

参考�@日吉の神輿を振るのは、比叡山の僧兵共が朝廷に強訴をしている。
参考�A園城寺戒壇は、三井寺での戒壇設立の勅許を阻止するためである。それまで戒壇は下野薬師寺・大宰府観音寺・比叡山延暦寺のみであった。

現代語正嘉二年(1258)四月大二十一日庚子。晴れです。京都からの伝令が到着して報告して云うのには、先日の17日午前6時頃に、日吉神社の神輿三基を京都御所の朔平門(北面僻仗中門)へ強訴してきました。門番の連中が急いで門を閉めてしまったので、お神輿の御正躰の鏡を取り外して、築地塀の中へ投げ込みました。この原因は、三井寺園城寺に戒壇を設けるのを朝廷が許可したので、比叡山の連中が阻止しようとして強訴したのです。(なんと傲慢で身勝手な連中でしょう)

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 さるのこく　　ぢしん
正嘉二年(1258)四月大廿二日辛丑。申尅、地震。

現代語正嘉二年(1258)四月大二十二日辛丑。午後4時頃地震です。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　こさめうるお　　しょうちょうじゅいん　とう　　　くりん　　 あ
正嘉二年(1258)四月大廿五日甲辰。小雨灑す。勝長壽院の塔、九輪を上ぐ。」

きょう　　　さがみさぶろうときとし　〔じゅういっさい〕　おやまのでわぜんじながむら　むすめ　とつ
今日、相摸三郎時利�@〔十一歳〕小山出羽前司長村が娘に嫁ぐ。

参考�@相摸三郎時利は、後の時輔。大河ドラマ北条時宗では、渡部篤郎。長村の娘はともさかりえ。

現代語正嘉二年(1258)四月大二十五日甲辰。小雨が濡らしています。勝長寿院の三重塔の九輪を上げました。」
今日、相模三郎時利〔十一才〕に小山長村の娘が嫁に来ました。

読下し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 はれ　しょうちょうじゅいんなら　　しょどうら　むね　 つつ
正嘉二年(1258)四月大廿六日乙巳。霽。勝長壽院并びに諸堂等棟を裹む�@。

さつきのせち　い　　のあいだ　　めんめん　たいまつ　　と　　これ　　　さた
五月節に入る之間、面々に松明を取り之を沙汰す。

ぎょうこう　およ　　そ　　　こう　　お　　　　　　さきのぶしゅう かんりんさる
曉更に及び其の功を終える。前武州 監臨被る。

参考�@棟を裹むは、完成祝賀会の前日に幕でかくして除幕式に備えるらしい。

現代語正嘉二年(1258)四月大二十六日乙巳。晴れです。勝長寿院の新築のお堂を除幕式用の幕で覆いました。五月節句(端午の節句)が近いので、それぞれ松明を着けて夜作業です。明け方になってその作業を終わりました。泰時さんが監督しました。

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